【入試方式と就職1】「AO入試進学者は内定が取れない」は本当か

 2013年3月15日、教育界を驚かすニュースが流れました。「AO入試・推薦入試を導入していない数少ない大学」の象徴的存在であった東京大学が、後期試験の後継として推薦入試の正式導入を発表したのです。

教育・受験 受験
厚生労働省指定キャリアコンサルタントのクロイワ正一氏
  • 厚生労働省指定キャリアコンサルタントのクロイワ正一氏
 2013年3月15日、教育界を驚かすニュースが流れました。「AO入試・推薦入試を導入していない数少ない大学」の象徴的存在であった東京大学が、後期試験の後継として推薦入試の正式導入を発表したのです。

 私が大学入試の多様化を察知し、「推薦・AO入試!超(ULTRA)マニュアル」(KKロングセラーズ、1999)という本を著したのは、さかのぼること14年前でした。その後もAO入試や推薦入試に関する多くの参考書、映像教材などの制作に携わってきたせいか、高校や予備校・塾、または大学合同説明会の主催者から、AO・推薦入試の対策講座やその指導法に関する教員研修の依頼を受けることが年100回ほどあります。

 しかし、近年そうした機会で不可思議な質問を受けることも多くなりました。「私立大学では入学者の半分以上がAO入試、推薦入試など、特別入試経由になった」といった報道が新聞紙面を飾り始めた2008年ごろからでしょうか。高校生、先生、保護者の方々から「AO入試や推薦入試で大学に入ると就職に不利なのですか」、あるいは「AO・推薦で大学に入ると内定が取れないって本当ですか」などと問われる回数が増えてきたのです。

 なぜそのような質問をするのか、理由を問うと、多くの方からこうした答えが返ってきます。「AO入試や推薦入試を経由した進学者は、一般入試対策のような勉強をしていないから、学力レベルが低い。それゆえ、企業に倦厭される」と。

 この、あまりにも乱暴かつ稚拙なロジックに対して、大学入試だけでなく大学生の就職活動支援や企業の採用面接官トレーニングにも携わっている私は、当初は失笑しながら、こう対応していました。「まともな企業の採用活動では、そのような履歴を問う余裕はありませんし、逆にそんな馬鹿馬鹿しい採用基準をもつ会社に入らない方がいいでしょう」と。

 そう即答できた背景には、20数年間、さまざまな企業の人材採用・育成の支援に従事してきた経験から得た採用基準がありました。「企業が採用すべき学生を評価する基準は、そのようなモノサシではない。まして21世紀社会では、なおさらそうである」という確信があったのです。

 次回は、「AO・推薦入試経由の学生が就職活動で不利」という発言の危うさを、論理的かつ実証的に示します。

クロイワ正一
<著者紹介>クロイワ正一
 厚生労働省指定キャリアコンサルタント(Career Development Adviser)。ヘルメスゼミ代表および一般社団法人AO入試振興協会・理事長。30年以上、塾・予備校・通信教育などの教育産業に従事し、「職業人生を見据えた進路選択」についてアドバイスを展開している。中学・高校・大学、塾・予備校などでの年間講演回数は100回以上。「クロイワの楽勝!小論文」(KKロングセラーズ)、「志望理由書の模範的書き方」「面接試験での模範的答え方」「複数内定者に学ぶ就活勝者のプレゼン」(以上、ライオン社)、「電光石火 AO・推薦入試」(ブックマン社)など著書も多数。一橋大学・同大学院修了(経営学修士)。
《編集部》

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