総合型選抜入試で重視される「志望理由書」合格しやすい要素とは…読者プレゼント応募締切10/11

 2023年3月に文科省が公表した調査結果によると、大学入試において、一般入試よりも学校推薦型選抜と総合型選抜(旧推薦入試・AO入試)の割合の方が多くなっている。『選抜入試の教科書』(星海社新書)より、「良い志望理由書に共通する要素」を紹介する。

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 大学の総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が増えている。

 文部科学省が2023年3月31日に公表した「大学入学者選抜の実態の把握および分析等に関する調査研究」によると、大学入試全体での一般入試の割合は49.7%に対し、学校推薦型選抜31.0%、総合型選抜19.3%で、学力で大学合格を目指す一般入試よりも総合型・推薦型(AO入試・旧推薦入試)の割合のほうが多くなっていることがわかっている。

 つまり、現在の大学入学者の半分は、選抜入試で進学をしているのだ。筆者(全国で教育支援事業を行っている 東大生集団 カルペ・ディエム代表 西岡壱誠)は『選抜入試の教科書』(星海社新書)を上梓した。これは、選抜入試特化の塾「クラウドセンバツ」という塾と連携し、現在の選抜入試を概観するものになっている。本記事ではその中で、選抜入試で特に重視される「志望理由書」について共有したい。

 「選抜入試の教科書」の作成にあたって、実際に受験生が書いた志望理由書の分析・合格者インタビューを実施した。その中で見えてきた「良い志望理由書に共通する要素」を本記事では共有する。※本記事はアフィリエイト広告を利用しています

 結論から言うと、「良い志望理由書に共通する要素」として見えてきたのは「現状をうまく否定する内容が書けていると合格しやすい」というものだった。

 次の3人の志望理由書をご覧いただきたい。これは、どれも実際に難関大学に提出され、選考を通過した志望理由書である。

現状を「うまく否定する」志願理由書例

例1

 「私は、現状の法律をアップデートして、これからの社会変化に対応できるようなものにしたいと考えている。そのため、まず大学では最新の技術に対して法律がどのように対応しているのか、その限界はどこにあるのかを調べたい」

例2

 「私は、国連開発計画(UNDP)の一員として、アフリカでの持続可能な開発に携わりたい。カナダの高校在学時に履修した社会正義の授業で、さまざまな国際問題に関連するテーマが取り扱われたのだが、私はこの授業を通じて、アフリカに抱いているイメージと現実のギャップ、そして自分も含めた日本人がアフリカ地域についていかに無知であるかを思い知り、アフリカ地域について学びたいと強く思ったからだ」

例3

 「私は、現在の中学校・高等学校で行われている生徒会活動をより活発化させたい。私は高校時代に生徒会活動を通じて、全国の生徒会と連携した取組みを行うなど多くの経験をすることができた。その中で、学内だけではなく、企業や自治体・学外との連携を深め、学びを得るきっかけとしての生徒会活動は、若者の自己肯定感を引き上げることにつながると感じた。現在の生徒会は学校内の問題解決を行う活動に留まっているが、学外との連携も深める場としての生徒会活動を推進するため、貴学の教育学部で学びたいと考えた」

 本書ではこれ以外にも難関大学に合格した7人分の志望理由書を掲載しているのだが、これらの志望理由に共通する要素は、「現状の否定のニュアンス」が含まれていることだ。

 1人目のものには、「現状の法律をアップデート」「最新技術に対応できるものにしたい」とある。これは逆に言えば、「現状の法律では、最新技術や社会の変化に対応していない部分があるのではないか」と、現行の法律を否定する考えをもっていることを示している。

 2人目のものには、「自分も含めた日本人がアフリカ地域についていかに無知であるかを思い知り」とある。これは、「日本人がアフリカ地域について間違った知識をもっている」ということを示しており、そしてその現状が間違っていると考えていることを示している。

 3人目のものには、「現在の生徒会は学校内の問題解決を行う活動に留まっている」とある。今の生徒会活動を否定し、そして新しい生徒会活動として、「学外との連携も深める場としての生徒会活動を推進」したいと考えているということを示している。

 このように、選抜入試の合格者は「現状の否定」を念頭に置いた志望理由を用意することで、自分が何をしたいのかをわかりやすく伝えている例が多いということがわかった。

 なぜ、志望理由には「現状の否定」が多く、そして大学側に評価されやすいのか。それは、志願者がどんな未来を目指したいのか、どんな社会を理想としているのかを伝える手段として、「改善したい現在の状況や現在の問題を考えること」が有効だからだと考えられる。

 大学側は、「より良い社会・より良い未来を作りたい」と考えているような、志の高い学生採用することを意図し、選抜入試を行っている場合が多い。

 これは、多くの大学のアドミッションポリシーの記載を見れば明らかだと言える。

 とはいえ、「より良い社会・より良い未来を作りたい」というのはスケールが大きくなってしまいがちで、学生にとっては考え辛いテーマだ。そんな中で、「現状の否定」はわかりやすく「現状よりも良い社会・より良い未来を作るための意見」となりやすい。現状発生している問題・社会課題を解決できれば、現状の社会の問題が1つ減り、一歩良い未来に繋がっていくと考えられるからである。

