「こんな国にも日本人留学生が!」欧州留学フェアで魅力発掘

 5月20日、明治大学駿河台キャンパスにて欧州留学フェアが開催された。著名な国から小国まで、欧州約70の国と高等教育機関が来日。すべてのブースを回ることはできなかったが、担当者と話ができたいくつかの国や学校、教育機関を紹介しよう。

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欧州留学フェアのようす。Webサイトだけではわからない、その国や学校の魅力を肌で感じることができた
  • 欧州留学フェアのようす。Webサイトだけではわからない、その国や学校の魅力を肌で感じることができた
  • 欧州留学フェアのようす
  • アイルランド ウォーターフォード工科大学(Waterford Institute of Technology)
  • フランス エムリヨン経営大学院(emylon business school)
  • フランス トゥールーズ大学 (Universite de Toulouse)
  • フランス オーデンシア ビジネス スクール(Audencia Business School )
  • ハンガリー ハンガリー大使館
  • ラトビア Study in Latvia(政府機関)
 5月20日、明治大学駿河台キャンパスにて欧州留学フェアが開催された。ドイツ、フランス、イタリア、イギリスはもちろん、北欧各国やリトアニア、ラトビア、クロアチアなど、留学先としてはまだあまり知られていない小国まで、欧州約70の国と高等教育機関が来日し、留学に興味を持つ学生たちに向けて、各国・各学校の魅力を紹介した。

◆欧州留学の魅力とは

 欧州留学の魅力は、なんといってもコストパフォーマンスの良さだ。教育の質は高く、しかも授業料は北米やオセアニア、日本と比べても各段に安い。奨学金制度も充実している。また、EU内は同一通貨(ユーロ)を用いていることや、地続きであることから、留学中に欧州各国を気軽に旅行できることも魅力だ。毎年100万人の日本人が欧州で学んでいるという。

 今回、すべてのブースを回ることはできなかったが、担当者と話ができたいくつかの国や学校、教育機関を紹介しよう。

【アイルランド】
・ウォーターフォード工科大学(Waterford Institute of Technology)

アイルランド ウォーターフォード工科大学(Waterford Institute of Technology)
 アイスランドの首都、ダブリン以外では最大の公立工科大学。学生数1万人中、留学生は800人。日本人学生はひとりしかいないので、もっと増えてほしいとのこと。留学生の約半数はヨーロッパ人、残りは中国、インド、マレーシア、アメリカ、ブラジルなど各国から来ているという。大学のあるウォーターフォードは、ダブリンから車で2時間のところに立地している。アイルランドは人口450万人の小さな国。25歳以下が35%を占める、若くてエネルギッシュな国でもある。イギリスがEUから離脱すると 、アイルランドはEU内で唯一の英語を公用語とする国となる。欧州内の別国に留学する場合はその土地の言葉を覚えなければならないが、アイルランドでは英語さえできれば生活に不自由しないのが利点。
産業との結びつきが強く、4年制の学部では3年時にインターンシップを行う。就職に強い大学として評価が高い。学費は、学部にもよるが10,250ユーロ/年が目安。

【フランス】
・エムリヨン経営大学院(emylon business school)

フランス エムリヨン経営大学院(emylon business school)
 ビジネスマネジメントに特化したビジネススクール。学士、修士、博士、MBAが取得できる。イギリスのThe Times Higher Education(THE)によると、就職率はフランス国内2位。世界では26位にランクインしている。学生の40%は留学生、教員の40%は外国人が占める。カサブランカ、上海、パリ、サンティティエンヌ、リヨンにもキャンパスがあることから、グローバリゼーション部門では国内3位となっている。交換留学プログラムも実施しており、世界120の大学と提携している点も特徴。日本の大学とも交換留学プログラムを実施している。学士過程は4年。学費の目安は、年間22,000~40,000ユーロ。

・トゥールーズ大学 (Universite de Toulouse)

フランス トゥールーズ大学 (Universite de Toulouse)
 1229年に創設された伝統のある国立大学。現在30人の日本人学生が学んでいる。特に航空学、宇宙学は人気が高い。経済学では、ノーベル賞受賞者ジャン・ティロール氏を輩出している。農学部も評価が高い。学費は年間500ユーロ。フランスでは国立大学の学費の95%を国が負担するため、どこの大学でも学費は大変リーズナブルだ。

