浜学園に聞く関西【中学受験2019】過密なスケジュールによる短期戦

 2019年度の関西中学入試はどうなるのか? 志願傾向や人気校の動向はどうなっているのか? 灘中をはじめ関西の難関中学に多くの合格者を輩出している浜学園の山田晃一氏に話を聞いた。

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浜学園の山田晃一氏
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 関西エリアの中学受験解禁日である2019年1月12日まで2か月を切った。2019年度入試はどうなるのか? 志願傾向や人気校の動向はどうなっているのか? 灘中をはじめ関西の難関中学に多くの合格者を輩出している浜学園の山田晃一氏に話を聞いた。

午後入試の導入増加



--2019年の関西中学入試の傾向について教えてください。

 実受験者数は、従来どおり微減傾向が続くと思われますが、多くの受験生が、その第1志望校を受験すると思われる統一入試開始日(初日)の午前入試における受験率は、最近4年間連続して上昇しています。2020年の大学入試改革に向けた対応で、どの学校も特長を出そうと知恵をしぼって努力していることもあり、この傾向は続く可能性があります。

 また、近年の入試は日程の早期化プラス短期化により、受験生にとって大変過密なスケジュールによる短期戦の様相を示していますが、その中で午後入試の導入が進んでおります。

 関西で中学入試を実施する143校のうちで、午後入試を実施する学校は全体の半分を超えてきました。こうなると、以前のように多科目で長時間の入試に面接をプラスするなど、「他校を受けさせない」ことを意識した入試スケジュールを設定することは得策ではなく、むしろ午前の入試と午後の入試を時間的にスムーズに結んで、受験生が両方を受けやすいように工夫して双方が生かし合ったほうが、結果的に受験生を増やすことになります。

 また、近年顕著になってきた傾向として、下記のようなものがあり、これが来年度はさらに増加します。

・選抜方法の変更をする学校
・コースの新設ならびに改編をする学校
・英語選択入試を導入する学校
・英検等の資格を入試の加点対象とする制度を導入する学校
・「適性検査型」「自己推薦型」の入試を導入する学校


 2018年度での成功例のひとつとして兵庫県の親和中があります。同校は比較的、穏健なイメージがある伝統校ですが、最近こうした新しい傾向を積極的に取り入れ、募集に活気をもたらすことに成功しています。こうした学校の動きは今後も続くでしょう。

 来春、選抜方法の変更と午後入試への対応で注目される学校のひとつとして、神戸海星女子学院中をあげます。

 兵庫県の女子校の中では、神戸女学院に次ぐ人気と信頼の厚さを誇る名門女子校ですが、このたび来年度入試から3科・4科の選択制を導入し、面接を廃します。3科受験もでき、午後からの受験への時間的な配慮をしたことで、一気に受験がしやすくなりました。

 また、Web出願(インターネット出願)を実施する学校も増え続けています。来春に向けては、近畿2府4県の6割近い学校が導入することになります。この傾向もますます進んでいくと思います。

難関国立大・医学部合格実績のある一貫校が人気



--生徒さんに人気の高い関西の学校について、志願傾向など、特徴があれば教えてください。

 関西では、いわゆる旧帝大系の難関国立大学や、医学部医学科にたくさん合格者を出す中高一貫校に人気が集まる傾向があります。

 したがって当然ながら、灘中、甲陽学院中、神戸女学院中、大阪星光学院中、四天王寺中、東大寺学園中、西大和学園中、洛南高附属中、洛星中など以前から有名な進学校の人気は衰えることがなく、中学入試全体を牽引する原動力となっています。

 それに次ぐ人気をもつ学校もたくさんありますが、浜学園で90名超の合格者を数えるところをあげると、大阪の清風南海中、高槻中、金蘭千里中、清風中、明星中、大谷中、開明中、大阪桐蔭中。兵庫の六甲中、須磨学園中、親和中。京都の東山中。奈良の帝塚山中などです。

--近年、特に人気が高まっている学校がありましたら教えてください。理由は何でしょうか。

 紹介したい学校はたくさんありますが、全部あげるわけにもいきませんので、浜学園からの受験者ならびに合格者が多い学校の例を2つと、注目されている国立大附属校を1つあげておきます。

