【ICTでつながる学び】日常を大切に、努力を重ねる「偉大なる平凡人たれ」 …大阪産業大学附属高等学校

 各地で人気を集める私立校における先進的なICT教育の取組みを紹介する本企画。1人1台端末の環境整備と合わせて「ClassPad.net」を導入し、たゆまぬ日々の学びを大切に教育を展開する大阪産業大学附属高等学校を取材した。

教育・受験 中学生
PR
【ICTでつながる学び】日常を大切に、努力を重ねる「偉大なる平凡人たれ」 …大阪産業大学附属高等学校
  • 【ICTでつながる学び】日常を大切に、努力を重ねる「偉大なる平凡人たれ」 …大阪産業大学附属高等学校
  • 1人1台端末導入により、手軽に調べられる、学習に着手できるようになったことで生徒の自主性が向上
  • 2024年度には全校の1人1台端末環境が整う
  • 全校・全教科で取り組むICT活用が良質な教育につながる
  • 「わからない」で終わらせない…ICTが理想の教育を叶える
  • 「ClassPad Math」を使えば、数値を入れることできれいにグラフが書ける
  • カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした辞書機能は言語系教科との相性が良い
  • 教室には電子黒板・プロジェクターが配備されている

 大阪府大阪市城東区にある大阪産業大学附属高等学校は、建学の精神「偉大なる平凡人たれ」のもと、日常生活を重んじながら、地道に努力していくことを大切にした、「丁寧な教育」を進めている私立学校だ。

 1928年(昭和3)年に創立された同校は、90余年の歴史の中で、時代の変化に伴い鉄道学校から大阪産業大学の附属高校へと変遷。生徒の夢に寄り添い、各自の目標に合わせた5つのコースで学びを提供している。系列校の大阪産業大学をはじめ、さまざまな大学に進学実績を誇る魅力あふれる学校だ。

 本シリーズ企画では、各地で人気を集める私立校における先進的なICT教育の取組みを紹介する。今回は大阪産業大学附属高等学校が実践している「偉大なる平凡人」を培う日々の学びと、そこで活用されるICTの役割について、学校長である平岡伸一郎先生をはじめ、先生方と生徒の皆さんに話を聞いた。

生徒の努力を励まし自ら考え、生きる力を身に付ける

 大阪産業大学附属高等学校は、1928(昭和3)年、創立者の瀬島源三郎氏が「大阪鉄道学校」を創立したことに始まる。創立者・瀬島氏が掲げた建学の精神が「偉大なる平凡人たれ」。平岡校長は「この建学の精神は、同校の良き校風・伝統になった『挨拶の励行』等、今も脈々と受け継がれている」と話す。

取材に応じてくれた大阪産業大学附属高等学校校長の平岡伸一郎先生

 この言葉は「平凡な日常生活をきちんと送っていくことこそが偉大なことであり、地道にたゆまず努力していくことが偉大なことである」と説いたもの。「言葉通り、毎日こつこつと地道に努力をすることが偉大な道につながっていく。それは現在における徳・知・体の三位一体教育の実践につながっている」と平岡校長は話す。徳育・知育・体育を育む三位一体教育について、徳育を先頭に位置付けているのは「知育も体育も徳育の上に育まれると考えられているから」だという。

 同校は学力だけでなく人間力を育むことを目指し、自ら進んで取り組むことを大切にし、生徒の努力を励まし自ら考える力、生きる力を身に付けるための教育を実践。その教育方針は「意欲を引き出す」、「可能性を見出す」、「こころを育てる」、「自主性を尊重する」、「創造性を高める」、「『わからない』で終わらせない」、「世界へ羽ばたく」、「健やかな体を育成する」の8つだ。生徒たちが自らの志を叶えるべく、ひとりひとりの目標に合わせた学びを選択できるよう、普通科と国際科に計5コースを設けて、生徒の夢に寄り添い、後押ししている。

 具体的には、普通科に特進I、特進II、進学、スポーツの4コース、国際科にグローバルコースを設置。スポーツでの活躍、国際社会で役立つスキルの醸成、難関大学への進学等それぞれの目標を目指して、学習を進めることのできる環境だ。そして、そうした生徒たちのそれぞれの学びの効率化と発展、自学に大いに役立っているのがICTである。

