おおたとしまさ氏に聞く、中学受験で陥りやすい「最悪な親子関係」…笑顔で12歳の春を迎えたい親子へ

 増加傾向にある中学受験。がんばりすぎない・子どもを潰さない・親子で成長できる…“笑顔”で合格のための秘訣を、教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが語る。第1回目は「親子関係」について聞いた。

教育・受験 小学生
おおたとしまさ氏に聞く、中学受験で陥りやすい「最悪な親子関係」…笑顔で12歳の春を迎えたい親子へ
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 増加傾向にある中学受験。がんばりすぎない・子どもを潰さない・親子で成長できる…“笑顔”で合格のための秘訣を、教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが語る。第1回目は「親子関係」について聞いた。

-- 中学受験にはどうしても1点、2点を争う過酷なイメージがつきまといます。首都圏では4年連続増加傾向にあり、合格実績のある大手塾では定員が一杯で入れない校舎もあると聞きます。中学受験は最近ますますヒートアップしてきているのでしょうか。

 数だけで見れば受験者より募集定員の方が多いので(*)、中学受験も「全入時代」のはずなんですが、難関校狙いの子どもたちの間では競争がより熾烈になっています。昔の小学生に比べたら今の小学生のほうが格段にサッカーがうまい、とイメージすればわかりやすいかもしれません。僕たち親世代の中学受験は、今の子どもたちと比べれば牧歌的なものでした。ところが今は、受験勉強に求められるスピードも量も格段にアップしています。象徴的な出来事だったのは、1980年代以降、中学入試対策のスタンダードとされてきた四谷大塚の「予習シリーズ」が、2012年に大改訂されたことです。もともとは6年生の1学期まででやっていたことを5年生までに終えるハイスピードカリキュラムに組み替え、取り扱う問題の難易度も大幅に上がったのです。
*首都圏模試センターによると、2018年の首都圏における中学受験者総数は推定約4万5,000人に対し、実施の中学入試の募集定員総数は4万8,171人。

 ただ一方で、最近では偏差値至上主義ではない方向に変わりつつある手応えを僕は感じています。少しでも偏差値が上の学校を狙おうとするのではなく、わが子に合った学校を選ぼうとする保護者が増えてきています学歴を否定しているわけではないものの、それぞれの学校が持つ文化的な価値を理解できるようになってきている。学校を見る目が肥えてきた感じがしますね。

--おおたさんのところには親御さんからの相談も多いそうですが、その中で最近気になることはありますか。

 まだ4年生くらいの頃から「もう、うちの子どうしよう?!」と悩んでいる親御さんが結構多いんですよ。早くから気合いが入り過ぎていて、大丈夫かなぁと。4年生って塾に行く日数も宿題も少ないし、子どもはまだまだ遊びたい時期だし、その先ははるかに長い。

 親の方ばかり「どうせやるなら勝ちたい」という気持ちになり、気合いと根性の世界にいつの間にか入り込んでしまうと、子どもは訳のわからないうちにものすごい負荷をかけられることになってしまいます。

--そもそも中学受験を始めるきっかけとして、子どもが「友達が通っていて楽しそうだから」という気軽な気持ちで始めたものの、親ばかりがどんどん前のめりになってしまうという状況ですね。

 気軽に始めるのはいいと思うんですよ。ただ、何もわからないまま足を踏み入れたものの、自分たちに軸が無いまま、周囲に流されてしまうのが一番よくない。親がわが子を見ないまま、「やっぱり御三家とか偏差値60以上の学校じゃないとダメよね」って周りが言うと、あぁそうなのかとそこだけに突き進んでいってしまうのが最悪の状態です。ゴールありきで「あぁすごいわね」「〇〇に受かったのね」と言われるような学校を目指す。その目的に合わせるように子どもを勉強させるのは、親のエゴでしかありません。その家庭からは笑顔が消えてしまいます。

「自分たちに軸が無いまま、周囲に流されてしまうのが一番よくない。」

--危険だなと思う親には何か共通点がありますか?

