【中学受験2016】サピックス小学部に聞く「どうなる?2016年中学入試」

 年々様変わりする中学受験。人気中学の受験日変更や、二次試験廃止などを受け、新たな受験計画と対策が必要だ。平成28(2016)年の中学受験における傾向と最新情報を、サピックス小学部などを運営する日本入試センターの教育事業本部本部長の広野雅明氏に聞いた。

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インタビューに応えるサピックス小学部 教育情報センター本部長の広野雅明氏
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◆独自のカリキュラムをもつ学校が人気

 近年人気が上昇している学校としては、まず大学進学実績が上昇している早稲田や海城、攻玉社、豊島岡女子、鴎友学園女子、吉祥女子、渋谷学園渋谷などがあげられる。中でも高校募集を停止し中高一貫教育を徹底した海城は、6年間の男子の成長を考慮し、医学部講座などを設けるなど、学校で大学受験に臨む姿勢をつくっている点も評価される。

 女子では、鴎友学園女子は多読を中心にしたオールイングリッシュの英語授業など、系統だった形でシラバスを作り指導を行っている。一方で、芸術科目や園芸といった伝統の部分などもサポートする姿勢が、保護者の共感を得られる要因といえる。

 一方で、インターナショナルコースを設けている広尾学園や三田国際なども特徴的だ。入学時に帰国子女を幅広く集め、教科に関わらず、すべて英語による授業を行う。国内だけでなく、海外への進学や、国際社会に通用する教育をサポートしている。

 また、新校舎建設を軸とした学校改革を期待する学校としては、本郷、成城学園、桐朋学園、山脇学園などがある。山脇学園は短大の跡地に新校舎を設立し、大学レベルの機材を備えた実験室を集めた「サイエンスアイランド」や、英語教育向けの「イングリッシュアイランド」を設置しているのも特色だ。成城学園は、学校の伝統を守りつつも、学校全体の改革が進めている。新たに、グローバル対応プログラムなどにも注力し、注目の高い学校のひとつだ。

 また、桐朋学園も「自主性を貴ぶ」スクールカラーが御三家に近く、新設校舎の最新施設、トータルで子どもの力を伸ばしてもらえるという期待値もあり、人気が高くなっている。

 大学の附属校化・係属校化による進路の安定への期待という点では、法政大学付属や、青山学院と係属化が発表された横浜英和、中大横浜、東洋大京北などがあげられる。

 千葉県では東葛飾高校が中高一貫校として東葛飾中学を新設したことで、「東葛飾高校」のブランド力から多くの受験生を集めることが予測される。埼玉県は、これまで1月10~11日に栄東と開智の受験日がほとんど一緒だったが、2016年の変更で2校の特別コースが受験しやすくなった。これにより、埼玉の1月10日の午後入試は受験生の動きが変わってきそうだ。

◆公立の中高一貫校にも注目

 男女別の人気の傾向を比較してみると、男子は女子ほど共学志向が強くない。また進学実績からみても、東大進学率の高い男子校が人気だ。その中で、本人の個性にあわせた学校を選択していくことになる。

 近年注目され始めた公立の中高一貫校は、一般的には公立のみを受験する生徒が多いが、サピックス生においては、難関私立と併願して両方受験するケースが多い。公立校の適性検査は特殊な入試ではなく4科目の基礎学力をベースにした思考力と記述力なので、難関私立校との併願も不可能ではない。今後の注目は神奈川県で、2017年に新設予定の横浜サイエンスフロンティアの付属中が登場すると、かなりの人気となることが予測される。

◆1月入試や午後入試で確実に合格

 1人あたりの平均出願数(出願しなくても願書だけは用意する分も含む)は、約7校。実際に受験する数では、平均して1人5校。2月1~3日で3校、ほかに1月や2月4日以降、午後入試を受けるパターンが多い。帰国生入試なども含めると、最多で15校というケースもある。

 受験校を決めるにあたって大切なことは、第一志望を明確にすることと家庭の方針をはっきり決めること。第一志望に入れなかった場合にどうするかを話し合い、併願校を決めていく。男子の場合は特に試験で緊張してしまう子どもが多いので、1月に「試し受験」をするのも効果的。無理なく通学できる圏内であれば、まず1月に埼玉県か千葉県で受験し、進学する権利をもっておくと親子とも気持ちが非常に楽になり、その後の受験に迎えられる。1月の受験が難しい場合、2月1~2日の午前・午後のいずれかで合格しておくようにするとよい。

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《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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