2026年度の大学入試も、共通テストの難化や受験生の動向の変化など多くのドラマがあった。東大、京大の合格を勝ち取った受験生にはどのような共通点があったのだろうか。
今回は、駿台予備学校の東大専門校舎として知られるお茶の水校3号館の校舎責任者である秋庭孝一郎氏と、京都大学を目指す多くの受験生が集まる京都校の校舎責任者である飯塚駿一氏に、2026年度入試のリアルな分析から合否の分けたポイント、合格者に共通する学習習慣や保護者の関わり方などを詳しく解説してもらった。
【話を聞いた人】
秋庭孝一郎氏:お茶の水校3号館 校舎責任者
飯塚駿一氏:京都校 校舎責任者
※所属は取材時のものです
東大・京大の志願者動向に見る、受験生の「攻め」と「守り」
--2026年度の東大・京大入試における受験生の動向についてお伺いします。共通テストの難化などの影響はどう出ましたか。
秋庭氏:東大は今年、文科一類を除いてすべての科類で志願者が減少しました。前年度から第一段階選抜のラインが厳しくなったことに加え、共通テスト自体の難化が志願者減少に拍車をかけた形です。
文科一類は唯一志願者が増えたのですが、必ずしも法曹や官僚といった仕事に人気が集まっているというわけではありません。共通テストで苦戦した受験生が、第一段階選抜の予想ラインが比較的低く見積もられた文一に「まずは二次試験に歩みを進めよう」と流入した結果とも捉えられます。
東大は第一志望の科類に入学できずとも、3年進級時の「進振り制度(進学選択)」によって希望学科に進むことが可能です。よって東大を目指す受験生は、まず東大に合格することに重きを置いていますから、共通テストが少し思うように行かなかったからといって簡単に志望校を変えることはせず、あくまで「東大の中でどこに出願できるか」を優先する傾向が出ました。

飯塚氏:京大は昨年度、9年ぶりに前期志願者が8,000人を超え、今年度も8,015人と人気を維持しています。関西圏では早稲田大、慶應義塾大などの難関私立大が身近にある関東の受験生と比べると国公立大にこだわる傾向があります。中でも、京大を強く志望する受験生は多いです。
理系学部は共通テストよりも個別試験の配点が大きく、挽回が効く傾向にあり、共通テストが難化しても比較的強気に出願した印象です。一方の文系学部は、挽回が容易な配点比ではないため、他大学に志望変更するなど出願者が減った学部もあります。ただ、前年に文系学部への出願者が増えたことを考えると、共通テスト難化の影響は限定的だったと思われます。
--最近は現役志向が強いと聞きますが、現場での実感はいかがですか。
秋庭氏:ここ10年ほどで、東大受験者に占める専願の割合は減りました。早稲田大や慶應義塾大をはじめとする難関私立大と併願し、東大が不合格でも合格した私立大に進学する「現役進学志向」の受験生が増えています。
大学入試は少子化の進行で競争が緩やかになっており、東大も例にもれず、志願者が減少傾向にあります。ライバルが減っている今こそ、一歩踏み込んで挑戦する価値があると思うのですが、年々現役進学志向が高まっているのは少々「ねじれ」の構造を感じます。
飯塚氏:同感です。お話ししたように、関西ではおもに理系で国公立大志向が強いとはいえ、文系を中心に「現役で関関同立へ」という層が以前より増えた体感はあります。1年浪人して頑張れば十分京大に受かる学力がある生徒から「私立大に受かったので進学すべきか」という相談を受けることが増えました。一方で、私立大に入学しても京大を諦めずに1年次は休学し、駿台に入学するなど仮面浪人の道を選んでいるケースも珍しくありません。
東大と京大で異なる「合否の分かれ目」
--2026年度入試において、実際に合否を分けたポイントはどこにありましたか。
秋庭氏:東大はアドミッション・ポリシーで、「国内外のさまざまな分野で指導的役割を果たしうる『世界的視野をもった市民的エリート』(東京大学憲章)を育成することが、社会から負託された自らの使命」と謳い、東大生には「広範で深い教養とさらに豊かな人間性を培うことが要求される」と明記しています。これは総合力のある学生を求めていると読み取れます。実際、過年度の東大受験者の成績開示データなどを参照しても、やはり合否の分かれ目は、苦手科目をおろそかにせず、得意科目だけで勝負しない「バランス型」でことが大きなポイントになります。
実際このポイントは入試の配点に如実に反映されています。東大入試は、共通テストすべての科目で満遍なく高得点を取らなければ、合格に向けたスタートラインに立つことが難しくなります。さらに個別試験でも「得意科目で稼ぐ」だけでは合格点に到達することができないのが東大入試の特徴です。たとえば理科類の個別試験440点のうち200点は国語と英語です。理系の入試で個別試験に占める理系科目の配点比が約半分しかない大学は東大だけです。特に今年は理系数学が難化したため、数学を武器にしていた受験生は差をつけにくい入試になりました。こうした入試では当然、他の科目の得点力が勝負を分けることになります。
