【NEE2013】大学でのグローバル人材育成とは…横国・昭和女大・明大の取り組み

 6月6日から東京会場で開催されているNew Education Expo 2013(NEE)では、教育ICT機器などの展示のほか、先進的な教育の実践事例や未来の展望を模索するセミナーが開催されている。1日目の6日は、大学での教育に関連したセミナーが中心だった。

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横浜国立大学、鈴木氏
  • 横浜国立大学、鈴木氏
  • 横浜国立大学、鈴木雅久氏
  • 国際社会における最近の日本、鈴木氏
  • 本当の意味での国際社会・グローバル社会への参加とは、鈴木氏
  • グローバル・国際的な環境下の表現力とは、鈴木氏
  • グローバル人材育成の資質確保、鈴木氏
  • 昭和女子大学、山崎真伸氏
  • 昭和女子大学の目指すグローバル人材像、山崎氏
 昭和女大の山崎真伸氏は、グローバル人材育成事業の採択を受けた同校の実践的な取り組みを紹介した。昭和女大は、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などがあるボストンにもキャンパスを持つなど、グローバル人材育成に向けたインフラが整っていることが特徴だ。

 2012年には、英語コミュニケーション学科と国際学科の学生を中心に、長期短期合わせて年間約400名の学生がボストン校で学んだと山崎氏は話す。また、アジアでの協定校である上海交通大学やソウル女子大学などにも同校の学生が多数留学しているという。

 同校が描くグローバル人材に必要なのは、異なる人・価値・文化・物を結びつける力(Connect)、新しい価値や文化を創造する力(Create)、そしてグローバルな環境で、文化的背景の異なる他社と恊働・協調する力(Collaborate)の3つ「C」だと語る。これらの能力を育成するため、昭和女大では、東京キャンパスとボストンキャンパスの連携および米国での協力校との連携を促すという。

 国を跨ぐ複数のキャンパスや大学での単位取得やカリキュラムを実現にすることで、同校がすでに持つ国際的な教育インフラを最大限にいかそうという取り組みが、今後どのように大学生を育成していくのか、興味深い内容だった。

 明大の高木直二氏は、大学における英語教育という視点からグローバル人材教育の在り方について発表。同氏が早稲田大学に勤務していたころの体験も含め、大学という組織の中で可能な英語教育と、今後組織に必要な対策を表面かした。

 高木氏の発表でもっとも興味深かったのは、大学における英語教育の課題だ。大学は、知力の鍛錬・先進的な文化の学び・実践に備えた潜在力の育成を目的としており、大学での英語教育は訳読で十分という認識があるという。実践的な英語でのコミュニケーション能力は大学卒業後の課題であり、大学は基礎的な潜在力の育成を図るための組織という見解が強いようだ。社会が求める人材の育成は、そもそも大学が意図としているところではないという意識が少なからずあると高木氏は話す。

 大学は、個人研究者の集団組織だ。大学の教員は、小中学校や高校と異なり教員免許を取得必要がなく、研究において成果を上げることが大学側から求められる。だからこそ、実用英語を教える専門教師が不在だと高木氏は話す。大学に在籍する英語の教員は文学者や言語学者であり、語学教師ではない。また、個人研究者の集合体である大学では、組織としてひとつのプロジェクトを運営する経験が不足しているとも高木氏はいう。では、大学が学生に何を求め、社会は何を大学に求めることができるのだろうか。多くの関係者にとって今後の課題が表面化した貴重な講演だっただろう。

 高木氏が懸念する大学の組織的な課題を新たなプロジェクトを生み出すことで解決しようと試みているのが横国の鈴木氏だろう。その一方で、昭和女子大の山崎氏の発表は、与えられた環境の中で、もっとも学生に効果的な学習環境を提供しようという試みだ。必要なのは、現状を表面化し、課題を浮き彫りにする高木氏のスキル、現状を最適化する山崎氏の試み、そして長期的な対策を打ち出す鈴木氏すべての能力ではないだろうか。
《湯浅大資》

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