埼玉県川越市にある伝統私立校・星野高等学校(以下、星野高校)に、2026年4月に新設されたグローバルフロンティアコース(以下、GFC)。英語・探究・キャリア教育を三本柱に、少人数制で「自分だけの進路」を描いていくコースだ。
コースの設計思想や教員の思いについては前回記事で紹介したが、今回はその教室で学ぶ当事者たちの声を届けたい。入学から約2か月、1期生22名はどんな毎日を送っているのか。国内大学進学から海外就職を目指すIさん、進路を模索中のKくんに話を聞いた。
【前回記事はこちら】
Iさん:埼玉県公立中学校出身。海外経験は家族での旅行のみ
Kくん:フィリピン・東ティモール在住経験あり。現地ではインターナショナルスクールに通っていた
「文武両道の星野」にできた新コースに目が留まった
--星野高校のGFCを知ったきっかけと、志望の決め手を教えてください。
Iさん:中学生で配られたチラシを見て、星野高校に英語の新しいコースができることを知りました。英語の勉強はずっと続けてきたので、もっと力を伸ばせる環境に行きたいと思ったのが決め手です。
Kくん:僕も中学3年生のときに、学校で星野高校に新しいコースができるというチラシをもらいました。海外に住んでいた経験があって英語の大切さは実感していたので、高校でもっと力を付けたいと思って志望しました。それ以前も、部活の練習試合や大会などで星野高校の存在は知っていました。当時から文武両道のイメージが強くありました。
「英語が好き」でつながる22人
--入学して2か月が経ちました。入学前とのギャップはありましたか。
Iさん:英語だけでなく、他の教科の授業も充実していることは、良いギャップでした。いろいろな方面に視野が広がるようにサポートしてもらえている感じがあります。
星野高校では「星野探究(ほしたん)」と言って、探究の授業がさかんなのですが、特にGFCでは力を入れているそうです。先日も川越の観光課題について、グループでディスカッションしたり、フィールドワークで実際に街を歩いてお店の方にヒヤリングしたりしました。初めは「『グローバル』のコースなのに、川越の街について学ぶの?」と疑問に思ったのですが、授業を受けるうちに、身近な地域について考えることが、自分自身と外の社会とのつながりを実感させてくれるし、さまざまな見方を知るきっかけになっていることに気付きました。
Kくん:想像と違ったのは、クラスが小規模であるがゆえの、指導の手厚さです。クラスは全部で22人で、男子は7人。クラスメイトや先生との距離が近く、コミュニケーション量も多いです。22名のうち、海外経験があるのは4名ほどで、ほとんどが日本で生まれ、日本で育った人たちです。語学力のレベルはさまざまですが、みんな英語が好きで、もっと英語のスキルを伸ばしたいという意識が共通しています。

--学校の雰囲気はいかがですか。
Iさん:授業中、休み時間問わず、友達と話すことが楽しいですね。特にGFCや医専コースのみんなは、同じ1期生として、前例がない中で一緒に歩んでいる感覚があるからか、考え方が近い部分があって話しやすいんです。
Kくん:今楽しいのは、卓球部での活動です。練習は結構厳しいですが、仲間がたくさんいるし、厳しいからこそ仲良くなれるところがあります。
「世界とつながる自分」「自分の知らない自分」に出会う場
--GFCでは、自分自身や自身のキャリアについて考える時間が多いと聞きました。
Iさん:はい、毎週土曜日に探究とキャリアデザインの授業が2時間続きであります。今までの「道徳」とか「総合的な学習」とはまったく違うレベルで、自分のことをじっくり考える時間です。
入学して2か月、自分の頭の中にあった将来の夢を、少しずつ具体的に言語化できるようになってきました。ただ、クラスメイトからのフィードバックを通して、まだうまく言葉にできていない部分もあると気づいたので、もっと自分の考えを人に伝える力を付けたいと思いました。
星野高校のGFCは「グローバル」という名前こそ付いていますが、「海外大学への進学や留学をしなければいけない」というプレッシャーはまったくなく、自分が世界とどのようにつながっているかを考えながら、自分のキャリアをじっくり考え、進路を選んでいく雰囲気があります。

