ボローニャ国際児童図書見本市、絵本原画展に日本人10名が入選

 イタリア・ボローニャで4月4日から7日まで、世界最大の児童書専門見本市「ボローニャ国際児童図書見本市(Bologna Children's Book Fair)」が開催された。総出展社数は74か国1,278社に及んだ。

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日本からの出版社の合同ブース
  • 日本からの出版社の合同ブース
  • 新設されたデジタル会場への順路(緑)
  • デジタル新設基調講演にMicrosoft、Google、Disneyの3社
  • ボローニャ国際絵本原画展
  • ボローニャ国際絵本原画展
  • 会場はお祭りの感
  • フェア内でのドイツ関連展示
  • 絵本原画展50年記念の回顧展では読み聞かせ風景も
◆2016年は絵本原画展開催50周年

 活況を呈するボローニャ国際児童図書見本市。では53回目の開催で注目の2点、「ボローニャ国際絵本原画展が50年の節目」と「デジタルエリア新設」のようすはどのようだったか。いよいよ、各所についてレポートしていこう。

・ボローニャ国際絵本原画展が開催50年

 「ボローニャ国際絵本原画展」は、1965年に会場内での催し物として始まった展覧会だ。スタート時には運営側が声をかけたプロ作家の作品展示にすぎなかったが、1976年に応募型の絵本原画展に転向。以来、このエキシビションへの自作展示を目指して世界各国から毎年応募があり、一握りの入選作家たちのイラストのみが掲示される栄えある場として知られる。今年は61か国、3,191タイトルが審査員たちの手元に集まり、77名のきわめて優れた作家たちが入選を果たした。うち10名が日本人であることは、特筆すべき事項だ。

 入選者の一人、稲葉朋子氏はこう語る。「はじめての入選です。もともと個展のために作っていた作品で、キャラクターなどのまわりに点線を配した描き方はその時のテーマの名残。『絵本っぽくないこと(=点線を含む描き方)』をやったのが、逆に受けたのでは」。彼女の作品はアクリル絵の具と万年筆で描かれ、発言のように、絵の中のキャラクターたちの周りを切り取り線が一周する独特のスタイルである。

 一方、別の入選者であるKotimi氏は、画面いっぱいに墨を使って描いた象の絵で通過。フランス在住の彼女の絵は、色を数色に限り、筆のかすれなども活かしたもの。筆者は特に「東洋的な匂い」がすると感じた。過去に彼らと同様、何度も本展への入選を果たし、今年の審査員としても活躍した絵本作家の三浦太郎氏は、今回の日本人イラストレーターの作品群について個別インタビューにこう答える。「ヨーロッパのイラストレーションに見られる『流行りの風邪』みたいなものがあまりなく、独特。島国というのも関係しているかもしれない。この空気を失わずにいてほしい」。

 ボローニャ国際絵本原画展での日本人の活躍は今年に限らず、筆者が日本で巡回展を見始めた10年以上前には少なくとも、すでに目立つ動きであったと記憶している。それには東京の板橋区立美術館が、この展示を毎年同館に持って来て、夏の1か月以上にわたり公開していることがおおいに関係していよう。なにしろ前述の三浦氏も、板橋で巡回展示を見たのが絵本作家を目指すきっかけだったという。板橋区立美術館での展覧会は38年の歴史を数え、作家志望者向けワークショップも同時開催する。多くの若手日本人作家が、ブックフェアへの自作入選に憧れる原点となっていることは、疑いようがない。

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《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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