 「あなたがこの市の市長だったとして、どんなことをしますか」と聞かれて答えられる学生は少ないだろう。

 だが、「あなたが住んでいるこの街について、どんな部分を改善したいですか」と聞かれたら、答えられる場合が格段に多くなるのではないだろうか。

 「市長になって何をするか」と「その地域にはどんな問題があり、どう改善したいか」は、似たような質問だが、後者のほうが具体的で答えやすくなるはずだ。これと同じように、「より良い社会・より良い未来を作りたい」そのために「現在の社会にはどんな問題があり、どう改善したいか」を考えることが有効だと言えるだろう。

「現状の否定」3つのパターン

 もう少し詳しく志望理由の中の「現状の否定」を調べていくと、3つほどのパターンがあることがわかった。

1.現状の問題点の指摘

 まずは、問題点を指摘するものだ。たとえば、「現状だと、こういう問題が発生している!だから自分がその問題を解決したい!」というポイント・問題点を見つけて、それを否定・解決するために大学に入りたい、とプレゼンする場合である。

 この場合の「問題」の定義はさまざまだが、多くの場合は「誰かが不利益を被ってしまっている状態」を想定していることが多い。

 たとえば「少子高齢化を解決したい」という書き方をして、不合格になった受験生がいた。これは、「少子高齢化」というのが漠然としていて複合的な問題だからだと考えられる。「少子高齢化」は、言葉上は「子供が少なくなって高齢者が増える現象」のことでしかない。問題ではなく、ただの現象である。「子供の減少と高齢者の増加によって、労働人口が減少してしまい、日本の経済成長が立ち行かなくなってしまい、日本人の生活がどんどん苦しくなっていってしまう」というところまで考えられれば、「問題」と捉えてプレゼンしやすくなるだろう。

 子供が減少することも、労働人口が減少することも、それだけではただのデータ上の現象でしかなく、「これを解決したい」と書いたとしても、大学側からは「その現象を解決したところで、なんの意味があるのか? どれくらいの社会的な意義があるのか?」と突っ込まれてしまうわけである。

 合格者の志望理由書の中には、多くの割合で、具体的にその問題によって不利益を被る人について触れており、その問題解決にリアリティが出ていた。「アフリカでこういう人たちが苦しんでいて」「日本でこういう人たちから話を聞いて、こういう人たちの力になりたいと感じて」と、自分がその問題を解決すればどんな人が救われるのかを明確にしている場合が多かったわけである。

2.現状の限界点の指摘

 次は、現状の限界点の指摘である。たとえば、「現状だと、この問題に対してこういう解決策を取っているが、それにはどうしても限界がある。だから自分がその状況を変えたい」と、問題とセットにしてその問題の解決策の限界点を指摘する場合である。

 多くの場合、社会的な問題が完全に手付かずで誰も対応していない、なんてことはほとんど存在しないだろう。それが問題であるのなら、すでに誰かが、何かしらの形で、解決策を考えて実行していることが多い。

 だが、それでもその問題が解決していないのであれば、その解決策に何かしらの不十分な部分があると考えることができる。このポイントを指摘し、その解決策の一部またはすべてを否定して、違う解決策を提示したり、今ある解決策の改良案を提示するわけである。

 「今現在、日本では電力供給の問題についてこのような解決策が取られているが、このようなポイントで現在うまくいっていない。そこで新しくこのような方法を模索するために、貴学を希望した」と、解決策を模索する手段としての大学進学という形でプレゼンを行うのである。

 この方法であれば、実際にその問題について、対策まで含めてきちんと調べていることを明示でき、大学側からの評価も高くなり得る。しかしもし、その調査が不十分な場合は評価が低くなってしまうので、気を付ける必要があるだろう。

3.現状の進化の提案

 最後は、現状の進化の提案である。たとえば、「現状だと、この部分がまだ未発達だから、ここの部分をこういう風に発展させたい」というように、現在の状態がすでに「+」であるものを、より「+」にさせていくという提案をするというものである。

 今もうすでに存在しているもの・実際にできているものを、より発展させたり広めたりする方法を考えるためにその大学・学部に入りたい、というプレゼンをするわけである。

 実際にもう存在する研究を深めたプレゼンをしたり、その研究の派生として新しい何かを生み出せるような方法を提案するような志望理由であり、これは理系の志望理由に多い印象がある。この方法であれば社会問題や現状の問題点などについて触れる必要がなく、興味のある研究分野をプレゼンできれば志望理由を書くことができるので、書くハードルが低いと言える。しかしその分、研究分野については高い知識を求められる場合が多いので、生半可な知識では不合格になることも多いと言えるため、注意が必要だろう。

 以上のように、志望理由書を書く際に、否定を起点にして書く、ということが有効であると言える。これにはいろいろな形態があり、だからこそただ「どのような社会を望むか」のプレゼンをするよりもハードルが低いと言え、合格者の多くが(意図的かはさておき)実践しているものであるので、ぜひ参考にしてもらいたい。


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《西岡壱誠(カルペ・ディエム)》

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