中学受験情報局に聞く【中学受験2018】変わる中学入試と併願校選びの秘訣

 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏と、同じく主任相談員で名門指導会 専任講師(算数)の高野健一氏に、大学入試改革を踏まえた今後の中学入試や各大手塾のサポートの特徴、併願校を選ぶ際の留意点などを聞いた。

教育・受験 小学生
小川大介氏と高野健一氏
  • 小川大介氏と高野健一氏
  • 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員で名門指導会 専任講師(算数)の高野健一氏
  • 個別指導教室SS-1主任相談員の小川大介氏
 次期学習指導要領で学んだ生徒が受験する2024年に先駆け、大学入学共通テストが始動する。その実施に向けて、2017年11月に試行試験が実施され、その問題の内容が公開された。従来のセンター試験から傾向が大きく変わり、2019年度以降の中学入試もその影響を受ける可能性が高い。

 中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員の小川大介氏と、同じく主任相談員で名門指導会 専任講師(算数)の高野健一氏に、大学入試改革を踏まえた今後の中学入試や各大手塾のサポートの特徴、併願校を選ぶ際の留意点などを聞いた。

共通テストの出題内容は8~9歳児の保護者へのメッセージ



--大学入試改革は、中学入試にも影響があるのでしょうか。

高野氏:先日、大学入学共通テストの試行試験が実施をされました。問題の内容は全体的に情報量が多く長文化していて、従来のセンター試験にあった暗記していれば解けるような問題は減り、思考力が問われる問題が増えています。さまざまな資料を正確に読み取り、設問で問われていることを理解して記述するという高度な力が求められました。

小川氏:国語では記述力を問う問題が多く、国語以外の科目でも読解力が問われるような問題が出題されています。知識量よりも、その場でいかに考えて答えを導き出せるかを試す傾向が強くなっています。出題内容は、今8~9歳のお子さんがいる保護者の方へ、将来お子さんに身に付けてほしい力を示すメッセージだと考えています。お子さんに高い水準の総合力を身に付けさせるために、質のいい授業を展開する私立中学の人気はますます高まっていくでしょう。

 中学入試においても、AO型や自己推薦型の入試は増える傾向にありますが、今後、学校側はさらに工夫し、さまざまな形式の入試が出てくるでしょう。学校側も試行錯誤の段階だとは思いますので、保護者はお子さんが勉強してきたことをきちんと測ることができる入試かどうかを見極めて、受験させる必要があるでしょう。

広尾学園や鎌倉学園が日程変更



--2018年度中学入試の傾向と、変更点のある学校があったら教えてください。

小川氏:先述したように大学入試制度改革の影響を受けていることと、公立中高一貫校や英語教育に力を入れている学校の人気が高まっている傾向にあります。また、共学校の人気が高まっています。

高野氏:鎌倉学園の2月2日の入試が2月1日に変更になったため、例年2月1日に逗子開成を受験して2月2日に鎌倉学園を併願をしていた層に影響が出るでしょう。また、広尾学園の合格発表が2月1日から2月2日に変更になったため、2月1日の合否結果から2月2日の受験校を決めることができなくなりました。合格発表日や入試日の変更で併願パターンも変わりますので、受験を検討している学校の最新の募集要項をきちんと確認しましょう。

大手塾のサポートの特徴



--中学受験情報局さんには、メルマガ読者から多数の相談が寄せられると思うのですが、各塾のサポートにはどのような特徴があるのでしょうか。

早稲アカはきめ細やかなサポート



小川氏:早稲田アカデミーは早めに受験校の面談の設定をするなど、基本的にきめ細やかなサポートをしてくれる印象があります。受験校選びの際には、NNコースに入るような難関校志望者には積極的に難関校の受験を、そうでない方には安全校の受験を勧める傾向があります。

サピックスは家庭の考えを尊重



小川氏:サピックスは、家庭が必要なときにしっかりとサポートするという姿勢のため、保護者から積極的に相談することがお勧めです。1月入試の合否調査の電話は基本的に塾側からはありませんので、保護者から逐一報告するなどして、塾からのサポートを積極的に受けていきましょう。また、受験校の面談では、成績から妥当な組合せを勧める傾向にありますが、基本的にご家庭の考えを尊重して第一志望を変える指導はしません。

サピックスの中堅校志望者は外部模試活用も



小川氏:そして、これは中堅校を第一志望とする新6年生にお伝えしたいのですが、サピックスの模試は難易度が高く、偏差値も厳しく出る傾向にあります。そのため、首都圏模試などの外部模試を受けたほうが、基礎事項の定着度をより正確に確認できるでしょう。

 いずれにしても、6年生の保護者は今まで塾に通っていてどんなサポートがよかったのかを一度振り返ってみてください。先生の指導やスタッフのアドバイスなど、力になってもらえたと思う点を中心に、これからは塾を活用していくといいでしょう。

併願校選びのポイント



--併願校を決める際にどのような点に注意すればいいでしょうか。

必ず過去問を確認



小川氏:過去問の内容を見ないで、偏差値だけで併願校を選ぶことは避けましょう。同じくらいの偏差値で、似ている校風の学校だからという理由で決める方もいますが、学校によっては大きく問題傾向が異なり、その学校に特化した対策を行わなければならない場合があります。たとえば渋谷教育学園渋谷の出題には特徴があり、一見すると解読しづらい設問が多く、答案に細かく字数が指定されているなど、正確に読み解いたうえで求められている形に仕上げることが必要です。そのため、まずは過去問を解いて形式に慣れ、答案を作成したら先生に添削してもらうといいでしょう。