高槻中



 高槻中は、関西の中学入試では最近よく話題に上る学校です。もともと大阪の男子校としてかなりの存在感を保ち続けてきた学校でしたが、大阪医科薬科大学と同じ法人となり、医学系志望の受験生にアピールすると共に、共学化によって優秀な女子生徒を集めるようになりました。これが男子生徒にも良い刺激となって学内の雰囲気も活気を増しているようです。また、「学びの森」構想に基づいて進行中の施設の充実ぶりも目覚ましく、特にオックスフォード大学の図書館をイメージした荘厳な図書館は、一見の価値ありといえます。

金蘭千里中



 金蘭千里中は、浜学園からの合格者数が過去3年間連続して上昇し続けている学校です。以前から雑誌などでは「お得感のある学校」としてよく取り上げられ、毎朝実施される名物の「20分テスト」に代表されるように「厳しい学校」の定評がありましたが、50周年の学校改革では、従来控え目であったクラブ活動を奨励するとともに、学校行事も「本物に触れる」機会を増やすなど、さらに内容を充実させます。中学全体に探究型学習を導入するなど、大学入試改革への対応も増強予定です。

 従来からの学力面での強みはそのままに、学校生活の楽しさがアップして魅力が増したことで、今後ますます注目されます。

神戸大学附属中



 神戸大学附属中も開校以来、ずっと高い人気を保っています。大学のネームバリュー、優れた環境、便利なアクセス、軽い経済負担…とプラス要因が揃っています。

 私立の中高一貫校に比べると学力を鍛えるという面でのインパクトは控え目ですが、周辺地域の成績優秀者が多数流入しているため、高い学力集団で授業が展開できるという点が有利です。灘中や甲陽学院中などの最難関校を受験する人が、京都や奈良の最難関校を併願受験することは多いですが、兵庫県の地元の方は、必ずしも遠方の京都や奈良の学校へ通われませんので、その分神戸大学附属中は恰好の受け皿となっています。

 この学校は、周辺の私立中高一貫校にとって、大きな脅威となっていますが、その分刺激となる効果も大きく、地域の中学入試全体を活気づけることにもなっています。

--「グローバル/国際バカロレア」「STEM(理数教育)」「医学部進学コース」等を掲げる学校が増えつつあると思いますが、保護者やお子さまの興味関心はいかがでしょうか。

 「医学部に強い」ことをアピールするコース設置については、従来からある傾向です。関西の中学受験は、規模としては関東の3分の1くらいですが、その割にお医者さんの子弟の割合が多く、「医学部」の名を掲げることで、募集に何らかのプラス効果を期待することはできます。ただ、学校のトップクラスの入学者の成績が下降気味であったり、卒業時の大学合格実績が低迷してきたことで下がったイメージを改善するために自校の最高レベルのコースの「看板替え」として設置をする場合、内実がともなっていないと効果は長続きしないでしょう。

 「STEM(理数教育)」は、現代のコンピューター社会において、AIやロボットなど、人間に代わって仕事をするものが増えて来た中で、平凡な能力では生き抜いていけないという危機感を背景に、独創的な発想をもち、創造的な仕事ができる人材を育てることが目的ですが、中・高生の段階では、いきなり技術的に難しいレベルを扱うことはできないため、まずその基盤として、「論理的思考力」や「問題解決力」をつけさせるカリキュラムを組むことが、やはり中心になります。

 これは時代のニーズに合っていることですので、ある程度の関心を集めることはできますが、しっかりした私立中・高であれば、すでに以前から始めていることですので、いかに差別化を図れるかが問われるところです。

 「グローバル」についてはよく論じられるので、ここでは「国際バカロレア」について述べます。一般に「国際バカロレア=英語」と捉えられる方も多いと思います。すべて英語で授業を行っている学校もありますが、実際は日本語で行う授業もたくさんあります。

 特に、高校からではなく中学から始めるMYP(Middle Years Programme;中学レベル)の普及は、まだまだこれからで、元々母語で行うことになっていますので、英語力の向上のために行うというよりは、論理的思考力やコミュニケーション力の向上が主体となりますので、未来型教育への対応としても大きな価値があります。

 国際バカロレアが掲げる10の理想の学習者像の中にある、「探求する人」や「挑戦する人」、「バランスの取れた人」などの目標は、大学受験だけでなく、これからの不確実な時代を生きていく上で、必須となる姿勢だと言われています。

