【夏休み2022】第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書一覧

 今年もいよいよ夏休みが近づいてきた。この時期、親も子も気になるのは夏休みの宿題だろう。そこで多くの学校で、夏休みの課題の1つとして設定されている読書感想文の課題図書を、小学校低学年、小学校中学年、小学校高学年、中学校、高校の各区分ごとに紹介する。

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【夏休み2022】第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書一覧
  • 【夏休み2022】第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書一覧
 今年もいよいよ夏休みがやってくる。この時期、親も子も気になるのは夏休みの宿題ではないだろうか。自由研究や作文、読書感想文など、どの課題に取り組もうかと今から準備を進めているご家庭もあるだろう。

 そこで夏休みの課題の1つとして設定されることの多い読書感想文の課題図書を、小学校低学年、小学校中学年、小学校高学年、中学校、高校の各区分ごとに紹介。各課題図書の選定理由も記す。なお選定理由は、第68回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」選定委員会の報告をもとにしている。

 全国学校図書館協議会と毎日新聞社が主催する「青少年読書感想文全国コンクール」は2022年で68回目の開催。地方審査を経て中央審査会へと進み、段階的に審査が行われるため、締め切りは都道府県により異なる。また作品は在籍校を通して提出する。

<目次>
・小学校低学年(1、2年生)
・小学校中学年(3、4年生)
・小学校高学年(5、6年生)
・中学校
・高等学校


小学校低学年(1、2年生)



つくしちゃんとおねえちゃん



 【選定理由】妹の視点で姉への気持ちがよく表現され、文学性も高い。妹から見ると何でもよくできるお姉ちゃん、実は足が不自由で、がんばりやで妹思いの姉。姉妹のそれぞれの思いが伝わってくる。

つくしちゃんとおねえちゃん

出版社:福音館書店
作:いとうみく
絵:丹地陽子
価格:1,320円(税込)

頭がよくて、ものしりで、ぶ厚い本を読んでいて、ピアノはモーツァルトだってひけちゃう。だけど、ちょっと怒りっぽくていばりんぼう、そんなおねえちゃんはあたしの自慢です。おねえちゃんは歩くとき、少し右足をひきずります――。気が強くて優等生の小学4年生のおねえちゃんと、マイペースでちょっと不器用な小学2年生の妹つくしちゃん。妹の視点で、姉妹の日常をきりとった5編の物語で構成。やさしく温かみのある挿絵がたっぷりはいった、小学校低学年向けの読みもの。


ばあばにえがおをとどけてあげる



 【選定理由】歳をとり、笑顔が消えたばあばに笑顔を取り戻そうとするテーマに、明るさがある。絵がすばらしく、絵本の世界で遊ぶばあばと孫の姿が美しい。

ばあばにえがおをとどけてあげる

出版社:評論社
作:コーリン・アーヴェリス
絵:イザベル・フォラス
訳:まつかわまゆみ
価格:1,650円(税込)

ばあばはこのごろ元気がない。ケーキも焼かないし、お部屋もほこりだらけ。そして、笑わなくなった。「じんせいからよろこびがきえちゃったみたい」って、ママはいう…。ファーンは、ばあばの人生に「よろこび」をとりもどしてあげようと、「ワァーイ!」を探しに出かける。わたしたちに「よろこび」の意味をやさしく教えてくれる、おばあちゃんと孫娘のあたたかな物語。


すうがくでせかいをみるの



 【選定理由】フィクションだがノンフィクションのような独特な視点、身の回りの数学的な事象に関心を持つという視点、人それぞれ好きなことは異なり、得手不得手があってよいというテーマが流れている。

すうがくでせかいをみるの

出版社:ほるぷ出版
作:ミゲル・タンコ
訳:福本友美子
価格:1,760円(税込)

世界をみる方法は、いくつもある……数学が大好きな主人公の、「すき」の気持ちがあふれるおはなし。「すきなこと」を通して、自分なりの世界の見方を見つける絵本。巻末に、主人公オリジナルの「数学ノート」付き。


