愛知【高校受験2023】制度変更に惑わされず根本理解の徹底を…佐鳴予備校に聞く入試対策の心得

 愛知県難関校での優れた合格実績を誇る佐鳴予備校の最高顧問・杉山賢純氏に、2022年度の愛知県公立高校入試の振り返りや2023年度入試の変更点、夏から秋にかけて取り組むべき受験対策のアドバイスを聞いた。

教育・受験 中学生
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佐鳴予備校 最高顧問・杉山賢純氏
  • 佐鳴予備校 最高顧問・杉山賢純氏
  • 佐鳴予備校 最高顧問・杉山賢純氏
  • 愛知県内トップ10校の受験者数推移
  • 令和5(2023)年度公立高校入試の日程
  • 全日制課程一般選抜における校内順位の決定方式について
  • 佐鳴予備校 最高顧問・杉山賢純氏
 愛知県の2023年度(令和5年度)高校入試は、試験日程の前倒しや、公立高校入試における「特色選抜」の導入、学力検査のマークシート形式への変更等、大きな制度変更を予定している。受験生や保護者は早い時期から情報を収集し、対策を進める必要があるだろう。

 今回、佐鳴予備校の最高顧問・杉山賢純氏に、2022年度愛知県公立高校入試の振り返りや2023年度入試の変更点、夏から秋にかけて取り組むべき受験対策のアドバイスを聞いた。

佐鳴予備校は小1~高3生を対象とした「小中高一貫教育」を掲げる進学塾。愛知県・静岡県に約200の校舎を展開し、優れた合格実績を誇る。2022年度愛知県公立入試を見ても、旭丘高校/明和高校に100名以上の合格者を輩出、岡崎高校30年連続実績No.1など、その指導力は圧倒的だ。

佐鳴予備校の最高顧問である杉山氏は、公教育出身。愛知県トップ高校の1つである旭丘高校をはじめとする多くの高校で校長を歴任していて、入試制度にも造詣が深い。

受験を控える中学3年生だけではなく、難関校合格を狙う中学1・2年生にも参考にしていただきたい。

2022年度の振り返り



--2022年度入試では、特に人気校の受験者数についてどのような傾向、変化がありましたか。

 2022年度入試では、愛知県全域の中学3年生の人数が前年度より2,249名増えたことにより、上位校を中心に募集クラス数を14学級増やすこととなりました。旭丘、松蔭、昭和、名古屋南、豊田北、豊田南、成章、小坂井等の人気のある上位の高校を中心にクラス数が増え、該当高校の志願者数は増加あるいは昨年同等の人数であったため、クラス数の増えた高校では倍率は僅かではありますが下がり、結果として多少ではありますが広き門となりました。

 人気校全体においては、前年と同様に多くの受験者を集め、県内トップ10校における受験者数は、2021年度と比べると5,687名→5,953名(266名増)となり、合格者で割った実質の倍率は1.67倍→1.73倍と上昇。一段と厳しい入試となりました。

愛知県内トップ10校の受験者数推移
愛知県内トップ10校の受験者数推移

 また、上位校の受験者数増に伴って、二番手校・三番手校といわれる高校の第2志願者数が増加し、向陽(普通科)・千種(普通科)・天白・名古屋南・春日井・東海南・刈谷北(普通科)等の高校では志願者が100名以上増加しました。

 全体として、人気のある高校にさらに受験者が増加しているという傾向がみられました。

--2022年度入試の学力検査の難易度や出題傾向にはどのような変化がありましたか。

 2022年度入試の学力検査の全体的な難度は標準的で、受験生の頑張りを適正に測る良問揃いの試験でした。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した2021年度は、基礎を重視した問題が多く出題されましたが、2022年度は従来の標準レベルに戻りました。受験生が頭をかかえるような難問・奇問は少なく、典型的な問題の習得度を試す問題が多く出題されました。地道に努力を続けた生徒たちにとっては、得点しやすかったのではないでしょうか。

 年々色濃くなってきた「思考力」「判断力」「表現力」を求める傾向は変わらず、「幅広い知識」とともに「情報分析力」「処理能力」が問われています。そして、正答にたどり着くためには「語彙力」「読解力」も必要です。問われていることに的確に答えられるか、すなわち問題作成者が求めていることを見抜く力が試されているのは例年と変わりませんでした。

