【NEE2014】大学改革やグローバル化政策にはビッグデータ分析が必須

 6月5日に開幕したNew Education Expo(NEE)は、層の厚い講師やスピーカーによるセミナー、ワークショップ、パネルディスカッションに定評があり、単なる展示会・見本市とは違った特徴を持つ教育関係向けカンファレンスだ。

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慶應義塾大学大学院特任准教授 伊藤健二氏
  • 慶應義塾大学大学院特任准教授 伊藤健二氏
  • 大学改革の検証
  • モチベーションが高い人材とは
  • モチベーションと相関がある活動
  • 業種別離職率
  • 日本では転職はキャリアダウンという実態
  • 海外志向のある人材
  • アクティブラーニングの学習モデル(第一段階)
 企業としては、グローバルな人材を求めるのか、モチベーションが高く企業ロイヤリティが高い人材を求めるのかによって学生の評価基準を考える必要がありそうだが、企業のグローバル化、グローバル市場の拡大は進んでいる。これは、業種別の人材要件や規模を調べるとグローバル人材の求人の割合は建設業、製造業、運輸業、卸・小売業、サービス業などで大きな伸びが予想されている。これらのデータをもとに、学校側も人材要件を定義し、考えていかなければ、法科大学の二の舞になると警鐘する。

 学校は、グローバル人材に対してどのような方法論をとればいいのだろうか。伊藤氏は、グローバル化を推進するためにアクティブラーニングによる学習モデルを提唱した。大学入学後の最初の段階で、受動学習による知識をふりかえりによって補強していき、他者とのコミュニケーションを通じて高めていく。このとき教師は適切な業務課題を与え、環境をつくることが第一段階。第二段階では、第一段階の知識や成果をもとにプラン・企画・仮説を立てさせ、その完成度を評価する。このような活動や経験をさせ、第三段階は、企業の中で仮説・プランを実行していくことになる。

 伊藤氏の学習モデルやデータの検証は、東海大学の白澤氏がパイロット授業や検証実験などを通じて行っているという。その結果データから、東海大学の卒業生は、「困難に対して冷静対応する」「社会ニーズや変化を察知し、変革させていく」といった指向が他校平均より高く、目標達成のため他者を巻き込もうとし自分の意見を突き当てる努力、現状分析と課題の明確化など自ら考える力も高いという結果が出たという。しかし、出身校に対する誇りも高くないというデータも出ているようだ。これは、大学ランキングでの評価や偏差値などに自分たちの学習成果や実感が反映されていないためだと分析している。

 さまざまなデータを分析している過程で、授業改善を行っても授業評価に表れないという問題があるという。ある授業で、個別フォローや質問への回答を丁寧に行った場合と、聞かれた場合だけ答えたという場合で成績の分布と授業評価の分布を比べてみたところ、手厚くフォローした場合は成績の向上が顕著に表れた。全体の8割程度がSまたはA評価となったが、その授業の評価結果に差がまったく表れなかったという。つまり、授業を手厚く行い成績も上がっていても、その授業がよかったかという声には反映されないことがあるようだ。

 以上のように、大学改革やグローバル化といった施策や取り組みも、データをベースに分析すると、さまざまなことが見えてくる。グローバル化、MOOCs、反転授業、FD(Faculty Development)など予算獲得やバズワードとして捉えるのではなく、現実的な取り組みが重要であることを喚起するセミナーだった。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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