2年続けてのオンライン開催から、2泊3日の“対面”ツアーを再開したJ-POWER(電源開発)「エコ×エネ体験ツアー火力学生編@磯子」が2023年2月15日から17日に開催された。2013年から続く同ツアーの魅力は、社会課題や環境問題に関心をもつ学生同士の出会い、電気をつくる現場「磯子火力発電所」見学、全国約100か所に発電所を保有するJ-POWERの社員や科学技術コミュニケーション、環境分野の専門家から惜しみなく伝えられる豊富な知見、そして深く語り合う濃密な時間だ。当選倍率は約3倍という人気ぶりからも対面でのツアーの再開を心待ちにしていた学生たちの心情がうかがえる。
電気代の高騰やカーボンニュートラルなど、これまで以上にエコロジーとエネルギーへの関心が高まる今、学生たちは何を知り、何を考え、何を語ったのか。オンラインでは味わえない密なコミュニケーション機会を求め結集した、学生たちの熱い3日間をレポートする。
【目次】
1日目:アイスブレイク~カードゲーム~パネルディスカッション~実験~講義~振返りと交流会
2日目:磯子火力発電所見学~三渓園散策~寸劇~講義~ダジックアース~振返りと交流会
3日目:振返り~グループワーク・ディスカッション~発表~閉会
スタッフの思い
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積極的に対話し、みんなで作るツアー
会場の横浜研修センターにやってくる学生たちひとりひとりを、笑顔で出迎えたJ-POWERの多比良重誠氏(しげさん)からの挨拶でプログラムがスタート。しげさんは「初対面ですがリラックスして積極的に対話や交流を楽しんでください。自分なりの“お土産”を持ち帰ってもらえたらうれしいです」と感慨深そうに学生たちの顔を見渡し、3年ぶりの対面ツアーの開会を宣言した。
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3日間の進行役は、エコ×エネ体験プロジェクトの協働パートナーである研究者集団「サイエンスカクテルプロジェクト」代表の古田ゆかり氏(ゆかりん)。ゆかりんは、「良く聞こう」「たくさん考えよう」「たくさん話そう」「みんなで作るツアー」「どんな社会をつくるか」の5つのカードを掲示し、学生たちに3日間の基本方針と心構えを伝えた。
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学生たちが早く打ち解けるために行われた最初のプログラムはアイスブレイク。どこから来たのか声を掛け合い確かめると、秋田県、島根県や広島県など日本各地から集まっていることがわかった。全員で立ち上がり、お互いの共通点を話しながら5つのグループに分かれた。このチームで次のプログラム「エネルギー大臣になろう!」に臨む。
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エネルギー政策をカードゲームで体験
カードゲーム「エネルギー大臣になろう!」は、サイエンスカクテルの永井智哉氏(ともやん)が進行役を務めた。ゲームの前にJ-POWERの山本有希氏(やまゆき)から電気についての講義が行われ、電気の特性や、大量に貯められないという課題、安定供給には発電方法の組合せや需給調整が大切なことが伝えられた。
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「エネルギー大臣になろう!」では、安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)=自給率、電力コスト=経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)という「S+3E」がキーワードとなる。それぞれのグループが仮想の「国」となり、先進国、資源国などの国タイプを国カードを引いて決める。資源や経済事情も異なる中で優先政策を決め、決められた予算を使ってさまざまな発電所を建設。電気料金・環境負荷・稼働率・自給率という4つの点数と合意形成、国民満足度を競って勝敗を決める。さらに、技術革新や戦争、地震、気候変動などのアクシデントカードが勝敗に大きな影響を与える。活気あふれる話し合いを経て政策を見直していく。
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ゲーム終了後、ともやんは「S+3E」の実現に向けて、さまざまな発電方法を組み合わせる大切さを説明。また、時代の移り変わりとともに発電方法や電力需要も変化してきたこと、今後の脱炭素に向けた政策や水素技術の現状など、過去から未来につながる話も展開。J-POWERグループの元社員で髙倉環境研究所代表の髙倉弘二氏(ドクター)からは、バイオマス燃料において、植林と伐採の時間軸の関係から生態系に与える影響などの視点が紹介され、再生可能エネルギーにもメリットとデメリットが存在する可能性が指摘された。
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昼食後の「エネルギー大臣になろう!」の振り返りタイムでは、特に日本を仮想としたグループ「ケニア」が注目された。資源をもたない国がエネルギーミックスに臨んでいたが結果は最下位。「うまくやったつもりなのに…」という学生の声がリアルに響いた。サイエンスカクテルの岩城邦典氏(イワクニ)は「常にアンテナを張って、未来の技術がどういう方向に向かっていくかを予測することも重要」と指摘。ゆかりんは「現実の複雑さ、立場による見方や考え方の違いを実感してほしい」とゲームの意図を伝え、学生たちに問いを残した。
地熱発電開発のパネルディスカッションを通じて合意形成の課題を知る
