◆デジタル作品も圧巻の仕上がり!フィンランドからは“音遊び”コンテンツ デジタル部門からの作品も見てみよう。本部門で唯一のアワード「ボローニャデジタルラガッツィ賞」には日本からの受賞作品はないものの、各国のどの作品もすべてダウンロードできるため、ここでは言語の壁なく遊べる2つのアプリ作品を取り上げたい。 はじめは「LOOPIMAL」(Yatatoy、フィンランド)。本賞のノンフィクション部門で2位に相当する「Mention」を受賞した、音遊びのアプリだ。筆者は、選考を通過した全作品中、本作がもっとも幅広い年代に受け入れられるのではないかと考えている。 起動するとすでに、白いゴリラがベース音に合わせて体を弾ませている。早くも遊びは始まっているのだ。ゴリラの足下部分には色のブロックとそれを配置するラインが表示されていて、ラインには一定の速さで棒が平行移動している。ラインに好きな色のブロックを当てはめると、ブロックを棒が通過する瞬間に音が鳴り、それに合わせて上画面に表示されている動物が踊る。ブロックは5種類用意されており、それぞれ違った音と動きを呼び起こすため、ライン上に自由に配置して自分だけのリズム、メロディー、動きを「ループ」して何度でも遊べる。ゴリラ以外にも8種類の動物を選べ、個別にも、組み合わせても楽しめる。 終わりも始まりも、正誤もない、本来あるべき遊びの姿がこの作品には見られる。さらに印象的なのは、アプリ内の音はすべてが白鍵音(ドレミファソラシド)であることだ。というのは、小さな子どもが遊ぶ「音のおもちゃ」はだいたいにおいて白鍵音なので、アプリで自作した音を流しながら、普段愛用している大好きなおもちゃで多重演奏ができるということだ。すべてをハ長調で演奏できるため、合わない音の登場でせっかくの遊びに水がさされることもない。 これほど外に開いた子ども向けアプリを、筆者はかつて見たことがなかった。デジタル作品は2歳くらいからがちょうど楽しめる年齢かもしれないと思ってきたが、これは2歳未満の子どもでも十分に楽しめるかもしれない。デジタル作品の可能性を大きく広げてみせてくれた意欲作と言えよう。日本では、App Storeでダウンロードできる。価格は400円(税込)。【次ページ】「著名イラストレーターによるデジタル遊びの意欲作」へ