【中学受験2024】受験者数は微増か、偏差値だけではない学校選びへと意識変化…早稲田アカデミー

 毎年、御三家中・早慶中をはじめとする難関校合格へ多くの受験生を導いている早稲田アカデミー。教務本部長を務める竹中孝二氏に、2024年度入試における注目校や出題傾向、また、将来の受験を見据えて低学年から育む力について話を聞いた。

教育・受験 小学生
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  • 早稲田アカデミー教務本部長の竹中孝二氏
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 2月の試験日まで3か月を切り、1月の試験にいたっては2か月ほどとなった。毎月実施される模試や過去問の結果を受けて、受験生もその保護者も、あわただしく落ち着かない日々を過ごされているのではないだろうか。

 毎年、御三家中・早慶中をはじめとする難関校合格へ多くの受験生を導いている早稲田アカデミー。教務本部長を務める竹中孝二氏に、2024年度入試における注目校や出題傾向、また、将来の受験を見据えて低学年から育む力について話を聞いた。

コロナ禍で受験勉強をスタートした学年

--コロナ禍で課されていたさまざまな制限が徐々に緩和されています。そんな中で迎える2024年度の中学入試は、どうなっていくとお考えでしょうか。

 コロナ禍での入試最初の年となった2021年度入試、受験熱は下火になるかと思われましたが、小学校が休校していた期間でも、オンラインを活用した授業提供を行うなど学びを止めなかった私学の優位性が強く認識され、首都圏の受験率は上昇しました。

 一般的に、受験カリキュラムがスタートする小3の2月が入塾生のもっとも多い時期ですが、2024年度の受験生は、ちょうど小3が始まった段階でコロナウイルス感染拡大に伴う一斉休校を経験した学年です。いろいろな習い事の制限がかかる中、「我が子の将来に向けて何かできることはないか」と考えた結果、このタイミングで中学受験塾を検討されたご家庭が多かった年次ではないかと思います。実際、私ども早稲田アカデミーにおいても、この時期の入塾者数はコロナ前と比べて20%近い増加となっていました。

--やはり2024年度も受験熱は高いと考えて良いのでしょうか。

 受験市場全体においては、2024年度も引き続き受験者数、受験率ともに増えると見込んでいますが、模試の受験者数を見る限り、急激な増加ではなく微増という形になると予想しています。通学による感染リスクを回避するために遠方の学校を避ける、より偏差値の高い学校への挑戦を控えるといった安全志向がコロナ禍の特徴的な傾向として言われていましたが、2023年度にはだいぶ例年通りの様相に戻りました。

 また、コロナ禍の副次的な要素として、説明会や行事に制限がかかり学校に行けなかったぶん、オンデマンドで学校の中身を知る機会が充実したという面があります。デジタルパンフレットや紹介動画、学校が発信するSNSなど、保護者の方が情報を手に入れやすくなったことで、「偏差値だけではない軸で学校選びをする」と保護者の意識が変わってきたなという印象があります。

早稲田アカデミー教務本部長の竹中孝二氏

早稲田、駒場東邦の人気が上昇、女子校は高大連携に注目 

--人気校の動向について教えてください。

 盤石の合格実績に加えて、創立150周年の節目を迎え高校の新校舎がお披露目になったばかりの開成、理系教育に力を入れ東大の理科三類に2年連続で二桁の合格者を出した桜蔭など、男女の私立最難関校においては今年も人気は継続していくと思われます。

 同じく、生徒の教育環境のさらなる充実を目的として新校舎を建てた早稲田も、さまざまな模試を見る限り志願者を大きく増やしています。人気の背景として、校風やハード面の充実はもちろんあるでしょう。しかし、早稲田大学の推薦枠がありながら、将来の夢に向け他大学への進学も視野に入れられるという選択肢に魅力を感じるご家庭、わが子に受験にとらわれることなく学校生活を送ってもらいたいと考える層に、バランス良く求められているのではないかと考えています。

 このほか、人気が上昇しているのが駒場東邦です。もともと充実した教育内容に定評があり人気の学校ですが、昨年度の東大への高い合格実績が、間違いなく志望者増に影響していると思われます。なお、ここ数年続いていた早慶MARCHなどの附属校人気は適切な倍率に落ち着いてきたという見方をしています。