次のプログラムは、磯子山温泉という架空の古い温泉街に地熱発電開発の話がもち上がった…という設定のパネルディスカッションから合意形成の課題を知るプログラム。
まずは地熱発電の仕組みを知るために、J-POWERが運営する宮城県大崎市の鬼首地熱発電所の360度映像を視聴した。地熱発電は発電中にCO2をほとんど排出せず、太陽光や風力のように天候に左右されずに1日24時間、1年を通して安定的な運転が可能。今後は純国産の再生可能エネルギーとしての利用拡大も期待されている。
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架空の温泉街、磯子山温泉での地熱発電所建設の是非を議論するという設定の疑似パネルディスカッションでは、エコ×エネのスタッフが、ファシリテータ、温泉組合長、温泉組合の若手女将、環境保護活動家、地元の商工会議所の理事、地熱発電の技術者に扮して話し合いをする場面を演じた。温泉の枯渇や風評被害による観光業への打撃、環境への影響の危惧、ビジネスや純国産エネルギーのメリット、データによる安全性の主張など、立場の違いからお互いの意見はかみ合わずに終わる。
学生からは「それぞれ建設の反対と賛成という結論ありきで対立が続き合意形成の道筋がみえなかった」「一緒に地熱発電所を見学して実際を知ることが必要」といった意見が出た。ゆかりんは、現実の社会にもこうした場面が存在するかもしれず、互いの立場の理解やきめ細かい話し合いが大事であることを伝えた。
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ドクターによる「火力発電の基礎」実験
続いては、明日の磯子火力発電所見学に備え、ドクターとやまゆきが火力発電の仕組みを実験。火力発電所では石炭・石油・天然ガスといった燃料を燃やして蒸気を作り、その蒸気を受ける羽根車をもつタービンを回し、つないだ発電機で発電する。基本的な原理は「電流・磁界・力」のフレミングの法則。コイルの中を磁石が動いて電磁誘導で電気が起きる。太陽光発電と燃料電池以外のすべての発電はこの原理を応用している。
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発電の過程で発生したCO2を回収・貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の仕組みを実験。溶剤でCO2をキャッチして吸収、液化し天然ガス田等(貯留層)に送り込み保存する。ドクターは石油や天然ガスがある貯留層をチョコレートコーティングの駄菓子に見立て、キャップロックという遮蔽層がチョコレートの部分にあたると説明した。
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講義「エネルギーをめぐる環境と世界」で日本と世界を知る
続いてしげさんによる「エネルギーをめぐる環境と世界」の講義。世界のエネルギーの状況を解き明かす。特にロシアによるウクライナ侵攻で資源価格が高騰、電気料金をはじめ食料品などの物価が上昇した。日本では電力需給のひっ迫も生じている。
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日本では、水力・太陽光・風力などの再生可能エネルギーを増やす計画も立てられており、近年では太陽光が急伸するも、時間や天候に左右されるためコントロールが難しいという。電源の安定供給のためには電源構成を組み合わせることは必須だが、新しい発電所の建設には地域の人々の理解が必要で、日本には欧州のような国際連携線がなく、地域をまたぐネットワークが脆弱という課題もある。日本では2050年に向けてエネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの両立に向け、炭素燃料から水素燃料への転換や水素社会実現に向けた取組みが始まっている。
エネルギーはSDGsとも密接に関連している。平和で豊かな社会と気候変動問題への対応をいかにして両立するか。水・食糧不足、貧困、教育、ジェンダー平等など、エネルギーで解決が可能な目標もある。「エコ×エネ体験プロジェクトでは、エネルギーと地球環境の共生、持続可能な社会の実現に向けて、社会課題に関心をもち、自分事として行動できる人が増えていくことを目指しています」と、しげさんはツアーに込められている思いを語った。
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大量のインプット、1日目の振り返り
初日の振り返りでは、学生から、「エネルギー事情もこんなに変わったのかと思った」「エネルギー問題が自分事になってきた」などの声があり、問題意識の高まりや学んで行動することの大切さを感じているようすだった。
夕食後は、自分が学んでいること、関心をもっていること、好きなことを、ひとりずつ自己紹介。専攻は法律や政治、理工など分野もさまざま。その後の自由交流会でも全員が残り、映画、お笑い、運動など趣味の話で盛り上がり、笑顔と話す声が絶えない賑やかな雰囲気に包まれていた。
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1日目:参加した学生たちの感想&コメント
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「学生同士語り合う、当たり前のことができて嬉しい」コボちゃん
2019年にエコ×エネ体験ツアー水力編に参加してから、火力編の対面開催の再開を心待ちにしていました。コロナ禍でさまざまな機会を失い、当たり前のことが当たり前ではなくなった経験をしてきた学生時代なので、こうして学生同士で集まって話すこと自体がとても嬉しいです。環境問題について話せる仲間は大学内に多数いるわけではないので、同じ興味をもつ学生たちに出会えて貴重な時間でした。
