安全な自転車利用を促す走行環境整備やコミュニティサイクル…さいたま市の取組み

 自転車利用者を取り巻く環境が大きく変化している。道路交通法の改定、子どもが加害者となる自転車事故に伴う保護者の賠償責任など、日常的に自転車を利用する子どもたちやその保護者に求められるルール知識や対応は難易度を高めている。

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さいたま市都市局 都市計画部の田口浩一氏
  • さいたま市都市局 都市計画部の田口浩一氏
  • さいたま市都市局 都市計画部の田口浩一氏
  • 埼大通りの自転車通行帯
  • 埼大通りの自転車通行帯
  • 通学中の高校生が多く利用
  • コミュニティサイクル
  • Suicaで自転車を借りる
  • コミュニティサイクルの精算機
 自転車利用者を取り巻く環境が大きく変化している。道路交通法の改定、子どもが加害者となる自転車事故にともなう保護者の賠償責任など、日常的に自転車を利用する子どもたちやその保護者に求められるルール知識や対応は、難易度を高めている。

 また、自転車利用者だけでなく、歩行者や車にとっても安全な道路整備や、自転車を安全に利用するための教育や啓蒙活動が各自治体に求められている。自転車保有率が全国でもトップクラスといわれる埼玉県において先進的な自転車政策に取り組むさいたま市では、「はしる」「とめる」「まもる」を3つの柱とした「さいたま市自転車ネットワーク構想」を策定中だという。

 さいたま市都市局 都市計画部の田口浩一氏によると、自転車走行環境整備をはじめとした「はしる」、自転車の駐輪対策などを中心とした「とめる」、自転車のルールを徹底する「まもる」は、自転車利用者に安心・安全を与えるとともに、市内の放置自転車数を削減するものでもあると話す。

 走行環境整備面では、道路交通法の改定によって定められた「キープレフト」の原則を安全に実施するため、車道の左側に自転車専用路線を設けているという。特に多くの高校生や大学生などが自転車通学に利用する埼大通りには、車道の両脇に自転車通行帯が設けられており、歩道ではなく自転車通行帯を走る自転車が目立った。子どもたちが毎日自転車で通う通学路だけに、このように安心・安全に走行できる環境は必要だ。

 さいたま市は、自転車ルールの徹底においても独自の試みを行っている。田口氏によると、毎年1度開催されるイベント「カーフリーデー」では、車道を使った自転車の乗り方教室が実施されるという。また、小学生を対象に「子ども自転車運転免許制度」を設け、子どもたちが自主的にルールを学ぶことができる環境も整えている。

 さらに、自転車の駐輪対策のひとつとして展開しているのが「さいたま市コミュニティサイクル」だ。大宮駅を中心とした半径約3km圏内に20か所の自転車ポートと200台の自転車を用意し、利用者は各ポートで自転車のレンタルや返却が行えるという交通システムだ。2013年5月に導入されたコミュニティサイクルは、ポート数と利用者を増やし続けており、2013年12月末までには全20ポートの設置を完了すると田口氏は話す。

 利用に必要なのはSuicaカードに加え、身分証明書またはSMSが受信できる携帯電話。身分証明書は学生証でも可能で、料金プランも月額の定期利用プランから時間単位の一時利用、1日単位のビジター利用の3種を提供。自転車本体も車輪が小さく、サドルの調整のみで年齢を問わず利用できるものを用意したという。

 コミュニティサイクルの安全面も考慮し、自転車の保険はTSマーク(赤色)の付帯保険を採用していると田口氏は話す。1台1台加入しているため、保険による安全な利用が仕組みとして整っているようだ。

 同市は、スポーツイベントとして世界でも名高いツールドフランスと連携したイベント「クリテリウム by ツールドフランス」を開催したりと、自転車の街として認知度を高めている。市内の鉄道利用者の15%が駅まで自転車を利用していることもあり、市民にとっては自転車が人々の日常生活において重要な交通手段となっているようだ。

 自転車利用者の安全を考慮した走行環境整備、「子ども自転車運転免許制度」などといった交通ルールの教育、コミュニティサイクルによる新たな交通スタイルの提供など、先進的な取組みを幅広く展開しているさいたま市。田口氏は、引き続き安全・安心な自転車の利用をサポートしていくとコメントした。

 今後は、これらの先進的な取組みを参考に、ほかの地域がどのように安全・安心を提供するか、さいたま市以外の自治体の試みにも注目が集まる。
《湯浅大資》

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