2023年度入試からの制度変更で入試日程が前倒しに



--私立高校は約10日、公立高校は1か月以上、従来の入試より前倒しで実施されます。受験生はどのようなことに注意する必要がありますか。

令和5(2023)年度公立高校入試の日程
令和5(2023)年度公立高校入試の日程

 私立高校を含めて入試日程が前倒しされますので、中学校での定期考査の日程等も前倒しされると予想されます。全体的に2週間から1か月程度、学習の仕上がりを早めて計画することが必要です。

 これまでは学年末テストが行われる1月になって教科書の内容が修了する中学校が多かったと思いますが、入試日程の前倒しによって、冬休み前に全課程を修了する必要性が出てきます。そのため、学校の学習進度がこれまでよりも早まることが予想されます。

 また学校で学習したからといって、すぐに「できる(問題が解ける)」ようになるわけではありません。そこで冬休みには数多くの入試レベル問題にあたって、慣れておく必要があります。特に数学・理科に関しては、最終単元がそのまま入試に出題されることも少なくありません。学校の授業における重要度は変わりませんが、全面的に学校に依存するのではなく、自主学習においては入試を見据えたペースで学習することが必要になるでしょう。

 また、推薦選抜や2023年度入試から始まる特色選抜を受験する場合は、日程が1か月前倒しになります。推薦選抜では学力検査が無くなり、特色選抜は初めて実施する選抜方式ですので、しっかりと情報を得て、落ち着いて受験できるよう対策を早めに行っておきたいものです。

 推薦選抜では学力検査がなくなり推薦書類と面接により合否が決定しますが、コロナ禍により中学校での運動・文化に関する大会がまだ十分に開催されていない状況もあり、実績が十分に上げられない状況が続いていると想定します。中学校での実績が十分でなくても推薦選抜で意外な結果が出る可能性もあり、推薦入試においても果敢に挑戦してみても良いのではないでしょうか。

 一般入試においては、学力検査の日程は例年に比べて2週間ほど早くなりますが、全高校対象の同一の入試問題という形式は変わらないため、問題の難易度は大きく変わらないと予想されます。基礎・基本問題から発展問題まで満遍なく出題されるので、例年同様、各教科の根本理解を徹底しておくことが大切です。

--学力検査の回数が従来の2回から1回に、試験方式が記述式からマークシート方式に変更となります。試験の難易度や出題量、試験対策にはどのような影響があるとお考えですか。

 学力検査の回数が2回から1回に変更されますが、学力試験当日に体調が悪い場合には追試験を受験することができるため、回数に関しては大きな対策は必要ありません。

 しかし、試験方式が記述式からマークシート方式に変更となるため、マークシート方式に慣れておくことが必要です。また、試験の難易度としては、全県1種類の同一の問題ですべての公立高校の選抜合否を決定することができるように、基礎・基本問題から発展問題まで幅広く出題されるはずです。したがって、方式が変わっても、各教科の難易度は今までの入試とほぼ変わらないと思います。

 安定して得点するには、基礎・基本問題をミスなく解き、中位の問題を確実に得点することが重要です。ミスをしないためには深く根本理解を徹底しておくことが重要となります。

 一方で、「思考力・表現力・判断力」を重視する教育改革の方向性より、マークシート方式となっても、記述力や深い理解力を試す問題が出題されると予想されます。思考力を試すために、従来よりも長い問題文を読み解く力や、正しく状況を把握して問題の意図を正確に読み取り、与えられた情報を的確に判断して問題を解く力が求められると思われます。

 これらの対策のために、文章を読み解く力や与えられた条件を的確に判断し理解する力を日ごろから鍛え、今まで以上に深くしっかりと各教科を学んでおくと良いでしょう。

--校内順位の決定方式が、従来の3通りから5通りに変更されます。新たに追加される2方式(IV、V)の特徴を教えてください。また、発表された各校の採用方式には、どのような傾向が見受けられますか。

 合否判定の基礎資料の作成方法として、調査書と学力検査の点数をそのまま足す「I」、調査書を1.5倍する「II」、学力検査合計得点を1.5倍する「III」という従来方式に加え、調査書の評定得点(内申点)を2倍する「IV」、学力検査合計得点を2倍する「V」の方式が新たに導入されます。

