塾・予備校で遅れるIT導入、iPadは理解度向上に効果…PC・ネット利用学習調査

 デジタル・ナレッジは8月23日、同社のeラーニング戦略研究所が実施した「小・中・高校生のパソコン・インターネットを利用した学習に関する調査」の結果を発表するセミナーをeラーニング・ラボ秋葉原にて開催した。

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eラーニング戦略研究所所長 小林建太郎氏
  • eラーニング戦略研究所所長 小林建太郎氏
  • 設問1:お子様のご家庭でのパソコンやインターネット利用状況について、あてはまるものをお答えください
  • 設問2:設問1で「利用している」と答えた方にお聞きします。主な利用用途は何ですか(複数回答可)
  • 設問3:設問1で「利用していない」と答えた方にお聞きします。その理由をお答えください
  • 設問5:現在、お子様は家庭学習にパソコン・インターネットを利用していますか
  • 設問6:設問5で「利用している」と答えた方にお聞きします。どのような学習に利用されていますか
  • 設問7:設問5で「利用していない」と答えた方にお聞きします。その理由を教えてください(1)
  • 設問7:設問5で「利用していない」と答えた方にお聞きします。その理由を教えてください(2)
 デジタル・ナレッジは8月23日、同社のeラーニング戦略研究所が実施した「小・中・高校生のパソコン・インターネットを利用した学習に関する調査」の結果を発表するセミナーをeラーニング・ラボ秋葉原にて開催した。

 デジタル・ナレッジのeラーニング戦略研究所は、全国の小・中・高校生の保護者(母親)100名を対象に、PC・ネットを利用した学習に関するアンケート調査を実施。8月23日に開催したセミナーにおいて、eラーニング戦略研究所所長 小林建太郎氏より、家庭ではある程度定着しているが、塾・予備校ではほとんど進んでいないという実態が発表された。この結果をふまえて、今後はより効果的な学習方法の確立や周辺環境の整備が期待されるとし、デジタルハリウッドにおけるiPad活用の効果や、同社のPC・ネット活用の教育事例も紹介された。

◆塾・予備校でのPC・ネット利用はほとんど進まず

 デジタル・ナレッジのeラーニング戦略研究所は2012年6月、全国の小・中・高校生の保護者(母親)計100名を対象とした、Webアンケートによるアンケート調査を実施し、報告書を2012年7月に公開。本セミナーでは、eラーニング戦略研究所所長 小林建太郎氏より、その抜粋が説明された。

 まず、家庭でのパソコンやインターネットの利用状況に関しては、「利用している」が88%、「利用していない」が12%であった。また、「利用している」と答えたうち、用途としては「調べもの/ゲーム/動画共有サイトの視聴」が多かった。一方、「利用していない」と答えた理由として、小学生はパソコンやインターネットに触れさせたくないという意見が多く、中・高校生になると「携帯で足りている」など、子どもの興味が携帯やタブレットなどに移り、パソコン離れの傾向も見られた。

 さらに、家庭学習での利用状況に関しては、36.0%が利用しており、用途としては、小・中学生は通信教育や教材ソフト、調べもの等で、高校生は英検のWebテストや受験対策が多かった。一方、「利用していない」と答えた理由として、「良い教材がない」という意見の他、小学生のうちは辞書や本を使って自力で学んで欲しいという考えや、中学生になると塾や部活で忙しいという理由に加え、「必要ない」という回答も多かった。

 次に、調査対象の37%を占める、塾・予備校通いの家庭に限定したアンケートでは、塾・予備校のパソコン・インターネットを利用した学習サービスに関して、「利用している」が無料/別料金を併せて16.2%で、「用意されていない」は56.8%もあった。加えて、インターネット動画配信サービスは、「利用している」が3.4%、「用意されていない」に至っては86.2%もあった。

 最後に、全調査対象に、塾・予備校のIT導入に関する質問では、「取り入れて欲しい」が49%、「取り入れて欲しくない」が51%と二分し、インターネット動画配信が塾・予備校選びの判断に影響するかどうかという質問では、「影響する」は12%しかなかった。