「自分がエネルギー政策を考えたことが新鮮」まっきーさん
曾祖母が3. 11の原発事故を経験したことからエネルギー問題に強い関心をもつようになりました。大学ではエネルギーや環境などのテーマを議論する機会があまりなく、同じことに関心をもった人と出会えると考えツアーに参加しました。カードゲーム「エネルギー大臣になろう!」で、自分が実際にエネルギー政策を考えたことが新鮮でした。初対面のチームメンバーと話し合って合意形成していく過程はとても良い経験でした。
「環境に関心のある仲間と出会えた」しょうさん
大学では環境サークルの代表をしています。環境問題に興味をもったのは森林に関係した父の仕事について小さいころからたくさん話をしていたことが影響していると思います。2022年夏にオンラインで開催されたエコ×エネ体験ツアー水力編に参加し、対面ツアーに参加したくて夜行バスでやって来ました。エネルギーや環境だけでなく、法律を学ぶ学生も多く、議論できる仲間と出会えてたくさん話ができて良かったです。
地域環境に配慮した石炭火力発電「磯子火力発電所」見学
2日目の朝。学生たちは揃って元気に朝食を済ませ、磯子火力発電所に向かいバスで移動。実際に電気がつくられている現場に潜入し、火力発電所の大きさを実感したり、仕組みを理解したり、環境対策の取組みを肌で感じたり、働く人の思いを聞く、1日目の座学とは違った「実体験」が詰まったプログラムだ。
2チームに分かれてまずは模型を展示しているPR施設「ISOGOエネルギープラザ」で発電所の全体像を把握した。J-POWERの磯子火力発電所は1967年に旧1号機、1969年に旧2号機が運転開始。1950年代から60年代に石油へのエネルギー転換が進む中、国内の石炭産業を保護する国の政策を受けて、石炭火力発電所の建設を進めた。その後、大規模なリプレイスを実施し2002年に新1号機、2009年に新2号機が運転開始。エネルギー効率を当時の世界最高水準にまで高め、発生するCO2や窒素酸化物、煤塵なども、環境への負荷を最小限に抑え、日本のクリーンコールテクノロジーを象徴する発電所となった。
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磯子火力発電所では、海外から輸入した石炭を、東京湾内にあるコールセンターに荷揚げし、セルフアンローダー船で発電所まで運び、船着き場からベルトコンベアで石炭を貯めるサイロに運ぶ。石炭は細かく砕いてボイラーで燃やし、その熱で作られた高温高圧の蒸気でタービンを回して発電機で電気をつくる。
ボイラー建屋の屋上からは発電所の全景が見渡せる。石炭をサイロに運ぶベルトコンベアは密閉式のチューブ内に格納し石炭の飛散を防止。ベルトを空気で浮かせることによって振動や騒音を減らす工夫もされていた。また煙突を真上から見た断面の形状は楕円形、空に馴染む配色で、近隣にある日本庭園「三渓園」から望む景観に配慮されている。発電所のリプレイス時に環境や緑化に従事していたドクターによると、この景観の問題により建設の同意が得られないところまで追いつめられていたという。
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運転センターでは24時間365日、電気の安定供給のために発電機の出力や蒸気の温度、排ガスの濃度など運転員が監視。また窒素酸化物などの濃度の情報は横浜市にも転送されている。学生たちはボイラーの中を覗き、石炭が燃えるようすと顔に感じる熱さに驚いていた。環境対策のための集塵装置・乾式排煙脱硫・脱硝装置も確認し見学は終了した。
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若手社員との交流で「仕事」を知る
生活を支える火力発電所を見学し、その仕組みをリアルに感じた後は、そこで働く“人”の思いに触れる時間。年齢の近い若手社員たちとの交流では、働くとはどんなことか、どうしてこの仕事を選んで、どんなやりがいを感じているのかを率直に聞ける貴重な機会となった。
業務グループの髙木大地さん(事務)は入社2年目で経理に従事。事業所全体の予算管理をしている。毎月の請求処理の金額は億単位で件名もたくさんあり神経を使うとのことだった。電力業界は人々の“当たり前”を支えるのはもちろん、安心を届けている、そこに魅力を感じたという。急遽、予算を集める必要がある場合は緊張が増し、会社内外の人とのやり取りも大事だと感じているという。
運用グループの上原大知さん(技術)は入社4年目。発電所の中に流れる海水の配管が詰まるのを防止するボールに付着した貝を取り除く「貝・ボール分離装置」による清掃の日程や工程、安全に作業ができるための準備をする仕事に従事。トラブル時は委託会社への緊急依頼もあり、日頃のコミュニケーションが大事になるという。
運用グループの濱郁夫さん(技術)は入社6年目。4年前のエコ×エネ体験ツアーでは案内役として参加していた。4年前は実際に運転センターでオペレーターを、現在は技術職でさまざまな修繕計画を立て、メーカーとのコミュニケーションから社内への橋渡し的な役割を担っている。発電所は建てて終わりではなく、設備をアップデートしてケアをしていくところに魅力を感じているという。
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ゆかりんが「みなさんのお話を聞くと、自分が所属する部署はもちろん、社内の他部署や他社との関わりがあり、多くの人がひとつの仕事に関係してくることがわかります」と話すと、学生たちは大きくうなずき、仕事への責任とコミュニケーションの大切さを感じているようすだった。
三渓園から磯子火力発電所はどう見える?