高野氏:算数で注意してほしい学校は、芝です。基本的にオーソドックスな問題ですが、一捻りされた形で出題されています。対策をしていないとまったく解けない可能性もあるので、過去問演習をしっかりと積んでほしいです。また、暁星は偏差値に対して比較的難しい問題を出題する傾向にあるため要注意です。

小川氏:いずれの学校の問題傾向にも、学校が求めている力やほしい人材などのメッセージが反映されているので、校風や問題形式をしっかりと確認したうえで併願校を決めてください。

お勧めの中堅校



小川氏:男子では、巣鴨が狙い目ではないかと考えています。面倒見がよく、東大や医学部など難関大学への合格実績があり、通っている生徒は確実に学力が身に付けているという印象があります。また、同様にしっかりと勉強をさせる面倒見のよい学校として、城北や成蹊などがあります。学習院(男子)も真面目にこつこつ頑張っていきたいというお子さんには合っていると思います。

 女子の難関校志望者は、頌栄を併願校に選ぶ方が多いです。英語教育に力を入れていて、難関大学への合格を目指して着実に勉強させる学校なので、しっかりと勉強させたい保護者から評価されています。

2/1に安全校を受験する併願パターン



--おすすめの併願パターンはありますか。

小川氏:第一志望校を受験するお子さんの多い東京・神奈川の中学入試解禁日の2月1日に安全校を受け、2月2日と3日にチャレンジ校を受験する組合せをお勧めする場合があります。後ろの日程になるほど偏差値が上がるので、最初に安全校に合格しておくことで、2日目以降に安心してチャレンジ校の受験に臨むことができます。

 2月1日と2月2日をチャレンジ校で固めて2月3日に安全校を受けるという選択をする場合、3日入試の偏差値が高く、結果的に3校ともチャレンジ校だったということになりかねません。そのため、ご家庭でよく話し合って、併願の組合せを決めてほしいです。

1月入試(お試し受験)と午後入試



1月入試の必要性



--1月校を受験した方がいいでしょうか。

小川氏:1月入試は必ず受けてほしいです。実際には行かない学校だとしても、やはり合格をもらうことはお子さんにとって励みになります。特になかなか本気モードにならない男の子には、緊張感を持たせるという効果もあると思います。また、保護者が受験慣れをするという意味合いもあります。本番を意識して、当日やることや持ち物リストなどを作っておくことで、親子ともに落ち着いて本番に臨むことができるでしょう。

午後入試はお子さんの状況を見極めて



--午後入試についてはどのようにお考えですか。

小川氏:お子さんが午後入試を受けて体力面とメンタル面ともに乗り切ることができるのかどうかを、見極めて決めたほうがいいでしょう。午前中に何日間も連続して受験するだけでも体力的には負担がかかります。

 また、午後入試を受験しない方も含めて、試験が終わった後に、通っている塾がどのような対応をしてくれるのかも確認しておきましょう。たとえば当日自習室が開放されているのであれば、試験後は塾で少し勉強をしてから帰ってくるなど、お子さんに合った当日の過ごし方を事前に考えておいてほしいです。

受験に成功する子、失敗する子の特徴と保護者の役割



--受験に成功するお子さんの特徴はありますか。

小川氏:2つの特徴があります。まず、自分が成功するイメージができていることです。たとえば過去問の点数が悪いと、できていないところに目が行きがちですが、保護者はまず褒めることを意識してみてください。「ここが解けているね」というように、できているところを褒められた経験があると、うまくいきそうなイメージが膨らみ、自信を持って入試に臨むことができます。

 もう1つは、生活リズムをきちんと保てていることです。基本的には直前期も学校に通って生活のペースをあまり変えず、十分な睡眠と食事をとって、いつもどおりの状態で受験に臨むことができるといいでしょう。

--失敗するお子さんの傾向はありますか。

高野氏:力のあるお子さんに多いのが、焦って解き始めてしまい、比較的やさしい最初のほうの問題を落としてしまうことです。そういう方は、まずは深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから問題に取り組んでほしいと思います。

小川氏:チャレンジ校か安全校かで、お子さんの気持ちが変わってきます。そのため、保護者はお子さんがどのような気持ちでそれぞれの学校の入試に臨みそうかを想像したうえで、声かけやサポートをしてほしいと思います。そうすることで、本番で力が出せなかったという状態を、防ぐことができるのではないかと思います。

入試が始まってからも子どもは伸びる



--ラストスパートの時期に入ります。これからの過ごし方についてアドバイスをお願いします。

高野氏:算数は、今から難しい問題にチャレンジするよりも、今は解けていないけれどももう少しで解けそうな問題に注力したほうがいいでしょう。難しい問題を解けていないと不安になるとは思いますが、入試は、全問正解しなくても合格できます。すべての教科において合格者平均点を目指すよりも、得意科目では合格者平均点を、苦手科目では受験者平均点の獲得を目指すことが一つの基準になると思います。

小川氏:模試の成績はよくなかったけれど、過去問は得点できて合格できたというお子さんもいるので、過去の偏差値は気にしすぎないでほしいと思います。また、直前期の2~3週間で伸びたお子さんや、入試を受けながら成長していくお子さんを今まで見てきました。入試が終わる最後の最後まで、お子さんが力が出し切れるよう保護者は万全のサポートをしてほしいと思います。

--ありがとうございました・

 入試本番を直前に控え、未だ併願校が確定していない受験生も多い。保護者は受験校の問題傾向や形式、校風、日程などを踏まえて、お子さんに合った併願校選びをしてほしい。また、お子さんの特性を踏まえた声かけや今後の学習については、塾の先生に相談するなどして、積極的に塾を活用することで保護者も安定した気持ちで受験に臨むことができそうだ。
《佐田優佳》

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