【発達障害1】子どもに見られる発達の偏り・遅れ…発達障害とは?4つの分類や定義を解説

 最近、耳にすることも多くなった「発達障害」というキーワード。第1回では、発達障害とは何か、また、どのような症状のことを指すのか、埼玉県内で保育事業や認可保育所、児童発達支援事業を手がけているSHUHARI代表取締役の中村敏也氏に話を聞いた。

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 このコラムでは全6回にわたり、未就学期におけるお子さんの子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介していきます。

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◆近年、急速に身近になった「発達障害」というキーワード

 最近、小学校の授業における学級崩壊の話がこれまで以上に取りざたされるようになりました。授業に集中できない児童が複数いて、授業が円滑に進まない、集中できない…。そのほか、授業は遅れがちな児童の学習ペースに合わせる必要もあるため、なかなか授業が進まない、など。いわゆる「発達障害」の可能性がある児童が増えているので、学級運営は難しい、という声もあります。

 私が運営している保育所の未就学児の中にも、発達が気になる子どもが増えていると感じています。でも、発達に遅れや偏りが見られる子どもは、今になって急に増えてきたのでしょうか?

 2003年の文部科学省による「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」では、通常学級の小・中学校の6.3%(男子8.9%、女子3.7%)に発達障害の行動特徴がある、と示されています。そして、2012年に行われた同様の調査「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」では、公立小学校の通常学級に発達障害の可能性のある児童は6.5%(男子9.3%、女子3.6%)でした。つまり、10年前とほぼ同じ数字となっています。

 筆者が小学生だった30年以上前にも、クラスに1人は、席に落ち着いて座っていられなかったり、極端に授業についてこれない児童がいた記憶があります。また、そのような同級生に対し、無意識のうちにみんなで自然とサポートして授業を受けていたことを、子どもながらに覚えています。

 それでも、子どもの発達の偏りや遅れについて世間で語られることが増えたのは、「発達障害」という言葉が身近になり、世のお母さん、お父さんの間でも広く認知され始めたことを示しています。しかし、ほとんどの方は、具体的に発達障害とはどんなものか、よくわからないと感じているのではないでしょうか。

◆そもそも、発達障害って何?どのような症状のこと?

 発達障害は、大きく以下の4つに分類されます。

1、知的発達の障害を中心とする知的障害(精神遅滞)MR
2、自閉症を中心とする広汎性発達障害PDD
 ※近年は自閉症スペクトラム障害(ASD)という名称に変わりつつある。
3、多動などの行動の問題を中心とする注意欠損/多動性障害(AD/HD)
4、発達のある側面だけが特に障害されている発達の部分的障害(特異的発達障害)LD学習障害など

 それぞれについて、詳しく解説します。

1、知的障害(精神遅滞)MR:Mental Retardationとは

 以下の3つの満たされた場合に診断されます。
  ・知能検査で測定される全般的機能が平均以下であること
  ・日常生活上の適応行動が、年齢相当の行動基準よりも明らかに低いこと
  ・18か月未満に発症していること

 精神遅滞(知的障害)MRで気にしなければならないのは、IQ70~85程度の境界型知能や、軽度精神遅滞の子どもたちです。「おとなしい子」「幼い」などと言われ、3歳児検診でも、就学前検診でも、問題なしと判断される場合が多く、小学校入学後に授業についていけなくなることがあるからです。

 授業についていけない子どもは、セルフエスティーム(自己肯定感)が損なわれ、二次障害へと負の連鎖が生まれかねません。

2、広汎性発達障害PDD:Pervasive Developmental Disorder/自閉症スペクトラム障害ASD:Autism Spectrum Disorderとは