次にバスで三渓園に向かい、園内の鶴翔閣楽室棟で昼食をとり、休憩を挟んで午後のワークに臨む。休憩時にはドクターによるエクスカーションツアーが開催。三渓園と磯子火力発電所は関係が深く、園内を歩くと山と山の間に磯子火力発電所の煙突がかすかに見え隠れする。ドクターが、磯子火力発電所のリプレイス時に三渓園の景観を維持するため、築山を作って10mの木を植えた場所へ案内した。「築山を作ったときには明らかに違和感がありましたが、今は時間の経過とともに自然の力で周囲の景観になじみました。自然の力はすごい」とドクターは振り返った。その後、展望台を上がって、海側の工業地帯に磯子火力発電所を確認。ドクターによると、景観は見る人によって視点も異なり、緻密にシミュレーションした結果、煙突の形状や建屋の配色も配慮されたとのことだった。
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鶴翔閣楽室棟に戻り、学生たちは「今日、知ったこと、驚いたこと」をアウトプット。「技術と社会貢献の組合せ」「煙突の色は空の色」「大企業でも事業のすべてを自分たちでやっているわけではない、他企業との協力が重要」という本質を捉えた声があがった。
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続けて、磯子火力発電所と横浜市の環境保全に向けての取組み「横浜方式」の寸劇へ。磯子火力発電所の建設には、J-POWERと行政、地域住民の間にさまざまなことが起きていた。その経緯を寸劇「横浜方式」としてドクターが演出し、学生が演じる。
高度経済成長期に移行した日本は、安価な石油による発電にシフト。戦後復興を支えた国内の産炭地である北海道や九州は地域経済が疲弊して構造的な不況になった。国会で産炭地振興の法律が成立し、東京電力や電源開発には横浜市をはじめとする石炭火力発電所の建設が国から要請、建設計画は進む。一方で、大気汚染などの公害による健康被害への危惧は高まり、横浜市の医師会や商店会、婦人会は対策の必要性を横浜市長に訴えた。当時の飛鳥田横浜市長は、予定地の転貸しには横浜市の同意が必要なことから、学識者の協力を得て環境対策14項目の要望案を作成。建設後も市と公害防止協定を結び、市が監督指導できるよう東京電力や電源開発の協力を求めた。行政と企業が直接、公害防止協定を締結し、環境保全・公害防止に取り組む方式は、当時は例がなく、それより「横浜方式」とよばれて全国に広がった。
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寸劇では、当時のそれぞれの立場からの訴えや考えを、学生自身が自分事として理解するきっかけを作った。学生は臆せず、それぞれの役になりきって、大きな笑いも巻き起こし、まるでラジオ名作劇場のような仕上がりとなっていた。ゆかりんは「「このできごとは、横浜市のその後の環境行政に影響を与えました。地域で何があったかを知ってほしいと思います」と結んだ。
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「技術者の目」カーボンニュートラルを実現する新技術の動向
次に大崎クールジェン元社長、相曽健司氏による講義「技術者の目」。相曽氏はJ-POWERで国内外の発電所の計画や建設の仕事に従事し、瀬戸内海の広島県大崎上島にある「大崎クールジェン」という、石炭を使いながら脱炭素を目指す技術を実証する国家プロジェクトの社長の重責も担った。まず現在の超々臨界圧による石炭火力発電の仕組みや、石炭ガス化複合発電「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)」ではエネルギーロスが少なく、CO2を分離・回収できるという特徴があることを説明。さらに木材や下水汚泥等からバイオマス固形燃料を作って混ぜることでCO2はさらに削減され、最終的にはCO2の排出がマイナスになる処理に向けて技術開発が進んでいくと話した。
また石炭は貯蔵性に優れ安定的に調達できるメリットがあり、日本の石炭の活用はエネルギー政策では重要な位置付けとして捉えられ、将来的には燃焼により発生したCO2を地中に貯留する技術も進み、さらに、カーボンリサイクルの技術として、バイオジェット燃料やコンクリート、ペットボトルの原材料等で利用することも考えられていると言う。
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さらに日本が独自に開発してきた「ガス化炉」の仕組みを詳しく説明。こうした石炭のガス化を起点にした大崎クールジェンの実証試験では今、CO2分離・回収と燃料電池を組み合わせるフェーズが並行で進み、商用化が間近であるという。オーストラリアの褐炭*から水素を作って日本に運ぶ実証試験やバイオマス、アンモニアを利用する技術開発にも話は及んだ。*褐炭 : 水分が多く熱量も低い為、ほとんどが未利用資源となっている石炭種
相曽氏は、日本の特殊性を背景にしたエネルギーミックスの考え方にも触れ、エネルギー転換で技術継承の重要性も指摘。今後は、さまざまな業界がつながって「脱炭素」を実現することが大事だと語った。
「エネルギーを巡る最新事情」の講義