--今年度注目のトピックスについて教えて下さい。

 埼玉では、岩槻の開智・日本橋・望に続く4校目として、開智学園グループが所沢に中等教育学校を新規開校します。中高6年間でしっかり面倒を見てくれるカリキュラム、国際バカロレアへの取組み、人間力を豊かにするという教育方針への信頼感に加えて、1月校の所沢と岩槻は同一の試験で両校の判定を受けられる、2月は日本橋と併願ができるなど、保護者としても開智の系列に振り切りやすい面があるのではないでしょうか。

 千葉では昨年、流通経済大柏が非常に人気を集めましたが、今年もさらに受験者が集まるとみています。NXグループ(旧日本通運社)と提携しロボティクスといった最先端の技術が学べるなど、時代のニーズをしっかり掴んでいる学校として支持されています。

 神奈川の女子では横浜雙葉が2月1日に加えて2日に入試日を追加。こちらも現時点の志願状況を見るとかなりの人気を集めています。横浜共立・フェリスといった横浜御三家の人気動向や併願選択にどう影響していくか、今後に注目が集まります。

 高大連携の動きが非常に活発化しているのも近年に顕著な傾向です。附属をもたない東京理科大学がいろいろな中高と提携しているほか、明治大学と系属化した日本学園、法政と提携している三輪田、立教大学への推薦枠の拡大を発表した香蘭などもその一例と言えるでしょう。

 昭和女子・山脇・湘南白百合を筆頭に、理系の大学と提携する女子校も増えています。理数の能力が高いのにも関わらず、理系を目指すことに対して二の足を踏む女子生徒が一定数いましたが、それは理系の大学でどういったことを学ぶのかなかなか想像できないという壁もあったと思われます。提携により、大学の教授が学校に出向き研究内容について教えてくれるなど、生徒が学びたいことと大学側の提供する学びとのミスマッチがなくなるというメリットに、大きな期待が高まります。

学校が求める学びは入試問題に反映

--入試問題の変化や近年の出題傾向について教えてください。

 身に付けた知識を使いこなすという大前提は変わりませんが、十数年前と比較すると、どの学校の入試問題も記述量が増えています。2023年度は桜蔭の算数の問題用紙が1枚増えたことが話題になりましたが、これは、長文の問題文を読み込み、しっかり分析したうえでその場で考えて解く力が必要とされていることの表れです。桜蔭に限らず、初見の問題に対する分析力や問題の読解力は、どの学校、どの教科にも求められています。単なる知識のあてはめだけではなく、本質的な理解を深めることが必要とされているのが大きな傾向です。

 あわせて、学校ごとの傾向がより色濃く出てきているともいえます。麻布のように自分なりの発想や考え方を書かせる記述型の学校や、解答だけではなく解き方そのものを説明させるような問題からは「途中まででも良いから何とかして自分なりの答えを書いてほしい、それを我々はちゃんと見ます」というメッセージが受け取れると思います。この子はどういう考え方をしてどこまで理解を深めているのか、というプロセスを学校は見ているのです。

 逆に、記述型ではない学校がどういったお子様を求めているかというと、ひとつひとつの知識をきちんと自分のものにできる子と言えるでしょう。「コツコツ努力ができるお子様であれば、こちらが提供する学びを通してしっかりと育てますよ」という学校の思いが、設問に表れているのです。入試問題というのは「どんな子に来てほしいか」「我が校ではこういう学びを提供します」という私学のメッセージでもあり、学びの入り口でもあるのです。

--学校が求める生徒像や入試も多様化するなかで、志望校に応じた対策がより重要になってくるのでしょうか。

 一般的なテキストで基礎基本を固めることは必要ですが、特殊な問題が多く出される学校ですと、典型題や頻出問題を中心に出されている模擬試験では測れない力が求められるのも事実です。

 一般的な模試では点数が取れないお子様でも、たとえば我々の「NN(何がなんでも)志望校別対策コース」などでしっかりと対策することで、志望する学校の問題に対しての対応力が身に付き、過去問や学校別模試などで解けるようになるケースも多くあります。また、特殊な出題傾向の学校を受ける方に関しては、「合不合判定模試」のような客観式模試と学校別模試、必ず両方を受けることをおすすめしています。

