【大学と就職】「良い大学に入れば、良い会社に入れる」は嘘?

 昔から「良い大学に入れば、良い会社に入れる」と言われてきた。実際、いまでもそう考えている方は多いのではないだろうか。しかし、昨今の就職活動では、決して「良い大学に入れば、良い会社に入れる」わけではない。

教育・受験 その他
企業が採用基準で重視する項目
  • 企業が採用基準で重視する項目
  • 応募学生に対する企業の評価
  • 学生の自己評価
◆企業の求める「学力」は、中学高校レベルまで

 これらとは別に、学力を測る指標に「能力適性検査の結果」という評価項目がある。この回答率は34.9%、全体5位と高い位置にある。では、この「能力適性検査」とは、一体どのような力を測る検査なのか。

 検査の種類にもよるが、ここで求められるのは、主に「中学高校レベルの基礎的な国語力、計算力、英語力」である。よって、難易度も高くない。計算問題で言えば、基本的な食塩水の計算や割合の計算といった、小学生でも解けるものもある。実際、書店に並ぶ就職活動の筆記試験対策の本を覗いてもらうと、そのレベルがわかる。「入社試験でこのレベルか」と、少々驚かれるかもしれない。

◆ビジネスで求められるのは「正解がない問題を解決する力」

 それでは、一体なぜ企業は「学力」や「学歴」を求めていないのか。答えはいくつかあるが、一つには「ビジネスで必要なのは、正解がない問題を解決する力だから」というものがある。

 学校の勉強は、大抵「正解」がある。算数・数学がわかりやすいだろう。必ず一つの決まった答えがある。また、国語や歴史など、人によって解釈が分かれるものでも、学校では答えが用意されている。小説は「こう読むものだ」と、歴史は「こういうものだ」と教わる。つまり、教わった内容を「覚える」ことが勉強だと言える。

 一方、企業が求めているのは、「考える」力だ。ビジネスで直面する課題には、正解がない。ビジネスパーソンには、その「正解のない課題」をどう解決すれば良いのか、自分なりに考え抜く力が求められる。それは、学校で身につける力=習ったことを「覚える」力とは根本的に異なる。

 企業が求めている素養と、学校で身につく素養は根本的に異なる。よって、企業は学歴や学力を重視しない。逆に重視するのは、必要最低限のマナーや対人能力、入社意欲(熱意)、仕事で必須となる基本的な素養などだ。そして、こうした能力・素養は、机に向かって勉強しているだけでは決して身につかない。

 対して、アルバイトやサークル、ボランティアなどで直面する課題・問題は、「正解」がない。だからこそ、学生の多くは、アルバイトなどの経験を書類や面接でアピールする。企業も学業以外に幅広い経験を積んでいる学生に惹かれるが、その理由は、そうした学生は求める素養=「考える」力が身についている可能性が高いからだ。

 このように、良い大学を選んだからといって、必ずしも良い会社に入れるわけではない。それはデータによって、しっかり裏づけられている事実である。大学選びの際には、この事実をしっかり認識しておこう。

※余談になるが、就職活動において、真面目に勉強してこなかった学生がマイナス評価を受けることはあっても、真面目に勉強してきた学生がプラス評価を受けることはほとんどない。なぜなら、学生が勉強するのは当たり前のことだからだ。

<著者紹介>高嶌悠人(キャリアコンサルタント)
 慶應義塾大学法学部政治学科卒。株式会社電通を経て、教育系ベンチャー企業の株式会社ガクーに入社。そこでは新卒学生を対象とした就職活動支援スクールの運営に携わってきた。現在は独立し、高校や大学、塾、予備校などでキャリアをテーマとしたセミナーなどを開催したり、メディアにてキャリアに関するコラムなどを書いたりしながら情報発信している。著書に、「人気NO.1「内定塾」が教える エントリーシート 履歴書の書き方(高橋書店)」や、「これだけ覚える!一般常識&最新時事(高橋書店)」、「人気NO.1「内定塾」が教える!今までなかったエントリーシート 履歴書の文章講座」などがある。
《高嶌悠人》

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