新学習指導要領の開始した2020年より小学校6年間で習う漢字は20字増え1,026文字に、中学入試では広く言葉の知識を問う問題が増加傾向にある。語彙力のみならず、読解力、記述力なども必要となってくる中、どのようにわが子の力を伸ばしていけば良いのか。国語が苦手な中学受験生や、中学受験を検討中の保護者に向けて、角川まんが学習シリーズ『のびーる国語』を学習に有効活用する方法を受験指導専門家の西村創氏に指南してもらった。
勉強感を出さずに中学受験に通用する語彙力を伸ばす「学習まんが」
--『のびーる国語』シリーズを読んでいただいた感想を教えてください。
まず、子供のことをよくリサーチして作られているなと感心しています。どんなに良い内容でも子供本人が自ら手に取らなければ意味がないので、子供目線でのとっつきやすさはすごく大事ですよね。
角川まんが学習シリーズ全般に言えることですが、絵柄やキャラクターも普通のまんがに寄り過ぎず、かつ古過ぎず親しみやすい。まんがの面白さやストーリーの魅力もありつつ、『のびーる国語』に関しては取り上げられている言葉も非常に多い。中学受験までそのまま使えるレベルのものだと感じています。
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--『のびーる国語』シリーズには『四字熟語』『慣用句』『ことわざ』『カタカナ語』『百人一首』『使い分け漢字』があります。子供にこれらを渡すのに良いタイミングはありますか。
辞書を渡すのであれば、学校で辞書の使い方を勉強する小学3年生をひとつのタイミングとしてお伝えしています。ですが、学習まんがに関しては、子供によって成長や興味が全く違うので、お勧めの時期というのは特にありません。中学受験をする、しないに関わらず楽しんで読めるのであれば、それこそ未就学児からでもどんどん読んで良いと思います。
『カタカナ語』『ことわざ』は、漢字ではないので低学年にとってもハードルが低いと思います。『四字熟語』や『使い分け漢字』『慣用句』はある程度学校で習う漢字が増えてから、『百人一首』は中学年からが適しているでしょう。しかし『四字熟語』は、子供が読んでいるまんがやアニメにも出てくるので、意外と低学年からでも抵抗は少ないのかもしれません。
猪突猛進、油断大敵……このような四字熟語、子供は意外と楽しんで使っていますよ。アニメや映画の登場キャラクタ ーが使っているので、おもしろ面白がって真似するなど、子供の言葉の興味の入り口は意外とそういうところにあるんです。
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読み方は子供の自由、親は見守って
--読み返してじっくり知識を頭に入れるお子さん、興味のある所だけよく読んで他は読み飛ばすお子さん、ざっと読んでわかった気になるお子さん、解説ページは読み飛ばすお子さんなどタイプはさまざまだと思います。タイプ別に保護者ができるサポートを教えてください。
いろいろなタイプがいるのでなかなか難しいですけれど、どんなタイプにも共通する「やってはダメなこと」は、はっきりしています。
「ちゃんと解説まで読んだの?」「もう読み終わったみたいだけど頭に入っているの?」「カタカナだけじゃなくて四字熟語も読みなさい」と親が口を出しすぎると、せっかく楽しく読んでいたものでも嫌になってしまう。どうしても親は子供の足りないところを埋めて、平均化して「全部できるようにしよう」と思いがちですが、それは子供のとても嫌がる行為です。そうではなくて、良いところをさらに伸ばすようにしていく方が親子のコミュニケーションも良くなり、お子さんはさらに伸びていくのです。
たとえば、じっくり読まずにじゃんじゃん読むような子だったら、そのスピード感を良しとして2冊目3冊目を与える。1冊ずつの習熟度は低いかもしれませんが、冊数を与えることで幅広く言葉が頭に入れば、十分見返りのある知識が得られると思います。
好きなジャンルだけを読む子もいるでしょう。「そればっかり」と言いたくなりますけどそこは我慢です。たとえばカタカナ語ばかり読んでいるなら、あえて類似本を与えてカタカナ語を極めるなど、好きなものを伸ばすような働きかけが良いと思います。
子供って、娯楽の延長線上でやっていることの吸収力はものすごいんです。これが「勉強」として向き合った途端、定着度合いはものすごく落ちる。やらなければいけないことがあったとして、大人はある程度仕事だと割り切ってやることができるのでパフォーマンスはそこまで大きく変わりませんが、子供は気持ちによって定着度合いにすごく差が出るのです。せっかく学習まんがに関心を示して読んでいるのであれば、親はうるさく言わずに見守ることです。
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語彙力が国語のベースになる
--あらめて語彙力をつける大切さを教えてください。
英語の長文を読むとき、単語がわからないと読めないので語彙を増やす努力をしますよね。国語も、外国語の習得と似たアプローチだと考えれば良いのです。子供にとっての国語の文章というのは、実は日常からかけ離れた言葉なんです。特に、説明文や論説文といった中学受験で出てくるような難解な文章ともなると、もう「日本語なんだけど日本語じゃない」みたいな気すらしてくるのではないでしょうか。
だから語彙力がないと、文章を理解する以前に、何を言われているかわからない状況になってしまうのです。中学受験に限らず、高校受験も大学受験にもいえることですが、語彙力はすべての学びの基盤になる力なのです。そういう意味では、語彙力が、ひいては読解力や表現力、記述力という、トータルの国語の力につながっていくのです。
