千葉県南房総市、14の小中学校がSurface Book導入…校務・教務兼用で有効活用

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千葉県南房総市に14ある公立小中学校の1つである、南房総市立和田小学校
  • 千葉県南房総市に14ある公立小中学校の1つである、南房総市立和田小学校
  • 校務ではノート PC 型で利用されている
 千葉県南部に位置する南房総市では、全小中学校への無線LAN環境や電子黒板の整備、教材の充実といったICT教育の環境整備を推し進めてきた。2016年には、校務用途と教務用途の両立を実現するため、マイクロソフトのノートPC「Surface Book」を教員に配付。今後は、Surface Bookを活用して、ICTを活用したより効果的な授業を実践していく計画だ。

 Surface Book導入の背景やねらい、得られた効果などについて聞いた。

【Surface Book】
 13.5インチディスプレイ搭載の薄型・軽量な高機能ノートPC。ディスプレイを360度回転でき、切り離してタブレットとして利用することもできる2in1デバイス。Office スイート3の全製品が動作する。

◆授業の双方向性を向上し、児童・生徒との触れ合いを増やす

 市内の14ある公立小中学校の教育を補助する南房総市教育委員会では、有効性が注目されるICT教育の環境整備を推し進めている。2013年に全小中学校で無線LAN環境を構築し、2015年には1校に1台以上の電子黒板を整備した。

 南房総市教育委員会は、もともとICT教育の導入に積極的であったわけではない。南房総市教育委員会教育総務課の江野口隆満氏によると、電子教材の作成には教員側の負担が大きいことから、これまではICT教育に大きくは注力してこなかったという。しかし、昨今では電子教材が充実し、デジタルデバイスの操作性も向上してきたことから、「ICT教育の有効性は理解していましたので、教員側の負担なくICT教育が実践できるフェーズに至ったことを受け、環境整備を進めました。」と江野口氏は説明する。

 南房総市の教員は、これまでも自身で所有しているデバイスを使用し、撮影写真を活用した振り返り学習などで、デジタルカメラやスマートフォンを授業内で活用して、一定の効果を上げてきたという。しかし、これらの機器は、授業で使うには画面サイズが小さいなどの利便性の問題に加え、個人所有の機器を教務で使用することにはセキュリティー面での不安もあった。

 このような問題を解決すべく、南房総市教育委員会はタブレットデバイスの導入を検討。利便性やセキュリティー問題をクリアすると同時に、複数の児童・生徒のノートを撮影して電子黒板で一斉共有するなど、授業の双方向性の向上も期待しSurface Bookの導入に踏み切った。

◆校務用PCのリプレースを機に、教務用兼用の2in1デバイスを採用

 南房総市教育委員会は2016年6月にSurface Bookの導入を決定。Windows 10と既存業務アプリケーションとの互換性検証やデバイス調達、設定などを経て、同年11月にSurface Bookの運用を開始した。

 授業の双方向性の向上は、教員と児童・生徒間の接点を増やす効果もあり、Surface Bookの導入には大きな意義があった。しかし、新たな投資には、費用対効果の提示が不可欠となる。その見える化は難しく、タブレットデバイス単体での導入は困難だった。

 そこで南房総市教育委員会は、2016年下旬に控えた校務用ノートPCのリプレースに伴う、教務用途を兼ねた2in1デバイス(1台でノートPCとしてもタブレットとしても使える機器)の導入を計画した。この計画の意図について江野口氏は、「既存ICT資産である校務用ノートPCのリプレースは、必要経費として予算化することができます。そこで2in1のデバイスを採用すれば、タブレットデバイスの用途を兼ねたPCの導入が実現できると考えました。また、タブレットデバイスは教務において有効に機能する一方、先行事例から、『教員によって活用頻度の差が大きいデバイス』だという印象ももっていました。校務用途を兼ねる2in1デバイスを採用すれば、教員は普段の校務でタブレットの操作に慣れることができますので、先の差を埋めるという意味でも有効でした。」と語る。

 しかし、校務・教務の両方で利点を生み出すためのデバイスには、高いレベルの作業性、操作性が必要となる。南房総市教育委員会は2015年秋口に機種の選定を開始したが、予算申請の期限となる2015年末の段階では、目的のレベルに達する2in1デバイスは存在しなかったため、いったんは2in1デバイスの導入を断念した。

 2015年末の段階では従来どおりのラップトップ型ノートPCを選定し、リプレースへ向けた予算を申請。しかし、2016年2月にSurface Bookが発表されたことにより、状況は一変した。再度、2in1デバイスの導入へ向けて動き出すことになる。

 江野口氏は、「Surface Bookは、性能、画面サイズといった校務に求められる要件と、携行性やタッチ操作など教務に必要な要件それぞれを高いレベルで備えており、2in1デバイスの中では群を抜いて優れた製品でした。また、学校のシステムは基本的にWindowsベースで設計していますが、Surface Bookであれば校務、教務それぞれで利用するアプリケーションすべてが利用できます。さらに、Windows 10は、キーボードの着脱によって自動的にタブレットモードとキーボードモードを切換える機能を備えていますので、校務と教務のシームレスな切り替えが可能です。非常に魅力的なデバイスだと感じ、導入へ向け動き出しました。」と当時を振り返る。

