渋谷区の寺子屋塾で小学生が歌舞伎に挑戦…市川染五郎氏も出演

 歌舞伎や能など、日本ならではの伝統文化を体験できるワークショップが全国各地で開催されている。東京都渋谷区が行っている日本の伝統芸能を学べるプログラム『伝承ホール寺子屋』で、歌舞伎の舞台体験を小学1年生が挑戦してみた。

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8月に開催された公演「渋谷金王丸伝説」
  • 8月に開催された公演「渋谷金王丸伝説」
  • 承ホール寺子屋プロデューサーの鈴木英一氏
  • 練習の最初と最後には、正座してあいさつを行う
  • ラップが混ざる「カブキぼん!ダンス」の歌詞。覚えやすく、子どもたちに人気だった
  • 毎週の練習風景。着物に慣れるため、浴衣や着物で練習する
  • 大見得のポーズを決める子どもたち
  • 遊んでいる子には厳しい先生だが、ていねいに指導してくれる
  • 緩急をつけた踊りのため、群舞ではタイミング合わせるのもひと苦労
 歌舞伎や能など、日本ならではの伝統文化を体験し、実際の公演まで参加できるワークショップは全国各地で開催されている。東京都の渋谷区では、2010年より小中学生のジュニアからシニアまでの塾生を募集し、1年にわたって日本の伝統芸能を体験し学べるプログラム「伝承ホール寺子屋」を開催している。

◆歌舞伎未体験の小学生が“カブキ踊り”の舞台に挑戦

 歌舞伎や能、狂言といった日本の伝統芸能には興味があるものの、まったくの未経験である小学1年生の息子が、今年このプログラムに初参加した。まず前期は踊りの練習を塾生全員で行い、8月の実際の公演に出演。この公演は、渋谷の英雄として語り継がれている“金王丸”をモチーフに、歌舞伎の枠を超えた“カブキ踊り”という新しいスタイルで、市川染五郎氏をはじめとした一流の役者パフォーマーが出演する本格的なものだ。

 それだけに、思った以上に練習も本格的で厳しい。6月の開講以降、ほぼ毎週2時間の練習が組まれていた。一度にジュニアとシニア合わせて数十人が練習に臨む。練習には、プロの踊りの先生が数人、さらにボランティアのスタッフがついており、個別の指導もしてくれる。

 まったくのゼロから始めた息子だったが、みんなで練習する勢いにのってか、毎回2時間の練習を苦ともせず、先生の動きに合わせて振り付けを覚えていた。練習場となっている文化総合センター大和田・多目的アリーナには、小学校低学年の生徒たちも多く、約半分は初参加とのこと。歌舞伎役者と同じ舞台に立ち、踊りを披露するとあって、親子とも練習に積極的に参加している印象だ。子どもの練習に合わせて、後ろで一緒に振り付けの練習をしている保護者の姿も見受けられた。

◆講座の参加することで歌舞伎への興味が増す

 そして、一度参加したことで歌舞伎の楽しさにふれ、その後、毎年参加している子どもたちも多いという。

 今年5回目の参加になる小学6年生と初参加の小学1年生の姉妹をもつ保護者に話を聞いてみた。「和のものに触れさせたいと思い、当時小学2年生だった長女に講座の話をしてみたところ、やってみたいとのことだったので始めてみました」とのこと。今では、毎年「行きたい!」と積極的に参加し、この講座がきっかけになり、家族で歌舞伎鑑賞にも行くようになった。今年から参加した小学1年生の妹は、姉の影響を受けたせいか、初参加と思えないほど上手にイキイキと踊っていた。

 また、参加2年目となる小学2年生の女の子は、日ごろから日舞や琴などを習っているということで、子どもながら指先の動きまで美しく、楽しそうに舞っていたのが印象的だった。歌舞伎自体は初めてだったが、この講座に参加したことで興味をもち、その後歌舞伎の教室にも通い始めるようになったという。

 一方、息子は振り付けに関してはまだまだおぼつかないところが多々ある。本人ももっとうまくなりたいと張り切っており、練習のない日は自宅で音楽をかけ、自ら練習を始めるようになった。さらに歌舞伎に関するDVDを借りてくるほど、歌舞伎への興味が増していった。自らが歌舞伎を体験していることで、興味も深まっているようだ。
《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

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