【大学受験2024】リスニング難化し合否に差…J PREPが解説する東大二次英語

 英語塾J PREPは2024年2月27日、オンラインセミナー「2024年度東大二次試験英語問題分析速報」を開催した。経験豊富な講師陣が出題傾向の変化を踏まえながら、最新データ分析と多角的な視点から今年の東大英語を解説。

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【大学受験2024】リスニング難化し合否に差…J PREPが解説する東大二次英語
  • 【大学受験2024】リスニング難化し合否に差…J PREPが解説する東大二次英語
  • J PREP代表の斉藤淳氏
  • J PREP 国内大学受験部統括責J PREP
  • J PREP 国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏

 英語塾J PREPは2024年2月27日、オンラインセミナー「2024年度東大二次試験英語問題分析速報」を開催した。昨年に引き続き、東京大学英語二次試験(以下、東大英語)が行われた翌日に実施したもの。100年以上の東大英語問題を分析してきた斉藤淳代表をはじめ、経験豊富な講師陣が出題傾向の変化を踏まえながら、最新データ分析と多角的な視点から今年の東大英語を解説した。

 セミナーでは、3つの角度から東大英語を分析。元イェール大学助教授でJ PREP代表の斉藤淳氏がデータ解析の視点から最新の定量分析を、同塾国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏が経験豊富な講師の立場から今年度の試験分析と具体的な学習ポイントを、同塾国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏が英語母語講師からみた試験分析結果と学習方法のアドバイスを共有した。

世界に通じる英語塾「J PREP斎藤塾」

東大英語は4つの技能を3つの技能で測定する

 斉藤氏は「データは語る 東大入試英語の傾向と対策」と題して解説。入試英語の難しさは、「分量」「語彙」「背景知識」「設問」の4項目と、その方向性(内部妥当性・外部妥当性)で決まるが、ここでは英語の分量と語彙の2つに焦点を当てるとした。語彙の難易度は、テキストに含まれる単語がCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠:言語能力の習得レベルを測るための国際的な指標)のどのレベルに相当するかを分類。1921年から2024年までの東大入試問題を分析した結果をふまえ、問題の変化を概観した。

 まずは共通テストの変遷を示し、昨今の傾向として大学入試英語の分量が多くなっておりスピードが要求されていること、東大英語も同様の傾向であることに言及。1975年入試では英検2級並みの難易度であったが、その後徐々に英語の分量が増加。1989年入試の総英単語数は2,418語だったのに対し、2024年は5,817語と2.41倍に増加しており、ここ数十年でもっとも分量が多くなっていると評した。筆記試験の語彙については、バラつきはあるものの、おおむね英検2級から1級の間と分析。分量が多くスピードが求められるが、じっくり考えて解かなければならない問題が多いために難易度は高い。「英文で書かれた学術書に近い語彙力が要求される」と語った。

 リスニングについて「非常に難しくなっており、ここで差がつく」と解説。リスニング試験が始まった1989年は英検3級レベルの語彙が75%を占めていたが、2024年は3級レベルの語彙は50%台と減少し、難易度は「英検1級と準1級の間くらい」だという。

 こうした概要を踏まえて、今回の東大英語について「4技能を3技能で測ろうとする試験」と総括。外国語習得の4技能について、読む・書くは作文などで、聞く・話すはリスニングで測っているという。ここ数年の全体的な分量は安定しており、点数の差は難易度が高いリスニングで決まると語った。これから東大を目指す生徒には、中3~高1で英検準1級を目指すようなペースで勉強することを勧め、「そのペースで勉強していれば高3時には東大問題が9割解けるようになり、留学向けのTOEFLも点が取れるようになる」とした。

 また、最後に「東大が公表している入学者募集要綱を熟読してほしい。東大が受験生に何を求めているのかを知ることが学習の指針になる」と述べ、東大の理系学部に進学した J PREP卒業生が、日常的に英語の論文を読み書きし、英語で発表している事例を紹介。東大では、特に理系では英語による授業も多く、大学院進学に際してはTOEFLが必須とされることから、「中高生の時から留学を前提とした英語の勉強をしておけば、東大入試の準備につながる」と語り、それが東大入試必勝法になると解説した。