◆校務・教務のネットワークを切り分け、セキュリティーを担保

 校務用途と教務用途の両立を実現するSurface Bookだが、活用が進むに伴い、紛失や他者による操作といったリスクも想定され、セキュアな環境が必要となる。

 南房総市教育委員会のICT環境整備を長年支援し、今回のプロジェクトでもSurface Bookの調達やシステム構築を担当した、NECフィールディング東関東支社営業部千葉営業課の久保田晋介氏は、「南房総市の学内ネットワークは、校務用と教務用とでネットワークを切り分けており、Fogos PRO FSというソフトウェアでセキュアクライアント化したデバイスでのみ校務用ネットワークへアクセスできる仕組みをとっています。認証キーをもつUSBメモリをPCに接続しなければ校務用のネットワークへ入ることができませんが、校内の無線LAN環境下であれば、USBメモリを挿すことで、どこにいても教務から校務へ移ることが可能です。このことから、同環境においては、携行性をもった校務用PCの採用意義が高いといえました。Surface Bookの導入は、既存のネットワーク環境を最大限に生かせる取組みだったのです。」と説明する。

 2016年6月に、南房総市教育委員会はSurface Bookの導入を決定。Windows10と既存業務アプリケーションとの互換性検証やデバイス調達、キッティングを経て、同年11月より、Surface Bookの運用を開始した。

◆Surface Bookの高い信頼性で実現した導入

 2016年度のリプレースでは、予算の関係から、全教員のデバイスをSurface Bookに変更することはできなかったが、保守契約なしでデバイスを調達することで、各学校、1学年に1台の割合でSurface Bookを導入した。

 江野口氏は保守契約を行わなかった背景として、「予算的な制限はもちろんあります。ただ、それだけでなく、教員の責任範囲を明確にする、つまり配付デバイスであっても教員自身でしっかり管理する意識を醸成したかったことも理由でした。デバイスが故障しては校務と教務が滞ってしまうため、この決断には当然、デバイス側への高い信頼性が求められます。高い信頼性をもつSurface Bookだからこそ、当初計画した予算内でのタブレットデバイス活用が実現できたと考えています。」とSurface Bookの高い信頼性を評価する。

◆発展的な活用を手軽に実践

 南房総市教育委員会ではSurface Bookと並行し、デジタルテレビなどのHDMI端子へ接続するだけで、有線接続なしに遠隔にあるデバイス画面の複製投影が可能となる「ワイヤレスディスプレイアダプター」も導入した。

 江野口氏は、「すでに各学校へ電子黒板を設置していますが、現状は各校1台~数台という規模です。テレビやプロジェクターを設置している教室であれば、Surface Bookとワイヤレスディスプレイアダプターを組み合わせることで、電子黒板に近い双方向性をもった授業ができるようになりました。デバイスの発展的な活用を手軽に実践できる環境が整備できたといえるでしょう。今後、文具のように『教育場面に当然存在するツール』として、Surface Bookが利用されるようになっていくことを期待しています。また、南房総市は特別支援教育へも注力していますが、そこで児童・生徒の集中力を維持させる意味でも、この組合せは有効だと考えています。」と期待する。

 Surface Bookを導入したことで、教員の自発的なタブレットデバイス活用と、それに伴う教育効果のさらなる向上を見通している南房総市教育委員会。南房総市教育委員会は、各学校で2018年以降に控えている、PC教室常設のPCのリプレースについても、2in1デバイスの採用を検討している。今後、教員に配布したSurface Bookや、PC教室への配備を計画する2in1デバイスが、あらゆる教育シーンで活用されることが期待される。

 南房総市教育委員会は、ICT教育の環境整備の発展に向け、さらなるセキュリティー強化に取り組んでいく。江野口氏は、「現在、認証キーをもつUSBメモリを利用してネットワークセキュリティーを担保していますが、たとえばSurface Bookが搭載するWindows Helloに対応したカメラを活用し、生体認証も認証基盤へ組み込むことで、利便性を維持したままセキュリティーレベルを高められると考えています。」と語る。

 教員と児童・生徒の触れ合いを重視した教育を実践する南房総市教育委員会では、Surface Bookの採用により、授業の双方向性の向上と、教員と児童・生徒間の接点の増加を実現しつつある。この動きをさらに加速、発展すべく、南房総市教育委員会は今後も、ICT環境の整備と教育主事を通じた活用支援を推し進めていくとしている。

 マイクロソフトでは、世界中の教育指導者と授業案を共有、トレーニングを受講できる「Educator Community」を展開。また、教育機関向けに「Surface」およびアクセサリーを10%割きで提供している。
《編集部》

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