四谷大塚に聞く【中学受験2018】首都圏入試の傾向と合格へのアドバイス

 首都圏最大規模の公開模試「合不合判定テスト」の受験者データにもとづいた2018年度中学入試の志願者の傾向や人気校の理由、直前期の子どもへの接し方などについて、四谷大塚情報本部 本部長の岩崎隆義氏に聞いた。

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四谷大塚情報本部 本部長の岩崎隆義氏
  • 四谷大塚情報本部 本部長の岩崎隆義氏
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 2月1日の東京・神奈川の中学入試解禁日まで残り50日を切った。一部の学校ではすでに入試が始まっており、いよいよラストスパートの時期に入る。首都圏最大規模の公開模試「合不合判定テスト」の受験者データにもとづいた2018年度中学入試の志願者の傾向や人気校の理由、直前期の子どもへの接し方などについて、四谷大塚情報本部 本部長の岩崎隆義氏に聞いた。

大規模模試から見える人気校と傾向



--2018年の首都圏中学入試の傾向について教えてください。

 2018年度入試の大きな変更点として、八雲学園・青山学院横浜英和・文化学園大杉並の3校が男女共学化します。どの学校も男女別の募集定員の公表をしていませんが、いずれにしても男子が新たに加わることにより女子の定員は減るため、女子の難易度が上がる可能性は高いでしょう。

 また志願者の傾向については、四谷大塚主催の首都圏最大規模の模試である「合不合判定テスト」の受験者データが参考になると思います。2017年11月実施回の受験者が第一志望校に選んだ上位10校と、志願者数が多い上位5校をお伝えします。

男子人気校:第一志望校と併願校



 まず第一志望校に選ばれた上位10校は、男子は早稲田・武蔵・早大学院・開成・芝・浅野・慶應普通部・麻布・早実・海城です。

 そして、志望順位に関わらず志願者が多い上位5校、つまり併願校も含み多く選ばれている学校は、栄東A日程・立教新座・市川・芝(2回目入試)・浅野です。

女子人気校:第一志望校と併願校



 女子の第一志望校上位10校は、女子学院・吉祥女子・豊島岡女子学園・歐友学園・洗足学園・青山学院・雙葉・広尾・香蘭・早実です。昨今、女子校の人気が低下していると言われていますが、女子学院や吉祥女子、豊島岡学園などの上位校は相変わらず人気があり、難易度が高いことに変わりはありません。

 志願者が多い上位5校は浦和明の星・栄東A日程・頌栄・豊島岡女子学園・淑徳与野となり、1月入試を実施する学校(浦和明の星・栄東A日程・淑徳与野)が多くランクインしています。

保護者にとって魅力的な学校



--多くの受験生に選ばれている学校の魅力とは何でしょうか。

 人気のある学校の共通点は、勉強に力を入れていることはもちろんですが、部活動や日頃の生活面など勉強以外の面も充実している点です。中学受験は親子で臨む入試と言われますが、大学受験はお子さんが主体となって取り組む必要があるため、今後は保護者が手取り足取り教えるのではなく、お子さんに自ら考えて行動するよう促し、いずれは親離れさせることも必要だと思います。そのため、生徒の主体性を育む環境が整い、人間力を養っていくような学校こそが保護者にとって魅力的な学校なのではないかと思います。

多様な授業を展開する大学附属校に注目



--大学附属校の人気はいかがでしょうか。

 第一志望校に選ばれた上位10校に続く学校として、男子は明大中野や法政大学の附属校、女子は立教女学院や学習院女子などがあり、男女ともに大学附属校を志望する傾向が高くなっています。

 その要因は大きく2つあり、1つめが2016年度入試より始まった定員管理厳格化により、早稲田や慶應、明治、青山学院、立教、法政、中央などの人気私大でも合格者数が絞り込まれたことにあります。難関私大の難易度が上昇したことで、内部進学できる附属校を選ぶ傾向がより強くなっています。

 2つめは附属校が大学受験に捉われない多様な授業を展開していることです。たとえば進学校と附属校の高校3年生の選択科目を比較してみましょう。進学校では通常、センター試験の選択科目に合わせて授業を選択しますが、附属校では英語以外にも多くの語学を選択できたり、高大連携が進む学校では高校生のうちから大学の授業を受けることができるなど、幅広い教養を身に付けることができます。

