英語の学びから考える力を伸ばす「TOEFL Primary(R)」横須賀学院小学校の活用事例

 横須賀学院小学校では1950年開校時より英語は必修科目。2015年度より全学年で英語の学習時間を週3時間設定し、2019年度よりTOEFL Primaryを導入した。その狙い、先生方、児童の変化について、小出啓介校長、英語科の阿部志乃先生とジョジェット・ウィルソン先生に聞いた。

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左から、横須賀学院小学校 英語科教諭 阿部志乃先生、小出啓介校長、英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生
  • 左から、横須賀学院小学校 英語科教諭 阿部志乃先生、小出啓介校長、英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生
  • TOEFL Primary  Step 1・Step 2 は、CEFR A1未満~B1レベルの英語運用能力を測るTOEFLファミリーのファーストステップ
  • 横須賀学院小学校 小出啓介校長
  • 横須賀学院小学校 英語科教諭 阿部志乃先生
  • 横須賀学院小学校 英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生
  • 英語の授業のようす
  • 左から、横須賀学院小学校  英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生、小出啓介校長、英語科教諭 阿部志乃先生
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 2020年度より小学校での英語教科化がスタートする。センター試験に代わる新テストとなる大学入学共通テストでも、英語の外部検定試験の導入が決まっており、まさに今、日本の英語教育は過渡期を迎えている。将来を見据え、我が子に英語力を早くから身に付けさせたいと保護者の関心も高まり、英語教育の低年齢化も加速する中、横須賀学院小学校では1950年開校時より英語は必修科目であり、2015年度より小学1年生から全学年で週3時間を英語の学習に充てている。

 これまで培ってきた英語教育の成果と、併設する中学校でのTOEFL Primary導入の実績を踏まえ、2019年度より小学校でのTOEFL Primaryを導入した同校。その狙いと、先生方、児童それぞれの導入後の変化について、小出啓介校長、英語科教諭の阿部志乃先生とジョジェット ・ウィルソン先生に聞いた。

TOEFL®ファミリーのファーストステップTOEFL Primary®



 TOEFLといえば、英語を母語としない人のための、英語のコミュニケーション能力を測定するテストのグローバルスタンダードだ。留学を考えるうえでは欠かせないテストとして、そのスコアは、英語能力の証明、入学や推薦入学、奨学金、卒業の基準として世界150か国10,000以上にものぼる大学などの教育機関で利用されている。留学のみの活用にとどまらず、教育機関等での学内単位認定や、入試優遇、各種プログラムへの英語力証明・出願要件、海外派遣選考の目安としても利用され、世界中でこれまでに約3,500万人以上が受験しているTOEFLファミリーのファーストステップがTOEFL Primaryだ。

TOEFL Primary  Step 1・Step 2 は、CEFR A1未満~B1レベルの英語運用能力を測るTOEFLファミリーのファーストステップTOEFL Primary Step 1・Step 2 は、CEFR A1未満~B1レベルの英語運用能力を測るTOEFLファミリーのファーストステップ

 英語を母語としない小中学生をおもな対象にデザインされており、英語運用能力の「伸び」を世界基準で測定したい学校や個人などに、幅広く活用されている。結果は合否ではなく、スコアとバンドレベル(段階別評価)で表示するのが特徴だ。スコアは、国際的な評価基準であるCEFR(*)に則って示され、さらにリーディングスコアは英語読書力を示すLexile®指数とも連動しており、海外留学、大学入試にも活用されるTOEFL iBTへ繋がっている。TOEFL Primaryでは、CEFR A1未満~B1レベルの英語運用能力を測ることができる
*CEFR:ヨーロッパ言語共通参照枠、英語力を評価する国際指標

「体験重視」の横須賀学院小学校の教育



 潮風が爽やかな横須賀の海沿いに位置する横須賀学院小学校は、中高一貫校を併設するキリスト教教育の私立小学校だ。鮮やかな色の花壇の草花や、生き生きとした児童の絵が出迎えてくれた。