BUSINESS INSIDER JAPAN記者・副編集長の三ツ村崇志氏による「エネルギーを巡る最新事情」では、エネルギー関連で取材した数々の事例が紹介された。まず2020年10月26日の菅元首相の所信表明演説で公式に日本がカーボンニュートラルを宣言したことで、脱炭素をビジネスとして現実に考える企業が数多く動き出したという。
カーボンニュートラルの実現に向けては、さまざまな業界から幅広く脱炭素を目指す動きが必要となる。再生可能エネルギーは供給の安定性に課題があり、受け入れるシステムや法整備も重要となる。三ツ村氏が紹介した事例では、新しい洋上風力発電、再生可能エネルギーの余剰電力を活用する取組み、天候を予測し太陽光発電に生かす取組みなど、興味深い話が数多くあった。
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またこの先の技術については特に「水素」に焦点が当たっており、欧米を中心にコンセンサスが取れているので、今後はさらには発展していくという。日本でも実証試験を行っており、ルール作りで日本が主導権を取れる可能性があると三ツ村氏は説く。「核融合」「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」「アンモニアの新しい製造技術」なども紹介し、ビジョンを掲げて技術をもつ企業に資金が集まる現状が話された。
最後に三ツ村氏は学生に向けて「脱炭素に向けて、自分は何かできないかといった関わり方への覚悟は、今の20代、30代の人たちは考えないといけないと思います。社会がどう成り立っているのか、ビジネスとしてどう関わっているのか、そこにはどういう理由があるのかと解像度を高めれば、自分はこのポジションが良いと腹落ちできるのではないでしょうか」と伝え講演を締めくくった。
地球を丸ごと俯瞰できる「ダジックアース」体験
横浜研修センターへ戻り、夕食後は、イワクニによる「ダジックアース」体験。ダジックアースとは、プロジェクターで球形のスクリーン上に地球や惑星を映し出すもの。火力編のためにカスタマイズしたプログラムで太陽系の惑星の特徴、地球での人類の歴史を辿り、人類がどのようにエネルギーを使っているか地球を俯瞰して見て、温暖化効果ガスの状況、森林を広げる大事さ、窒素酸化物の多い地域などが紹介された。さらに風や海流の動きも映し出してエネルギー活用のヒントも提示したが、電源として有望でも、それを支える送電や発電設備、法整備に課題があることも指摘。イワクニが「エネルギーを効率よく活用するために、情報を得るツールを駆使して、これからの地球の未来を考えることが大切」と語る中、学生たちは未来に思いを馳せているようだった。
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最後の夜、すっかり仲良くなった学生たちは、自由交流時間が終わるまで、めいっぱい語り合っていた。
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2日目:参加した学生たちの感想&コメント
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「環境を学び、どう社会に貢献できるかを明確にしたい」まピコさん
犬を飼ったことがきっかけで動物愛護の分野に関心が生まれ、中学までは獣医になろうと思っていましたが、高校で生物多様性から環境分野に関心をもつようになり、このツアーに参加しました。昨日と今日の体験から日本のエネルギーの今ある姿、本質を捉えられるようになったと思います。また同年代の同じ興味関心のある学生や発電所の現場の人と話す機会を得られ、多くの気付きがありました。予定している留学で環境学を学び、さらにどう社会に貢献していけるかをもっと明確にしたいと思います。
「持続可能な発電だけで全世界の電気を賄う世界に」いのくん
小学校の理科の授業がきっかけで、自然や科学に関する本を読んで育ちました。その後、山登りやハイキングの経験から自然や環境を守りたいと考え、今も地球温暖化に対して大きな影響がある「発電」に関して学んでいます。このエコ×エネ体験ツアーは3年前から参加したいと念願していました。J-POWERの方に疑問にすぐに答えていただくのは、なかなかできない経験で、ドクターのバイオマスの話には衝撃を受けました。将来の夢は、核融合や地熱、風力などの持続可能な発電だけで全世界の電気を賄うことです。
「景観に配慮した発電所の設備に驚いた」ようたろうさん
ワールドワイドな資源分野が面白いと思い、今の大学に進みました。このツアーでは、自分が大学で学んだ知識を生かそうと思っていましたが、知識だけではなくコミュニケーションも大切だと気付きました。発電所の見学では、煙突が空の色で、デザインも楕円形で景観を意識していることがわかりました。カーボンニュートラルに向けて、石炭のイメージの悪さに少し悩んでいましたが、さらにカーボンを集める技術が発達すれば、石炭による発電も良いかもしれないという気持ちも出てきました。
社会と科学の懸け橋としての「科学技術コミュニケーション」
最終日の朝は、ドクターの「でんでんむし」体操からスタートし、体と頭を働かせる。「でんでんむし」体操とは、何事も物事にはつながりがあることを楽しく考える体操であり、楽しくみんなで体操した後、ドクターは、自動車産業を例に、物事にはすべてつながりがある、環境に優しいだけではなく雇用も創出する部分を大事に考え、広く普及することでひとり勝ちの産業構造にならないような「多様性」をもった仕組みに留意する大事さを解説した。
