ボローニャ国際児童図書見本市、絵本原画展に日本人10名が入選

 イタリア・ボローニャで4月4日から7日まで、世界最大の児童書専門見本市「ボローニャ国際児童図書見本市(Bologna Children's Book Fair)」が開催された。総出展社数は74か国1,278社に及んだ。

趣味・娯楽 その他
日本からの出版社の合同ブース
  • 日本からの出版社の合同ブース
  • 新設されたデジタル会場への順路(緑)
  • デジタル新設基調講演にMicrosoft、Google、Disneyの3社
  • ボローニャ国際絵本原画展
  • ボローニャ国際絵本原画展
  • 会場はお祭りの感
  • フェア内でのドイツ関連展示
  • 絵本原画展50年記念の回顧展では読み聞かせ風景も
◆デジタル専門エリアをフェア内に新設

・デジタルエリア「Hall32」の新設

 さて、もうひとつのポイントは、今年新設の「Hall32」のデジタル部門だ。昨年までは決まった専門エリアがなかったデジタル関連企業だが、出展ブースがひとところに集結。イタリアMicrosoftやGoogleら、デジタル業界を先導する大手企業も参加し、児童向けコンテンツの新たな1ページが開かれた。

 会場期間は出版部門より1日短く、4月6日まで。出版部門と同様、中央にイベントブースが置かれ、5年目を迎える「ボローニャデジタルラガッツィ賞」の受賞トークに始まり、各種テーマの催しが全日とぎれることなく行われた。出版部門のイベントではイラストレーターや編集者の公演・対談が多い印象だが、こちらでは議題を設定し、関係企業の代表たちがデータなどを元に議論をするタイプのショーが中心だった。

 また、今年はボローニャデジタルラガッツィ賞において、フィクション部門の最優秀賞を「Wuwu」(Step In Books、デンマーク)、ノンフィクション部門の最優秀賞を「Attributes by Math Doodles」(Carstens Studios、アメリカ)が受賞。11作品が選考を通過した。

 昨年のボローニャデジタルラガッツィ賞の最優秀作「My Very Hungry Caterpillar」の配信元で、今年もブース出展で参加したStory Toys社(アイルランド)のチーフプロダクトオフィサー、Emmet O'Neill氏は語る。「昨年受賞の当社作品が、エリック・カールの『はらぺこあおむし』という世界中ですでに知られたキャラクターを軸に据えていたのに対し、今年はオリジナルの作品が選ばれているのが印象的。新設されたHall32エリアに関しても、昨年とは雰囲気が雲泥の差だ。これまでは出版部門の一角にデジタル関連ブースがかたまっており、あちこちの出版社を回って疲れきった人が来る場所でしかなかった。しかしここには、本当に興味のある人が来てくれる。広さも昨年の4、5倍にはなっている感覚だ。年を追って、どんどん大きくなるだろう。」

 会場全体と比較すれば、新設エリアは今は確かに「出版メインの見本市でデジタルが小さくやっている」感が否めないかもしれない。しかし、だ。50年以上の歴史を持つこのブックフェアも、最初はフランクフルト見本市の片隅で絵本が細々と取引されているのを見て、立ち上げられたのである。さらに、今日の当フェアにおいて重要視される前述の国際絵本原画展も、始まりは今のような華々しさはなかったという。

 とすれば、大きな見本市の中に小さく生まれたデジタル部門が、これから飛躍的な発展を遂げる可能性は十分に期待できる。少なくとも筆者は、Hall32に吹く前向きで革新的な風に、実現可能性は高いと感じている。

参考文献「ボローニャ・ブックフェア物語」(市口桂子、白水社)
《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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