【大学受験】理工系学部「女子枠」導入…国公立大9選

 東京工業大学は2024年度(令和6年度)入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において「女子枠」を順次導入する。近年、理工系学部で「女子枠」を創設する動きが盛んだ。「女子枠」を設けている国公立大学をまとめた。

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東京工業大学
  • 東京工業大学
  • 名古屋工業大学
  • 富山大学
  • 兵庫県立大学
  • 熊本大学
  • 宮崎大学工学部
  • 島根大学材料エネルギー学部
  • 北見工業大学

 東京工業大学は2024年度(令和6年度)入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において「女子枠」を順次導入する。近年、理工系学部で「女子枠」を創設する動きが盛んだ。「女子枠」を設けている国公立大学をまとめた。

東京工業大学

 東京工業大学は、2024年(令和6年)4月入学の学士課程入試から、総合型選抜および学校推薦型選抜において女性を対象とした「女子枠」を導入。2024年4月入学者の入試では4学院(物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)で新選抜を開始し、58人の女子枠を導入。2025年4月入学者の入試では、残りの2学院(理学院、工学院)で新選抜を開始し、85人の女子枠を導入する。最終的に、全学院の女子枠の募集人員は計143人になり、これは学士課程1学年の募集人員1,028人の約14%に相当する。また、より多様な入学者を受け入れることを目的に、2025年4月入学者の入試から、理学院と工学院の総合型選抜に性別によらず出願できる一般枠を設ける。これに伴い、理学院の学校推薦型選抜を廃止するが、すでに発表した女子枠数の変更はないとしている。

名古屋工業大学

 名古屋工業大学は、工学分野における女性人材育成の一層の推進を目指すため、2024年(令和6年)度以降の入学者選抜において、電気・機械工学科に加えて新たに高度工学教育課程物理工学科、情報工学科および社会工学科(環境都市分野)についても学校推薦型選抜により女子特別推薦を実施する。実施する選抜区分は、学校推薦型選抜(大学入学共通テストを課さない)で、実施する学科および募集人数は物理工学科5人、情報工学科5人、社会工学科(環境都市分野)3人、電気・機械工学科15人(既設)で合計28人。同大学では、産業界からの理工系女性人材育成の要請に基づき、1994年(平成6年)から機械工学科(現電気・機械工学科)において女子特別選抜を実施。当時の機械工学科において2人(1993年度)だった女子入学者は、今では20人を超えているという。

富山大学

 富山大学工学部は、2023年度(令和5年度)入学者選抜から、大学入学共通テストを課さない学校推薦型選抜の「女子特別推薦」を実施。電気電子工学コース3人、知能情報工学コース3人、機械工学コース2人の計8人を募集した。同大学の工学部工学科の3コースについては、女子学生の割合がいずれも10%未満と極めて少なく、学修上の多様性が十分確保されているとはいえない状況。多様な学生を受け入れるとともに、社会からの理工系女性人材育成の要請に応えるため、「女子特別推薦」を導入した。「女子特別推薦」初年度の志願状況をみると、電気電子工学コースの募集3人に対し志願者は1人、知能情報工学コースの募集3人に対し志願者は6人、機械工学コースの募集2人に対し志願者は3人だった。

兵庫県立大学

 兵庫県立大学は2016年度(平成28年度)入学者選抜から、工学部の3学科で学校推薦型選抜「女子学生特別」を実施している。大学入学共通テストの成績は利用せず、書類審査(調査書、学校長の推薦書および志望理由書)および適性検査、小論文を実施し、高等学校での学習の達成度をみるとともに、同大学での学習に必要な基礎学力を持っているかを判断する。2023年度(令和5年度)の学校推薦型選抜実施結果をみると、電気電子情報工学科5人の募集に対し志願者は8人、機械・材料工学科は5人の募集に対し志願者は7人、応用化学工学科は5人の募集に対し志願者は12人だった。