・オーデンシア ビジネス スクール(Audencia Business School )

フランス オーデンシア ビジネス スクール(Audencia Business School )
 学士、修士、MBAを取得可能。3つの国際認定機関の認定を受けた質の高い教育を行っている。約80か国からの学生・教員が集まる国際的な学校で、4,000人中10人の日本人学生が学んでいる。多くの企業とのパートナーシップを結んでおり、これらの企業での研修を行うことが必須となっている。デウスト大学、MIPミラノ工科大学などとダブルディグリーを取得可能。

【ハンガリー】
・ハンガリー大使館

ハンガリー ハンガリー大使館
 3年前から、ハンガリー政府奨学金制度をスタート。1年に100人の日本人を受け入れており、現在は500~600人の日本人が学んでいるという。なかでも医学部の人気が高く、国内4つの医学系大学で400人の日本人が学んでいる。ハンガリーは、教育レベルが高く、生活のクオリティも高い。その割に学費は日本よりかなり安く、1セメスターあたり1,000~1,200ユーロ。150社ほどの日本企業も進出しており、親日的な国だ。治安も良く、深夜に女性ひとりで歩いても大丈夫なくらいだという。インフラが整っていて住みやすく、欧州の中央に位置しているため、他国へも行きやすいなども利点だ。学士過程は3.5年、修士過程は2年。世界的に有名な音楽院もあり、数十人の日本人が学んでいる。ハンガリーの大学へは、高校卒業資格があれば入学できる。英語力が足りない場合は、付属の語学学校を持っている大学が多いので、そこでブラッシュアップできる。

【ラトビア】
・Study in Latvia(政府機関)

ラトビア Study in Latvia(政府機関)
 首都のリカに多くの学生が集まっている。全学生中10%は留学生。留学生のための奨学金制度があり、授業料、滞在費、航空券すべてをカバーできる。使用言語は英語。高等教育機関は、学術に重点をおく学校と、職業に重点をおく学校の2種類がある。授業料は、医学部で7,000~15,000ユーロ。そのほか、ビジネス・経営学、工学・技術、数学・情報処理などの学部があり、学費はそれぞれ2,000~6,000ユーロが必要。

【ルーマニア】
・ティミショアラ西大学(West University of Timisoara)

ルーマニア ティミショアラ西大学(West University of Timisoara)
 ルーマニアには約80の大学があり、そのうち40大学が国立。ティミショアラ西大学は、ルーマニアで4番目大きく、11の学部を有する。研究と教育の両方を重視する、現代的な大学だ。学生数は15,000人。そのうち、留学生は5%。9つの学士過程、15の修士課程が英語で授業を行っている。2016年には、中央アジア・東欧におけるトップ200大学に選ばれており、QSによる世界大学ランキング(2015/2016)では701位。 近代言語の部門では150位内に入っている。地中海に面しているルーマニアは、海も山も近く、自然やさまざまなスポーツが楽しめる。四季もあるため、快適な気候で住みやすい。学費は270ユーロ/月とリーズナブルだ。欧州委員会が実施している、職業訓練および職業教育を受けることができる助成金プログラム「エラスムス+プログラム」 にも参加している。

【ポーランド】
・ヴロツワフ経済大学(Wroclaw University of Economics:WUE  ※「l」は「L」の小文字「l」にクレスカが付く)

ポーランド ヴロツワフ経済大学(Wroclaw University of Economics:WUE ※「l」は「L」の小文字「l」にクレスカが付く)
 おもな学部は、ビジネスマネジメント、コンピュータサイエンス・IT。ポーランドの経済大学でトップクラス。授業はすべて英語で行われている。学生数は約14,000人、留学生は500人、うち日本人は7人。大学のある都市、ヴロツワフは経済的に発達していて、トヨタ、LGなどアジア系の企業が多く進出している。人口は約100万人。そのうち20万人は学生だ。29の大学があり、アカデミックな地域といえる。英語を話せる人が多いため、住みやすいことも利点。

【リトアニア】
・Study in Lithuania(政府機関)