 米デューク大学のキャシー・デビッドソン氏が2011年8月に、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と述べていますね。

 その小学生は、もうすでに中学生になっているわけですが、「今ない職業に就くためには、先人の経験や知識を覚えるだけではいけない」ということを早くから学校の先生が意識して、日頃から生徒や保護者に理解を促しつつ、実際に課題解決型の授業を実践し、試行錯誤する中で、国際バカロレアを導入する、という自然な流れであれば、その教育を受ける中で着実に生徒達も変わり、教える先生も授業の質も変わってきます。

 バカロレアを掲げるだけで生徒や保護者が関心をもってくれるとはいえませんが、学校が日頃実践していることとかみ合っていれば、大きな魅力になると思います。

 ちなみに、私が知っているある中高一貫校で上記のような自然な流れで「国際バカロレア」を導入したケースでは、今秋実施した受験生対象の学校行事(プレテスト)で、参加者が昨年度より6割以上も増えました。

--難関校の倍率はどのくらいでしょうか。

 灘中をはじめとする超難関校は、抜群の人気がありますが、それなりに腕に覚えのある受験生でなければ挑戦しません。それでも例年3倍くらいの倍率はキープしています。

 それに次ぐ人気の難関校も、2倍以上の倍率であることが多く、たとえば、第1志望で超難関校にチャレンジする受験生が、第2志望で自分の実力で十分に対応できる学校を選ばなければ、第2志望といえどかなりのリスクを覚悟することになります。ですから、超難関校を受験する生徒さんは、午前と午後の受験を両方利用しつつ、数校を受験されることがよくあります。

中受に向くのは「気分の切り替えができる子」



--受験に成功するお子さまの特徴があれば教えてください。

 一言でいうと、「気分の切り替えができる子」です。

 たとえば、「この学校以外は受ける価値がない」とか「こんな成績で、どうするつもりなの?」「もう、あとがないわよ!」というようにお子さまを追い詰めるやり方で日頃受験勉強をさせているご家庭があったとします。

 そういうご家庭のお子さまは、たまたま初戦から勝ち戦で、その勢いに乗って残りの入試も全部合格というパターンで大成功に終わることもある反面、最初の入試で失敗すると、精神的に不安定になり、その後の入試では本来なら楽勝で合格できるような学校までことごとく不合格となる悲劇的なケースも見られます。

 ですから、保護者としては内心「絶対にこの学校に合格してもらわないと!」と思っていたとしても、それを表に出すのではなく、むしろ「中学入試は、大学を経て社会に出るまでの最初のプロセスに過ぎない」という考えをもち、「だめならだめで、仕方がないわ」「結果はともかく、ベストを尽くしてみて!」という風にポジティブに指導し、ストレスに強く、パニックになりにくい心を育てることです。

 つまり、お子さまがもともともっておられる特徴よりは、むしろ保護者や先生など周囲でサポートする方たちの指導の仕方が重要なのです。

--通塾開始時期、志望校決定時期など、成功パターンがあれば教えてください。

 塾の先生は、一般に「中学入試を考えるなら、遅くとも小学4年生から本格的な受験塾に通ったほうがよい」と言います。

 いつから塾に通い始めるべきかについては、もちろん個人差はあるわけですが、小学校に入って3~4年も経てば知らず知らずのうちに、学習科目によって「得手不得手」や「好き嫌い」が生じていることが多いものです。

 中学入試をしないならば、「私は算数が苦手です。国語はまあまあです。理科はいつもテストで満点です。社会は、歴史は好きで、地理は嫌いです。」などと言っていても何の問題もありません。

 しかし、中学受験をするならそうはいきません。たとえば、超難関校の多くでは、入学試験の配点が、算数と国語が200点満点、理科(または社会)は100点満点といういわゆる「傾斜配点」というものがあります。そういう学校を受験するなら、算数と国語の両方または、少なくとも一方が抜群に良くできる必要があります。算数あるいは国語の一方が苦手ということになると、入試という勝負の土俵に上がることさえもできません。

 ですから、まずは算数や国語が苦手科目にならないように努めた上で、理科や社会の実力にも留意して、学力のバランスに問題があれば、できるだけ早く改善しておく必要があります。

