【高校受験】「地方公立から世界へ」全国募集のケンブリッジ国際認定校が新潟に開校予定

 2027年開校予定の新潟県立国際フロンティア高等学校が、公立高校初のケンブリッジ国際教育プログラム導入を目指す。新潟県教育庁高等学校教育課 課長の今井亮二氏と、同課将来構想推進室 副参事(指導主事)の内川未奈希氏に、国際フロンティア高校を設置するねらいを聞いた。

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新潟県教育庁高等学校教育課 課長の今井亮二氏と、同課将来構想推進室 副参事(指導主事)の内川未奈希氏
  • 新潟県教育庁高等学校教育課 課長の今井亮二氏と、同課将来構想推進室 副参事(指導主事)の内川未奈希氏
  • 新潟県教育庁高等学校教育課 課長 今井亮二氏
  • 新潟県教育庁高等学校教育課 将来構想推進室 副参事(指導主事)内川未奈希氏
  • 国際フロンティア高校のカリキュラム(2026年6月時点)
  • 現在改修工事中の寮のイメージ(左:男子寮、右:女子寮)
  • 国際フロンティア高校への出願方法
  • 国際フロンティア高校 入学者選抜における英語資格による加点制度

 「高校から世界水準の学びに触れさせたい」「安心できる環境で挑戦させたい」――そんな保護者にとってこれ以上ない選択肢が今、加わろうとしている。

 2027年4月開校予定の新潟県立国際フロンティア高等学校(以下、国際フロンティア高校)は、公立高校として全国初となるケンブリッジ国際教育プログラムの導入を目指している。令和8年度中に寮を整備するため県外からの入学も可能で、3年間を通して“世界基準で思考し、語り、挑む力”を育てる。なぜ今、新潟でこの挑戦が始まるのか。新潟県教育庁高等学校教育課 課長の今井亮二氏と、同課将来構想推進室 副参事(指導主事)の内川未奈希氏にねらいと入学者選抜などについて聞いた。

「進学校」から「世界基準校」へ

--国際情報高校を国際フロンティア高校として刷新する背景を教えてください。

今井氏:新潟県はかつて大学進学率の向上が大きな課題でした。そのため平成4年に進学指導に特化した新潟県立国際情報高等学校(以下、国際情報高校)を開校し、国公立大学や難関私立大学、医学部医学科などに合格実績を積み重ねてきました。平成25年度には海外大学進学コースを設け、北米やオーストラリア、ヨーロッパなど海外大学進学者も数多く輩出し、本県のグローバル教育と進学指導を牽引する役割を担ってきました。

 一方で少子化が進み、社会構造が急速に変化する中で、高校教育に求められるものも変わってきました。単に知識を得る学びだけではなく、自ら問いを立て、他者と議論しながら新しい価値を生み出していく探究型の学びが重要になってきました。こうした背景から、新潟県は令和7年3月に新たな「県立高校の将来構想」を策定し、少子化が進む中にあっても、子供たちに質の高い教育環境を提供し、選ばれる学校づくりをすすめることとしました。その中で、国際情報高校がこれまで培ってきた進学指導や海外大学進学指導のノウハウを生かしながら、国際教育プログラムを導入するとともに、全日制単位制高校として学科のあり方や教育内容を一新することとしました。

新潟県教育庁高等学校教育課 課長 今井亮二氏

内川氏:南魚沼市には世界60か国以上から学生が集まる国際大学があり、国際色が豊かな地域として地元に根付いています。上越新幹線の浦佐駅が最寄り駅なので関東圏からのアクセスも良く、総合的に考え、世界基準の学びを推進する新しい学校づくりに適している地だと考えています。

--ケンブリッジ国際教育プログラム(以下、ケンブリッジ)を選択した理由を教えてください。

今井氏:現在、日本でケンブリッジ国際教育に認定されているのは私立高校やインターナショナルスクールのみで、公立高校ではまだ導入事例がありません。全国初の導入は大きな特色になりますし、科目単位で段階的に導入することができ、公立高校の制度とも親和性があります。また、教材やシラバスが英語のため、数学や理科、地理など英語以外の教科を英語で学ぶ必然性が生まれます。

内川氏:国際バカロレア(以下、IB)と比較されることがありますが、IBは幅広い教科を横断的に学ぶ総合型、ケンブリッジは関心のある教科を選び、専門性を深める選択型と言えます。3~4科目を深く学べる点や、科目の多様さも魅力です。

