中学受験に特化し、生徒一人ひとりに合わせたオーダーメイドの授業で難関校に合格者を多数送り出してきた個別指導のSS-1。代表の小川大介氏は、著書『「小川式「声かけ」メソッド』で、親から子への「声かけ」の内容を少し工夫するだけで子どもの学力をぐんぐん伸ばす独自のメソッドを紹介している。子どもがやる気を出すために、どのような声かけをすればいいのか。小川大介氏に、そのコツを聞いた。 子どものタイプ編、テスト編、夏休み編の3回で紹介する。--6年生のお子さんは、これから1回1回のテストの重みが増していきます。テストの分析に対する親の受け取り方や声かけで気をつける点を教えてください。 テストについてご理解していただきたいのは、テストは当日ではなく、テスト前から始まっているということ。テストで結果を出すためには、その前に必ずテストのシミュレーションが行われなければなりません。 たとえば「今度受けるテストは、だいたいこれくらいの問題量で、自分は算数だったら、大問題の1番、2番は15分くらいでできるけど、4番、5番が怪しいんだよね」「今の調子なら110点は取れると思うけど、125点を超えるかどうかは、場合の数の問題が出るかどうかにかかっているな」というように。 点数を取っている子というのは、非常に明確にテストの映像が浮かんでいます。何が出てくるかわからずにドキドキしているような子は、偏差値60を超えられません。 過去問研究とは、そのためにあります。問題の知識を増やすための研究ではなくて、自分の研究をしているのです。勉強がちゃんとできる子は、自分に何ができるかを認識している子です。 テストの後も重要です。 SS-1では、テストのあと、今日のテストの直前ってどんなこと考えてた? 最初どの問題からやり始めた? それはなぜ? 途中で時計が気になったのって何分くらい? と起きたことを聴いていく。聴いておかないとすぐ忘れてしまうようなことですが、それを言葉にすることによって、自分のことを理解してもらいたいのです。 これによって、たとえば、「あと15分になって、時間が足りないという不安感が先走って、解ける問題を落としてしまった」というようなことを認識できる。それに対して、どうやったら乗り越えられるかを研究します。普通のスピードでやったら、どのくらい空白の問題ができるかを確かめる。残り15分で焦るのなら、それを安定させるためのメンタルトレーニングをちゃんとやる。そういう対策を導くために振り返りをするのです。--テストが終わると、つい「どうだった?」と聞いてしまいますが、それはどうなのですか? テストが終わったあと、お子さんに「声かけ」をするなら、「今日のテストどうだった?」ではなく、「準備しておいたことのどれくらいできたの?」です。 なぜなら、できたことから始めないと伸びないからです。できたことを確認して、「あれとあれはうまくできたよ、今回うまくいかなかったことでも、これは本当はなんとかなりそうだったよ、これはちょっと難しかったよ」と問題を分ける。この作業によって、子どもが今の力でできることをまず確認し、これができるんだったら、次のテストにつながる問題もやってみようと促すといいです。--子どもが、あまりできなかったと落ち込んで帰ってきたときはどうしたらいいでしょうか? この場合、「(1)頑張ったのにできなかったとき」と「(2)頑張らなかったからできなかったとき」の2通りがあります。 (2)の場合、親は腹が立つので「勉強しなかったのだから当たり前だ!」と言ってしまう。こう言われると、子どもは反省するより先に、「どうせ無理なんだ」とあきらめてしまう。これは一番よくないことです。 こういう場合は、まず一緒に、「がっかりだったね」と悲しんであげること。一緒に落ち込んであげることで、お子さんに落ち着きが生まれます。 落ち着いたところで、「1つ、思うことを言っていいかな。実はパパ、君が取れないこと知ってたんだよね。お前はどうだ? 本当に今日取れないと思ってなかったの? それともなんとかなると思ってたの?」と聴いてみる。子どもも多分、自分が勉強をしなかったからだということは知っているはずです。終わったテストを反省しても意味がありません。失敗を通じて、テスト前の学習の仕方をどう変えるかを教えてあげないといけません。--「バッチリ!」と上機嫌で帰ってきた場合はどうですか? こういう場合は基本的に危ないのです。うまくいった問題だけが意識に残っていて、危ない問題のことを冷静にとらえられていないからです。 人は、嫌な出来事があると、防衛機能が働いて、そのことを忘れるようにできています。だから、うまくいったことだけ覚えておいて、ほかの危ないところは忘れてしまう。無意識の働きですから、お子さんは自分では気づいていない。 ですから、お子さんが「バッチリ!」と言ったときは、親御さんは、「じゃあどれがうまくいったか一緒に見直そうよ」と冷静に確認をしてあげてください。間違ったことを発見するためではなく、ちゃんとできたことを見つけてしっかりほめてほしいのです。そのうえで、できていなかったところを確認すれば、お子さんも冷静に失敗したことを受け止めることができます。 ここでお願いしたいのは「どうして間違えたんだ」と絶対に言わないこと。その代わりに、「本当はできる問題なのに、バツになるなんておかしいよね、何があったんだろうね」と言ってほしいのです。自分で原因に気づかせることが大切です。 簡単そうに見えたから、いつもなら書く途中式を書かなかったとか、前にやった問題と同じだと思ってちゃんと問題文を読まなかったとか、たいてい理由があります。自分で気づかないと直りません。