【大学入学共通テスト2025】また変わる?新課程入試への挑み方…早稲田アカデミー加藤氏に聞く

 現在の高校2年生が受験する2025年度入試から、新課程(新学習指導要領)による大学入試が始まる。2025年度における共通テストの変化とそれに向けた対策について、多くの生徒を難関大合格に導いてきた早稲田アカデミー・大学受験部長の加藤寛士氏にアドバイスをいただいた。

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【大学入学共通テスト2025】また変わる?新課程入試への挑み方…早稲田アカデミー加藤氏に聞く
  • 【大学入学共通テスト2025】また変わる?新課程入試への挑み方…早稲田アカデミー加藤氏に聞く

 現在の高校2年生が受験する2025年度入試から、新学習指導要領による新課程入試が始まる。学力における「基礎的・基本的な知識・技能の習得」「これらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力など」「主体的に学習に取り組む態度」の3要素を育むことを掲げた新学習指導要領では、教科書も学習カリキュラムも大きな変更が行われたが、大学入試や大学入学共通テスト(以下、共通テスト)においてはどのような変化が見込まれるのだろうか。

 2025年度における共通テストの変化とそれに向けた対策について、多くの生徒を難関大学合格に導いてきた早稲田アカデミー・大学受験部長の加藤寛士氏にアドバイスをいただいた。

おおむね傾向固まったが、難易度が上ブレる可能性も

--まずは2023年度の共通テストを振り返って、前年度からの変更点や特徴などを教えてください。

 2023年1月に行われた共通テストは、大学入試センター試験(以下、センター試験)から共通テストになって3回目を数えましたが、過去2回と傾向は変わっていません。思考力をはじめ、資料を読み取る力、会話形式の長い問題文を読み取る力などを測る共通テストならではの特徴が色濃く出ており、そこがかつてのセンター試験との大きな違いだと感じています。

 2023年度の共通テストの特徴としてあげられるのは、数学の問題が前年度と比較して易化したことでしょう。日常の出来事に対してどのように数式を立てて数学的にアプローチをするのかを考えさせる問題が、過去3回の共通テストでいずれも出題されています。2022年度までは数式を立てるところから問われる部分がありましたが、2023年度はある程度数式が提示されていたので取り組みやすかったのではないでしょうか。実際に平均点も大きく上がりました。

 ほかの科目は引き続き、複数の資料を読んで比較をしたり、共通点を抜粋したりと、複数の文章を分析して答えを出す問題形式が多く出題されています。

--その流れを踏まえての2024年度入試が間もなくスタートします。2025年度の新課程入試の前哨戦にもあたり、大きな変化への過渡期だと思われますが、2024年度の共通テストはどのようになるとお考えでしょうか。

 過去3回行われた共通テストを振り返ると、平均点は1年目がやや高く、2年目に大きく下がって、3年目は戻った形になりました。おそらくこの3年目のラインがある程度の着地点になるのではないでしょうか。センター試験に比べると平均点の水準が下がり、成績上位層でも安定して9割以上を得点することが難しくなっていますが、この難度上昇には読解力が求められる問題やその場で考えて解く問題が増えたという背景があります。

 ただ、今年理科で得点調整が行われた(※)ように、問題の作成側も難易度の見通しはご苦労されているところだと思います。実際にふたを開けてみたら非常に難度が高かったという可能性は捨てきれず、2024年度の共通テストの難易度については、前年度並み、もしくは、想定よりも難化して平均点が下がる場合があるかもしれません

※編集部注:共通テストの本試験において、一部の科目間で、原則として20点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合に得点調整が行われる。ただし、受験者数が1万人未満の科目は対象とならない。2023年度共通テストでは、理科2の「物理」「化学」「生物」の間で得点調整が行われた。