 典型的な自閉症を含め、自閉症に似た特徴を有する状態の総称です。おもに次のタイプのことを示します。

 a、自閉性障害:人との関わりが一方的であり、相手の気持ちや状況を考えないで、マイペースな行動が目立つ。会話の際、適切な表情、言葉の抑揚、ジェスチャーがうまく使えないか使い方がわからない。同じ物や同じやり方にこだわる。
 b、アスペルガー障害(症候群):言葉の遅れがなく、認知能力の遅れもないが、自閉性障害にみられる特徴がある。
 ・対人関係の障害(非言語コミュニケーションが苦手、仲間関係を作れない、共感性の欠如(関心、興味、喜びを他人と分かち合わないなど)
 ・行動・興味・活動の範囲が狭く、反復的・常同的(こだわり行動がある。手をパキパキさせたり、ねじ曲げたり、常に複雑な全身の動きをしてしまう。特定のものに熱中するなど)
 ・言葉の遅れがない(言葉の遅れはないが、単語の意味の取り違いや、相手の気持ちを汲んだ表現ができないなどの言語系の障害はある)
 ・日常生活に問題がない

3、注意欠損/多動性障害(AD/HD)とは

 落ち着きがない、集中が持続できない、気が散りやすい、忘れ物が多い、片付けられないなどがおもな症状。不注意型、多動・衝動型、混合型の3つに分かれます。

 ・不注意型:忘れ物が多い。集中が持続できない。そそっかしい、あわてんぼうと3歳児検診や就学前検診などで判断され、問題なしと見なされて、集団生活に慣れずに、のちに二次障害につながることがある。
 ・多動・衝動型:じっとしていられない。すぐに立ち歩いてしまう。そのうち落ち着くだろうと3歳児検診、就学前検診で判断され、のちに二次障害となることがある。
 ・混合型:上記2つのタイプが混ざったもの。

4、学習障害 LD:Learning Disorderとは

 年齢相応の読み、書き、算数の障害のことを示します。

 ・読字障害(発達性読み書き障害、ディスレクシア):ひとつひとつの音をつながりとして読む障害と、文節や文章をまとまりとして読む障害がある。1文字ごとは読めるが、つながりで読めない。
 ・算数障害:数を数えることが苦手。指で数えることはできても、2桁の足し算などは難しくなる。

 「二次障害」という言葉を使いましたが、これは、発達障害が原因で違う問題も引き起こされることを指します。早期に障害が診断されないと、発達障害を抱える児童は「自分は何もできない人間なんだ」とセルフエスティーム(自己肯定感)が低下してしまい、学習意欲がなくなってしまいます。そして、引きこもってしまったり、非行行動を起こしてしまうなど、障害に起因する問題を「二次障害」と称しています。

 もし、お子さまについて少しでも気になる点がある場合は、早期に自治体の相談窓口などに聞いてみることをお勧めします。そこで気が晴れる場合もあるので、ぜひお気軽に相談してみてください。

 自治体の相談窓口で、発達障害かどうかを診断されることはありません。あくまで、お子さまの状況に合わせた適切な機関や、自治体での取り組みを紹介してもらえます。

 もし、一刻でも早く正確な診断をしてほしい場合は、各地域にある療育医療センターへ診断の予約をする必要があります。しかしながら、各療育医療センターはとても混雑しており、平均では初診まで半年ほどかかることが多いです。

 また、突然療育医療センターに行くのではなく、まずはかかりつけの小児科に相談し、各地域にある療育医療センターへ紹介状を書いてもらうと、スムーズに診断を受けるのに有効でしょう。

 次回(第2回)は、先に述べた4つの発達障害について、実際に子どもに見られる行動や、子どもの発達について気になったときの保護者の関わり方をご紹介します。

◆付録:国が公開している情報(一部抜粋)
厚生労働省:発達障害
文部科学省:特別支援教育について「おもな発達障害の定義について」

【第2回へ続く】
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 耳にすることも多くなった、子どもの「発達障害」。コラム「発達障害」では、全6回にわたり、未就学期における子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介する。

著:株式会社SHUHARI 代表取締役 中村敏也
 1977年7月埼玉県生まれ。明治大学経営学部卒業後、企業勤務の傍ら待機児童問題に興味を持ち、保育学や法制度を学ぶ。2004年9月、埼玉県志木市にて「保育園 元気キッズ 志木園」を開園。以降、地域のニーズに対応しながら小規模保育事業、認可保育所、児童発達支援事業へと展開を拡げる。2017年1月現在、志木市・新座市・朝霞市内に7施設を運営。2018年度には埼玉県内初の小規模保育事業と児童発達支援の複合施設を開園予定(埼玉県・朝霞市)。新座市子ども子育て会議委員。

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《中村敏也》

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