 以上の調査結果から、小・中・高校生の9割近くが家庭でパソコン・インターネットを利用しており、学習には3人に1人が利用している。一方、塾・予備校におけるパソコン・インターネット利用、さらにインターネット動画配信サービスについては、ほとんど進んでいないことが明らかとなった。

◆韓国のデジタル教科書全面導入

 では、「日本は教育におけるパソコン・インターネット利用に消極的、デジタル教科書を全面導入する韓国にますます遅れを取ってしまう」という声が国内ではよく聞かれるが、韓国の教育現場ではデジタル教科書の全面導入をどう捉えているのだろうか。

 eラーニング戦略研究所が今年2月、韓国の小・中・高校の教員計99名を対象に実施した「韓国におけるデジタル教科書導入に関する調査」のアンケート結果によると、「デジタル教科書の全面導入は有効だと考えますか」という質問に対し、「有効である」が34.3%、「どちらとも言えない/有効ではない」が65.6%であった。また「紙の教科書を利用した授業に比べ教えやすいですか」という質問に対し、「教えやすい」が38.3%、「どちらとも言えない/教えにくい」が61.6%であった。「日本とは雲泥の差があると言われるが、韓国の現場では意外とそうは思っていない」(小林所長)と見ることができる。

◆理解度向上につながったiPad活用

 小・中・高校生のPC・ネット利用に関する調査では、PC・ネットの特性を活かした学習への期待や、社会でも通用するより実践的な学習への利用を望む声も多く聞かれたという。そうした利用ですでに効果が確認された事例として、「デジタルハリウッド」のWebデザイナー養成クラスで行われたiPad活用が紹介された。

 eラーニング戦略研究所は昨年4月、従来の紙テキストを使用した通常クラス、およびiPadによる電子テキスト・映像教材を使用したクラス、全32名を対象に、Webアンケートを行った。iPad利用クラスは、授業では通常クラスと同様に講師からの直接指導を受けるが、無償貸与されたiPadとWi-Fiスポットを利用し、いつでもどこでも予習・復習できる環境が提供された。

 その結果、iPad利用クラスは、全員が予習・復習を実施したと回答し、予習を「毎回した/ほぼ毎回した」が7割超、復習を「毎回した/ほぼ毎回した」が6割超であった。一方、通常クラスは、予習を「まったくしなかった/たまにした」が9割、復習を「まったくしなかった/たまにした」が全員であった。また、場所に関しては、通常クラスは「自宅/学校」がほとんどであったが、iPad利用クラスは自宅のほかに「出勤・通学時等の移動中/職場」が目立った。

 以上の調査結果から、iPad利用クラスの受講生は移動中などの時間を有効活用し、予習・復習率が高くなることが明らかとなった。また、通常授業終了後に行われる理解度テストにおいても、iPad利用クラスは通常クラスと比べて、理解度が平均して高い結果となった。

 このほか、デジタル・ナレッジが手がけたオンライン教育事例として、次の3つが紹介された。

・市進グループ 個学舎の中学生向けeラーニングシステム「ウイング個太郎」は、自宅で1人で受けるのではなく、塾に出向いて受けることで生徒が自発的に学習するようになり、また、臨場感あふれる解説が人気で、順調に利用者を伸ばしている。

・ベネッセコーポレーションが福島県南会津地域の中学6校に提供しているeラーニング授業では、東京多摩センターのベネッセ社屋から、各校のPCルームへライブ授業を配信。6校の全生徒で同時にクイズの正解数や返答順位を競うことで学習意識の向上につながり、また、チャット機能を使った個別指導により、進学校の合格率にも効果が出ている。

・セガ提供の自宅にいながらプロ棋士から直接指導が受けられる「日本将棋連盟 オンライン将棋スクール」は、小学生向けの将棋スクール。Webカメラとマイクだけを使って学ぶことができ、免状や認定状の取得等、強くなることを実感できるプログラムになっている。

 なお、各調査報告書(PDF)は、デジタル・ナレッジのWebサイトからダウンロードできる。

資料の出典:eラーニング戦略研究所「小・中・高校生のパソコン・インターネットを利用した学習に関する意識調査報告書」(2012年7月)
《柏木由美子》

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