基本を定着して自在に英語をアウトプットできるように

 続いて、J PREP国内大学受験部統括責任者の桂侑司氏が「試験分析と今後の対策について」をテーマに、東大英語の定性的な分析を行い、注目すべきポイントや今回の試験の特徴を示した。

 桂氏は斉藤氏の話を受けて、東大の入学者募集要綱から入学者に求める人物像について触れた。英語においては「英語による受信力」「英語による発信力」「批判的な思考力」を掲げていると分析。「英語による受信力」はリーディングやリスニングを通じてのインプットを指し、「英語による発信力」はライティングやスピーキングを通じてのアウトプットが相当する。「批判的な思考力」はロジカルシンキングであり、これはJ PREPが理念として掲げている5技能の「話す・書く・読む・聴く・考える」と同じだと語った。

 東大英語は試験時間120分、配点120点で、7割得点できれば合格者平均に到達するものの、7割を取ることが難しいと解説。文章内容が一見平易で、語彙レベルも高くないが、「制限時間に対してとてつもない分量の処理が必要」「英語に関する全技能が問われる」「単なる英語力を越えて、高度な論理力と日本語での表現力も要求される」ために難しいのだという。特筆すべきはリスニングだと語り、リスニングは時間も得点も試験全体の4分の1を占めることから、「リスニングを非常に重視している」と述べた。

 各設問の解説では、大問1の要約問題について「東大英語でもっとも対策しづらいのが要約」であり「ここ数年はロジックの流れが見えづらく、要点をつかみにくい文章が多く出ている」と指摘。要約は英語の力とともに論点を把握する力も必要なことから、この高度なスキルを養成するには時間がかかるとし、「現代文や論説文を活用して要点を把握する力を意識してほしい」と語った。

 大問1Bの文補充は、わかりやすい目印を探すといった安直なスキルが通用せず、文章の中身をしっかり理解して、論理的な整合性のもとに空所に入る語を選ぶことが求められる。さらに語句整序では選択肢がかなり多かったものの、英文をまとまりごとに構成していくと自然と解けると説明。そのためには基本例文の暗唱が重要になると述べた。J PREPでは高校2~3年生で例文集を徹底的に覚え、自然と英作文や整序問題に対応できるカリキュラムに取り組んでいる。

 大問2は自由英作文。ここ数年は80語以内で自分の主張を理由とともに述べる形式が続いている。これは平易な英語を正確に運用できるかをみるとともに、スピーキング能力を疑似的に測定していると説明。問題を見たときに、まずはどうロジックを展開したら得点が取れるかを考えてほしいと語った。書く前に示された概念を定義するよりロジカルに書けるならば否定から書いてみるなども戦略になるという。また、添削指導を繰り返し受けることが上達への近道であり、その際に自分が陥りやすい間違いのパターンに気が付くことが重要だとした。正しい英語を体に染み込ませていくために、ミスを次に生きるような形で抽象化し、蓄積して受験までに自分で修正していくことが、大事なプロセスになると述べた。

 大問3のリスニングは設問量がかなり多いため先読みが必須である。音源は英米のラジオから取ってくることが多いので、リスニングを練習する際にはそのような素材に慣れておくと良いという。また、大問4の文法・語法の間違い探しについては、基本的すぎて見逃してしまう問題が多いことや、文法面だけでなく内容面の間違いも出てくるため、内容をしっかり理解するところまで求められるとし、注意が必要だとした。同じく英文和訳についても、構文が複雑でも語彙が難解でもないが、訳しづらい問題が出てくると述べ、単語は全部平易ながらも、正確な語法が要求されることと、和訳=直訳ではなく、日本語として自然な表現にするコツが求められる。また、東大は毎年小説や随筆が出題されるので、比喩や省略、暗示などを見抜いて文脈的に内容を把握して訳していくことが求められ、「それができるようになるにはJ PREPのように圧倒的な英語量に触れること」が不可欠だとした。

 桂氏は東大英語攻略のまとめとして、「ロジック、文脈整理、要点把握」「表現能力、運用能力、処理速度」「基本文法、基本語彙、基本構文」の3点を提示。東大英語ではただ英語の表面を追うだけでなく、裏側の意味までしっかり把握する力、迅速に適切なアウトプットができる力が求められるとし、基本に忠実に、1つずつ丁寧に吸収して英語がアウトプットできるようになってほしいと述べた。

