誠文堂新光社の「子供の科学★ミライサイエンス タイムマシンって実現できる?」より、夏休みの自由研究にもおすすめの「タイムマシン」のしくみについてご紹介する。
新幹線に乗せた時計を新幹線の外から見たらどうなる?
新幹線の外にいる人から見ると、新幹線は動いているので、時計の内部の光は斜め上に進んで上の鏡にぶつかり、斜め下に反射されて下の鏡に戻っていくように見える。斜めに進むので、2枚の鏡の間を往復する際に光が進む距離は、30cmよりも長くなるはずだ。
一方で、光の速度は誰が見ても同じになる(光速度不変の原理)。だから、1ナノ秒の間に光が進む距離は、やはり30cmだ。
そのために、新幹線の外にいる人が見ると、新幹線内の時計の光は1ナノ秒では2枚の鏡の間を往復できない。往復の距離が長くなったので、その分だけ長い時間が必要になり、1ナノ秒と少しかかって1往復して「カチリ」と時を刻むことになる。
だから、新幹線の外にいる人が新幹線内の時計を見ると、時計の進み方(カチリの間隔)が遅くなっているように見える。これは時計が狂ったからではないよ。新幹線といっしょに速く動く時計は時間の進み方が遅くなる、つまり速く動くものは時間の進み方が遅くなるんだ。
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新幹線の動きに合わせて光は斜めに進む
新幹線の中の人から見たナノ秒時計
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新幹線の中にいる人にとっては、ナノ秒時計はちゃんと1秒ごとに「カチリ」と時を刻んでいる。
新幹線の外の人から見たナノ秒時計
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新幹線は動いているので、ナノ秒時計内の光は、上の図のように斜めに進むことになる。だから光が上下の鏡の間を往復するためには、30cmよりも長い距離を進むことになる。
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タイムマシンはすでにあった!? 新幹線に乗って未来に行こう!
速く動くと時間の進み方が遅くなるといったけれど、どのくらい遅くなるのだろうか。もし新幹線に乗って東京から博多まで行けば、車内の人の時間は約10億分の1秒だけ遅れる。これは、新幹線の外では時間が10億分の1秒ほど早く進むということだ。だから博多で新幹線を降りれば、そこは時間が10億分の1秒だけ進んだ「未来」の世界になるよ。未来に行けるタイムマシンは、すでにあったんだ!
でも、10億分の1秒の違いがわかる人はいないので、速く動くと時間の進み方が遅くなるとはだれも思わなかったんだ。新幹線や飛行機、さらには現在の技術でつくれるもっとも速い宇宙探査機に乗って動いても、時間の遅れに気づくことは無理だろうね。
光の速度の99%の速さで飛ぶ超高速宇宙船(現在の技術でつくれる最速の宇宙探査機の1500倍の速度!)に乗ると、時間の流れる速さは約7分の1になる。だから、その宇宙船で宇宙を1年間(宇宙船内で測った時間)旅行して地球に戻ってくると、地球では7倍の7年間が過ぎているので、6年先の未来に行けるよ。
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宇宙旅行をすると未来の地球に行ける?
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時速300kmの新幹線で東京から博多まで行くと、時間が約10億分の1秒だけ遅れる。つまり、10億分の1秒だけ未来に行ける。
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光の速度の99%で飛ぶ宇宙船に乗ると
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光の速度の99%の速さで飛ぶ超高速宇宙船に乗ると、時間の流れる速さは約7分の1になる。その宇宙船で宇宙を「1年間」旅行して地球に戻ってくると、地球では「7年間」が過ぎているので、6年先の「未来の地球」に行けることになる。
<協力:誠文堂新光社>
発行: 誠文堂新光社/著:二間瀬 敏史
著者プロフィール:京都産業大学理学部宇宙物理・気象学科教授。1953年北海道生まれ。専門は一般相対性理論、宇宙論。京都大学理学部卒業、ウェールズ大学カーディフ校博士課程修了。ワシントン大学、マックス・プランク天体物理学研究所等を経て、1988年に弘前大学助教授、1991年に同教授。1995年に東北大学大学院理学研究科教授。2016年より現職、東北大学名誉教授。著書に『どうして時間は「流れる」のか』(PHP新書)、『ブラックホールに近づいたらどうなるか?』(さくら舎)、『重力で宇宙を見る』(河出書房新社)他。