2025年度共通テストは「情報」や「歴史総合」など範囲が拡大

--現在の高校2年生が受験する新課程の2025年度共通テストはどう変わるのでしょうか。

 2025年度の新課程入試では、教科は「情報」が増え、科目は社会で「歴史総合」が、国語は大問が追加され、より多様な文章を扱うようになり範囲が広がります。先ほどもお話しましたが、共通テスト1年目は平均点がやや高く、2年目に大きく下がりました。同様に考えると、新課程入試初年度の問題はやや簡単に、2年目はやや難しくなるのではないかと予想しています。

 教科・科目別の変更点は次のとおりです。

英語

 文章題は増加する可能性が高いですが、出題形式について大きな変化はありません。

国語

 表やグラフが掲載されたレポートなどの実用的な文章を読解する問題が加わり、試験時間が10分伸びます。これまで「評論文、小説・物語、古文、漢文」を80分で解いていたところ、「実用的な文章」が加わって90分で解くことになります。既存の設問の内容は大きく変わらないと予想されますが、分量はやや少なくなるのではと考えています。実用的な文章の読解は慣れが必要ですが、高校生も選挙権をもっていることを考えると公的資料や条例なども読める必要があるということですね。

数学

 新課程では現行の「数学I、A、II、B、III」に「数学C」が加わります。共通テストでは「I」「II」「I・A」、「II・B」という文系数学領域から出題されていましたが、新課程入試では「I・A」「I」「II・B・C」の3科目が出題されます。これまで数学Bにあった「ベクトル」と、数学IIIにあった「平面上の曲線と複素数平面」が数学Cに移行するため、新課程の共通テストでは複素数平面が新たに出るようになります。そこまでカバーするとなると勉強量を増やさざるを得ないのではと思っています。ただ、数学Cのベクトルと複素数平面は選択問題なので、文系の生徒は従来からあるベクトルを選択することが予想される一方、理系の生徒はどちらも選択できることから、理系の生徒がやや有利になるかもしれません。

理科

 大きな変化はないという認識ですが、化学において新課程の教科書から「熱化学方程式」が削除され、「エンタルピー変化」で説明されるようになりました。熱化学方程式は日本の独特な教え方で、グローバルスタンダードな教え方にそろえた形になります。そのほか、使用する用語の変更はいくつかありますが、出題形式や科目名、配点の変更はありません。

社会

 大きく変化します。まず新課程では、地理歴史はこれまでの「日本史、世界史、地理」が「地理総合、歴史総合、地理探究、日本史探究、世界史探究」になり、公民は「現代社会、倫理、政治・経済」が「公共、倫理、政治・経済」になります。これにともない、共通テストでは、「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「地理総合、歴史総合、公共」「公共、倫理」「公共、政治・経済」の6科目から最大2科目選ぶことになり、公民を選択する場合、「公共」が必須になります。「公共」は現代社会と学習範囲があまり変わりません。歴史は、日本史と世界史を横断しての近現代史を学ぶ「歴史総合」が必須となり、今までの学習範囲にプラスして日本・世界の近現代史の内容を身に付けておくことが求められます。

情報

 「情報」が新しい教科として追加されることが新課程入試の大きな変化でしょう。プログラミングはもちろん出題されますが、それだけでなくデータを分析し活用するデータサイエンスや、情報リテラシーも出題範囲となります。広範囲にわたる科目ですが、高校で学習する内容をしっかりと定着させておくことが肝心だと考えます。

共通テスト独特の方式に早い段階で慣れよう

--では、新課程入試に向けてどのように受験勉強を進めていったら良いのでしょうか。

 共通テストは、複数の資料を参照する問題が非常に多いのが特徴です。たとえば英語(リーディング)の問題をみると、文法問題の出題はありません。また、長文読解も論説文・評論文はほとんど出題されず、チラシやブログの文章を読むといった形式なので、一般的な国公立大学・私立大学の入試問題とは大きく異なります。これは数学や国語においても同様で、高校1・2年生のうちから共通テストの方式に慣れることで得点力の向上が見込めると思います。

 2025年度の共通テストは、国語・社会・情報といった科目における変化が大きく、さらに特殊さが増すことが予想されます。センター試験に比べると科目数も増えていますから、低学年のうちから現時点の自分の学力・得点力がどの程度かを測っておくことが大切です。高校3年生になったときに慌てないためにも、早めの準備を心掛けましょう。