 IBとケンブリッジはいずれも約160か国に広がっていますが、IBの導入校数が世界で5,800校ほどあるのに対して、ケンブリッジは世界で1万校を超えています。

海外大も国内大も見据えた進路設計が可能に

--新しい高校ではどのようなカリキュラムになるのでしょうか。

今井氏:募集は2学級計80人で、全員がケンブリッジの学びを体験します。1年生では数学と英語で、英語によるケンブリッジIGCSE(中高生向けの国際的な教育資格。以下、IGCSE)の授業を履修します。2年生からは海外大学進学志望者と国内大学進学志望者に分かれます。80人のうち15人ほどが海外大学を目指す想定です。

内川氏:1年生のIGCSEの授業は少人数で行います。まず、教科内容と言語を同時に学ぶCLIL(内容言語統合型学習)という方法で、公式や概念をやさしい英語で理解し、専門性につなげます。ケンブリッジの授業は、答えが1つに限られないオープンクエスチョンを起点に考えを深める点が特徴です。生徒は自分の考えをもち、他者と議論し、根拠をもって表現する実践を重ねます。問い、考え、発信する学びを日常化するため、今年度は外国人教員の任用準備を進め、次年度以降は日本人教員と協働しながら授業づくりを進めていくこととしています。

 2年生からは、海外大学進学希望者はケンブリッジ国際ASレベル(Advance Subsidiaryの略。Aレベルに進む前段階の資格)で最大4科目を選択します。そのうち国際フロンティア高校で必修としているのはGlobal Perspectives & Researchで、グローバルな課題を多様な視点から分析・考察し、リサーチ、批判的思考、コミュニケーション、協働力などの21世紀型スキルを育成するとともに、自ら設定した研究課題について研究レポートを作成する科目です。また数学、地理、物理、化学、生物、English General Paper(幅広い社会課題について英語による読解・論述力を高めるとともに、論理的な議論の構築、時事問題への理解、批判的思考力、自分と他者の視点を明確に表現・考察する力を養う科目)から3科目選びます。この中から3年生では引き続き3科目を履修し、ケンブリッジ国際Aレベル(Advanced Levelの略。大学出願時等に学力を証明する教育資格)の試験に挑みます。

新潟県教育庁高等学校教育課 将来構想推進室 副参事(指導主事)内川未奈希氏

今井氏:入学要件は各大学によって異なるものの、Aレベルを3科目以上取得できれば、海外大学進学の選択肢が広がります。国内大学を目指す生徒には、ケンブリッジで学んだ経験を特色として、総合型選抜や学校推薦型選抜につなげていきます。

内川氏:ケンブリッジにはCambridge Pathway(ケンブリッジ国際教育課程)という世界共通のカリキュラム体系があり、3歳から19歳まで学びを段階的に積み上げ、大学進学や社会で必要な力を養成しています。本校ではこの仕組みを取り入れ、生徒の進路に応じた3つのパスを設置。海外大学進学を目指す「ケンブリッジパス」に加え、国内大学進学に向けた理系の「データサイエンスパス」、文系の「コミュニケーションパス」を用意し、Drama(演劇)なども交えた文理横断の学びを展開します。

国際フロンティア高校のカリキュラム(2026年6月時点)

 ケンブリッジの国際教育資格認定試験は記述問題が多く、資料を読み取り、複数の知識を組み合わせ、自分とは異なる立場から表現する力が求められます。知識だけでなく、他者の視点で考え、アウトプットする力が問われる点が特徴です。

--海外大学進学だけでなく、国内大学の総合型選抜でも評価される力が自然と身に付きますね。

今井氏:東京大学や東北大学などには、ケンブリッジ国際Aレベル資格を評価する入試枠を設置する学科があります。そのような資格を特定した枠がない場合でも、ケンブリッジのカリキュラムで培われる批判的思考力や英語での論述力、探究学習での実績は総合型選抜で評価される可能性が充分にあると考えています。

内川氏:進路指導は海外・国内を問わず、生徒の希望に応じて行います。総合型選抜も見据え、1年生からの探究の深め方を重視し、外部人材とも連携しながらカリキュラムや授業の開発を進めていきます。

海外大学に進学した卒業生の伴走・国際大学との連携・寮生活

--海外大進学を希望する生徒のサポート体制について教えてください。

内川氏:国際情報高校には平成25年度から令和6年度まで海外大学進学コースが設置されており、世界8か国160以上の大学への合格実績があります。そのノウハウは国際フロンティア高校に引き継がれるほか、海外大学に進学した卒業生等が、自らの経験を生かし、海外進学に関心のある中高生への助言や情報提供を行っています。海外大学進学は大学ごとに出願書類やスケジュールが異なるため、年齢の近い経験者から助言が得られる環境は非常に心強いと感じています。

--県外や遠方からの生徒を受け入れる県立寮の準備も進んでいるそうですね。

今井氏:寮は、今年度中に男女1棟ずつ整備予定です。5月に実施した「地域みらい留学」(都道府県の枠を越えて日本各地の公立高校に入学する国内留学プログラム)のオンライン説明会には、当初の定員数を上回る申込みがあり、参加枠を拡大して実施しました。

