【中学受験2025】最新動向と合格への戦略…早稲田アカデミー中学入試報告会レポート

 今春、最難関校の合格者数を大きく伸ばした早稲田アカデミーが中学入試報告会を開催。最新の動向や各教科の分析と対策を解説。今年度の中学入試を取り巻く概況が紹介された。

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【中学受験2025】最新動向と合格への戦略…早稲田アカデミー中学入試報告会レポート
  • 【中学受験2025】最新動向と合格への戦略…早稲田アカデミー中学入試報告会レポート
  • 早稲田アカデミー中学受験部門の責任者・丸谷俊平氏
  • 2月1日私立中学受験者数・募集定員・受験率推移
  • 2025年合格実績速報 過去最高の合格実績を記録
  • 国語科責任者・本多弘篤氏
  • 中学受験一課長・松山圭介氏
  • 社会科責任者・村松優河氏
  • 理科責任者・織家聖氏

 早稲田アカデミーは2025年3月2日、ベルサール渋谷ファーストにおいて「中学入試報告会」を開催した。

 報告会では、中学受験部門の責任者・丸谷俊平氏が今年度の入試概況について紹介。続いて、各教科の責任者が入試問題についての分析と対策を語った。



一都三県における2025年度中学入試の概況

 講演の冒頭で丸谷氏はまず、今年度の中学入試全体の概況を語った。

 一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)における今年度の中学受験率は15.2%で、昨年度に引き続き、ここ30年間で最高の比率となった。2月1日の受験者数は、中学校の募集定員を上回った。

2月1日私立中学受験者数・募集定員・受験率推移(資料協力:森上教育研究所)

 今年度の受験生1人あたりの出願校数を見ると、早稲田アカデミーの塾生は男女共に平均して8校に出願し、6校を受験するという結果となった。特に昨年度から今年度にかけて出願校数が増えているが、丸谷氏はこの要因の1つとして、午後入試を受けるスタイル・入試の多様化が定着してきたことをあげた。

一都三県、地域別の動向は?

 引き続いて丸谷氏は、地域別の動向について解説した。

中学受験部門責任者・丸谷俊平氏

東京都

 男子校では日本学園、本郷、海城などで受験者数が増加。女子校では豊島岡女子学園が算数・英語資格入試を導入したことで受験者数を増やした。共学校の人気は堅調で、最難関の渋谷教育学園渋谷でも増加している。

 一方で、男子御三家(開成・麻布・武蔵)と女子御三家(桜蔭・女子学院・雙葉)は6校とも減少した。最難関校を避ける動きだと見る意見もあるが、早稲田アカデミーからこうした最難関校への受験者数は増加している。

神奈川県

 全体では受験者数が約3%減少したが、丸谷氏は「東京都の私立中学校授業料無償化により、都内生の神奈川受験へ影響が出た」と分析。こうした中、昨年度東大合格者が100名と大きく増え、その現役合格率の高さにも注目が集まった聖光学院は、受験者数を大幅に伸ばした。慶應義塾普通部も例年3倍ほどの倍率が3.8倍に上昇し、人気を集めた。

埼玉県

 1月10日から始まる栄東の入試では14,000人を超える受験者を集め、昨年度に開校した開智所沢をはじめ、医進コース新設2年目の淑徳与野でも大幅増加となった。埼玉の入試は、県外の受験生が“お試し入試”として受験するケースも多い。

千葉県

 千葉の入試は「千葉在住者だけでなく、東京都内からのアクセスが良い地域に住んでいる受験生にとっても進学先としての選択肢となる」と丸谷氏。今年度は、千葉御三家といわれる渋谷教育学園幕張・市川・東邦大付属東邦の受験者数は若干減少した。


早稲田アカデミーでは過去最高の合格実績を記録

 最後に丸谷氏は、早稲田アカデミーの合格実績を紹介した。まず、御三家中6校は昨春545名から600名を突破し、今春610名合格、過去最高数を更新した。また、早実中は57.1%、早大学院は64.2%と、高い合格者占有率を記録した。今春の大きな躍進の要因には、生徒の頑張りに加えて低学年からの取組みを強化したことがあげられる。具体的には、小3には論理力を養成する3JSクラス、小4には算数トップレベル講座、小5にはNNジュニア開成・桜蔭トップレベル講座NNジュニアコース、そして小6にはNN志望校別コースを提供している。

 丸谷氏は講演の最後、「子供が思春期の多感な時期に通う学校を選ぶには、子供がそこに通う6年間を楽しめるか、充実して過ごせるかどうかが重要。偏差値表や大学の合格実績のみに気を取られず、学校の方針と家庭の価値観、子供の希望が一致する学校を選ぶのが望ましい」と述べた。

 そして、満席となった会場の保護者に向けて、「我々は『本気でやる子を育てる』という教育理念の下、引き続き生徒ひとりひとりの志望校合格を目指して、保護者の不安を軽減し、子供たちの笑顔を増やしたい。さらなる成長を目指していく早稲田アカデミーに期待してほしい」と力強く訴えた。

2025年合格実績速報 過去最高の合格実績を記録

 丸谷氏の講演に続き、各教科の担当者が今年度の分析と今後の対策について解説した。

国語:早稲田アカデミー中学受験部門 国語科責任者・本多弘篤氏

今年度の分析:

 多くの学校が「直近2年以内に発表・発刊された作品」からの出題で、未知の文章に対する読解力が試された。大学入学共通テストの影響を受けたといえる「複数の文章を用いた問題」や「表や図を用いた問題」は定番の出題形式として定着した。

国語科責任者・本多弘篤氏

今後の対策:

 「文章読解(読む・解く)力の強化」+「漢字・ことばの知識(ことわざ、慣用句、四字熟語なども含む)の定着」という王道の学習に加え、「時代の流れに沿った新たな出題への対応」にも考慮した学習を取り入れる必要がある。予習シリーズなどメインとなる教材を通して、従来の文章読解(読む・解く)をしっかりと進めること、特に中学入試の国語は読む:解く=7:3ぐらいの割合なので、まずは本文内容を正確に理解できる力を鍛えることが重要だ。

 ことばの学習については、子供の側は耳慣れない言葉に出会ったら辞書で調べたり、大人に意味を尋ねたりすること、また、周囲の大人の側も意識的に「子供にとって少しだけ背伸びをする必要があることば」を使うといった地道な努力や心がけが大切。語彙量は読解力に直結する。新しい傾向へ対応するためにも、世の中で話題となっている事柄(同調圧力やジェンダーなど)にまつわる語彙や概念についてもチェックしておく必要がある。

算数:早稲田アカデミー中学受験部 中学受験一課長・松山圭介氏

今年度の分析:

 今年度は極端に難度の高い問題を出題した学校はそれほど見られず、受験生にとって比較的取り組みやすい問題が多かったといえる。解答形式は、解答のみを求める形式から考え方や式を書かせる形式のほか、作図や理由を記述させる問題などの多様化を見せている。

 出題分野に関しても年々少しずつ変化が見られ、従来であればおもに難関の男子校が出題し、女子校ではそれほど見られなかった立体図形の難問が、豊島岡女子学園や洗足学園などで見られるようになってきた。

 立体図形と速さの問題は差がつきやすく、合否を分ける可能性が高いため、こうした出題傾向の変化をいち早く捉え、しっかりと対策を行う必要がある。

中学受験一課長・松山圭介氏

今後の対策:

 入試問題の多くは、中学入試でよく出る典型題から構成されている。まずはこうした問題を最短時間で正確に処理できるようにすることが合格への最低条件だ。毎週の学習内容を定着させ、知識や解法技術を確実にインプットすることが、戦うための道具を備えることにつながる。

 一方で近年の入試では、問題条件が複雑だったり、リードの文章がかなり長かったりと、普段解き慣れている問題とは異なる初見の問題も増えている。また、先述したように解答形式も多様化しており、さまざまな解答の仕方に慣れていくことが求められる。

 こうした問題を解く力を身に付けるには、良質な問題を使って、条件を表に整理したり、グラフ化したりといった試行錯誤から論理的思考力を育むことが重要である。このようなアウトプットを重ねることで、解くべき問題の取捨選択や、問題の解く順番を考えるといった判断力も磨かれる。

 したがって、小6の夏までに普段使っているテキストで知識や解法をしっかりと身に付け、9月以降は過去問やそっくりテストの演習といったアウトプットの割合を徐々に増やすことが重要だ。なお、論理的思考力は一朝一夕で身に付くものではなく、できれば時間的な余裕のある低学年から段階的に鍛えていくと効果的だ。

社会:早稲田アカデミー中学受験部 社会科責任者・村松優河氏

今年度の分析:

 今年度の入試では、戦争や紛争、経済・政治などからの出題が目立った印象。また、グラフをふんだんに用いて思考力を試す、ボリュームのある問題が近年増加傾向にあり、物事を多面的・多角的に捉える力や多様な文書・データ・資料を用いてその場で考える力が求められた。

社会科責任者・村松優河氏

今後の対策:

 今年は戦後80年、昭和100年にあたる節目の年であり、長引く戦争や紛争を背景に、軍事や戦争に関連する出題のほか、近代と現代にまたがるユニークな時代として昭和史をテーマにした出題も考えられる。

 また、近年の入試では、歴史上の人物の再評価に関する出題、つまりは通説の変化を取り扱った出題も見られる。なお、来年については大河ドラマの影響もあり、田沼意次の政策に関する出題が増えることも予想される。

 そして万博をはじめとする国際的なイベントからも目が離せない。万博やオリンピックを切り口にこれまで学習した単元に結びつける出題の存在感は残るだろう。さまざまな見方がある時事的な話題については、ニュース番組などを観た際に、家族で意見を出し合ってみるのも良いだろう。

理科:早稲田アカデミー中学受験部門 理科責任者・織家聖氏

今年度の分析:

 2024年は日本の観測史上もっとも暑い夏だったこともあり、猛暑をテーマにした出題が多く見られるなど、「自然災害」が時事テーマとして定番になりつつある。また、近年の特徴として、家庭にあるものや身近な事象をテーマにした問題も増えているほか、最難関校のみならず中堅校でも、従来にない切り口のユニークな問題が出題されるようになっている。

理科責任者・織家聖氏

今後の対策:

 変わった切り口や目新しい出題でも、基本的な知識と標準的な解法をもとに、与えられたデータや図から考えれば解ける問題が多い。早期に基礎を完成させ、その後に新傾向問題や時事問題の対策につなげていきたい。

 今年は阪神淡路大震災から30年の節目にあたり、地震やハザードマップに関する周辺事項は必須の知識となるだろう。また、関東では皆既月食が起こるなど、月に関する出題も予想される。理科的なニュースには日ごろから関心をもっておく必要がある。また、自然災害に関しては、備えとなる行動について、家庭内で話し合っておくと良いだろう。


 2025年度の中学入試では、各教科が現代の様相を反映し、受験生には読解力や条件を整理する力など、柔軟な対応力が求められた。時代の流れに沿った新傾向の問題に向き合ううえで、基礎の確立に加え、家庭での知的好奇心を支える環境づくりを行うとともに、プロの支援を効果的に活用することが合格への近道となるだろう。

早稲田アカデミー
「WEB中学入試報告会」

小3~小6対象
「最難関中合格プログラム」

小6対象
「NN志望校別コース」
《野嶋敦子》

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