奨学金の返還義務、延滞者の事前認識は5割

 日本学生支援機構(JASSO)は平成30年3月30日、平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果を公表した。奨学金延滞者のうち、申込手続きを行う前に返還義務を認識していた割合は50.5%。無延滞者の89.1%に比べて、35.6ポイントの差があることがわかった。

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奨学金申請時の書類作成者
  • 奨学金申請時の書類作成者
  • 返還義務を知った時期
  • 返還義務を知った時期(延滞者)
  • 延滞が始まった理由(きっかけ)
  • 延滞が継続している理由
  • 返還期限猶予制度の認知状況
  • 返還期限猶予制度をどこから知ったか
  • 奨学金はどのように役に立ったか
 日本学生支援機構(JASSO)は平成30年3月30日、平成28年度奨学金の返還者に関する属性調査結果を公表した。奨学金延滞者のうち、申込手続きを行う前に返還義務を認識していた割合は50.5%。無延滞者の89.1%に比べて、35.6ポイントの差があることがわかった。

 JASSOでは、奨学金の返還者の属性を把握するため、毎年「奨学金の返還者に関する属性調査」を実施。平成28年度調査の対象は、平成28年11月末において奨学金返還中で、奨学金返還を3か月以上延滞している者(延滞者)と、奨学金返還を延滞していない者(無延滞者)。調査時期は平成29年1月。無作為抽出された対象者のうち、延滞者2,838人、無延滞者2,402人から回答を得た。

 奨学金申請時の書類作成者は、延滞者では「親(または祖父母などの家族、親戚)」39.0%がもっとも多く、ついで「奨学生本人」33.2%、「本人と親など」21.5%。一方、無延滞者は、「奨学生本人」52.0%がもっとも多く、ついで「本人と親など」24.7%、「親」21.7%だった。無延滞者は延滞者と比べて、本人が書類作成に関わっている比率が高い傾向にある。

 返還義務を知った時期について、無延滞者の89.1%が「申込手続きを行う前」と答えているのに対し、延滞者では50.5%と約半数にとどまっている延滞者は申込手続きまでの返還義務の認識が十分でなく、延滞者の11.5%は「延滞督促を受けてから」知ったと答えている

 延滞者に延滞が始まった理由(きっかけ)を尋ねると、「家計の収入が減った」69.2%、「家計の支出が増えた」43.0%、「入院、事故、災害などにあったため」19.2%、「忙しかった」14.3%など。延滞が継続している理由では、「本人の低所得」64.5%、「奨学金の延滞額の増加」47.5%、「本人の借入金の返済」30.9%などが多い。そのほか、親への経済支援や親が返還する約束しているといった「本人親の経済困難」は43.2%だった。

 返還期限猶予制度の認知率は、延滞者で合計72.0%、無延滞者で合計62.8%。ただし、延滞者の51.2%は「延滞督促を受けてから知った」と回答。「奨学金に申し込む前から知っていた」「返還が始まる前までには知っていた」をあわせた認知率に限ると、無延滞者33.0%に対して、延滞者では4.6%と大きな差があった。

 猶予制度を認知している回答者に、「猶予制度をどこから知ったか」を質問すると、延滞者は「機構(旧日本育英会)からの通知で」「相談センターに電話して」「債権回収会社から」などが多く、無延滞者は「返還のてびきを読んで」「奨学金申請時・採用時の資料」「学校の説明会で」などが多い。延滞者は無延滞者と比べ、猶予制度を知るタイミングが遅め、かつ受動的な傾向にある。

 なお、平成28年度調査では「奨学金がどのように役に立ったか」について、延滞者には初めて質問したという。延滞者の58.8%は「奨学金のおかげで進学可能となった」、50.1%は「家計の負担を軽減できた」と回答。無延滞者でも「家計の負担を軽減できた」64.7%、「奨学金のおかげで進学可能となった」50.8%となっており、JASSOは「いずれも奨学金が有効に活用されていることが確認できた」とコメントしている。
《黄金崎綾乃》

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