国際教養人を育成、理系科目も充実した千代田高等学院の国際バカロレア

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「IB(国際バカロレア)」コースについて語る坂本龍氏、荒木貴之校長、ドゥラゴ英理花氏(左から)
  • 「IB(国際バカロレア)」コースについて語る坂本龍氏、荒木貴之校長、ドゥラゴ英理花氏(左から)
  • 荒木貴之校長
  • 情報の教諭としてICT・アクティブラーニングを推進するドゥラゴ英理花氏
  • IBDP(ディプロマ)コーディネーターの坂本龍氏
  • (左から)荒木貴之校長、坂本龍氏、ドゥラゴ英理花
 2016年4月、学校法人武蔵野大学と法人合併し、先駆的に高大接続を実現した千代田女学園が、2018年4月に大きく生まれ変わる。校名を「武蔵野大学附属千代田高等学院」と変更し、共学化するとともに、隣地には「千代田インターナショナルスクール東京」が開設される。

 千代田高等学院には、IB(国際バカロレア)・IQ(文理探究)・GA(グローバル・アスリート)・LA(リベラル・アーツ)・MS(メディカル・サイエンス)と、生徒の志向によって柔軟に個別化された5つのコースが設けられる。

 今回はその中でも文部科学省が推進し、昨今注目度が高まっている「IB(国際バカロレア)」コースについて、荒木貴之校長、IBDP(ディプロマ)コーディネーターの坂本龍氏、情報の教諭としてICT・アクティブラーニングを推進するドゥラゴ英理花氏に話を聞いた。

(左から)荒木貴之校長、坂本龍氏、ドゥラゴ英理花
インタビューに応える(左から)荒木貴之校長、坂本龍氏、ドゥラゴ英理花氏

◆国際バカロレアのディプロマプログラムとは?

 国際バカロレア(IB)とは、国際的な視野を持った人材を育成するため、生徒の年齢に応じた教育プログラム。平成29年5月1日現在、世界140か国以上の国・地域、4,839校において実施されている。

 ディプロマプログラム(DP)とは、16歳から19歳を対象にしたプログラムであり、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得可能だ。

 原則として英語、フランス語またはスペイン語で実施されるが、平成25年より、文科省は国際バカロレア機構の協力のもと、ディプロマプログラムの科目の一部を日本語でも実施可能とする「日本語DP」の開発・導入を推進。平成27年4月から日本語DP課程を実施している(日本語、英語の両方で学ぶDPということで、デュアルランゲージ・ディプロマとも称される)。

 DPのカリキュラムは、3つの必修要件と6つの教科から構成される。

【3つの必修要件(Core)】
課題論文(EE:Extended Essay)
 履修科目に関連した研究分野について個人研究に取り組み、研究成果を4,000語(日本語の場合は8,000字)の論文にまとめる。
知の理論(TOK:Theory of Knowledge)
 知識とは何か、探求する。批判的思考を養い、生徒が自分なりのものの見方や他人との違いを自覚できるよう促す。
創造性・活動・奉仕(CAS:Creativity/Activity/Service)
 芸術活動やボランティアなど、体験的な学習に取り組む。

【6教科】
1:言語と文学(母国語) 2:言語習得(外国語) 3:個人と社会 4:理科 5:数学 6:芸術
※ただし、6の芸術は他のグループからの科目に代えることも可能

 IB資格の取得には、DPカリキュラムをすべて履修し、外部評価(国際バカロレア試験など)および内部評価を通じて、45点満点中、原則として24点以上取得する必要がある。国際バカロレア試験は、年2回、世界で一斉に実施される。

 日本における認定校で、学校教育法第1条に規定されている学校(=日本の高校卒業資格が得られる)は20校。千代田高等学院は、コーディネーターの坂本氏を中心に認定取得準備の真っ只中だ。坂本氏は10歳のとき、家族でニュージーランドへ渡り、IBの中学レベルに相当するミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)で学んだ経歴を持つ。IBの魅力はどこにあるのか。坂本氏は次のように語る。

 「1クラスあたりの人数が最大でも20名ほどと少人数なので、『教え込む』というスタイルは少ないですね。教師が『問いかける』ことによって学習が深まり、生徒自身が考えて知識を構築していきます。知識を構成主義的に捉えており、生徒それぞれが自身の理解を組み立てるような形で学んでいきます。つまり、先生が一方的に教えることを一律に覚えるようなスタイルではないということです。

 ただ、それだけでは自分だけの世界になってしまうので、それぞれの考えを授業での議論などを通じて互いにオーバーラップさせていく。IBの魅力はそんなところにあると思います。」

荒木貴之校長
荒木貴之校長

◆千代田高等学院のDPは「理系科目も充実」

 IBのプログラムは、このように「学習者中心」だ。荒木校長の言葉からは強い使命感が伝わってくる。

 「次期学習指導要領では、『主体的・対話的で深い学び』の実現を目標に掲げています。これはIBと非常に近しいところがあります。文科省がIBを推進している主たる理由はそこにあるでしょう。つまり、本校がIBに取り組むということは、日本がこれから必要とする人材を育成するために変えようとしている教育の『先取り』を行うということなのです。」

 また、学校の理念とも共通すると荒木校長は言う。

 「明治21年、欧米への視察旅行などを経て千代田女学園を創設した島地黙雷は、その理念に『国際教養人の育成』を掲げました。IBの理念は『世界市民の育成』です。IBコースは、129年続いた本校の理念を、新たに生まれ変わる千代田高等学院に引き継ぐにふさわしいカリキュラムと言えます。」

