2日目も快晴、気持ち良い朝の森でパワーを充電
2日目は朝食前に「源流の森ウォーク」へ。前日の夜にナイトウォークで通った道をバスで進み、昨晩とはまったく違う景色に驚きながら森の入口へと向かった。


森の中を進んでいくと、周りに生えているいろいろな植物が気になってくる。「この実は何?」「この葉っぱ、なんか面白い」など、森の中でも子供も大人も会話が弾む。そして、「これは苦いきのこだよ」「この葉っぱは匂いがするよ。何の匂いかわかる?」と自然学校スタッフが答えてくれる。植物や自然に詳しいスタッフの知識の豊富さに驚きながら、森の中のウォーキングを楽しんだ。
しばらく進むと、さらに道が険しくなる。その先に川の源、水が湧き出る源流があった。ここから出ている水は水質検査をクリアしており飲むことができるという。参加者たちは交代で水が流れ出ているところに行き、水の冷たさを感じたり、水を飲んでみたりしていた。どんなに雨が降らない日が続いても、この源流からは水が出続けているという。自然学校のスタッフから参加たちへ「源流の水はどこからくるのか?」という問いが投げかけられた。

途中で、山の土を調べる実験を行った。地面の土を集めて、ふるいにかけると最後に丸い土のようなものが残った。この丸い土は「源流の水はどこからくるのか?」という問いに関係しているらしいが、この答えはこの後の「ドクター」による実験までのお楽しみということになった。この後の実験に期待が膨らむ。


自然学校に戻ると朝食の時間。散歩の後の朝食は、より一層おいしく感じられた。食後は帰りの支度をして、チェックアウト。まだまだ楽しいプログラムがたくさん待っている。
ダムを作って水力発電、大人も子供も協力して電気を灯せ!
今度は、皆で協力してダムを作って水力発電に挑戦。グループに分かれて、川の中でダムを作って、水車に取り付けられた豆電球を点灯させる。スタートの合図で、まずは場所選び。各グループ、発電に適した場所を選ぶために「ここは流れが速いから良さそう」「ここは段差があるからいいんじゃない?」と話し合って、ダムを作る場所を決めた。

場所が決まったらまずは水車を設置する。木材で作られた水車は、水流の影響を受け、動きやすい。まずは土台部分を平らにし、水車が動かないように重りとなる石を乗せる。水車が固定されたらダム作り開始! 水がたまり流れに勢いが出るようにダムを作っていくが、石の隙間から水が漏れてしまったり、積み上げた石が崩れてしまったりと、どのグループも苦戦していた。


私たちのグループも、積んだ石が崩れてしまったり、水流が強すぎて水車が動いてしまったりと失敗の繰り返し。しかし、これまでダムと発電についてたくさん学んできた参加者たち。積んだ石の隙間から水が漏れないよう、ダムで使われていた粘土質の土の代わりに石の間に大きな葉っぱを挟んでみたり、大きい石だけでなく小さな砂利を混ぜてみたり、子供も大人もいろいろな工夫をしてダムを作っていた。子供はもちろん、大人もびしょ濡れになって大きな石を積んでいる姿が印象的だった。2日間親子で一緒に学び、同じ経験をしてきたからこそ、子供も大人も一生懸命に楽しく取り組めるのだと感じた。
水力発電に挑戦した結果は全グループとも豆電球に灯りがつき、大成功! グループ全員で水車と一緒に記念撮影。皆で協力してやりきった後の素敵な笑顔がまぶしかった。

ドクターによる実験と、ふりかえりの時間
自然学校に戻って着替えたら、「ドクター」による自然と電気に関するお話と森の保水力実験の時間。ペットボトルを使った実験で、今朝の「源流の森ウォーキング」で見つけた丸い土は、スポンジのように水を貯めておくことができること、また「源流の水はどこからくるのか?」という問いの答えは、土の中にたまっている水であることを学んだ。「ドクター」オリジナルの実験装置で森に地下水がたまるメカニズムを学ぶ。そして、地下に雨水をためる自然のパワーと、ダムを作って水をためる人間のパワーが組み合わさって水力発電が成り立っていることを教えてもらい、電気と森、土の中の生き物は互いに関係していることをあらためて実感した。



ふりかえりの時間では、2日間の出来事を思い出しながらそれぞれに感じたことを桜の花びらに書いていき、荘川桜に見立てた大きな桜の木のボードに貼り、満開の桜を咲かせる。2日間をともにした参加者の感想は、共感できるもの、「なるほど!」と新たな発見をさせてくれるものばかりで、さらに学びが深まったような気持ちになった。


