【EDIX2016】先生だけでなく、生徒や保護者にも恩恵の大きい「学校業務IT化」の本質

 第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)では、「学校業務支援」「eラーニング」「教材・教育コンテンツ」「ICT機器」などのゾーンが用意されている。「学校業務支援」ゾーンは、生徒側でなく教師側に、ICTの効力を提供するソリューションが中心だ。

教育ICT その他
「学校業務支援」ゾーンのようす
  • 「学校業務支援」ゾーンのようす
  • NECのブース
  • テーブル型ディスプレイは、大人数授業には向かないが人気だ
  • NTTグループブースのようす
  • 試験の採点システム(スキャネット)
  • クラウドサービス「box」も展示を行っていた(Box Japan)
  • 学生証専用の発行プリンタ(アイアンドディ)
  • SMBCファイナンスのブース
 第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)では、「学校業務支援」「eラーニング」「教材・教育コンテンツ」「ICT機器」などのゾーンが用意されている。「学校業務支援」ゾーンは、生徒側でなく教師側に、ICTの効力を提供するソリューションが中心だ。

 「学校業務」としては、学籍管理・学生証発行、成績管理、時間割管理、採点システム、帳票印刷のほか、情報配信や図書館などが含まれる。これに大学であれば就職支援など、専門学校であれば集金管理などが加わってくる。ビジネスITのノウハウが活かせるため、事務機器会社、システム開発会社などが参入しやすい分野だ。

 近年であれば、これにクラウド活用も加わってくるクロスオーバーなジャンルといえる。一般ビジネスでクラウドが普及したように、今後の学校業務でも「クラウド化」が進むのは必然だろう。たとえば、Amazon(アマゾンウェブサービスジャパン)は、自社のノウハウを活かしたクラウド環境であるAWSを展示。クラウドストレージの「box」も小規模ながらブースを出している。このほか、こうした「ビジネス系企業からの教育領域参入」としては、ヤマト運輸系のヤマトシステム開発が、学校事務・業務を効率化する「試験運営@ワンストップサービス」、研修実施の支援サービスを展示していた。これはクラウド系のノウハウではないが、こうしたビジネス現場からのフィードバックが、学校業務支援のIT化の糧となっていそうだ。

 さて「学校業務支援」ゾーンをブースサイズでみるとNEC、富士ソフト、システムディ、ネットラーニング、そしてNTTグループといったところが上位にくる。これらのブースは出入口すぐでお互いも近いため、かなりの人数が集中していた。

 NTTブースは別記事で解説しているが、小中高向けソリューション、大学向けソリューション、学習支援ソリューション、セキュリティサポートなどのコーナーごとに、各社のソリューションを個々に展示している形だ。NECは、遠隔授業をメインに展示。遠隔授業・会議システム「Smooth Space」、顔認証システム「NeofaceMonitor」などを展開している。ICT支援員・無線LAN構築などの保守サポートももちろん提供する。富士ソフトは、タブレット授業の支援システム、校内の大型ディスプレイをサイネージ機器として活用する掲示板、ディスプレイを活用した校内放送などで耳目を集めていた。

 また情報配信ということで、SNS型連絡帳サービスの「クラスティング」もブースを出展。サービスベースの展示のため、派手なデモなどは行っていなかったが、日本語のほか中韓英語を使えるスタッフを配置し、細かく丁寧な解説を個別に行っていた。「クラスティング」は、元教師が開発したSNSで、教師が連絡帳に生徒や父兄を登録し、全員にお知らせ事項を伝達したり、画像や資料を共有したりできるサービスだ。生徒が匿名の相談を行うこともできるなど、きめ細かな配慮が話題で、利用者が増えつつある。

 リクルートマーケティングパートナーズは、保育園と保護者が子どものようすを共有できるサービス「kidsly(キッズリー)」を展示していた。リクルートホールディングスからは、先生と保護者の連絡サービス「うさぎノート」がリリースされているが、「kidsly」は、保育園での利用に特化しているのが特徴だという。「登降園管理」では、親がその日に登園するか休むかをワンタップで連絡できる。逆に「個別連絡」機能では、保育士側から緊急連絡をプッシュ通知で送ることができる。アプリベースのため、保育士も親も導入は簡単で、現在は無料で公開されている。担当者によれば、サービスの普及のため、来年の3月までは無料で提供する予定だという。なおリクルートマーケティングパートナーズは、別ブースで学習支援サービス「スタディサプリ」も展示している。

 記者個人は子どもがいないが、もし子どもがいたら、スマートフォンをにぎって離さないかもしれない。“つながっている安心感”を、写真や連絡メッセージでキチンと裏付けて、高めてくれる連絡ツールは重要アイテムだ。連絡作業は、学校業務のなかでは重要度の低い分野かもしれないが、ITによる肩代わり効果がきわめて大きいため、将来はスタンダードになってほしい。特に、紙の連絡リストなどは、個人情報の関係からも使われなくなりつつあり、今後は一気に置き換わる可能性も高い。こうした、先生だけでなく、生徒や保護者にも恩恵が大きいことが、「学校業務IT化」の本質と言えるだろう。
《冨岡晶》

冨岡晶

フリーの編集者/ライター/リサーチャー。芸能からセキュリティまで幅広く担当。

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