「ICT教育部」を設置…すべての先生が活用しやすい環境づくり

 同校では、かねてより教室に電子黒板機能付きプロジェクターとホワイドボードを設置している他、1教室あたり50台のChromebookを備えたICTルームを2か所設ける等ICT環境の整備を進めていたが、2022年度から生徒1人1台端末の導入を行い、高校1年生全員がChromebookを持つようになった。さらに来年度以降も1人1台端末の整備を進め、2024年度には全校生徒が端末を所有することになる。

教室には電子黒板機能付きプロジェクターが設置されている

 平岡校長は同校のICT教育の推進について「他校に比べると後発ではあるものの、本校では「ICT教育部」という専門部署を設置して、ベテランから若手まですべての先生が授業でICT教育を進められるような環境整備を行っている。ICT担当の先生方がいろいろな研修の場を設けて、すべての先生に広げる活動を進めてくれていることで、ここ数年でかなり成果が出てきた」と語る。平岡校長の言葉どおり、先生方のICT活用の成果もあり、同校の1年生は1人1台のChromebookを実際の授業や家庭学習に帯同し、大いに活用している。そして、生徒のChromebookにインストールされ、効率的かつ自主的な学びに役立っているのが、カシオ計算機のオールインワンICT学習アプリ「ClassPad.net」だ。

学習備品を最小限に…保護者の購入負担を軽減

 ClassPad.netは、授業に必要な機能がすべて入ったICT学習アプリ。その内訳は、カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした豊富な辞書機能、ふせんや画像、リンク等のコンテンツが貼り付けられるデジタルノート機能、課題の送受信や生徒の回答一覧表示といったオンライン・双方向授業に役立つ授業支援機能、カシオの関数電卓のノウハウを詰め込んだ高度な数学ツール等、多岐に渡る。

 ICT担当の市川典孝先生は、ClassPad.net導入に至った経緯について、「生徒全員にBYAD方式(Bring Your Assigned Device=学校が指定した端末を各家庭で購入し、持参して学習に活用すること)で端末を用意してもらうにあたり、追加で電子辞書を購入させるのは費用負担が大きすぎるという課題があった。一方で、電子辞書は学習に欠かせないツールであり、必ず持たせたいと考えていたので、さまざまな辞書サービスを体験した中で、辞書だけでなく、参考書や用語集等もすべて入っているClassPad.netはとても魅力的で、採用に至った」と語る。「ICTを授業で活用するにあたって、5教科の中でいちばん活用しにくいのが数学」と話す市川先生。その点、ClassPad.netには数学のツールもあり、電子ペンを用いてのグラフの書きにくさを軽減できる。「5教科すべてで活用できるとしてClassPad.netを採用した」と背景を語ってくれた。

「ClassPad Math」を使えば、数値を入れることできれいにグラフが書ける

きれいなグラフ描写…難解な数学も視覚的に理解を促す

 実際に、同校の1人1台端末を活用した数学の授業をのぞいてみた。たとえば数学の三角関数の授業では、グラフがどう変化するかをツールを用いて視覚的に表し、難解な分野の理解を助けているという。

 数学担当の池田透先生は「ClasPad.netでいちばん気に入っている点はグラフがきれいに書けること。僕自身、グラフをきれいに書くことが苦手なので、ClassPad.netの機能を使ってグラフを書き、説明することで視覚的に分かりやすい授業ができる」と高く評価する。特進コース1年生の松山正幸さんも「数学が好きなので、休み時間に表やグラフを作って遊んでいる。いろいろなグラフや面白いものが作れる」と語ってくれた。

 池田先生は、今後は授業前の予習についてもICTを活用したいといい、とりわけ「ClassPad.netに入っている数学の公式集を活用したい」と話した。便利なICTツールによって授業の質の向上が、ますます期待できそうだ。

生徒が自主的に調べ学習に取り組むように

 同校では国語や英語の授業でも、ICTツールを効果的に使っている。国語担当の新宮一平先生は、ClassPad.netの辞書機能と古典の科目との相性を評価し、自身の授業例を語ってくれた。