--Webサイトからも国際色溢れ、英語教育に力を入れていることが伝わってきます。まず横須賀学院小学校の教育の特徴を教えてください。

小出校長:本校は小中高を通してキリスト教教育を実践する学校となっています。戦後すぐこの地に設立された青山学院の分校を地元の有志の方々が継承し、横須賀学院中学校、高校が1950年に開校され、その半年後に小学校も開校されました。児童は小さいうちから毎朝礼拝を行い、讃美歌を歌い、聖書を手にし、キリスト教の教えを生活、体験から学んでいます。クリスチャンになることを目的としているというよりも、キリスト教の教えから人生観や人間観を学ぶことを大切に考えています。キリスト教を日常の生活から学ぶことと同じように「体験重視」が本校の教育の特徴です。算数を例に言うと、円周率を覚えて計算することから始めずに、まず円の面積をどう出すか?という問いを児童たちに投げかけます。するといろいろな方法を自ら考え出し、1平方センチメートルの粘土を並べたり、ひもを巻いたりして、面積を求めようとします。私たち教師は最後の最後のところで円周率の計算に落とし込むので、児童はすっと入ってくる。英語を含め、どの教科でも根底では「体験」から学ぶということを重視しています。

横須賀学院小学校 小出啓介校長横須賀学院小学校 小出啓介校長

 小学校での英語教育は、英語の先生方が「英語を通じて言葉の学び方を教えている」という意識をもっていることが大変特徴的です。コミュニケーションスキル、グローバル教育といった言葉が良く聞かれますが、場を盛り上げるとかそういった端的な能力ではなく、英語を学ぶことから根拠をもった意見を示すことができる、人の意見を聞き、考えることができる能力が培われていくと考えています。言葉の学び方を学んでいるという姿勢と、コミュニケーションスキル、グローバル教育は繋がっていくと考えています。

--昨年度(2018年度)まで併設の中高一貫校に籍を置かれていた小出校長ご自身が、TOEFL Primaryを活用した中学校での英語教育の効果から、小学校でも導入を推進されたのでしょうか。

小出校長:中学校ではホームステイプログラムの前後に外部テストを受験して効果測定をするなど、複数の外部テストをニーズに合わせて活用してきました。さまざまな外部テストを英語教育に取り入れる中でTOEFL Primaryも導入し1年が過ぎます。最初は難しく戸惑っていた生徒もいましたが、同時期に始めたタブレットを使った一対一のオンライン英会話学習との相乗効果で、生徒自身から「自分の今の英語力を知りたい」という意欲が出てきました。我が校では「6・3・3制」ではなく「4・4・2・2制」の12年一貫教育を実施しているので、小学生からTOEFL Primaryを活用することで小学生から中学生への英語教育の接続をスムーズにできると考え、小学校の英語の先生方に勧めました。

小1から毎日英語を学習…外国語の学び方が自然と身に付く



--小学校での英語教育はどのように行われているのでしょうか。

阿部先生:2015年より小学1年生から全学年で週3時間英語を学習しています。1、2年生は20分授業を週4日と、45分授業を週1日とすることで毎日必ず英語に触れています。英語を20分学習した後は同じ「言葉の学び」として国語を学習しています。3年生からは45分授業を週3回実施しています。毎日英語を学ぶ機会のある生活をして5年目を迎えた現在の高学年の英語のスキル、コミュニケーションスキルの伸びは私たち教員の予想をはるかに超えました

ウィルソン先生:児童は海外の事を知ることや、新しい事を始めることにまったく壁がない、抵抗がありません。常に日本語ではないものがまわりにある状態で過ごしてきているので、ダイバーシティが自然に身に付いているのです。英語に限らず、私たち教員も、新しい事、新しい教え方などに挑戦するときは高学年の児童たちで試して、彼らができるのならほかの学年にもできるだろう、と常に高学年の児童たちがベースラインとなっています。また、児童同士で助け合う、チームとして活動しどう課題をクリアしていくかを協働で学習する、というコミュニケーションスキルが、私たちの指導がなくても英語の学びを通じて自然に向上してきました。このことも我々教員の予想を超えていました。