4、5年生は、毎週の単元をしっかり固めて

--現在の小4、5年生は新学年に向けて、この冬をまずどう過ごせば良いかアドバイスをお願いします。

 4年生と5年生は、塾で学んでいる内容をしっかりと自分のものにすることが最優先です。新しい単元を習ったら、使いこなせる状態にする。これを積み重ねることで、マイナスが少ない状態で受験学年を迎えることができます。

 一方で、どうしてもテストの点数や偏差値などの上下が出やすい時期でもあります。他者との比較も確かに気になるところだと思うのですが、自身のベストスコアを目指し、目標が達成できたら保護者様にはそこをしっかりと褒めていただきたいです。たとえば漢字を覚えることが苦手なお子様に対して、他のお子様が満点を取っているから「絶対に満点を取りなさい」とするのではなく、40点だったところから60点に上がったら変化を見逃さずに褒める。それだけでもお子様は、モチベーションや学びに向かう姿勢が違ってきます。そのうえで、得意であり、そして好きな科目はとことん高めていきたいです。入試においても将来においても大きな武器であり、長所・個性になります。

 志望校選びに関しては、新6年のスタートのタイミングで第一志望が決まっているのが理想です。偏差値によってどこまで目指して良いのかという葛藤も出てくると思いますが、お子様と保護者で学校のどういうところを重視するのか意見のすり合わせはしておいてください。なるべく4、5年生の間に学校見学などに行き、お子様が通いたいと思える学校を偏差値にとらわれずに複数見つけてほしいと思います。

 偏差値は学校の難易度や人気を表している要素はありますが、学校の良し悪しを表しているわけではありません。お子様が笑顔で充実した日々を過ごすことができる学校を見つけていただくことが、お子様の中高6年間の生活、そしてその後の将来にとって、とても重要だと思います。だからこそ、お子様がこだわるポイントと保護者の方がこだわるポイントを確認したうえで、学校選びをしていただくことが大切です。

--現6年生はこれから入試本番までの間、どのようなことを意識して過ごすのが良いでしょうか。

 どのお子様も、11月までの模擬試験の結果を見て受験校を決定していくと思いますが、偏差値は同じ生徒が同じ模試を受けても5・6ポイントくらいは簡単に上下します。1回の模試の結果で判断せず、3か月間ほどの平均を見て最終的な受験校を判断してください。保護者様の中には「合格率が80%ないと受けてはいけない」と認識されている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。「合格判定50%」という基準は、たとえば学校別模試においての合格判定50%は入試本番だったら合格ということ。50%あれば十分勝負できるのです。

 6年生のこの時期は全員が「チャンスと課題」をもっています。3か月分の結果を冷静に分析し課題を明確にしたうえで、志望校の合格基準点からみて、もう一段階上のレベルに引きあげる必要があるのか、頻出分野の問題に絞って勉強するべきかなど、的を絞った勉強をすることが必要になります。ここから先は、限られた時間内で何をどの程度取り組むべきかの取捨選択が必要になりますが、ご家庭で方針を立てるのはなかなか難しいと思いますので、塾の先生を大いに頼っていただけたらと思います。

親は子供の「できない」を受け止めてほしい

--中学受験に向けてより良いスタートが切れるよう、低学年からの学習に注目が集まっています。低学年のうちに身に付けておきたいことはありますか。

 早稲田アカデミーでは小学1・2年生を対象とした「スーパーキッズコース」、小学3年生を対象とした「ジュニアコース」といった低学年向けの授業を行っています。4年生以降のカリキュラムが進んでいく学習でも勉強に対しての楽しさや知的好奇心、そして解けなかった問題が解けたときの喜びを感じてもらいながら前向きに学習を進められるように指導をしておりますが、特に低学年ではその点に注力をして取り組んでいます。試行錯誤しながら最後まで自分で考えること、自分の考え方を発表すること、そして何より解けたときの達成感や感動、そして考えること新しいことを知ることの喜びを感じてもらえるように指導をしています。