 新宮先生の印象として、1人1台端末とClassPad.net導入の効果は「何よりも生徒が自発的に調べられるようになったこと」だという。「端末を持ち帰り、自宅でも意味調べ等をしてきてもらうようになり、使いこなすにつれて、気になったことを生徒自らすぐ調べて書き込むようになった。今までは教師側から与えた課題を生徒が取り組む授業が多かったが、今後は生徒たちが自ら問題を発見し、ICTで複数の辞書を使っていろいろな視点から調べて解決していく授業につなげていきたい」と展望を語った。

カシオの電子辞書「EX-word」をベースにした辞書機能は言語系教科との相性が良い

 端末とICTツールの導入により、生徒たちの勉強に取り組む姿勢も変わり、自主的に取り組む生徒の姿が多くなったと語る先生方。

 特進コース1年・宮木佳優さんに話を聞くと「わからない単語や言葉の意味をすぐにさっと調べられるのがとても良い。1人1台端末になって、自分で考えることが増え、思考力が鍛えられるようになったと思う」と学習に対して、前向きな姿勢を見せてくれた。宮木さんは「家で教科書を開くのには抵抗があったものの、パソコンを開くのは気楽」とも話す。他にも生徒からは「これまではプリントがかさばるので、勉強するにも片づけないといけない、面倒くさいと感じていたが、教科書もワークも1つの端末にまとまって、それを出すだけで全部できるようになったので『ちょっとやるか』と(いう気楽な気持ちで勉強を)できるようになった」(特進コース1年・松山正幸さん)等、好評価が聞かれた。

「わからない」で終わらせない…ICTが理想の教育を叶える

 学ぶ意欲が出た、自主的に勉強する気になった、わからないことを手元の端末ですぐに調べられる。このような生徒の姿は、まさに同校が教育方針として掲げる「意欲を引き出す」「自主性を尊重する」「『わからない』で終わらせない」が形になったものと言えよう。ICT活用が、教育方針の実践やサポートに大いに役立っている。

 「課題や宿題を家でも学校でもアプリ経由ですぐに提出できるので、提出期限に遅れなくなった。また、端末の中に教科書やプリント等が入っているので、端末だけを持ち歩くことで自宅学習もテスト勉強も全部解決するようになった」(特進コース1年・白濱こころさん)との生徒の感想が示すように、ICTによる効率化や利便性が引き出す生徒の勉強への意欲は大きい。教科書やワーク、辞書、プリント等をすべて1つの端末にまとめたことにより、ぞれぞれの物品購入の費用が軽減できるだけでなく、資料を探したり整理をしたりする時間を削減することもでき、気軽に勉強に向かうように生徒の意識が変化してきている。学ぶ意欲が存分に引き出され、BYADとは言え、結果的にコスパの良い教育が実現できていると言えるだろう。

手軽に調べられる、学習に着手できることで自主性が向上

 生徒のひとりひとりの夢に寄り添い、教育を展開する同校。最後に生徒たちに将来の夢を聞いてみた。

 「教師になりたい。ICTを活用して今受けている授業と同じように生徒に効率よく教えてあげたい」(宮木さん)
 「紙の図面も、3D等のデータも併用してわかりやすく示せる建築士になりたい」(松山さん)
 「理学療法士が夢。日々更新される情報を取り入れて、いろいろな体の悩みを抱える患者さんに向き合っていきたい」(白濱さん)

 ICTを活用した同校の教育によって得られた学びを経て、さらに大きく広がる生徒たちの夢。同校はこうした生徒の夢をかなえる後押しを続けている。

全校で取り組むICT活用が良質な教育につながる

 ICTはそれの導入自体が目的ではなく、あくまでも生徒のより良い学習を支えるツールである。当然のことのように思えることも学校現場によっては、なかなか実現できず、導入や活用に戸惑う場面も多い。

 大阪産業大学附属高等学校は、ICT教育部を設置することで、全校・全科目で足並みをそろえてICTを活用した授業実践に取り組んでいるのが印象的だ。こうした学校全体の意識が、教育内容にも波及し、結果的に生徒の学びへとつながって結実しているように思う。建学の「偉大なる平凡人たれ」の精神のもと、ICTとともにある日常の学びを有意義に取り組み、夢に向かってたゆまぬ努力を続ける生徒と、それを支える先生方の姿。先生と生徒の二人三脚にICTツールのバックアップが加わって、さらに先の未来を見据えた教育へと発展していくことだろう。

日常の学びにICTを活用する大阪産業大学附属高等学校
大阪産業大学附属高等学校についてはこちら
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top