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ゆかりんによる最後の講義「科学技術コミュニケーション概論」では、環境問題や私たちの暮らし、これからの私たちと、科学技術コミュニケーションの関係やあり方を考えた。日本は70年代の公害問題を経験し、解決に向けて努力を重ねたこと。そして90年代には国境を超える課題として環境問題が世界的なテーマとなったこと。当時メディアにいた、ゆかりんは環境問題に取り組むためには多くの人が科学を知って発信することの大切さを感じたという。
なぜ科学技術コミュニケーションは必要なのか。科学技術は、社会のあり方や個人の生き方、未来をも左右する。そのため「対話による科学技術政策への市民参加」が重要とされる。科学技術は、私たちの生活に密接な関係にあり、問題意識をもち続けて何かあったときに疑問をもてるリテラシーが必要。それは正しく教える、教わるだけではなく、自分で考え、対話することがベースだと、ゆかりんは話した。また同時に、科学者自身が社会リテラシーを高めることが対話では必要とされる。
現在、多くの人が不安をもつ健康問題や災害などは、科学に問うことはできるが、社会や政治がどう対処し解決すべきかまでは科学だけでは判断できないケースが数多くある。こうした「トランス・サイエンス」の事例では、社会と科学の間にあるさまざまな難しい事象を捉えて、科学の可能性と限界、不確実性と向き合うためのコミュニケーションが必要となり、また自分自身で考えることが大切。そのため、科学技術と社会の望ましい関係を考え、科学技術の楽しさを市民と分かち合う、場づくりもさまざまに模索されている。今後はさらに対話や交流を通じて、未来や新しい価値へ向かうことが望まれる。
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ゆかりんは「自分事として考えることは絶対に必要ですが、ひとりでできなければ仲間を探しましょう。周りにいなければ旅に出て探しましょう。そんな旅のために科学技術コミュニケーションを使ってくれたら良いと思います」と話した。
「平等と公平とは何か」という本質的な課題を深める時間に発展
2日間の体験を経て最後のプログラムでは、学生たちが「どんな社会を作りたいのか」をテーマに、その社会を作るために何をするのかを計画して発表する。まずはノートに自分の考えを書き、そのノートを見せながら「旅」をして仲間を作り、最終的に4~5人のグループへ。学生たちは交流の輪を広げ、時には1つの輪になったり、また自然に分裂して小さい輪が複数できたりと、グループ形成のようすはとても興味深く、話す過程で自分の意見が変化していく化学反応も見えた。昼食前には4グループが確定。その後、グループ・ディスカッションを経て「どんな社会をつくるのか」を模造紙にアウトプットしていった。
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ゆかりんは「「考えを伝え、人の話も聞き、聞いたことから刺激を受けて新たなアイデアや意見につなげ、新たな考え方に結び付けるというように議論を積み重ねていくことが大事」と伝え、いよいよグループの発表へ。
「よりよい不完全な社会へ」(メンバー:おおちゃん、はなちゃん、まピコ、よっちゃん)
まず「不完全」とした理由を説明。多様な人が多様な意見をもって社会はできているが、議論になると意見が潰され、他の人の意見に合わせることもある。多くの人の価値観を残すには、議論をやめずに続けることが必要。そこから相互理解によって理想的な「より良い不完全な社会」に近づくことを目的に設定。不完全な社会から、より良い不完全な社会へ、さらにその不完全な社会から向上することが重要だと考えた。実現のためには「自分事の範囲を広げる」「議論のタネをもつ人が増える」「議論や発信の場を設ける」「相互理解の促進(賛同することではない)」という4つのサイクルを回していく。
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「人の交わり」(メンバー:うえもっち、まるくん、みつき、しょう、かい)
より良い社会の実現のためには「人の交わり」が必要な要素だと考えた。人が交わって対話や議論をするからこそ、足りないものを補い合える。「人の交わり」に必要な交わる場の提供では、交流できる場を認知する機会を増やすべきとし、ただ場があって認知しても、挑戦しない、生かそうとしなければ、人との交わりはできず、興味のない人が参加できない現状を問題点と捉えた。そこから人の交わりを促進する解決策として、横浜方式のような交流活発なモデル都市、サイエンスカフェやサイエンスショップ、エコ×エネ体験ツアーの3つの事例をあげた。
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「すべての人が幸せになるために公平かつ安全を確保した社会」(メンバー:いのくん、かっしー、まっきー、おかっち、コボちゃん)