英語の授業のようす横須賀学院小学校 英語の授業のようす

阿部先生:コミュニケーションをとるときに言葉に頼りすぎないのは小学生の特徴だと思いますが、彼らのプライオリティはコミュニケーションを構築することで、言語を使いこなすことではありません。ジェスチャーや絵を描くといったサバイバル能力を使います。しかし、言葉を使わないと正確に伝わらない状況に気が付いたとき、自分から「先生、これは英語でなんていうの? 書き方は?」と聞いてきてくれます。小学生のころから、今までのコミュニケーション手段では通用しないという経験があることから、将来にわたって目的をもって言葉を学べると考えています。

 小学校では試験の点数や級の目標は設定していません。外国語で書かれていること、話されることに怖気づくことなく、小学校を卒業した後、6年間教えてきた私たちがいなくても彼らなりの学びを続けることができる「方略」をもつこと、それを目指して英語を教えています。将来、英語を使うかどうかは本人次第です。外国語はたくさんありますので、彼らが将来英語を学びたいと思うかどうかは、大人が現段階で決めることではありません。外国語、外国の文化、人とのコミュニケーションについて英語を使って学ぶことで、将来もほかの言語を学ぶことができるスキルが身に付くと考えています。

横須賀学院小学校 英語科教諭 阿部志乃先生横須賀学院小学校 英語科教諭 阿部志乃先生

スコアから児童ひとりひとりのマイルストーンが見えてくる



--TOEFL Primary導入の決め手となったポイントを教えてください。

阿部先生:私たち英語の教員間では、小学生の段階で英語力をペーパーテストで測定する、点数を出す、といったことにとても抵抗があり当初は反対でした。小さな児童にはマークシートも難しく負荷がかかってしまいますし、児童が自主的にやるのではなく、こちらが受けさせておいて合否判定が否だったときの心のダメージはとても大きいものになってしまいます。そういった考えから、小学校の英語ではペーパーテストを行ったことがなかったのです。外部テストの実施も希望者だけで、児童自身が希望しているのかどうかを何度も保護者に確認していました。しかし、TOEFL Primaryには合否がなく、スコアで個別のマイルストーンが見えてくる。児童ひとりひとりのポートフォリオとして中学生、高校生になっても振り返ることができるツールであることから、導入を決めました。

--学校内でのテスト実施が随時可能ということで、すでに5、6年生でテストを実施したそうですね。結果はいかがでしたか。

ウィルソン先生:英語の授業では市販のテキストブックを使っておらず、毎年毎年、児童に適切な教材を私たち教員が制作しています。テキストブックに児童を合わせるのではなく、児童に合わせたカリキュラムを考えてきましたが、TOEFL Primaryのスコアからは、これまでの授業では見えてこなかった発見がありました。授業の印象よりもテストで結果が出ない児童、ここまでやるかというスコアを取る児童など、それぞれの技能に差があることをスコアから客観的に知ることができました。

 また、児童は限られた時間を使うタイムマネジメントの大切さや、早く終わったときはなぜ早く終わったのかを考え、見直し、皆が終わるまでは静かに待つという姿勢や忍耐力、マークシートの付け方、リスニングでは録音された音声を聴く経験など、授業では教えてこなかった多くの事を学ぶことができたと思います。

横須賀学院小学校 英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生横須賀学院小学校 英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生

阿部先生:児童の客観的なスコアを見て「この児童ならもっとできるはず」という意識を我々教員側がもつことができたことも大きな発見でした。苦手な部分があぶり出されることから、たとえば、この児童にはテストという経験が必要、この児童は何かを勘違いしたまま覚えているようなので正確性が求められる中学生までに修正しなければ…といった、ひとりひとりがより良いパフォーマンスを出すための方法を考えられるようになりました。そして、児童も小学生のうちから自分の位置を知って意識しながら日々の学習に取り組んでいくことができます。

