3.良質な「欠点の指摘」 タブレットを用いて(3~5分程度の)プレゼンをし、意見をフィードバックするという授業がありました。プレゼンテーションスキルだけであれば、デジタル機器を用いない授業でも向上させる手法は考えつきます。クラス全員の前で発表するシーンを思い浮かべられますから。 ただ、自らの所有するタブレットを用いてプレゼンを行うと、下記のような効果があると、実際に授業を見て感じました。・発表者が意欲的になりやすい(自らの道具を使っているため)。・デジタルに落とした資料の発表を(従来の機器を使ったプレゼンに比して)小規模集団で行いやすくなるため、意見者を移動させることでさまざまな意見を聴くことができる。・小規模集団では率直な意見が言いやすい雰囲気になる。・発表者も素直に意見を聴ける雰囲気が醸し出される。 プレゼンスキルを向上させるには、誰かに自分の弱いところを指摘してもらって、それに耳を傾け、「直す」という行動に出ることが必要です。タブレットを使ったプレゼンにより、発表者・聴衆の態度変容が起き、良効果を生み出す部分は大きいと思います。 以上3点あげましたが、何よりも全体を通じて、「生徒が主体的に『学び』に取り組んでいる。」「なぜならば、楽しいから!」ということが、素晴らしいことではないかと感じました。・ほんとうに学力向上につながるのか?・大学受験に役に立つのか?・授業の内容そのものが薄くならないか?など、さまざまな“?”を思われる方もいるでしょう。・確かに、効果の検証は難しい部分があるでしょう。・確かに、大学受験対策に直結しないでしょう。・確かに、授業の内容が薄くなる部分もあるでしょう。しかし、主体的な「学び」を引き出せるのなら、そのことの方がずっと価値が高いとは思いませんか。<著者紹介>寺西隆行(株式会社Z会理科課課長)1973年生まれ、東大工学部卒。高校数学の編集業務を担当した後、2004年からWeb広告・宣伝やWebPRの職務に従事、中高生向けSNSやオフィシャルブログなどの立ち上げに携わる。2009年、10年と2年連続で「日経ネットマーケティング イノベーションアワード」優秀賞受賞PJを率いる。2011年4月より現職。NPO法人CANVASフェローを務めるなど、公私問わず教育業界からの情報発信に精力的に取り組んでいる。※寺西隆行氏のブログ「和顔愛語 先意承問」より一部編集して掲載した。