 特徴的な授業の例として、明大中野八王子が高校3年生対象に会計士志望者のための講座を設置しています。このように、将来目指す進路に向けて、いち早くスタートを切ることができるのは附属校ならではの魅力だと思います。

四谷大塚情報本部 本部長の岩崎隆義氏

多様な授業を展開する大学附属校に注目



--公立中高一貫校の状況はいかがでしょうか。

 公立中高一貫校のみを志願するのではなく、私立の併願校として受験する児童が多い印象を受けています。出願倍率は各学校ともに5~6倍前後の高倍率で安定してきていて、2018年度も大きな変化はないのではと考えています。

 また、近年は特に都立中高一貫校の人気が注目されていますが、同日に入試のある学芸大学附属やお茶の水女子大学附属などの国立大学附属校は志願者が減っているため、これらの学校も狙い目ではないかと考えています。2月3日に公立中の受験を検討している方は、国立附属の受験も視野に入れてみてもいいかもしれません。

大学入試では中高時代の体験が鍵となる



ー大学入試制度改革によって入試が変わりつつありますが、これからどのように準備をしていけばいいのでしょうか。

 東大や京大の推薦入試や、各学校で定員枠を増やしつつあるAO入試や自己推薦入試など、自分の考えを記述する形式の入試では、18年間でどのようなことに興味・関心を持って生きてきたのかが問われます。そのため、中高の多感な時期こそ、勉強だけでなくさまざまな体験を積んで、幅広い視野を持って学校生活を送ってほしいです。人の興味・関心は原体験から育つもので、そこから将来の進路選択のきっかけも生まれるでしょう。

お子さんを褒めることが大切



--入試直前期、保護者はどのようにお子さんに接すればいいでしょうか。

 お子さんの可能性を信じて、褒めてあげることがとても大切だと思います。お子さんが勉強していて楽しい、もっと頑張ろうと思うのは、やはり保護者や先生から褒められたときです。期待している我が子には、他人と比べて厳しく指導をしがちですが、人と比較をするのではなく、以前のお子さんと比較して、お子さん自身が成長したところを褒めてあげてください。

 たとえば1か月前のお子さんと今のお子さんを比較をすれば、小さなことだとしても、進歩している部分は必ずあると思います。

--成績が芳しくなく、褒めるところがないという場合にはどうしたらいいのでしょうか。

 お子さんの行動自体を褒めるということを意識してみてください。たとえば早起きして勉強を始めたり、机に向かう時間が長くなるなど、成績アップにつながりそうな行動をしたときに褒めてあげてください。

 褒められると、お子さんはその行動を続けようとします。最終的には、保護者が言わなくても、自発的にお子さんが勉強をするようになることが理想です。受け身でやる勉強よりも、自ら進んでやる勉強のほうが、理解が深く、定着率も高いものです。

 また、入試期間中も1日が終わったら、まずはその日の試験を受け切ったお子さんの頑張りに対して労いの言葉をかけてあげてください。

 ときには、保護者の言うことを素直に聞いてくれないということもあると思います。そのようなときには、塾の先生からの声かけが効果的です。信頼できる先生に相談して、先生から声かけをしてもらうなど、積極的に塾を活用していってほしいと思います。

--最後に、保護者へメッセージをお願いします。

 入試結果はもちろん大切ですが、進学先でどのように頑張っていくかも、これからのお子さんにとっては重要です。中学校に進学し、高校生・大学生・社会人になってからも、人は成長するために一生学び続けなければなりません。そのため、自分から主体的に学ぶ力を身に付けさせるという点も意識して、お子さんに接してほしいと思います。

--ありがとうございました。

 日頃から自分で考える習慣を育んでいくことが、中学入試はもちろん、変わりつつある大学入試や社会に対応できる力を養っていくことになるだろう。普段の勉強はもちろんのこと、中学入学後の部活動や課外活動などさまざまな活動に主体的に関わっていくことが、大人になってから自分の足で社会を生きていくための力となりそうだ。
《佐田優佳》

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