スポーツ歯科とは? 2020年五輪に向け重要性が高まる歯科医の活躍

 全国の市立歯科大学・歯学部(15大学17歯学部)が加盟する一般社団法人日本私立歯科大学協会は10月21日、国民生活と密接な関わりを持つ歯科の最前線を伝える「第5回目 歯科プレスセミナー」を開催した。

生活・健康 保護者
明海大学 安井利一学長(一般社団法人日本私立歯科大学協会 副会長専務理事)
  • 明海大学 安井利一学長(一般社団法人日本私立歯科大学協会 副会長専務理事)
  • 歯・口のけがを防ぐための10か条
  • 明海大学 安井利一学長(一般社団法人日本私立歯科大学協会 副会長専務理事)
  • 司会を務めた小林馨氏(一般社団法人 日本私立歯科大学協会 副会長、鶴見大学歯学部長)
  • セミナースライド
  • セミナースライド
  • スポーツと歯科保健
  • 質疑応答に答える山本教授(左)と安井学長(右)
◆2020年とその先に向けた歯科医の適正配置と啓蒙活動も展開

 人生を豊かに過ごすために必要な歯科知識の啓蒙や2020年に向けたスポーツ歯科の重要性は今後さらに高まるようすだが、スポーツに携わる歯科医の数は現状、足りているとは言い難い。

 安井学長によれば、歯科医は病院に属したり開業を行う一般歯科医のほか、日本スポーツ歯科医学会の認定医や日本体育協会が認定するスポーツデンティストが存在する。認定医もスポーツデンティストも一般の歯科医療も行いながら行う活動のひとつだが、いずれも現在歯科医の資格を持つ医師にはまだ馴染みがないという。

 各歯科医の活動は実にさまざまだが、認定医とスポーツデンティストで大きく異なる点はスポーツ選手への関わり方にある。認定医はオリンピック関連の大会や健康診断でスポーツドクターとして選手の診療にあたり、スポーツデンティストは各都道府県の競技団体に属し国民体育協会と協働し国体選手の歯科健康の維持を担う。例外もあるが、スポーツに携わるトップアスリートたちの歯の健康を担う歯科医界にとっては、いずれの歯科医も今後増員を必要としているという。

 安井学長はスポーツと歯の健康に関し、学校体育の現場や生涯スポーツに関わる人々、競技スポーツに関わる人々に3つのアドバイスを提示している。学校体育の現場に携わる学校医には、部活や授業による前歯欠損の際にできることを通達しているとともにマウスガードの使用も推進。日本私立歯科大学協会も、学校医に有事の際の対応方法を明示したパンフレットを配布しているという。テニスやゲートボールなど、生涯スポーツに携わる人々には噛み合わせの定期的なチェックを呼びかけた。また、競技スポーツに携わるトップアスリートたちには、専門的なスポーツドクターに係るようアドバイスしている。

 2016年度の歯科医志望者数は確定していないものの、暫定数を見ると歯科医を志望する学生の数は年々上昇している。安井学長は「美味しく食事を採る、会話するといった歯の健康はスポーツ界のみならず長寿社会を迎えた日本にとって大切なもの」とコメント。優秀なスポーツ選手を育む土壌にはスポーツに知見のある歯科医がさらに必要だとし、学生や現在の歯科医に向けてスポーツと歯の関わりを啓蒙していきたいとした。

◆歯科医師の養成に向けて―人々のQoL向上のために

 歯科プレスセミナーはこれまでに、口腔がん、アンチエイジング医学、口腔機能と脳の科学、肺炎予防のための口腔ケアなど、歯科医学・歯科医療から国民生活を考えるテーマについて講演を行なってきている。司会を務めた日本私立歯科大学協会副会長の小林馨氏(鶴見大学歯学部長)からは、「対象疾患に変化が出て起きており、歯周病が2型糖尿病、心血管系疾患、未熟児・低体重児出産などと関連することが分かってきている」との紹介もあった。まさにこれからの歯科医療は、単に虫歯治療にとどまらず、私たちの体の健康やQoL(Quality of Life)と直結するものと言えるだろう。

 明治時代、富国強兵の名のもとに医学教育が国策に据えられた一方、歯科医学教育を政府は推進しなかった。そのため歯科は個人の歯科医師の努力によって私立大学に設立され、その経緯から現在も歯科医師の約75%は私立大学出身者が占めているといい、日本の歯科医療教育における私学の貢献は大きい。日本私立歯科大学協会では、歯科医学・歯科医療との現状と将来について社会に発信するとともに、加盟校間の様々な情報交換、教員や職員等の資質向上のための研修などを行ない、これからますます活躍の範囲が広がる歯科医師の養成に取り組んでいくとしている。
《編集部》

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