すべての人が幸せになるために「公平や安全が確保できる社会」の実現を目的とした。選択肢の欠乏が不幸につながり、また結果が同じでも自分が選択できれば納得できるのではないかと考えたという。そこで、選択肢の保護を考え、公平と安全に絞り、世界中のすべての人に安全なインフラを供給。電気・水道・ガス、また情報へのアクセスの安定したインフラを基盤に、経済格差にとらわれない選択肢の多様性を実現するとした。また公平も一律、全員に同じ対応ではなく、有名な「平等と公平」の図を引き合いにして、必要な人に対応することで、全員に対して同じ選択肢が視界に入り、また選択肢自体に多様性をもたせるとした。安定したインフラと経済格差にとらわれない選択肢の多様性の2つの要素ですべての人の幸せを実現していく。
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「みんなが納得して発展する社会」(メンバー:リョック、ようたろう、なかじま、ひょう、ゆみ)
目指すのは「みんなが納得して発展する社会」。そのためにはまず新技術の発展から利便性の向上を考えた。また新技術を使うために必要な技術があり、今まで需要がなかった技術も需要が増えることで日が当たる。多角的に技術の枝分かれを増やせばいろんな部分でつながる。そうした新技術をもたらすには、まず「納得」が基盤になる。また「納得」を得るのは難しく、もっとも時間がかかると考え、どうやって納得するかを詳しく問題提起。まず市民・科学者の「交流」を前提に、まず交流する相手がどのような考えか、当事者意識をもって「知る」準備をする。その事前準備後に「体験」へ。技術者ならば市民、市民ならば技術の影響の「検討」を行って自分たちならばどう考えるかを振り返り、「意見」を交えて相互理解を深めるサイクルに結び付けるとした。
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発表後は「そもそも平等と公平とは何か」というディスカッションに自然と移っていった。ゆかりんは「平等と公平とは何なのか。この話は世界がどんな国の体制をとるかといった、それこそ人間が何世紀も続けてきた、とても大きな話だと思います。どのような社会を作り、何に価値を置くのか、世界中の人たちが考えている大きな命題です。今日の4グループの発表は、そうした社会課題の解決のために、みんながたくさん考えた結果だと感じました。こういうことを考え続けられる社会であってほしいし、選べる社会であってほしいし、考え続けたことを広げていける社会であってほしいというのが私の願いです。」と総括した。参加者はまだまだ議論を重ねたいといったようすだったが、このモヤモヤをお土産としてもち帰ることも、このツアーの魅力のひとつと言えるだろう。
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「わたしたちの船出」~これから卒業までの間に自分は何をするか~
最後のセッションは1人で考える時間。この3日間の体験を生かして、これから自分は何をするかを具体的に表明。船の形の黄色い紙に1人ずつ宣言して、横浜市の沿岸部の地図に貼っていく。それぞれの宣言では、「旅をする」「子供達の進路選択において視野を広げる支援をする」「所属や年齢と関係なく、交流を広め深める」「まあいっかをやめる」といった明日からでも始められそうな具体的な行動が並び、頼もしさを感じた。
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ツアーはいよいよ最後の挨拶へ。ゆかりんは「みなさんの中に何かが残れば良いとは思いますが、何を残してほしいといった具体的なことは求めていません。でも何年か経って、あのときにあんな仲間がいたんだ、あんなことを考えた、考え続けた時間が大切なものになった、そんなふうに思ってもらえれば良いと思います。コミュニケーションの大切さを感じてくれたのではと思います。3日間お疲れさまでした」と伝えた。
しげさんは「3年ぶりの開催でしたが、最後のグループごとの発表やひとりひとりの思いを聞いて、やはり対面で開催して良かったと思いました。それぞれ何か刺激や感じるところがあったと思います。みなさんの素直でまっすぐな気持ちが伝わり、これからの未来は明るいと思いました。今の気持ちを忘れずに、みなさんの大航海が成功することを祈りたいと思います」とツアーの最後を締めくくった。
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最終日:参加した学生たちの感想&コメント
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「20年後には児童虐待の報告相談件数を半分にしたい」はなちゃん
小さいころは恐竜博士や宇宙飛行士を夢見ていましたが、高校生のころに児童虐待に関心をもち、法学部に入りました。科学分野への夢も捨てきれず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で素粒子物理学のキャンプに参加したこともあるので、今回、エネルギーとエコロジーについて考える場に参加でき良い経験になりました。昨日の三渓園での寸劇が面白くて、ドクターをはじめスタッフのみなさんが、私たちが親しみやすいプログラムをたくさん用意してくれたのだと感じました。将来は、自分の意見を恐れずに言う人になり、20年後には児童虐待の報告相談件数を半分にしたいです。
「教育の現場をもっと活発なものにしたい」なかじまさん