Kくん:自分では気づいていなかった「自分」をたくさん見つけられました。優柔不断な性格である一方で、「迷うことは多いけれど、一度決めたら最後までやる人間」ということを、クラスメイトに言われて初めて気づきました。また、質問する側に回ると、相手の話を聞きながら次の質問を考えるのがすごく大変で、質問がうまく出てこないこともありました。「聞く力」の大切さや難しさに気づけたのも大きな発見です。
さまざまな大人に関わりながら、進路を見い出す
--GFCでは、教科や担任の先生のほかにも「関わる大人が多い」と聞いています。
Iさん:探究やキャリアデザインの授業には、キャリアコンサルタントなど学外の専門家の方が来てくださることもあります。月1回ある「進路情報」の授業では、進路指導の先生からさまざまな大学の情報を紹介してもらいながら、自分のキャリア観と照らし合わせて、具体的な進学先を考えていきます。
Kくん:先生方は授業以外の質問にも気軽に答えてくれます。たくさんの先生がいて、それぞれの授業での僕たちの学びを、関わる先生やスタッフの皆さんが共有してくれています。キャリアの実現に向けてあらゆる方向からサポートしてくれて、それぞれからアドバイスをもらうことができるので、生徒ひとりひとりをちゃんと見てくれていると感じています。

2か月で広がった「ものの見方」
--入学してからの2か月で、自分の中で変わったと感じることはありますか。
Iさん:私はわりと先に目標を決めておきたいタイプなので、進路については入学した時点である程度イメージをもっていました。そのうえで、キャリアデザインや進路情報、探究の授業を通して、今まで考えたことのなかった見方に触れて、新しい発見があったり、逆に自分の方向性を確認できたりしています。多角的にものを見られるようになったことで、漠然としていた目標がより明確になってきたと感じています。

Kくん:クラス全員がみんな真剣に自分と向き合うようになり、将来のキャリアを考えるうえでの「土台づくり」をしている実感が湧いてきました。授業を重ねるごとに自分への理解が深まっていくのを感じています。もともと日本の大学への進学しか考えていなかったんですが、進路情報の授業で海外大学進学という道を教えてもらえたことで、海外も選択肢として視野に入れられるようになりました。
それぞれの「夢」をかなえるために
--将来の夢について教えてください。
Kくん:海外大学進学の選択肢を知れたことは自分にとって大きな一歩でした。今のところ国際協力に携わる仕事か、教員に興味があります。この3年間での学びを通して、自分が何に関心があるのか、そのテーマをもっとも深く学べる大学はどこなのか、それを経てどう生きていくのかを考えていきたいと思います。
Iさん:私は国内大学の国際系の学部で学んだうえで、海外で働きたいと思っています。一般的に「国内大学は入学するのが難しく、卒業するのは比較的簡単」と言われているので、早く社会に出て経験を積みたい自分にとっては、このキャリアが最適だと考えています。大学在学中に留学もできたら良いなと思います。
--GFCでこれからどんなことを実現していきたいですか。
Iさん:「海外で働く」という夢があるからこそ、この3年間で英語力をしっかり鍛えて、十分な力を付けた状態で大学の学びにつなげたいです。
Kくん:英語はもちろん頑張りますが、他の教科もきちんと勉強して、進路の幅を広くもてるようにしておきたいです。
--ありがとうございました。
心理的安全性が担保された環境で、自分を見つめる3年間
「GFCでは、『探究』を、単なるイベントではなく、自分が『何をどう学び続けるのか』を考え、実践していく場であるととらえています」と話すのは、星野高校 進路指導部長の青木潤士先生だ。高校の3年間でとことん自身の将来について考え抜くことで、自らの問いや行動が国や社会を超えて影響をもつことを知り、それをベースとして進路を選択していくことを目指している。
取材時に話を聞いた「キャリアデザイン」の授業では、生徒たちは授業後に必ず「リフレクションシート」を記入し、提出するという。その一部を見せていただいたが、中でも印象的だったのは「このクラスには(夢を)バカにするような人たちはひとりもいないので安心して自分のことを主張できる環境が整っている。この場所を積極的に使ってみんなでお互いを高めあえたら良いなと思いました」というコメントだ。

このコメントにも表れているように、GFCでは先生・キャリアカウンセラーをはじめとする「学校側の大人」だけでなく、生徒同士が互いの自己分析やキャリアを考えるうえでの重要な役割を担っている。そして、「このクラスでなら安心して自分の夢を語れる」という心理的安全性が担保された環境であることが、生徒自身の、そして周囲の友達についての理解を深める一助になっていることに違いない。
取材開始直後は緊張で硬い表情をしていた2人だったが、学校でのようすについての話題あたりから声が弾み始め、互いの発言にうなずいたり笑い合ったりする姿に、普段のクラスの雰囲気を垣間見た気がした。目標が明確な生徒も、まだ探している最中の生徒も、同じ教室で同じ問いに向き合う、星野高校GFC。1期生たちの3年間がどう展開していくのか、楽しみだ。
星野高等学校「グローバルフロンティアコース」
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