全日制課程一般選抜における校内順位の決定方式について
 評定得点を2倍する「IV」方式は、おもに専門学科の高校が採用し、中学校での活動のようすをより重視するねらいがあります。学力検査合計得点を2倍する「V」方式では、当日の学力検査の結果がより重視され、おもに学力上位校がこの方式を採用しています。地域や中学校によって基準が異なり中学校によって有利不利が生じる調査書の内申点に比べて学力検査は公平であり、上位校が「V」方式を採用することは、内申点をとることが苦手な受験生や学力のある受験生にとって朗報です。

 この変更を受けて、学力のある生徒がさらに上位校に志願する傾向が強まることが予想されます

--新設される「特色選抜」の特徴と、受験生への影響についてはどうお考えでしょうか。

 「特色選抜」は、その高校・学科で学ぼうとする意欲、学科やコースに関連する分野での能力・実績を重視した新しい選抜制度です。「特色選抜」は、専門学科や総合学科、コースを設置する特色ある教育課程を有する普通科等、一部の高等学校・学科において実施されます。「推薦選抜」と同日に実施され「推薦選抜」との併願はできません

 出願には、従来の「推薦選抜」とは違い、中学校長の推薦がなくても志願者本人が記入する志望理由書・入学願書・調査書によって出願できます。入学検査は面接を必須とし、その他に作文、基礎学力検査、プレゼンテーション、特別検査(実技試験)のうちの1つを実施します。

 上位校においても「特色選抜」を実施する高校があります。それらの上位校の「特色選抜」の定員は5名程度で、おもに面接に加えてプレゼンテーションを課しています。詳しくは高校ごとの募集要項等で確認してください。

 「特色選抜」を実施する上位校においても、定員は5名程度と少なく、他の上位校での実施校も少ないことから、上位校に関しての「特色選抜」による影響はほぼないと考えて良いと思います。上位校に対しては「推薦選抜」を考慮したうえで、「一般選抜」に備えて、学力検査で高得点を狙うためにも、当日の得点力に磨きをかけることが上位校合格を勝ち取るうえで今以上に大切になってきます。

佐鳴予備校 最高顧問・杉山賢純氏

公立2校出願は従来どおり可能。志望校選びのアドバイス



--志望校選びについて、注意点やアドバイスはありますでしょうか。

 愛知県の公立高校入試、複合選抜制度は、2校に出願できる全国でも大変珍しい入試制度です。2023年度から1回受験やマークシート方式の導入、「特色選抜」の実施、試験日程の前倒し等、多くの変更点がありますが、2校出願できる入試制度は残っています。したがって、合格を目指して挑戦する高校と確実に合格を目指す高校の2校を受験できるため、積極的に上位校に挑戦できる制度となっています。

 さらに新たに校内順位決定方式「V」が加わり、学力のある生徒は果敢に上位校に挑戦することが可能となりました。上位校との併願先となるどの高校も、進学実績が高く、部活動も活発で、学校行事も充実しているため、積極的に上位校を狙って挑戦することができます。

 高校ごとにさまざまな特色があります。各高校の学校説明会やWebサイトでしっかりと調べておきましょう。志望校選びは、自分の学力にあった高校を選ぶことが大切ですが、それ以上に、校風や学習への取り組み方、高校入学後にどのような高校生活を送りたいか等をしっかりと考えて選ぶことが大切です。

 また、佐鳴予備校協力の公立高校説明会オンラインが11月上旬ごろに実施されます。県内40校近くの高校の特徴を各校約30分のプログラムで詳細にお伝えするものです。さまざまな学校行事等の学校のようすを知るための映像や校長先生・教頭先生、在校生はじめ多くの方々の協力をいただき、各高校の魅力をわかりやすくまとめた大変充実した内容となっています。ぜひ、志望校選びにご活用ください。

 さまざまな情報を得て、志望する高校への入学の意欲を高めることにより、より学力の向上が期待でき、入学後のミスマッチも減らすことができます。早い段階から志望校選びを行うことが、それぞれの高校の魅力を知る近道となります。

 しっかりとした情報に基づいて、悔いのない志望校選びを行ってください。

夏から秋の学習アドバイス



--夏から秋にかけて受験生が取り組むべき受験勉強について、教科ごとにアドバイスをいただけますでしょうか。

【英語】


 入試問題を解くための語彙力、文法力を固める時期です。履修した単語・連語・文法を確実なものとするために、多くの問題に取り組みましょう。またそれらを使って日常会話も英語で考えるようにするとさらに力がつくでしょう。

