瞳だけで傾聴するロボット、日本科学未来館で展示…関大研究室

 関西大学総合情報学部の瀬島吉裕准教授の研究グループは、コミュニケーション時の音声や振る舞いから、会話の熱量を推定するモデルを実装した傾聴コミュニケーションロボットを開発した。ロボットは2023年11月22日より日本科学未来館で常設展示されている。

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瞳だけでコミュニケーションができるロボットPupiloid(ピューピロイド)
  • 瞳だけでコミュニケーションができるロボットPupiloid(ピューピロイド)
  • 仮想的な温度空間
  • 会話の熱量に基づく傾聴態度の設計
  • 日本科学未来館の常設展示「ハロー!ロボット」

 関西大学総合情報学部の瀬島吉裕准教授の研究グループは、コミュニケーション時の音声や振る舞いから、会話の熱量を推定するモデルを実装した傾聴コミュニケーションロボットを開発した。ロボットは2023年11月22日より日本科学未来館で常設展示されている。

 同研究では、会話時の音声入力や振る舞いから、会話の熱量を推定するモデルを開発した。この推定モデルは、人間が共通的な感覚として理解しやすい温度に着目している。たとえば、「白熱した議論」「熱心に聞く」「熱気に満ちている」といった比喩があるように、人間は共通的な温度感覚によって、他者の感情状態や場の様相を把握している。同研究では、この比喩として利用される温度情報を、実空間における音声やうなずきといった振る舞いを入力として変換している。特に、発話やうなずきといった熱生産が行われることで、場との温度差が生まれ、場へ熱量が移動する。この流れ込んだ熱量を場の温度とすることで、会話の熱量を推定することができるという。

 この推定モデルを瞳だけでコミュニケーションができるロボットPupiloid(ピューピロイド)へ導入した。具体的には、会話の熱量が高くない状態のときは、ロボットは視線を逸らすなどの態度を生成するが、会話へ熱が入ったときには、アイコンタクトを取りながら積極的な傾聴を行う。とくに、音声入力のリズムを解析して、うなずき動作や相槌を生成するだけでなく、瞳孔を1.5倍程度に拡大して、あたかも会話に興味があるような傾聴態度を生成する。この積極的な傾聴態度により、話し手は思わず話し続けてしまい、会話へ惹きつけられるような感覚が得られるという。

 また、認知症や孤独化を予防する観点から、高齢者だけでなく、独居している人が地域コミュニティへつながる仕組みとして、発話行為を促進させることができると期待される。ストレスを抱えるのではなく、言語化して外部へ放出することがストレス緩和に良い影響がある以上、コミュニケーションがもたらす心理的効果を最大限に活用する仕組みとして、介護福祉や接客業、教育・エンタテインメントなどへの幅広い応用展開が期待されるという。

 Pipiloidは最先端のロボット技術の一つとして、日本科学未来館の常設展示「ハロー!ロボット」の展示物として2023年11月22日から展示されている。この展示では、Pipiloidとの対話ができるため、コミュニケーションの不思議さや、傾聴態度の嬉しさを体験してもらいたい、としている。

《中川和佳》

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