御母衣ダムが建設され、湖底に沈んでしまった地域にはかつて、人々に親しまれていた大きな桜の木があった。電源開発の初代総裁高碕達之助氏はダムの建設により湖底に沈むはずだった桜の木を救いたいと考え、当時「移植は難しい」とされていた2本の桜の木の移植を実現した。その桜の老木は「荘川桜」として今も御母衣湖の湖畔に立ち、多くの人々に親しまれているという。
ふりかえりを終えた一行は実際の荘川桜を見学し、記念撮影をした。ダム建設前からこの地域のようすを知る荘川桜は、昔の人々の思いを現在に伝える象徴だ。荘川桜を実際に見て、2日間で学んだことを忘れずに、エネルギーと自然を大切にして暮らしていきたいという思いを新たにした。

その後、すぐ近くのドライブインみぼろ湖で昼食を頂き、帰路につく。帰りのバスの車内では、自然学校スタッフの「リンリン」が撮影したツアーの写真をスライドショーで上映。多くの参加者が名残惜しむように見ていた。
2日目終了後の感想
子供たちにとって、長いコロナ禍で体験の機会が多く失われたが、今回のツアーでダムや発電所を見学して、実際に見る・触れる・考える体験の素晴らしさをあらためて実感した。2日目の終わりに2組の親子にインタビューをした。
「ルイ」さん&「ひでまる」さん親子
電気工作が好きな息子と参加しました。発電所の設備がきれいに整備されていて、人々の生活に24時間不可欠なものをつくっている施設のすごさを感じました。普段見学できないところを見せていただけたのはとても良かったです。水車を使った水力発電の実験も子供と一緒に楽しみました。初めて会った子供たちが仲良くなっていく姿を見て、子供たちが順応する力はすごいなという発見もありました。(ひでまるさん)
ダムが大きくてびっくりしました。ナイトウォークが一番楽しく、ここで出会った友達と一緒にホタルを見ることができて良かったです。暗闇で目が慣れることが体感できる実験もおもしろかったです。いろいろなことに挑戦できて、皆で協力してプログラムに取り組めた楽しいツアーでした。(ルイさん)

「くうたろう」さん&「なかまり」さん親子
昨年は娘とオンラインプログラムに参加しました。今回、昨年は画面越しに見ていた「ドクター」と実際にお話しできたり、ダムを作ったり、現地での開催ならではの体験ができて良かったです。ロックフィルダムを下から見上げた景色は圧巻でした。朝の源流の森ウォーキングや、ダムを作って水車を回す実験も、大人も子供も一緒になって楽しめました。(なかまりさん)
ロックフィルダムがすごかったので、他の人にもぜひ下から見上げてみてほしいと思いました。皆で協力してダムを作った実験が楽しかったです。ホタルが見られたのも嬉しかったです。自然をすぐそばで感じられて楽しいツアーでした。(くうたろうさん)

スタッフの熱い思いは来年・再来年にも引き継がれる
長年愛され続けているエコ×エネ体験ツアー。子供だけでなく大人も夢中になれるプログラムの数々は、スタッフの熱い思いによって支えられている。J-POWERの「やまゆき」さんに話を聞いた。
やまゆき(J-POWER)
今回、初めてエコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣に参加することができ、参加者の皆さんのリアクションを実際に見ることができて良かったです。川の中でダムを作って電気をつける水力発電の実験では私もずぶ濡れになって一緒に楽しみました。なかなかうまくいかなくても同じグループの皆さんと協力し合えたことは良い経験になりましたし、自然学校の方からヒントをもらって水車が回ったときは皆さんと一緒になって喜びました。

最近は学校でも、SDGsや環境問題をテーマにした授業が多いと思いますが、エコ×エネ体験ツアーは机上ではできない体験がたくさんできることが魅力です。ツアーには、テーマになっている「エコ×エネ」のほかにも地域のことや社会課題など多様な要素が詰まっているので、いろいろな学びが得られる経験ができると思います。
今年も多くの小学生親子が学んだエコ×エネ体験ツアーは来年、再来年と歴史をつないでいく。水力編 小学生親子向けツアーは、御母衣と奥只見(おくただみ)の2コースがある。募集開始は毎年5月の上旬ごろの予定。
ひととエネルギーと環境を“つなぐ”J-POWERエコ×エネ体験プロジェクト