--中学受験においては、時事問題と絡めた出題や思考力を問われるような内容の入試問題が増えていますが、2022年度入試で印象に残っている問題の例を教えてください。
2022年の入試では、やはり新型コロナウイルス感染症に関わる問題は国語に限らず理科社会など幅広い教科で出題されました。あとはSDGsですね。ある難関付属中学校の入試では、慣用句の知識と「ワクチン」「温暖化」「フードロス」といった時事的な知識の両方を組み合わせて解く問題が出ました。このように、国語でありながら社会的要素が入っていたり、理科でありながら国語の要素が入ってきたりというような、科目横断型の出題が最近のトレンドです。
--御三家や国立、公立中高一貫校の適性検査など、難関校であればあるほど思考力にウエイトが置かれた問題になっていく傾向があると思います。どのような力が必要になってくるのでしょうか。
難関校で出されるような、高い考察力や記述力を求められるような問題についても答え方のセオリーみたいなものがあります。最初に結論を述べて、理由や具体例を述べて最後にもう一度結論をまとめるといった文章構成もその1つです。しかし、そういうものがわからないまま書くと単なる感想文になってしまって点数に結びつきづらいのです。
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学習まんがを活用して思考力を伸ばすには
--そういった思考力を問われる入試に備えるために、学習まんがはどういった点が有効だと思いますか。
まず、学習まんがは言葉とビジュアルがセットになっているおかげで、言葉のイメージをつかみやすいというメリットがあります。語彙を勉強するときに、その言葉が良い意味の言葉なのか悪い意味の言葉なのかというのが、なんとなくでもわかっていることはすごく大切なのです。たとえば「羊頭狗肉」という熟語があるとして、プラスかマイナスのどちらの意なのかを認識する。それだけわかっていれば、文章や問題文の中にキーワードとして出てきても、大きな枠から外れないですからね。
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もうひとつ、四コマまんががあるとシチュエーションが容易に想像できるので、疑似体験につながりやすいのも良いですね。よく、女子に比べて男子の方が言語能力が低くて国語が苦手と言われる理由のひとつに、男子の精神年齢の幼さが挙げられるのです。
入試国語には恋愛をテーマにした題材がよく出てきます。特に、主人公の気持ちについて問われる問題は必ずといって良いほど出題されます。たとえばそこで「切ない」という言葉が出てきたとして、意味を知っていてもその感覚を実際に経験したことが少ないのが男子なんです。その点、まんがのストーリーを通じて「切ない」ってこういうときに感じる気持ちなんだと疑似体験できるというのは大きなメリットです。
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日常の会話に言葉を織り交ぜる
--『のびーる国語』シリーズから得た興味や知識を、どのように日々の学習につなげていくと良いでしょうか。まんがで楽しく土台づくりをしたその後の学習への導き方について教えてください。
親の語彙力も問われると思いますが、ことわざや慣用句を使った表現を日常会話の中に織り交ぜていくと良いでしょう。たとえば、子供が友達について話していたら「お友達の考え方も十人十色だね」と言ってみたり、宿題をやっている子に「試行錯誤して考えてごらん」と声をかけたり。子供だからといって言葉を選びすぎずに、自然に言葉が入ってくる機会を意識してつくる。使いすぎると子供も少々うざったく感じるので、勉強感を出さないさじ加減が大事です。難しいですけれど、親子で対話を楽しめると良いですね。
--最後に『のびーる国語』シリーズは子供たちにとってどんな力を与えてくれるものだと思いますか。
これはもう「国語力のすべて」です。ことわざや慣用句といった言葉の知識というのは、文章を読む読解力のもとになります。それがひいては表現力や記述力、もっと広い意味での文章力につながります。あとは、語彙が増えることで読める本の幅が広がり、どんどん読書が楽しいものになっていくでしょう。
そして「自分で学ぶ力」も身に付いていくと思います。国語に関わらず、何かを学ぼうというときに必要になるのは、やはり言葉なのです。いくら思考力があっても言葉を知らないと始まりません。知らない、わからない言葉があるとあやふやな理解で止まってしまいますが、語彙力が備わっていれば言葉が障害にならずにより深く学べるようになっていきます。
お子さんの「自分で学ぶ力」を育むために、『のびーる国語』シリーズは楽しい仕掛けが満載です。勉強感を感じさせずに、面白くて読んでいたらいつの間にかそれが知識や勉強になっているというような「娯楽と勉強の橋渡し的存在」となってくれるのではないでしょうか。
--ありがとうございました。
『のびーる国語』シリーズのまんがには、小学生のツボにハマるダジャレやボケも満載。笑って楽しみながら起承転結を追うだけで、言葉の意味や使い方が自然と頭に入ってくる「一粒で二度美味しい」一冊だ。日々の生活の中で新しい言葉との出会いが訪れたそのときに、自らページを開けるようリビングにそっと備えておきたい。
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