熊本大学

 熊本大学は、2024年4月に設置を構想している「情報融合学環」の学校推薦型選抜に女子枠を設置する。情報融合学環では、数理・データサイエンス・AI に関心を持ち、高い志・将来展望を持った優秀な女子学生の入学を促すため、学校推薦型選抜における募集人員15人のうち8人を女子枠とする。なお、残りの7人は性別を問わない。大学入学共通テスト、推薦書、調査書、志願理由書、面接(口頭試問を含む)の成績により総合的に判定する。同大学によると、理工系学部の2022年度入学者のうち、女子学生は理学部が約29%、工学部が約19%にとどまり、学部を構成する学生の人的比率に偏りがあることが課題の1つとなっている。

宮崎大学

 宮崎大学工学部工学科は2025年度(令和7年度)入学者選抜より、学校推薦型選抜(大学入学共通テストを課さない)に女子枠を導入する。工学部の総定員数370人のうち、新たに設ける女子枠の募集人員は14人。工学科各プログラムの募集人員の内訳は、化学生命プログラム2人、土木環境プログラム3人、半導体サイエンスプログラム2人、電気電子システムプログラム2人、機械知能プログラム2人、情報通信プログラム3人。同大学工学部の過去7年間平均の女子比率は11.3%と、全国平均よりも低い状況にあるという。2023年度からは科学技術振興機構(JST)事業「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」において、同大学工学部が主体となって申請し、採択された「集まれ!宮崎アマテラスガールズ~サイエンスの岩戸を開けてみよう~」を実施する。

島根大学

 島根大学は、2023年(令和5年)4月に開設した材料エネルギー学部(入学定員80人)において、女性を対象とした学校推薦型選抜II(大学入学共通テストを課す学校推薦型選抜)を実施。同大学では初の女子枠となり、募集人員は6人。2023年度の入試実施状況をみると、募集6人に対し志願者は6人だった。同学部は、全世界で対応が急がれるエネルギー問題を素材・材料の視点から理解し解決する新しい学部。エネルギー問題を解決する新材料・新素材の研究開発を通して、社会と未来を大きく変えるイノベーティブな人材を養成するという。

北見工業大学

 北見工業大学は、2024年度(令和6年度)入学者選抜から総合型選抜コース確定枠において、「女子特別枠」を設定する。現行では、総合型選抜(コース確定枠)の募集人数は14人(うち2人は地域マネジメント工学コース)だが、32人に変更。エネルギー総合工学コース、環境防災工学コース、先端材料物質工学コース、機械知能・生体工学コース、情報デザイン・コミュニケーション工学コース、社会インフラ工学コース、バイオ食品工学コース、地域マネジメント工学コースの8コースについて、各コース4人を募集。うち2人は女子を対象とする「女子特別枠」とし、うち2人は性別によらず出願できる「一般枠」とする。なお、女子特別枠の志願者は、一般枠との併願として取り扱う。

奈良女子大学

 奈良女子大学は2022年4月、国内の女子大学で初となる工学部工学科を開設。女性エンジニアを育てるため、「人と社会の必要性を考えるリベラルアーツ教育」「創造性と理工系知識を学ぶSTEAM教育」「多様な人々と交流する力を育てるPBL演習」をカリキュラムの中心としている。2023年度の入学定員は45人。選抜方法は、大学入学共通テストを利用しない総合型選抜探究力入試「Q」と総合型選抜入試「PICASO」、大学入学共通テストを利用する「学校推薦型選抜」と「一般選抜」となっている。2023年度(令和5年度)の一般選抜では、工学部の前期日程の募集人員20人(総合型選抜、特別入試の入学者をのぞく)に対し出願者は54人、倍率は2.70倍だった。

 各大学の入学者選抜に係る実施内容は変更する場合があるため、該当年度の入学者選抜要項および学生募集要項を確認してほしい。

《田中志実》

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