 そのためには、小学校4年生の春から大勢の生徒が受ける模試などの成績を見ながら、科目による学力のバランスをチェックし、整えておくのがベストです。

 次に、志望校決定の時期ですが、上記の開始時期と関連して、早ければ小学校4年生の春に最初の目標校をもつことが考えられます。

 その後のタイミングとしては、小学5年生の春、あるいは遅くて小6の春までに第1志望校を決めることになるでしょう。新学期は、気分を切り替えるのにもっとも適しています。

 志望校を決めるのがいつが一番いいかは、その学校のレベルと本人の実力の兼ね合いにもよります。あまりにかけ離れていると挑戦する気がおきないかも知れません。

 ただ、小4生のときに決めると、早くから具体的な学校のイメージができ、学力目標を立てて勉強がしやすいというメリットがあります。が、いずれにしても本格的に「私の志望校」という実感を帯びてくるのは、中学入試を終えた先輩の小6生を見送って、代わりに自分たちが、受験生になったときです。

--6年生は入試に向けてラストスパートの時期に入ります。これからの過ごし方についてアドバイスをお願いします。

保護者の皆さんへ--最後まで前向きに!



 お子さまが今までに受けた模擬テストで成績が良かったものや、問題集の難問が見事に解けたときの解答が書いてあるノートなど「成功体験」を思い起こせるようなものを勉強部屋などの壁に貼ってください。入試が目前に迫ると恐怖感で圧倒され、落ち着いて勉強できなくなることもあります。そんなとき「自分はこんなにできるんだ」と自分に言い聞かせ、恐怖を克服できるようなイメージトレーニングがしやすい環境を整えてあげてください。また睡眠時間はしっかりとらせてください。

 それから、マイナス志向の話を絶対にしないこと。入試直前になっても、親の目から見るとまだ理想からは程遠い状況だと思うときもあるでしょう。しかし、それをお子さまに指摘するとかえって反発を招き逆効果となります。親は一歩退いて見守り、理想の5割もできていたら良しとするくらいが適当です。そして、常に前向きなアドバイスをしてあげてください。

受験生の皆さんへ--生活のリズムを崩さないこと



 年末年始はクリスマスから始まって大晦日にお正月と、自分の身の回りはお祭り気分で騒がしくなります。しかし、そういう雰囲気につられて、2~3日でも生活のリズムを崩してしまうと、それを取り戻すだけで何日もかかってしまいます。受験生にお正月はありません。それは合格発表の後にやってくると思って頑張りましょう。

 入試直前の1週間は、受験生の皆さんのテンションは上がっていますが、その割に集中力は続きません。したがって、家での勉強時間は減らし、小刻みに時間設定された塾の時間をなるべく利用して、規則正しい勉強のリズムを作るようにしましょう。

 また、受験はたいてい朝から始まるので、夜更かしをせず、「朝型」の生活に体を保っておくことが大切です。

 もうひとつ大切なことは、勉強するときは、ちゃんと机に向かって座り、鉛筆を握って、ノートに書きながらすることです。現代社会では、パソコン、タブレット、iPadなど昔はなかったような便利な道具がたくさんあります。ソファに寝そべってそういう画面に映った内容を見て勉強する人もいるでしょう。特に暗記事項などは、それで問題ないようにも思えます。

 しかし、受験勉強をするときには一般に電子機器の使用はあまりお勧めしません。中学入試は、あくまで紙の答案用紙に鉛筆で書いて答える試験です。受験の直前にやったのと似た問題が本番の受験で出題されることもあります。家でその問題を解くときに、きちんと鉛筆でノートに書いてやった場合は、そのときにたどった思考の過程がそのノートに刻まれています。

 ですから、本番の受験でその問題に出会ったときに、そのノートに書いたことが、自分が問題をやったときの記憶を呼び覚まし、より生き生きと鮮明に思考過程を再現してくれるのです。

 勉強はいつも鉛筆を握ってされることをお勧めします。

--ありがとうございました。

 午後入試や多様な選抜方式が増えている中学入試。大変過密なスケジュールによる短期戦は幼い受験生にとって厳しい経験でもあるが、選択肢の幅やチャンスは確実に広がってきている。入試まで残りわずかとなったが、受験生親子の皆さんによって、良い入試になるよう願いたい。
《編集部》

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