おすしやさんにいらっしゃい!:生きものが食べものになるまで



 【選定理由】キンメダイ、アナゴ、イカなど、釣り上げた魚をさばくところからすしにしていく過程に、独自の表現方法と視点があり、類書がない。写真と写真の構成も生き生きとしていてすばらしい。

おすしやさんにいらっしゃい!:生きものが食べものになるまで

出版社:岩崎書店
作:おかだだいすけ
写真:遠藤宏
価格:1,760円(税込)

寿司職人が贈る魚とお寿司の写真絵本。キンメダイ、アナゴ、イカなど、釣り上げた魚をさばき、だんだんと美味しそうな切り身へとかわって行くようすを、動画のような連続性で見せる写真絵本。魚の特徴や部位の名前も解説。最後はお寿司になって登場する。


小学校中学年(3、4年生)



みんなのためいき図鑑



 【選定理由】授業で「ためいき図鑑」を作り、夏休み前に披露、という設定が新鮮で読みたい気持ちになる。子ども同士の関わりに考えさせる要素が多く、図鑑づくりを通した子どもたちの成長が読み取れる。

みんなのためいき図鑑

出版社:童心社
作:村上しいこ
絵:中田いくみ
価格:1,320円(税込)

授業参観にむけて、たのちんの班は「ためいき図鑑」をつくることになった。どんな時にヒトがためいきをつくのか調べて発表するんだ。でもいっしょの班の加世堂さんは、毎日保健室に登校していて、教室にはこられない。たのちんが、加世堂さんにも図鑑づくりに参加してほしいと思い、ある提案をしたところ、班のメンバーともめてしまい……もうためいきばっかり!家族や友達との関係にゆれる子どもの気持ちを、鮮やかに描いた物語。


チョコレートタッチ



 【選定理由】「いい子」ではない主人公に親しみ、子どもたちは自分に引き寄せながら物語を読める。表紙デザインは手に取りやすく、これから読む物語への期待を高めている。

チョコレートタッチ

出版社:文研出版
作:パトリック・スキーン・キャトリング
訳:佐藤淑子
絵:伊津野果地
価格:1,430円(税込)

ジョンは、お菓子が大好きな男の子。ごはんやおかずは残して、お菓子ばかりたべている。なかでも、チョコレートには目がない。ある日、ひろったコインで買ったチョコレートを食べたところ、不思議なことがおこりはじめ……。


111本の木



 【選定理由】読む力が大きく違っている3・4年生でも、絵自体が読み取りやすく、やわらかい。巻末の説明文は、やさしい表現で文中の疑問と子どもの知りたい・調べたいことに応えている。

111本の木

出版社:光村教育図書
作:リナ・シン
絵:マリアンヌ・フェラー
価格:1,540円(税込)

インドに、女児の誕生を111本の木を植えて祝う村がある。ジェンダー平等を提唱するこのエコロジー活動により、村は豊かな自然を取り戻した。女児に学ぶ機会を与え、児童婚から守るために行動した村長を描く実話。


この世界からサイがいなくなってしまう:アフリカでサイを守る人たち



 【選定理由】絶滅の危機に瀕しているサイの実情が、具体例をもとに平易な文章でかかれており、説得力がある。関わる人々の奮闘の描かれ方が建設的かつ希望の持てる内容となっている。

この世界からサイがいなくなってしまう:アフリカでサイを守る人たち

出版社:学研プラス
作:味田村太郎
価格:1,540円(税込)

サイと密猟者、そしてサイを守る人たちの、知られざる戦いがある。この本では、サイの子どもを保護する「サイの孤児院」や、科学技術による「復活プロジェクト」などの取り組みを紹介。南アフリカ共和国での取材を行った記者による、迫真のノンフィクション。第8回子どものための感動ノンフィクション大賞受賞作品。


小学校高学年(5、6年生)



りんごの木を植えて



 【選定理由】祖父の病気が進行していく中で、家族がさまざまな思いで見守っていく物語の構成に、読者である子どもたちの想(おも)いがさまざまに絡まっていくことが予想される。

りんごの木を植えて

出版社:ポプラ社
作:大谷美和子
絵:白石ゆか
価格:1,650円(税込)