 大きく2つのタイプに分かれます。ひとつは、学歴コンプレックスを持つタイプ。自分には学歴がなくて苦労したという親は、子どもに何としても高学歴を授けようとします。もうひとつは、自分自身も難関校、一流大、一流企業といった負け知らずのタイプ。特に気をつけたいのは、高校や大学から名門校出身の人。自分の高校受験や大学受験の成功体験を12歳の子どもに求めてしまいがちです。「なんでこんな問題が解けないんだ」「ちゃんとやってないんじゃないか」と強い調子言われると、中高生なら無視したり、言い返すことで反抗し、自分を守ることができます。けれどまだ12歳だと「そうか、僕はバカなんだ」と正面からまともに受け止めてしまう。もろに傷ついてしまうんですね。

 実は、地方の高校受験は今でも偏差値が絶対の指標です。首都圏には私立校がたくさんあり、偏差値の良し悪しでは必ずしも判断できないほど私学文化は成熟しています。多少偏差値は下でも、この学校がいいという選び方をする家庭も少なくありません。ところが地方では、成績上位者から順に輪切りされて上位校へ進むので、わが子の中学受験でも偏差値だけを頼りに、ひとつでも上の学校に合格させたいと限界まで挑戦させようとするのです。いずれのケースも「学歴がないとまともな人生を送れない」という恐怖心を植え付けることで子どもをコントロールしようとします。

--そうなると、子どもはもちろん苦しいけれど、親も苦しい。行きすぎると教育虐待だとおおたさんは仰っていますが、中学受験が親子共にそんな辛い経験になってしまわないようにするにはどうしたらいいでしょう?

 自分たちにブレない軸を作っておくことです。どのレベルを目指してどれくらい頑張るのかを決めておく。そうすれば、塾の上位クラスの子が難しい課題をこなしていても「うちには関係ない」と割り切れます。あるいは「うちは課題が全て終わらなくても、夜の22時には絶対に寝る」とかね。

 軸が定まっていないと、あの子がこんなことやってるならうちもやらなくちゃ…とあれもこれも気になります。睡眠時間を削っても、遊ぶ時間がなくなっても、第一志望のためなら何をしてもいいというのは、もはや子どものための受験ではありません。

 もちろん、子どもの中に欲が出てきて、ここに入りたい!という気持ちが芽生えれば、甘やかしてばかりじゃなくて、現実としてはここまではやらなきゃいけないという達成目標を見せる必要はあります。けれど親が前のめりになって「ゴールありき」の中学受験にしてしまうと、そこが悲劇の始まりです。わが子の能力を考えないで無理にやらせるのは、在来線の線路に新幹線を走らせるようなもの。それはきついですよね。

 結果は、子どもがその子なりに一生懸命積み重ねたものであるべきです。親の手柄ではなく、あくまでもその子に力があるから合格するのです。

「結果は、子どもがその子なりに一生懸命積み重ねたものであるべきです。」

 4人の子どもを全員、最難関の東大理IIIに合格させたお母さんが有名になりましたが、あのお母さんに子どもを預けたからといって、誰もが東大理IIIに入れるわけではないはずです。もともと4人のお子さんには持って生まれた素晴らしい能力があり、その上でお母さんにも優れたテクニックがあったからでしょう。彼女の一番すごいところは、周りに何を言われようとも、わが子に合った自分なりのやり方をブレずにやり抜いたことだと僕は思っています。彼女から学ぶべきなのはテクニックではなく、ブレない姿勢なのです。

 インタビュー第2回「おおたとしまさ氏に聞く、中学受験『塾』との付き合い方…やめませんか?親の受験テク競争」へ続く。

中学受験「必笑法」 (中公新書ラクレ)

発行:中央公論新社

<著者プロフィール:おおたとしまさ>
 1973年、東京生まれ。育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートを脱サラ独立後、数々の育児・教育誌のデスクや監修を務め、現在は育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を所持。小学校教員の経験もある。著書は「ルポ塾歴社会」(幻冬舎新書)、「名門校とは何か?」(朝日新書)、「受験と進学の新常識」(新潮新書)ほか50冊以上。


《加藤紀子》

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