【NEE2019】筑附小のICT活用…進化する読解と算数×プログラミング授業

 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」東京会場最終日の2019年6月8日、筑波大附属小学校による公開授業が行われた。授業は4年生の国語と5年生の算数で、ICT環境の中で児童たちが理解を進めるプロセスを披露した。

教育ICT 先生
「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
  • 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
  • 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
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  • 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
  • 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」公開授業を振り返るセミナー「教科目標の観点、ICT活用の観点から公開授業を振り返る」のようす
 「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」東京会場最終日の2019年6月8日、筑波大附属小学校による公開授業が行われた。授業は4年生の国語と5年生の算数で、ICT環境の中で児童たちが理解を進めるプロセスを披露。会場は、タブレット端末とマルチスクリーンを活用した授業を体感できる空間となった。

 授業の時間は、国語と算数を合わせて1時間50分。国語と算数の間に10分ほどの休憩を挟み、40名の男女児童が各自のタブレットを活用しながらの授業となった。担当したのは、国語が筑波大学附属小学校の青山由紀教諭、算数が同小学校の盛山隆雄教諭だ。

読解のプロセスを可視化する「国語」の進化系



 「これまでにどんな謎がでてきていたかな?」という呼びかけから始まった授業では、「ウナギのなぞを追って」というウナギの調査報告文から、仮説と検証の叙述を読み解いていく。タブレットにインストールされたデジタル教科書(光村図書)を使用する授業の形式は、従来の紙の教科書を使用した場合と大きな違いはないが、ICTによって読解のプロセスを可視化することで、子どもたちの理解を深めることができる。

 本来、人が「読む」過程は目に見えない。すなわち「なぜわかるのか」が「わからない」ため、難解な文章に歯が立たなくなってしまうという。活用できる読解力を付けるためには、読んで理解するそのプロセスを共有することが求められる。

 「事実」と「そこから考えたこと」を区別して、それぞれをマーカーで色分けするよう指示された児童たちがマーカーを引いた箇所は、教員の手元で直ぐに確認できる。紙の教科書の場合、一度引いたマーカーを消すことができないが、タブレットなら何度でもやり直せる。また、テーマごとに異なるマーキングをしたい場合、再びまっさらな状態から線を引き、その両方の教科書を保存することができる。1人に1冊の紙の教科書ではできない学習法だ。「マイ黒板」という機能を使うと、文中の表現や図を自由に切り貼りして整理することが容易にでき、思考を可視化することの大きな助けとなっているようだった。

「NNEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
 児童が前に出て大画面ディスプレイを指しながら自分の考えを発表する場面では、言葉に詰まってしまった児童がいたが、大画面のディスプレイに映し出されていたタブレットの持ち主である児童が「ここじゃない?」と、画面上で助け舟を出していた。タイミングよく児童が発表に参加するというやりとりから、児童たちが自ら連体感や参加意識を高め合っているように感じられた。

図形をプログラミングで描く「算数」から論理的思考力を磨く



 算数の授業では、新学習指導要領に明記されている、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行うことを踏まえた、ICTありきの新しい取組みが見られた。正多角形の学習に、プログラミング教育を取り入れた内容だ。画面上の自動車に「3前に進む、60度左に回転する、この作業を3回繰り返す」という指令を出すことで図形を描く。

「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
 「正三角形を描いてみよう」というお題に想像以上に苦戦する児童たち。正三角形の内角の大きさである60度を入力すると、自動車の軌道がなす角は上の写真のように120度になってしまう。どうしたら自動車は思いどおりの軌道を描くのか? 失敗しながら繰り返しプログラミングすることで、論理的思考力が試されていた

 三角形が無事に指令どおりに描けると、今度は正方形、正五角形、正六角形ならどうか、と児童自ら応用をはじめる児童たち。仕組みがわかってくれば、創意をくすぐる学習なのである。

「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」筑波大附属小学校による公開授業のようす
 丸、三角、四角、…。積み木やお絵かきの時間など、幼いころから馴染んできた形。児童たちは、鉛筆でなら簡単に三角形を描けるだろう。しかし今回は感覚ではなく「論理」で動くプログラミングだからこその難しさを学習していた。

 三角形を描くとき、その姿のイメージを模倣して描く。分度器や定規を使っても、その域を出ない。知っている「三角」の姿の似顔絵を描いている。幾何学の学習は芸術と違い、どんな線、角で成り立つのかを体系的に理解する必要がある。鉛筆を持って描くのと、プログラミングすることの決定的な違いがそこにあり、児童がこの授業で出会った「三角」は、昨日までよく知っていた「さんかく」とは違うものだった。プログラミングと図形の学習の相互作用が期待できる内容だった。

教える側に理解と愛着を



 公開授業を振り返るセミナー「教科目標の観点、ICT活用の観点から公開授業を振り返る」で、筑波大附属小の前校長 田中博史氏は「ICT教育のブームはここ数十年、何度も波が来ては消えている」とむず痒い思いを語った。長年現場の教育に従事してきた同氏が何度も述べた「変革は生徒のためでなければならない」という言葉には重みがあった。

「NEW EDUCATION EXPO 2019(NEE2019)」公開授業を振り返るセミナー「教科目標の観点、ICT活用の観点から公開授業を振り返る」のようす
 フランクな議論が交わされた中で、算数を担当した盛山教諭が思わず「私はあまりプログラミングが好きではないんです(笑)」とこぼす一幕も。田中氏は「タブレット、プログラミングの魅力をまず教員が理解しなければならないだろう」と語り、ICTの利便性に期待が寄せられる中で、子どもたちにその面白さを伝えるには、教える側の理解と愛着がなければならないことを来場の教員を含む教育関係者に伝えていた。
《押山麟太郎》

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