飯塚氏:京大は、教育理念の根幹として「自学自習」を掲げ、建学以来「自由の学風」を大切にしていることもあり、アドミッションポリシーも各学部の方針に委ねられているのが特徴です。
東大との決定的な違いは、共通テストや個別試験の配点が学部によって異なることです。たとえば共通テストで地歴公民の配点が大きく、個別試験の配点が比較的小さい農学部は共通テストの地歴公民で高得点を取った受験生が出願しやすくなったり、情報の配点が大きい工学部は、今年のように難化すると出願をためらう受験生が増えたりします。
ただ、京大は東大ほどバランスを求めてはおらず、得意科目・不得意科目に多少のムラがあっても合格できます。この点も京大の特徴で得意科目を生かせば逆転するチャンスがあるということです。共通テストが7割台だと、東大には第一段階選抜への懸念があって出願が難しいですが、京大は前述のように、共通テスト配点の大きな科目で高得点を確保できれば有利になることもあり、個別試験で一気にひっくり返せます。合格者でもほとんどが解けないような難問と確実に取るべき問題を冷静に判断できる「見極め」が合否を分けるのは両大学の共通点ですが、東大に比べて冒険的な受け方ができるという点は京大の面白いところですね。

東大と京大は入試で何を問うのか
--東大と京大で入試問題の性質や必要なアプローチに違いはありますか。
秋庭氏:東大は共通テストの全科目で高得点が必要とされることに加え、個別試験の英語にはリスニング、理系でも国語に漢文、文系は地理歴史2科目が課されるなど、京大と比べても「すべて」をやらなければいけません。ただし東大の問題は、基礎の完成を重視した造りとなっています。もちろん基礎というのは、教科書レベルの易しい問題がそのまま出るという意味ではないですが、教科書に書かれていることを「本質的に」理解して、それを東大の問題、時間配分の中で正しく説明できているかを見極めています。
飯塚氏:京大の入試は東大に比べて誘導が少なく、「自分で解法から考える問題が多い」ことも特徴です。思考力、発想力、記述力が求められ、論証に穴がない答案を書けるかがポイントです。出題内容は、東大のようにすべてを求められるわけではなく、試験時間も東大ほどタイトではありません。じっくり取り組んだり深く考えたりするのが得意な人に向いていますし、頻出分野を着実に仕上げながら自分の得意な分野を強化することで、京大合格は十分手が届くと思います。
合格者と不合格者、明暗を分けた5つの習慣
--東大・京大合格者に共通する習慣はありますか。
秋庭氏:学習習慣が定着していることは言うまでもありません。そのうえで、共通点は2つ。まずは「復習を後回しにしない」こと。東大合格者は「鉄は熱いうちに打て」を徹底しています。定期テストや模擬試験などいかなるテストの問題においても、間違えた要因には知識・解法の理解が不十分だったもの、反復演習が不足していたもの、解答時間が足りなかったものなど、さまざまあるでしょう。失点原因の分析は、その課題をあぶり出して今後の対策を考える有益な指標です。ところが、復習を後回しにしてしまうと、その後やるべき学習内容を妥当なものにするための精度が落ちてしまうのです。
もう1つは「忘れる前提で計画を立てる」こと。一度理解したと感じても、「時間が経てば忘れてしまう」「本番の試験時間では出せなくなってしまう」ものと捉え、ある程度の期間ごとに再確認できるよう、学習計画にあらかじめ組み込んでおく受験生はやはり手堅い結果を残しています。
飯塚氏:京大合格者にも当てはまると思います。彼らは「なぜそうなるのか」という原理原則に立ち返る学習ができているのです。東大・京大レベルになると、解法を覚えるだけでは太刀打ちできないので、先ほど東大でも触れられていた本質の理解、つまり「なぜそうなるのか」を日々意識できているかは、合否の分かれ目と言えるでしょう。
今年不合格になった受験生のアンケートには「英語と数学で自己採点より得点開示の結果が悪かった」という回答が多数ありました。特に数学では、答えが合ってさえいれば満点ではなく、論証過程で少しでもロジックの提示が甘いとバッサリと減点されていたようです。そういった意味で「自分の答案を講師に見せて内容を確認してもらう主体的な姿勢」も合格につながる重要な要素です。
また、京大は、文系であれば地理歴史は語句や短答問題で稼げる、理系であれば化学は有機が多く出題されるなど傾向がはっきりしています。京大は公立高校からの合格者も多い大学で、必ずしも中高一貫校のように先取りをしているわけではなく、時間に余裕がない受験生が少なくありません。ですから「京大の傾向を踏まえた学習計画を立て、それに沿って効率よく勉強を進めている」ことも、合格者の共通点でしょう。

東大も京大も同じ回答「高1・高2のうちにやるべきこと」
--高1・高2のうちにやっておくべきことは何でしょうか。