【数学】


 これまで履修した単元の中でも「関数」、「資料の活用や箱ひげ図」、「確率」、「方程式の文章題」等の問題を速く正確に解くことができるように多くの問題演習を積んでおくことが秋以降の学習に繋がります。経験を積み、自身の数学力を磨いていきましょう。

【理科】


 実験・観察の目的や操作の意味について「根本理解」できているかどうかが試される問題が多く出題されます。基礎的な知識や計算問題はこの時期に最低限身に付けておきたいところです。そのうえで、傾向に即した問題練習を行いましょう。

【社会】


 受験生が失点しやすい分野は地理です。膨大なデータから必要な情報を引き出して、正解にたどり着かなければなりません。まだ日数的に余裕のある夏から秋にかけてこそ、教科書や資料集を読み込み、掲載されている表やグラフを覚える等、データ蓄積に努めるのが良いでしょう。

【国語】


 解答の根拠を見つけ出すことができるようになるために、解説をしっかりと読み解答を導き出す際のプロセスを身に付けていきましょう。また日ごろから多くの文章に触れることで、文章の内容を理解する力をつけていきましょう。

--入試制度の大きな変更もあり、不安を抱えている受験生やその保護者へ、日ごろの勉強や生活についてアドバイスをお願いします。

 入試制度の変更点はたくさんありますが、正しく情報を得ておけば対応は難しくありません。おもな変更点は、受験機会については「推薦選抜」「特色選抜」を受けるかどうか、学力検査がマークシート方式になり1回受験になること、受験の日程が2週間~1か月ほど早くなること、です。「特色選抜」を受験する場合は特別に対策を行う必要がありますが、他の変更点については、マークシート方式に慣れておくこと、日程が前倒しになったことに対応しておくことくらいで、あとは例年の高校入試と変わりはありません。

 日ごろから、基礎・基本をしっかりと理解し、どのような問題が出てきても対応ができるように根本理解を徹底することをお勧めします。そして希望する高校のことをよく知り、入学したいと強く願い意欲的に努力すること、努力した自分を信じられるよう日々学ぶことです。努力を積み重ねて得た知識と経験は高校入学後も失われることはありません。

 どの受験生も志望校に合格できるという確証をもって努力をしているわけではなく、少なからず不安を抱えています。不安で落ち着かない日々を過ごすのではなく、2校受験できるという愛知県の入試制度を活用して果敢に希望する高校に挑戦し、高校入学後の自らの成長を信じて前に進んでいってほしいと思います。すべての経験は自らの糧となります。そう信じて、自分の未来のために、堂々と規律正しく日々の生活を送ってください。きっと素晴らしい明日がやってくると信じ、前に向かって進んでいきましょう。

--ありがとうございました。

 今年大きな変革を迎える愛知県公立高校入試。佐鳴予備校では、受験を乗り越えるために必要な「学力」「精神力」「情報力」を総合的に鍛える進路指導を行っている。参加無料の説明会も実施されているので、今回の入試改革に漠然とした不安を抱えている生徒・保護者には参加をおすすめする。

 なお、2023年の入試に向けて佐鳴予備校が開催する夏期講座や説明会等は以下のとおり。

佐鳴予備校 2022年度夏期講座の詳細はこちら
佐鳴予備校公式サイトはこちら
佐鳴予備校愛知県高校入試情報はこちら
PROFILE
杉山 賢純(愛知県立旭丘高等学校 前校長・佐鳴予備校最高顧問)
東北大学卒。1984年より愛知県の理科(化学)の教員として勤務。2002年より愛知県教育委員会教職員課管理主事、主査、主任主査を歴任。県立起工業高校、高蔵寺高校、豊田西高校、旭丘高校の各校長として高校内での教育改革を遂行。日本繊維工業教育研究会会長、西三北地区校長会会長、名北地区校長会会長を歴任し、長年愛知県公立高等学校長会理事を務める。2018年から2021年3月末まで旭丘高校校長を経て、株式会社さなる(佐鳴予備校)に入社。最高顧問に就任。長年の教育現場での経験を生かし、公教育と民間教育との橋渡し役として、全国の生徒たちを真の学力向上・志望校合格へと導く。
佐鳴予備校
佐鳴予備校は小1~高3生を対象とした進学塾。愛知・静岡両県でおよそ200の校舎を運営している。「学力を以って社会に貢献する人材の育成」を教育理念に掲げ、集団指導/個別指導/映像授業と多様な教育サービスを展開する。電子黒板・生徒用タブレットなどICT教材の開発にも積極的に取り組んでいる。
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