--生徒さん、保護者の方からの反応はいかがでしたか。

阿部先生:やはりTOEFLは知名度が高いので、保護者の方から小学生が受けても大丈夫なのか? 難しくないのか? といった心配の声や、TOEFL Primaryを受ける理由などさまざまなご質問もいただきました。保護者の皆様にはTOEFL Primaryのスコアでスキルを判断しないよう伝え、授業だけでは評価できない技能を測り、世界基準のブレのないスコアから、ひとりひとりのスタート地点を決めることを考えるツールとして捉えていただくように伝えました。

 児童たちはとても正直で、わからないところを記入しませんでした。「マークシートだから埋めておこう、当たったらラッキー!」といった大人のような打算的なことをしないんです。もし正解になったとしてもそれは本当の意味で正解ではない、と自分で判断したのです。これなら小学生のうちから客観的なスコアを記録して、今後の児童の能力を伸ばすために生かしていけると思いました。今回は5、6年生がテストを受けましたが、習い事や家庭環境でも児童の英語力は差がつきますので、低学年でも希望する場合はテストを受ける機会を提供していけると良いのではと思っています。

左から、横須賀学院小学校  英語科教諭 ジョジェット ・ウィルソン先生、小出啓介校長、英語科教諭 阿部志乃先生

教員と児童の双方に波及効果をもたらすTOEFL Primary®



--TOEFL Primaryのテスト体験を通して、先生、児童の両方に新たな発見があったのですね。小学校での英語の教科化に備え、日本全国の小学校、ご家庭でさまざまな準備が進んでいると思います。TOEFL Primaryの活用についてアドバイスをお願いします。

ウィルソン先生:TOEFL Primaryの導入は、児童ひとりひとりの今後の見通しを考えるポジティブな経験になりましたが、授業そのものがTOEFL Primary対策にならないよう、教員がスコアの使い方を考えると良いと思います。授業では見えていなかったところをあぶり出してくれるツールとして役立てていけると思います。

阿部先生:一教員だけでは児童の能力を測りきることはできません。自分たちだけの判断に頼らず外部テストを使うことで、教員も児童もスコアをもとに共通の意識をもって課題を共感し、学ぶことができると思います。視覚と聴覚の活用を得意とする低学年は授業で教員と話したり聴いて理解することはできても文章になると読めなかったり、一方でリーディングスキルが高い児童は本をたくさん読んでいることがわかったりと、個別の成長度合いやほかの教科との関係などさまざまな発見もあると思います。

小出校長:私は国語科の教師なのですが、自分の中に話したいことがないと、意見の掘り起こしは日本語であっても難しいものです。日本人は同調性が強いのですが、これからの社会では、自分は何を考えているのか?と自分で自分に問いかけることが日本語でも英語でも大切になってきます。考える力が生まれてくる学びとしての英語に取り組むために、TOEFL Primaryによって、教員は中学、高校の教員へ引き継ぎやすくなり、児童は人と比べずに自分を知るためのツールとして活用できると思います。教員は安心して失敗できる空間をつくり、児童は自分のライバルは昨日の自分と捉え、常に振り返り、教員も児童も明日を共に生きていく仲間として一緒に生き生きと学習に取り組んでいけると良いと思います。

--ありがとうございました。

 英語の教員にとっては児童の英語カリキュラムを個別最適化するためのポートフォリオとしての役割を果たし、児童にとっては英語の能力にとどまらずコミュニケーション能力、思考力を育む道標となるTOEFL Primaryを活用した学び。その学びはスコアとして可視化され、中学・高校、そしてさらにその先へと積み上げられていくことで、子どもたちをさらなる成長へと導いていくことだろう。

2019年度 第2回公開テスト


実施日:2019年12月8日(日)
申込期間:2019年9月18日(水)正午~10月24日(木)
受験地:札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・大阪・広島・福岡
※東京会場ではテストとセットで「TOKYO GLOBAL GATEWAY」の英語体験プログラム(有料)に参加可能
テストの詳細は公式サイトにて公開中


《田口さとみ》

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