 さらには3年生に向けて「算数チャレンジ講座」という授業をご用意しています。こちらの講座では、市販の教材にはない初見の問題に対しての深い分析力・判断力を養い、難問を自分で考えに考え抜いて解けたときの楽しさや感動を知ってもらいたい、そして算数大好きっ子になってもらい、さらには算数だけではなく深く考えることに対してタフになってもらいたいと考えています。受講された後のアンケートでは、96%の方が「楽しかった・とても楽しかった」とご回答いただけました。実際、授業後に大興奮で問題のことを保護者の方に説明されていたお子様もいらっしゃいました。

 自ら答えにたどり着いた達成感、法則や規則を見つけられたときの面白さを知った子供たちは、先生がヒントを与えようとすると「もうちょっと考えさせて」と言うくらい、粘り強く自ら解く姿勢を身に付けていきます。このように低学年のうちは、自分で考えることに対して前向きな姿勢をつくることに力を注いでください。その積み重ねが、受験勉強を続けるモチベーションやその先の合格へとつながっていきます。

 早稲田アカデミーではこの冬、小学校低学年の方を対象としたオープンテストを実施致します。年長~小学2年生を対象とした11月25日(土)実施の「ワセアカチャレンジテスト(11月) 」では、「“考える”って楽しい!“わかる”っておもしろい!」をコンセプトに、子供たちがその場で思いっきり試行錯誤できる問題を出題します。今の時期は、得点よりも、時間いっぱい一生懸命考え、工夫し、やり抜く経験にこそ価値があります。多くの皆様のチャレンジをお待ちしています。

【年長~小2対象】11/25(土)実施『ワセアカチャレンジテスト』
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【小3対象】1/8(月・祝)実施『小3冬期学力診断テスト』
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【小2対象】1/20(土)実施『小2基礎力診断テスト』
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--入試本番を迎える6年生、これから受験の道を歩む低学年。受験に挑むすべての保護者にメッセージをお願いします。

 ひとたび受験の世界に足を踏み入れると、テストの結果や偏差値など、他者と比較しやすい数字を目にする機会が増えることかと思います。どうしても気になるとは思いますが、先にもお伝えしたように、お子様が自己ベストを更新していくことに目を向けることが大切です。

 受験勉強を続ける中で、順風満帆に成績があがり続けることはほぼありません。うまくいかないときこそどうしたらいいか、保護者様は悩まれると思います。お子様が自身の課題と向き合い克服するためには、お子様の心理的安全性を担保した状態でいることが大切だと思います。

 子供は、うまくいったことは報告してくれても、できなかったことはなかなか教えてくれません。それは保護者様に褒められたいし認められたいという気持ちがあるから。ですから、保護者様はお子様の失敗や課題に対して問い詰めるようなことはせず、強張った表情になりそうなときほど笑顔を心がけましょう。子供が安心して「できなかった」「失敗しちゃった」と伝えられるような親子関係を築いてこそ、お子様は前向きに課題に取り組むことができるのです。

 また、低学年であればあるほど、保護者様は失敗しないように先回りしてしまいがちです。しかし、大切なのは、最終的にお子様が自走できるようになることです。確かに、隣で寄り添って教え込むことでその単元は身に付けられるかもしれませんが、果たしてそれは本当にお子様の力になるのでしょうか。

 自ら学ぶ力を身に付けるためには、保護者という“補助輪”はどこかで外さないといけません。たとえば、しばらくの間子供に宿題の管理をさせてみて、たとえうまくいかなかったとしても「失敗は成長に転換できるチャンスなんだ」と捉えて受け止めてあげる。そうすることで失敗を恐れずに挑戦していける子に成長していけると思います。

--最後に、ラストスパートを迎える6年生の保護者へのメッセージをお願いします。

 「2月1日の朝、お子様にどんな言葉をかけるかぜひ今から考えてください」と、6年生に向けた最後の保護者会で必ずみなさんに伝えています。ここまでお子様と二人三脚でやってきて受験当日を迎えられたこと、これはもう一生の思い出になると思うのです。きっといろいろな感情があふれ出てきてしまうと思いますので、お子様に対してかける言葉を今のうちから考えて、当日は笑顔で送り出してほしいと心から思います。

--ありがとうございました。


 「小さい頃のようなわかりやすい成長ではないので見えにくいかもしれませんが、受験勉強を通じて確実に内面は成長しています。焦らず、お子様の成長を見守ってあげてください」と話してくれた竹中先生。すべての受験生親子に向けて温かいメッセージを伝えてくれた。

《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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