設問全体で一貫するテーマを見つけ出す

 最後に、J PREP国内大学受験部主任講師のTom McCormack氏が「英語母語講師から見た2024年度東大入試英語の特徴」について講演。日本の大学入試事情に詳しい英語母語話者ならではの視点から、試験問題の特徴と解答時に着目すべき具体的なポイント、学習に役立つ身の回りの教材・情報源、効果的な学習法などを教示した。

 McCormack氏は、「東大英語はその構造や組み立て方に多くの工夫が凝らされ、1つのテーマに沿って各設問がうまくつながっていることに感心させられる」と評価。今年のテーマは「言語と運動」であり、受験生にとってはテーマを見つけることが重要になるという。大問1の要約問題はテストの鍵となる役割を担っているが、今回も言語学者ノーム・チョムスキーの文章によって、テーマ「言語と運動」が示されているとし、このテーマはその後のライティングやリスニングの問題にも続いていると語った。

 続いて大問2の自由英作文の問題について、「論理」「構造」「文法、語彙」「60~80語という簡潔さ」「制限時間12分」といった、あらゆる点に留意しなければならないことにこの問題の難しさがあると説明。短時間で2つの文章から素早く選択し、ブレーンストーミングをしながら背景知識を駆使しつつアイデアをまとめて、12分以内に正確な文法で論理的な文章を書かなければならないとポイントを示した。実際に英作文を書くにあたっては「必ずしも自分の意見を選ぶ必要はなく、どうすれば高得点を得られるかを考えて、もっとも簡単で、もっとも正確かつ詳しく書けるものを選ぶことが重要だ」と語った。

 また、東大のリスニングは「非常に難しい」とし、3つのパートには何らかのつながりがあるのが特徴だとした。以前は実際のポッドキャストやラジオ番組が音源となることが多かったが、ここ数年はテキストの音読やオリジナルテキストからのリスニングが増えているという。「リスニング力を向上させるには英語を聞くことを毎日の習慣にすることだ」とし、アメリカ英語はVOAやNPR、イギリス英語はBBC、世界の英語はアルジャジーラやTED、日本英語はNHKといった教材を活用することを推奨。「もちろんJ PREPは全ジャンルのリスニングに対応している」と語った。

 東大英語では、これまでにジェンダーやセクシュアリティ、深海生物の再発見、笑いの普遍性、共通語としての英語、刑務所の廃止といったさまざまな分野の文章が出題されている。今年もパプアニューギニアにおける言語の多様性や、クオータ制、企業のプロパガンダ、雑誌と新聞のジャーナリズム、黒人の歩き方についてなど、幅広いテーマの文章が出題された。その対策として「幅広いジャンルの本を読んでほしい」と推奨。加えて「ニュースを読んで時事問題に関心を持つことも非常に重要だ」と述べた。

 McCormack氏は最後に、「図書館を大いに活用すること」「毎週何か新しいものを聞くこと」「英作文の練習をして誰かに添削してもらうこと」をアドバイス。特に「毎週何か新しいものを聞くこと」は短くて難しく、集中的に聞くものと、長くて簡単に、広く聞けるもののバランスを取ると良いという。

東大生に求められる高い教養と英語力を培っておく

 日本の最高学府であり、知の拠点として世界を担う使命を持つ東京大学。大きな責務を担う東大生には、英語を深く正確に理解し、日常的に使いこなし、英語によって研究活動を進めていく人物像が求められている。東大英語は問題そのものが教養に冨み、幅広い内容が出題される。そうした問題に対応できる高い英語スキルを育むには、小さい頃から英語を習えば良いというものではないという。

 斉藤氏は質疑応答で、「入試対策以前に英語全般の力を高めておくことと、小手先の受験対策ではない、日本の旗艦大学で学ぶための知性と姿勢を培っておくこと」の両輪が重要だと強調した。また、桂氏は「長期的なスパンで東大入試を考えるなら、英語は高2までに完成してほしい」と述べた。東大合格はゴールではなく、通過点にすぎない。将来を見据え、知性を伴った英語力を身に付けるためには、J PREPでの学びが大いに役に立つだろう。

世界に通じる英語塾「J PREP斎藤塾」
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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