 日本での新しい教育のかたちを「先取り」するとも言えるIBのカリキュラムだが、千代田ならではの特長は、どのような点にあるのだろうか。

 「他の認定校に比べて我々の特長は、理系科目の教育にも力を入れる点にあります。世界のDP取得者の約16%が医学部に進学しています。日本でも、たとえば国立の岡山大学の医学部医学科にはIB枠が3名設けられているほか、筑波大学、東京医科歯科大学などをはじめ、IB枠が徐々に広がりを見せつつあります。本校では、IBDPのカリキュラムで『芸術』にあたるグループで理科をもう1科目取ることで、2年間で理科2科目をしっかりと学べる体制をとる予定です。」(荒木校長)

 理科の学びに必要な探究心や考察力を育むために、最新鋭の環境を整えると荒木校長は意気込む。来春の開校に向けて理科施設の大改修を行い、大学の初年次教育のレベルに相当する実験観察を可能にする

 また、生徒1人あたり複数のデバイスからストレスなく繋がるよう、生徒数の3倍に相当する、大学並みの大規模なネットワーク環境を構築し、生徒用デバイスもすべてMacにする予定だ。

 情報の教諭でICTを担当するドゥラゴ氏は、アメリカの大学で学び、修士号を取得後、IBDP認定校の一つであるぐんま国際アカデミーに設立時から携わり、ICT推進に尽力してきた。現在、来春の開校に向けて、新たに、図書館をICTと融合させた「ARC(アカデミック リソースセンター)」のリノベーションを担当する。

 「図書館はこれまではおもに自主学習をする場所として使われていましたが、蔵書は大切に引き継ぎつつも、最新のICT機器や設備を導入することにより、『イノベーションが生まれるような場所』にしたいと思っています。生徒たちが自由にここに集まり、議論を深めたり、色々なアイデアを出し合うことができる、プロトタイピングスタジオのような場所になればと、来春の完成に向けて構想を練っているところです。

 理想はスタンフォード大学にあるd.schoolのようなイメージです。d.schoolは教科横断型の、学生と教職員が共にデザイン・シンキング(*)を学びながらイノベーション力を鍛える場です。本校の新しいリソースセンターも、そうしたオープンな空間にしたいと考えています。」

情報の教諭としてICT・アクティブラーニングを推進するドゥラゴ英理花氏
ドゥラゴ英理花氏

◆IBDPは大学進学に有利…IBコースに求める生徒像

 IBDPは大学進学に有利とされ、毎年世界中のトップスクールに多くの人材を輩出している。日本の新学習指導要領においても、グローバル人材育成の観点から、批判的、多角的思考力の養成を意識した内容となっているが「それは大学に入れば必ず求められること」と荒木校長は言う。「海外で多くの大学がIBDPを取得した生徒を積極的に受け入れているのは、こうした能力がすでに身に付いているからです。IBDPでは、普通なら大学1~2年時に養われるような高い能力を身に付けられるのです。」

 このように、得るものが多いだけに、生徒にも相応の努力が必要とされるIBDP。学校側としてはどんな生徒を求めているのか。

 坂本氏は、「IBの理念に惚れ込み、自分から能動的に動ける人に来て欲しいと思います。IBDPのカリキュラムは大変多忙で、学習には相当な時間と覚悟が必要となります。精神力や忍耐力、やり抜く力を持っている学生にぜひ学んでもらいたいですね。」と期待を込める。

 ただし「CEFRでB1レベル、英検だと2級は必要」と、入学前から高い英語力は必須だ。「日本語DPであっても、英語と数学に関しては英語で学習しますし、それ以外にも英語はどうしても必要になってきます。出願までに英検2級に到達できない場合、準2級を取得していればOKですが、コースが本格的に始まる前までには2級を取得しておくことが、本校で本格的にIBを始められる前提条件になると思います。」(坂本氏)

IBDP(ディプロマ)コーディネーターの坂本龍氏
坂本龍氏

 ドゥラゴ氏は、自己表現力も大事とアドバイスする。「国際舞台では、能力が高くてもプレゼンテーション力のあるなしで評価が逆転してしまうことがあります。IBは討論や探究型のアクティブラーニングを重要視していますので、人前に立って自分自身を表現する能力は、とても大切です。静かに従順というのではなく、自分の考えをしっかり持ち、常に自己表現できる力を身に付けることを入学前から意識しておくといいですね。」

 受験生に向けて、入試に関する情報として荒木校長は「東京都立国際高校のIBコースと併願しやすい入試にする」とし、特に英語については、外部試験のスコアを入試の点数に換算することで、受験生の当日の負担を減らす工夫も考えているという。

 「IBの素晴らしいところは、生徒だけでなく、教員も学習者であるということ。生徒に一方的に教え込むのではなく、一緒に探究し、問題の解決に向けて取り組む楽しさ、面白さを分かち合います。教員は生徒たちに寄り添い、先輩のような、メンター的な存在として、共に高め合っていきたいですね。」

 129年前に掲げた「国際教養人の育成」という帆は時代の追い風を受け、千代田女学園は教育のグローバルスタンダードへと大きく舵を切る。

 「2020年からの新学習指導要領の『先取り教育』」ー荒木校長のこの表現は、言い得て妙だ。文科省の目指すビジョンとIBの理念は重なる部分が多い。新生する武蔵野大学附属千代田高等学院は「今までやって来た日本の教育とはまったく異なるシステム」とドゥラゴ氏は言う。「先取り教育」はどんなイノベーションを見せてくれるのか。注目したい。

*デザイン・シンキング=デザインしたサービスやプロダクトのユーザーを理解し、仮説を立てて検証しながら、初期段階では明らかにならなかった戦略や解決策を発見するための問題解決のプロセス。

<提供:千代田女学園>
《加藤紀子》

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