現在改修工事中の寮のイメージ(左:男子寮、右:女子寮)/画像出典:新潟県教育委員会

--近隣の国際大学との連携について教えてください。

内川氏:国際大学は、60か国以上から学生が集まり、すべての授業を英語で行う大学院大学で、高度な教育・研究を提供しています。現在も国際情報高校とは、学校行事や部活動、授業、探究学習などで交流し、生徒が日常的に多様な文化に触れています。授業では南魚沼の課題を英語で国際大学の学生に発表する取組みも行っています。こうした環境は国際フロンティア高校にも引き継がれ、さらに寮でも地域の人々を混じえた交流の機会を創ることで、ケンブリッジ国際の学びを深める「グローバル・コモンズ」のような場にしたいと考えています。

今井氏:公立高校ならではの強みは、私立やインターナショナルスクールに比べて費用負担を抑えられる点です。海外研修は予定していますが、費用面などで参加が難しい生徒にも、国際大学との協働プログラムなど、国内にいながら国際的な学びに触れられる機会を用意しています。

挑戦する意欲を見る入試

--入学者選抜について教えてください。

今井氏:一般選抜で、募集定員80人のうち40人を「学校設定枠」で選抜します。学校設定枠とは、英語での学びへの意欲や探究的な姿勢を重視する特別枠で、希望者は一般枠と併願して同一校に出願できます。残りの枠は一般枠での合格となります。

内川氏:学校設定枠は、調査書・学力検査ともに英語と数学を2倍に傾斜配点する予定です。加えて、英語と日本語による集団面接を実施し、英語力そのものだけでなく、英語で学ぶ意欲や協働する力、自分の考えを論理的に伝える力を評価します。

国際フロンティア高校への出願方法

内川氏:学校設定枠については、英語資格をCEFR(外国語の習熟度を示す国際指標)の段階に応じて加点します。実用英語技能検定(英検)でいえば、準2級のうちCEFR A2相当で50点、2級のうちB1相当で100点、準1級のうちB2相当で150点です。文部科学省のCEFR対照表に基づいて判定します。

国際フロンティア高校 入学者選抜における英語資格による加点制度

--入学の時点で英語力に不安がある生徒への支援はどのように考えていますか。

内川氏:大切にしたいのは、英語で学ぶ意欲を入学後ももち続けてもらうことです。現在の国際情報高校で培ってきた丁寧な指導のノウハウを引き継ぎ、職員による個別指導や質問対応を通じて、ひとりひとりの状況に応じた支援を行っていきます。また、職員による指導に加え、学習用端末も活用し、多読教材やスピーキング練習、英語学習アプリなどを組み合わせながら、個々の課題に応じて英語力を伸ばせる環境を整えてまいりますので、安心していただきたいと考えています。

ローカルな課題に、グローバルな視点で挑む

--国際フロンティア高校に入学してほしい生徒像や卒業後に期待する姿を教えてください。

今井氏:「フロンティア」という校名には、新しい学びを切り拓くという思いを込めています。新たな挑戦に意欲をもつ生徒にぜひ入学してほしいです。育てたいのは、世界のどこでも通用する力。英語力や発信力に加え、自ら問いを立て、議論を通じて課題解決につなげる力を育てたいですね。

内川氏:スクール・ミッション「世界水準の学びをとおして、より良い未来を切り拓くグローバル人材を育てる学校」に共感する皆さんに入学してもらえたらと思います。そして卒業後は、世界や国内各地で活躍しながらも、地域を思い、支える存在になってほしいと願っています。

国際フロンティア高校 特別アドバイザー
ディー・エヌ・エー 代表取締役社長兼CEO 南場智子さんからのメッセージ


 「地方創生」という言葉がありますが、地方ごとに固有の課題があります。新潟県にも新潟県ならではの課題があることでしょう。しかし、その解決に向けてはローカルな視点だけではなく、世界中の英知を集め、世界中の人々の情熱をもって、その地の課題解決に当たるーそうした姿勢がますます重要になってくると考えています。新潟県から世界に通用するリーダーがたくさん輩出されることを心から願っております。この動きが本格的な、そして新潟県を変えるような大きなうねりにつながっていきますよう、私も側面から応援してまいります。


 公立高校の枠組みで世界水準の学びを届ける――国際フロンティア高校の挑戦は、日本の高校教育に新たな可能性を示している。探究と対話を通じて、地域に根ざしながら世界へ踏み出す生徒がここからどう育っていくのか。新潟発の新たな一歩に大いに期待したい。


国際フロンティア高等学校
新潟県教育委員会note
令和7年9月20日に行われた国際フロンティア高校キックオフイベントのようす
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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