おじいちゃんと過ごした日々──それは、とっておきの時間。みずほは小学5年生。二世帯住宅で暮らす大好きな祖父にがんの再発がわかった。しかし、祖父は「積極的な治療」はおこなわないという。なぜ?みずほはどうしても受け入れられない。がんを身体にかかえながらも、大好きな絵を描き、庭仕事をして毎日をのびやかに暮らす祖父。そして祖父や家族と語り合う時間のなかで、みずほは「おじいちゃんの生き方」を見つめ……。「人間が生きること」そして「死ぬということ」を考える珠玉の物語。


風の神送れよ



 【選定理由】全体的に読みやすく、しっかりと年中行事を伝えてくれている。コロナ禍にある現在に、疫病退散の願いを込めた年中行事について知ることや、子どもたちの成長が読み取れる。

風の神送れよ

出版社:小峰書店
作:熊谷千世子
絵:くまおり純
価格:1,650円(税込)

長野県南部、天竜川上流域を中心に伝わり、国の無形文化財にも指定されている「コト八日行事」。優斗たちが暮らす地区では、二日間にわたるコト八日行事のすべてが子どもたちの手にまかされ、行われるのだ。コロナ禍で行事の開催自体があやぶまれる中、はたして優斗と仲間たちは、家々にすくう疫病神をはらい、無事地区境まで送ることができるのか? さまざまな困難に立ち向かい、自らの責任を懸命に果たそうとする子どもたちの姿を鮮やかに描く。


ぼくの弱虫をなおすには



 【選定理由】1976年のアメリカ・ジョージア州を舞台に、偏見や人種差別の問題にふれつつ、夏の子どもたちの成長を描いている。外国の物語だが読みやすく、いろいろなイメージを描くことができる。

ぼくの弱虫をなおすには

出版社:徳間書店
作:K・L・ゴーイング
訳:久保陽子
絵:早川世詩男
価格:1,760円(税込)

小学校4年のゲイブリエルには、こわいものがたくさんある。クモ、いじめっ子の上級生、大きなトラック……。でも、何よりこわいのは、5年生に進級すること。5年になると、いやな上級生と同じ校舎になるから……。ぜったいに5年生にはならない、と決めた。親友の女の子フリータは、これに大反対。ゲイブリエルの弱虫をなおす作戦を考えて、夏休みのあいだ、その作戦に、ふたりでとりくむことになった。とちゅうまでは、うまくいっていた。ところが、ゲイブリエルのある思いつきのせいで、フリータの家族をまきこんでしまい……。1976年アメリカ・ジョージア州を舞台に、偏見や人種差別の問題にふれつつ、苦手を克服する子どもたちの成長を描いた、心にひびく物語。


捨てないパン屋の挑戦:しあわせのレシピ



 【選定理由】「食品ロス」を取り上げ、「もったいない」「無駄を減らせ」と主張するのではなく、「本当に必要なものを必要なだけ作ることがエコにつながる」と新たな視点を提示している。

捨てないパン屋の挑戦:しあわせのレシピ

出版社:あかね書房
作:井出留美
価格:1,430円(税込)

捨てないパン屋として評価される田村陽至氏の人と思想を、食品ロスの専門家として数多くの受賞を誇り、食品ロス削減推進法成立の原動力となった井出留美氏が活写する。田村氏のモンゴル滞在の経験や、ヨーロッパへのパン修行の旅など、美しい自然風景と感動的なエピソードを交えながら、捨てないパン屋になるまでの葛藤を通じて、自然への深い愛情と、食品ロスなき未来への希望を描いたノンフィクション。


中学校



セカイを科学せよ!



 【選定理由】男女2人の主人公の対比が際立ち、物語の展開が面白い。外国人への偏見の描き方が紋切り型でなく、科学部を舞台とした活動は科学の視点からも興味深く、さまざまな視点から感想文が書ける。

セカイを科学せよ!

