ボローニャ国際児童図書見本市で注目…日本で今すぐ楽しめる作品4選

 4月4日から7日までの4日間、イタリア・ボローニャで開催された「ボローニャ国際児童図書見本市(Bologna Children's Book Fair、ボローニャブックフェア)」。ここでは、リセマム読者に向けに筆者が選んだ日本でも今すぐ楽しめる作品を紹介しよう。

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ボローニャ国際児童図書見本市の風景/出版イベント会場
  • ボローニャ国際児童図書見本市の風景/出版イベント会場
  • 駒形克己「日がのぼるとき」/手前中央の見開き、その奥は表紙
  • みやこしあきこ「よるのかえりみち」表紙
  • 駒形・みやこし両氏の受賞作も飾られるショーケース
  • フェア内でのみやこしあきこ氏サイン会
  • 今村正樹氏 偕成社の出版ブースで
  • 「LOOPIMAL」操作風景
  • 「CHOMP」作品イメージ
◆ボローニャで脚光、駒形克己の絵本「日がのぼるとき」

 まずは「ボローニャラガッツィ賞」の中から、特別賞を受賞した絵本を2冊紹介する。駒形克己「日がのぼるとき」(ONE STROKE)と、みやこしあきこ「よるのかえりみち」(偕成社)だ。「ボローニャラガッツィ賞」は、今回50回目を迎えた「ボローニャ国際絵本原画展」より1年早い1966年に始まり、今年で51回目となる歴史ある賞。すでに出版済みの新刊本から優れた児童書が選ばれ、過去には安野光雅らの日本人作家も受賞している。今回、日本の絵本が2冊選ばれたことは、快挙である。

 特別賞の中でもひときわ輝かしい「SPECIAL HONOURABLE MENTIONS BRAW」を贈られたのが、「日がのぼるとき」。長く降り注いだ雨で色をなくした動物たちの前に、日がのぼった瞬間を、きわめてシンプルに表現した1冊である。25×36cmと大判であるがゆえに、雄大な自然の情景が画面を通して想像の中に広がっていく。この絵本には、特に「何歳から」などと読める年齢を制限する必要はないだろう。乳幼児から大人まで、それぞれの年代の感性を受容する大きな器を持った作品だ。日本では、出版社「ONE STROKE」の絵本を扱う全国の書店で購入可能なほか、同社公式Webサイト上のオンラインショップでも入手できる。

◆若手実力派の絵本「よるのかえりみち」も特別賞

 もう1冊の「よるのかえりみち」は、フィクション部門での特別賞を受賞した。著者のみやこしあきこ氏は、実力派若手絵本作家のひとり。同氏による「もりのおくのおちゃかいへ」(偕成社)や「ピアノはっぴょうかい」(ブロンズ新社)などの作品を読んだ読者も多いのではないだろうか。筆者自身も、絵なのに、まるで映画かアニメーションのように動く錯覚を起こさせる一連の画面作りや、読み手が主人公に自分を重ね合わせて読み進められる同氏の作品に興味を抱いていた。「よるのかえりみち」は、うさぎの子どもが親うさぎに抱かれてたどる家路を、回想と夜の街の情景をまじえて描いた物語だ。ページをめくるほどに暗い夜が迫り、眠る前なら自然とまぶたが重くなるかもしれない。

 みやこし氏は、受賞に際してこう答えている。「受賞の連絡に、ただただ驚きました。ボローニャ国際絵本原画展には過去に何度も(イラストレーションを)応募していたけれど、入選はなかった。だから、まさか出版した後の絵本で賞をいただけるとは思ってもみなかったです」。出版元である偕成社の代表取締役である今村正樹社長は、「みやこしさんの絵本づくりの力が評価されたとともに、作品がもつ『西欧的なにおい』がこの場で受けた面もあるのでは」とコメントし、受賞を喜んだ。「よるのかえりみち」は全国の書店やオンライン書店で購入できる。読み聞かせなら、3歳ぐらいからが良いだろう。

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《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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