共通テストを学習の到達目標と定点観測で活用

--早稲田アカデミーは新課程の大学入試に向けてどのような受験対策を行っていますか。

 高校1・2年生の通常授業や冬期講習会では、共通テスト専用のカリキュラムを設けていませんが、学習の定点観測として共通テストを活用しています。たとえば「この単元を習い終わったのであれば、共通テストで何点取る」とクラスや生徒のレベルに応じて目標設定を行い、途中経過や進捗をみています。

 そして、早稲田アカデミーで受講していない科目も講師がチェックをして、生徒ひとりひとりのトータルバランスを意識した学習指導を行っています。たとえば早稲田アカデミーで英語を、他の塾で数学を、学校の授業のみで理科を学んでいる生徒がいて「医学部、理系の大学に行きたい」と望んでいる場合、早稲田アカデミーが英語のみを鍛えても効果が薄いですよね。そこで、英語はもちろん、数学や理科も含めて総合的な学習指導を行っています。「理科はこの単元が苦手なようだから、冬休みに高校1年生の時に学校で配られた問題集のA問題をやっておくと良いと思うよ」といった具体的なアドバイスを早稲田アカデミーの講師が出すこともあります。高校3年生に進級する時点で第1志望校が十分射程に収められるように、低学年のうちから塾で受け持っている以外の科目にも私たちは責任を持ち、積極的にアドバイスをしていきたいと思っています。早稲田アカデミーは生徒と講師の距離が近く、コミュニケーションが活発な塾であると自負しています。

 新課程入試では、情報や歴史総合といった自分で取り組む科目が増えるはずです。その際にも、早稲田アカデミーが生徒ひとりひとりの総合的な学習のペースメーキングを支援していきたいと思っています。

 また、2024年から東進衛星予備校ネットワークに加盟することはさらなる強みになると考えています。3月より池袋東口・渋谷南口・御茶ノ水駅前・たまプラーザ北口の4校舎を開校する予定で、1月20日(土)・21日(日)には開校説明会を実施いたします。

早稲田アカデミー・東進衛星予備校、2024年3月開校

社会に出たとき役立つ力を培う大学受験に

--最後に、大学受験に臨む高校生にメッセージをお願いいたします。

 センター試験が共通テストに変わった背景には、表現力や思考力を伸ばしてから大学に進学すべきだといった方向性があります。一問一答的な知識も必要ではありますが、社会に出てから立ちはだかる問題には、基本的に答えがありません。問題に対して唯一の正答はないものの、ベターな答えを見つけ出す思索や、いろいろな情報を見たうえで大きく外れていない答えを出す思考力が重要になってきます。国公立大学の入試では記述式解答の問題も多く、そうした部分で自分の意見や考えた経路を相手にわかりやすく伝える力が必要になります。

 つまり、かつてのセンター試験時代と比べると、今の大学受験は、社会に出たときにそのまま通用する力を培う場に変わりつつあると思っています。大学入試をただの勉強と思わずに、将来自分の役に立つのだという思いを持って取り組んでほしいです。

--ありがとうございました。

中高一貫校 中学1年生~3年生向け大学受験コース
高校1年生~3年生向け大学受験コース

個人対応の学習プロデュースで新課程入試に挑む

 目まぐるしく変わる社会情勢とともにこれからの世の中で必要な能力、求められる力も変遷しており、共通テストの問題にはそうした「今の高校生に必要な能力は何か」が象徴的にあらわれている。2025年度からの新課程入試はその変化が明確に示されるものになりそうだ。知識を問うセンター試験に比べ、非認知能力による対応が求められる共通テストだが、それこそ1人で取り組むよりも、かゆいところに手が届くプロの支援が役に立つだろう。早稲田アカデミーによる、東進を取り入れた個人対応の学習プロデュースを活用してはいかがだろうか。

《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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