経団連、自民党提案の「こども保険」に提言…世代間・世代内の公平性問題

 日本経済団体連合会(経団連)は4月27日、「子育て支援策などの財源に関する基本的な考え方」を発表した。自民党から提案された「こども保険」「教育国債」について、公平性などの問題点を指摘。国民的な議論を喚起していく必要があるとしている。

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 日本経済団体連合会(経団連)は4月27日、「子育て支援策などの財源に関する基本的な考え方」を発表した。自民党から提案された「こども保険」「教育国債」について、公平性などの問題点を指摘。国民的な議論を喚起していく必要があるとしている。

 自民党内の小委員会で提案された「こども保険」は、子どもが必要な保育・教育などを受けられないリスクを社会全体で支えるというもの。年金・医療・介護に続く「全世代型社会保険」と位置づけている。当面、保険料率0.2%(事業主0.1%、勤労者0.1%)で考えられており、保険料は、事業者と勤労者から厚生年金保険料に付加して徴収し、自営業者などの国民年金加入者には月160円の負担を求める。これにより、財源規模は約3,400億円になるという。

 これについて経団連では、子育て支援策や人材育成は一体的な政策パッケージとして強力に推進することが望ましいとしたうえで、「世代間の公平性の問題」「世代内の公平性の問題」「使途の問題」をあげている。年金保険料を支払う現役世代と事業主に対してのみ負担が求められ、高齢者や専業主婦(夫)、年金保険の未加入者・保険料未納者は負担しないため、社会全体で支える仕組みになっていないと指摘する。

 とりわけ、高齢者の負担がないことについて、世代間の公平性に問題があるとした。社会の高齢化により、年金、医療、介護などの社会保障給付が増加の一途をたどっており、現役世代や企業の社会保険料負担も増加。負担増の限界が見えない中、子育てについても負担を求めるのはバランスを欠いていると評した。

 また、「こども保険」の直接的な受益者は就学前の子育て世帯で、小学生以上の子どものいる世帯は受益がない。現実には子どもを持たない選択をした世帯や、さまざまな理由で持ちたくても持てない世帯も存在しており、現役世代内においても公平性の問題があるという。まったく受益が発生し得ない世帯にも負担を一律に求めるのは妥当ではないとの考えを示した。

 このほか、小委員会では親の所得に関係なく一律に児童手当を増額するとしており、経団連では単なるばらまきになるのではと懸念。低所得世帯や多子世帯などの経済的支援を必要としている子育て世帯にのみ、給付の対象を絞るべきだとした。

 経団連は教育国債について、「人材投資は将来への投資ではあるものの、国債を新たに発行して将来世代に負担を先送りすることは回避すべき」と述べている。小委員会においても、今以上の国債発行は「将来世代への負担の先送りに過ぎない」との考えが示された。

 経団連による提言「子育て支援策などの財源に関する基本的な考え方」は、経団連Webサイトに掲載されている。
《黄金崎綾乃》

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