出版社:講談社
作:安田夏菜
価格:1,540円(税込)

藤堂ミハイル――堤中学二年。父は日本人、母はロシア人。髪は栗色、瞳は茶系でくっきりとした二重まぶた。そば屋でそばなんか食ってると、「まあっ、日本人みたいにおはし使ってる」と知らないおばさんに騒がれたりする。山口アビゲイル葉奈――転校生。ルーツはアメリカと日本。モコモコとふくらんだカーリーヘア。肌の色は、ちょっとミルクの入ったコーヒー色。縦にも横にも大きい。日本生まれの日本育ちで、日本語しか話せない。好きなことは……。ミハイルと葉奈、そして科学部の面々は、生物班の活動存続をかけ、学校に「科学的な取り組みの成果」を示さなければならないことになってしまった。ミックスルーツの中学生が繰り広げる、とってもコメディでバイオロジカルな日々。


海を見た日



 【選定理由】里親制度がよく取材されており、家族について考えさせられる。それぞれの登場人物が一人称で交互に描かれ、内面がよく見える。色々な切り口から読め、さまざまな感想文が期待される。

海を見た日

出版社:鈴木出版
作:M・G・ヘネシー
訳:杉田七重
価格:1,760円(税込)

それぞれの事情で、養母の家に預けられた3人の子どもたち。みんながバラバラの方向を向いていて、ちゃんと向き合わずに過ごしてきた。そこへ新しくアスペルガー症候群の男の子が仲間入りし、その子の母親に会いたいという願いをかなえるために4人は冒険に出かけることになる……。作者M・G・ヘネシーのデビュー作『変化球男子』に続く第二弾。


江戸のジャーナリスト葛飾北斎



 【選定理由】取材・編集が丁寧で、北斎を「ジャーナリスト」としてとらえる視点がユニーク。作品の成り立ちや北斎の観察眼がよくわかる。北斎作品を調べたり、見たりする、興味・関心を呼び起こす。

江戸のジャーナリスト葛飾北斎

出版社:国土社
作:千野境子
価格:1,540円(税込)

世界に誇る超有名人、浮世絵師・葛飾北斎とはどんな人物か。『富獄三十六景』がパスポートに、ビッグ・ウエーブこと『神奈川沖浪裏』が千円札に登場など、今も人気の北斎。情報の限られた江戸時代に、広く日本の外へも関心を向け情報収集し、90歳まで絵筆を執った超人北斎の、真の姿をあぶりだしたノンフィクション。


高等学校



その扉をたたく音



 【選定理由】序盤の混沌とした雰囲気から終盤へと加速していく展開が読みやすい。周囲の人々と織りなす主人公の成長物語が、作品として引き込まれる。

その扉をたたく音

出版社:集英社
作:瀬尾まいこ
価格:1,540円(税込)

29歳、無職。ミュージシャンへの夢を捨てきれないまま、怠惰な日々を送っていた宮路は、ある日、利用者向けの余興に訪れた老人ホームで、神がかったサックスの演奏を耳にする。音色の主は、ホームの介護士・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされた宮路はホームに通い始め、やがて入居者とも親しくなっていく――。人生の行き止まりで立ちすくんでいる青年と、人生の最終コーナーに差し掛かった大人たちが奏でる感動長編。


建築家になりたい君へ



 【選定理由】非常に客観的な分析で書かれており、著者自身のスタンスによって他の建築家への評価も中傷になっていない。社会に出て道を極めようとする者への良いアドバイスになっている。

建築家になりたい君へ

出版社:河出書房新社
作:隈研吾
価格:1,540円(税込)

10歳で建築家を志し、国内外で多数のプロジェクトをてがける今もっとも注目の建築家が建築知識満載で綴る10代へのメッセージ。建築家とは、そしてこれからの建築とは――。


クジラの骨と僕らの未来



 【選定理由】海岸に打ち上げられるクジラの調査の大変さ、南氷洋でのシーシェパードとの遭遇など、一つひとつのエピソードが読者を飽きさせない。

クジラの骨と僕らの未来

出版社:理論社
作:中村玄
価格:1,430円(税込)

小さな頃から生き物が大好きで、さまざまな動物を飼っていた著者は、中学2年生の時、骨格見本に興味を持ち、死んでしまったペットのハムスターの墓あばきを思いついた……。クジラ博士となった研究者の骨から始まったストーリー。


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《編集部》

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