小学生のころからマンションの間取り図が好きで、そこから建築の道に進もうと思いました。今回のツアーも火力発電所などの設計に興味があって参加しましたが、これまで受動的な教育を受けてきて、ツアーでこんなに積極的に発言できたことが印象に残りました。またダジックアースで世界のCO2濃度などを見られたことにも驚きました。将来は、建築士になりたいと考えていますが、設計するだけではなく、今、不登校やいじめを受けた子供たちの家庭教師もしているので、大学の教授になって教育の現場をもっと活発なものにしたいと感じました。
「当事者意識、環境への配慮、利他の心を大切に」ひょうさん
小さいころから機械系、特に飛行機が好きでパイロットを目指していました。また高校のときに企業に興味をもち、大学では経営系の学部に進学。さまざまな働く現場を見て、話すことは非常に重要なことだと思い、このツアーにも参加しました。「エネルギー大臣になろう!」では当事者意識をもって物事を見ることができ、自分が作った経営のゲームにはストーリー性が足りないと気付きました。航空業界に就職するので、その会社の時価総額を1位にしたいと思っているのですが、そのためには環境への配慮や利他の心も大事だと感じました。
3年ぶりの対面での開催となった「エコ×エネ体験ツアー学生火力編@磯子」では、学生の誰もが明るく、良く話し、本当に良い表情をしていた。興味関心を同じくする仲間との交流の場は、運営するスタッフの熱い気持ちや、さまざまな人々のコミュニケーションによって支えられ、実現していることを実感した3日間だった。
いよいよリアル体験の機会が増えてくることが期待される2023年。小学生親子ツアー、学生ツアー、教師向けツアー、社会人向けサイエンスカフェなど、さまざまな学びの機会を提供する「エコ×エネ体験プロジェクト」の最新情報をぜひチェックしてほしい。
小学生から大学生まで、未来につながる体験をつくるJ-POWER「エコ×エネ体験プロジェクト」
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スタッフの思い
学生たち同様に対面ツアー再開を待ち望んでいたスタッフにも、学生たちに3日間伴走した感想を聞いた。
主催「J-POWER」のスタッフ
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「何でも自由に発言して良い雰囲気がエコ×エネの魅力。社会人になると日々忙しく、夢や希望を忘れがちですが、社会課題を自分事にする今日の熱い思いをもち続けてほしいです」(やまゆき)
「初の参加で、学生の意欲が高いのに驚きました。同じ世代で社会課題やエネルギーをきっかけにコミュニケーションを取り続けるのは仕事をする上でも大事ですね」(まっちゃん)
「学生編は3年ぶりの対面開催で、学生の交流が活発になり、さらにエネルギーや社会課題などを考えるきっかけになったと思います。開催して良かったという手応えを感じたので、またさまざまな交流の場を提供したいと思います」(しげさん)
プログラムの企画開発と運営を担う「サイエンスカクテル」のスタッフ
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「科学技術と社会、エネルギーと環境などを織り交ぜた横断的なプログラムが、このツアーの魅力のひとつです。そこにはいろいろな人がいて、いろいろな仕事をしていることが理解できると思います。これからも話せる場をつくり、仲間と出会える機会を大事にしてほしいですね」(ゆかりん)
「エネルギーや環境の問題を扱うプログラムの中でリアルさを経験できることが魅力です。社会のありようやコミュニケーションの大切さを、参加した学生に実感してもらえたら良いと思います」(ともやん)
「“多様性”がひとつのキーワードです。いろんな人に実際に会って、考え方に触れて、視点が多様になる。学生にはこのツアーを通じて受け身から自発的に第1歩を踏み出してほしいと思います」(イワクニ)
エコ×エネ体験プロジェクトを支える「高倉環境研究所」代表の髙倉ドクター
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「このツアーの良さは、やはり実機を見て、本物と触れ合うことです。学部・学科もさまざまな学生が共通のテーマを話し合う。そのリアルの体験は代えがたいものがあります。集まって活動する楽しさ、同じことを考えて話し合う、学び合う楽しさ。日常で生活している場から離れて、「知」がはじける喜び。また“笑い”も大事だと知ってほしいですね」
エコ×エネ体験ツアーを運営する旅行会社「リボーン」
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「学生はエコとエネを考えるという目的がある、こうした場に飢えていて、丁寧に時間を過ごしていると感じました。頭でっかちにならずに、いろいろな人にリアルで会ってほしいです。旅に出るから出会えて、新しい自分にも気付かせてくれる。そんな旅の仕方をしてほしいと思います」(いきけん)
「同じ世代で違う分野の人と興味のあることを本気で話して、考えて、それを分かち合うのは素晴らしいことです。旅の楽しみは人との出会い。会って反応することで、いろんな発見をしてほしいです」(ふなみん)
小学生から大学生まで、未来につながる体験をつくるJ-POWER「エコ×エネ体験プロジェクト」
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