キーワードは「主体的な学び」~大学入試改革の目指すところ

 11月29日に中央教育審議会(中審会)、高大接続特別部会が開催されました。約2時間に渡る議論の議題は、大学入学者選抜と高校・大学連携強化の2点。部会での議論の内容と委員が目指す教育の目標を3つのポイントに分けて紹介します。

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3.教育目標は“「主体的な学び」ができる人材の育成”に違いない

 今回の議論を受けて確信しました。高校教育、大学教育がどうあるべきか、を考える前に打ち立てなければならない「これからの日本社会のために、どんな人材を育成することが必要か」という部分、キーワードは「主体的な学び」なんだと。

 安西部会長が議論中に口にしました。「いままでのような受け身の教育ではだめ。」と。安西氏は最近のブログでも「主体性」に言及されています。

 このほか、印象に残った発言を紹介します。

安西部会長:「基本は、高校で学ぶことが大学への入学だけに直結するわけではないことをおさえておく」
田中室長:「能動的な姿勢の涵養(かんよう)」
小林委員:「(大学教育は)アウトカム(の評価)に変わってきている」
安西委員長:「JMOOCも話題になっているが、受講する学生の主体性がないと、受け身で映像を見ているだけになる。」

すべて「主体的な学び」という言葉に集約できる、と感じました。話をわかりやすくするために、少し乱暴な言い方を使って説明すると、

 「今、どこの大学も受かりやすくなっているから、推薦かAOで余裕だよ~。教科の勉強なんてしないもんね~」と思っている高校生には、「いやいや、高校のカリキュラムをしっかり学んでいることも試しますよ」と、「達成度テスト(基礎レベル)」という制度を導入することで、「学び」へと誘導する。

 「とことん暗記して、あとは受験テクニックを覚えてしまえば、難関大学に合格できる!」と思っている高校生には、「いやいや、暗記やテクニックだけでは、難関大学はまず合格できませんよ。」と、多様な選抜(論文、記述中心の学力試験、面接など)も併用し、「学び」へと誘導する。

 高校生自らの、何らかの「主体性」がない限り、合格は遠くなる、そんな入試を目指していることがうかがえます。

 下村文科大臣は「大学進学率を、現在の52%程度から、OECD平均並みに、あと10%程度引き上げたい」と言われたようです。これを引用した文科省の方の発言を受けて、安西部会長がこう述べました。

 「推測でものを申してはいけないかもしれないが、大学進学率を上げた方がよいのでは、という声は、大学教育の質がしっかりしているという前提で、大学レベルの人を増やさないといけない、ということ。」

 大学の質を充実させ、かつ、大学、つまり、高等教育機関であり、日本における最高学府レベルの人を増やす、そんな覚悟を感じました。

 上記をしっかりと(考え方や流れを含めて)理解できていれば、おおよそ、現在の大学入試改革について捉えられていると思われます。

 最後に。「主体的な学び」の涵養、という方向性、おおいに賛成です。そのために、こと大学入試周りを考えるのであれば、高校の教師は「教える」だけではいけない教育の技術をより磨く必要があるでしょう。

 大学教育では、反転授業やアクティブラーニングを始めとしたさまざまな手法、そして、その手法を発揮できる「場」の創造がより必要になるでしょう。アドミッションポリシーの明確化も必要です。そして、論文や記述式の大学入試に耐え得るだけの「大学自らの知的普遍性」に確信をもたなければいけません。

 そして、高校教育、大学教育に関わっている人だけではありません。大人である我々一人一人全員が「主体的」になることで、若い世代の「主体的な学び」を後押ししなければいけない、と強く思います。

<著者紹介>寺西隆行(株式会社Z会理科課課長)
1973年生まれ、東大工学部卒。高校数学の編集業務を担当した後、2004年からWeb広告・宣伝やWebPRの職務に従事、中高生向けSNSやオフィシャルブログなどの立ち上げに携わる。2009年、10年と2年連続で「日経ネットマーケティング イノベーションアワード」優秀賞受賞PJを率いる。2011年4月より現職。NPO法人CANVASフェローを務めるなど、公私問わず教育業界からの情報発信に精力的に取り組んでいる。

※寺西隆行氏のブログ「和顔愛語 先意承問」より一部編集して掲載した。
《寺西隆行》

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