秋庭氏:「とにかく英語・数学・国語」です。合格者アンケートでも多くの人が実感しています。理由は明確で、これらの言語科目は中高6年間の積み重ねだからです。理科・地理歴史の先取りに気を取られ、英数国の基礎が不十分なまま受験学年を迎えると遡りに思わぬ時間を割くことになってしまいます。現役生は履修進度から浪人生に比べて理科や地理歴史が遅れがちですが、高2までに英数国を固めておけば、高3の貴重な時間を選択科目に充てることができますから、この手順を間違えなければ、たとえ現役で東大に届かなくても、浪人すれば十分合格を目指せます。
飯塚氏:まったく同感です。夏休みに行われる第1回京大入試実戦模試で、英語では現役生と浪人生の差はあまり大きくありません。差がつくのは、現役生の仕上げが遅くなりがちな理科や地理歴史です。高2までに英数国をしっかり固め、高3で選択科目を追いあげる態勢を作れるかが勝負の分かれ目です。
高1・高2生は、学校活動が忙しく勉強時間が限られる中でも、部活のない木曜日は塾の自習室に行く、日曜日は復習に充てる、自宅で勉強するときはスマホを自室に持ち込まないといった「学習のルーティン作り」も、とても大切だと思います。
E判定でも逆転は起きる…模試を「次の武器」に変える活用法
--これから夏休みを迎えます。合格者と不合格者で差が出るポイントはどこですか。
秋庭氏:自分の裁量で時間を使いやすい夏休みは苦手な科目や遅れている単元の巻き返し時間をまとめて確保するチャンスです。つい好きな科目ばかり勉強してしまうという人は多いと思いますが繰り返しのとおり苦手科目に時間を使うことが、東大の入試には不可欠です。
飯塚氏:事前に計画を立てて実行できるかどうかも差が出るポイントですね。その日に何をするのかを決めるのではなく、「何を目標に、どうやって夏を過ごすのか」「そのために今日、何をするか」を明確にして夏を迎えましょう。
--夏休み明けの模試で、判定が悪かったときはどう受け止めれば良いですか。
秋庭氏:判定で現在の立ち位置を把握することは大切ですが、学習課題を正確に把握することがもっとも重要です。「何ができなくて目標の判定に達しなかったのか」を、模試を終えた直後、答案・成績表返却のそれぞれのタイミングで一喜一憂せずに捉えましょう。D判定、E判定からの逆転合格者に共通するのは、判定の振り返りと改善対策です。
飯塚氏:現役生の場合は、まだ学校で未履修、あるいは履修したばかりでまだ定着していないことが解けない理由である可能性もあります。こんなときは「あと10点は取れた」と考えて、点数を加算しても構いません。中でも先取り学習をしていない高校生は、特に理科や地理歴史、数IIIには最後まで大きなのびしろがあるので、今判定が悪くても慌てなくて大丈夫です。
秋庭氏:「模試の復習は大事」とよく言われますが、すべての問題を解き直す必要はありませんし、そんな時間は確保できない。ただ、間違った問題には、「見たことがあるのに解けなかった」「方針はあっていたけど計算ミスがあった」といった正答まであと一歩のものと、「手も足も出なかった」ものが混在しているでしょう。合格に直結するのは前者の失点原因を潰すことです。東大の問題は6割取れるかが合否の分かれ目になります。難問を解けるようにすることも大事ですが、それ以上に「取れるはずだった問題」「合格者であれば落とさない問題」を重視し、次に類似問題が出たときに絶対に落とさないようにする。これだけで判定が一気にあがり合格への近道になります。

保護者に必要なのは「ほど良い距離感」
--保護者はどのようにサポートすべきでしょうか。
秋庭氏:良い意味で達観し、適度な距離感を保ちましょう。東大入試に挑むのは中学受験を経験した中高一貫校出身者も多いですが、大学受験は中学受験とは異なります。模試の判定が悪かったときに志望校変更の提案は控えましょう。東大は典型問題がそのまま出題されることは少ないので、正しいプロセスを歩んでいても結果が出るまでは時間がかかることはあります。ご家庭が安心して過ごせて、モチベーションを維持できる環境であることが大切です。
飯塚氏:保護者の方は、お子さまの「第一志望はゆずれない」という気持ちを尊重し、信頼していただきたいです。本人が東大・京大に行きたいと頑張っているなら、たとえ浪人という結果になっても挑戦させてあげてほしいですね。その覚悟とリスペクトが、最後の一踏ん張りを支えます。
東大も京大も、これから夏以降の努力で一気に合格に近づくチャンスがあります。多くの先輩が証明しているように、合格へのロードマップに沿って着実に努力すれば、「私なんて…」と思っている人も実は手が届く大学です。私たちが伴走しますので、ぜひ駿台というサードプレイスもおおいに活用しながら頑張ってほしいです。
--ありがとうございました。
入試問題の傾向や受験生に求めるものが異なる東大・京大だが、共通して重視しているのは特殊な才能ではなく、本質を理解できているかという点であることが印象的だった。駿台の指導は、その本質を理解することに重きを置いている。本質の理解からロードマップづくりまで、駿台を頼りながら合格というゴールまで走り切ってほしい。
「東京大学」合格への道
「京都大学」合格への道