リトアニア Study in Lithuania(政府機関)
 リトアニアには22の大学と23のカレッジがある。400以上の学士・修士課程プログラムが、外国語(おもに英語とロシア語)で行われている。リトアニアの高等教育機関に在籍している外国人留学生は、「エラスムス+プログラム」によって、留学期間中にほかのヨーロッパの大学で1~2学期学んだり、海外の企業でインターンシップを受けたりする機会が得られる。また、リトアニアで学業を修了すると、欧州全諸国から承認されている高等教育の卒業証書が授与される。授業料は、1年で1,700~5,320ユーロ(学士)、2,600~6,300ユーロ(修士)。さまざまな奨学金や交換留学制度があるほか、初年度は宿泊施設を提供してくれる。宿泊、交通費、食費など、月々の生活費は約400ユーロとリーズナブル。 400以上の大学と提携していて、欧州、アメリカ、アジアへの交換留学もできるなどの利点もある。

【ドイツ】
・カールスルーエ工科大学(Karlsruhe Institute of Technology:KIT)機械工学部 カール・ベンツ工科学校

ドイツ カールスルーエ工科大学(Karlsruhe Institute of Technology:KIT)機械工学部 カール・ベンツ工科学校
 カール・ベンツ工科学校は、カールスルーエ工科大学の機械工学部門。英語でコースを提供している。工学、開発、生産における新たなリーダーを養成するための大学だ。今話題の「Industry4.0」にかかわる知識、技術を学ぶ。産業界とのつながりが強く、ダイムラー、ボッシュ、ツァイスで実習を受けることができる。6月23日から30日と、7月1日から7日には、高校生を対象としたサマープログラムを実施予定 。滞在費込みで1,000ユーロ。ハンズオンワークショプ、企業見学などが含まれている。

【スロヴァキア共和国】
・在東京スロヴァキア共和国大使館

スロヴァキア共和国 在東京スロヴァキア共和国大使館
 スロヴァキアはEU加盟国。教育レベルは高く、生活費や学費はリーズナブル。高等教育機関は36校ある。高等教育機関で学ぶ全学生数221,200名のうち、9,069名が留学生。医学部への留学が多い。学費は専攻によって異なるが、だいたい700~1,1000ユーロ。

【イタリア】
・ペルージャ外国人大学(Universita per Stranieri di Perugia ※「Universita」の「a」はAにグレイヴ・アクセントを付した文字)

イタリア ペルージャ外国人大学(Universita per Stranieri di Perugia ※「Universita」の「a」はAにグレイヴ・アクセントを付した文字)
 1925年創立。イタリア語とイタリア文化を広めることを目的としている大学。学生数1,200人。100以上の国からの留学生が学んでいる。短期コースが充実しており、学生だけでなく社会人にも人気だという。たとえば、「イタリアの言語と芸術、文化の5日間」は、芸術と伝統工芸、モードとデザイン、ワイン・食文化と音楽など、イタリアの魅力を堪能するプログラム。午前中は教室で授業を行い、午後は課外活動に充てる。ペルージャ市内の博物館や歴史的建造物などを訪ねたり、料理や音楽鑑賞を楽しむことができる。コース料金は、課外活動の費用を含め380ユーロ。

【クロアチア】
・ザグレブ経済経営大学(Zagreb School of Economics and Management:ZSEM)

クロアチア ザグレブ経済経営大学(Zagreb School of Economics and Management:ZSEM)
 私立大学。首都ザグレブにある。ザグレブは、映画「TRON」のロケ地となった美しい街。人口は450万人。ZSEMの学生数は約1,200人。23か国から200人の留学生を受け入れている。日本人留学生はごくわずか。130の提携校があり、交換留学も盛んに行っている。日本にも3つの提携校がある。教育の質は高く、ヨーロッパのビジネススクールのトップ70にあたる上位5%に入っている。国際化を重視し、授業はすべて英語で行われる。

 そのほか、今回は回れなかったが、スイス、オランダ、ベルギー、オランダ、チェコ、スペイン、スウェーデン、デンマーク、フィンランドのブースも学生たちでにぎわっていた。

 留学フェアは、各国・各学校の留学担当者と直接話ができる貴重なチャンス。筆者も、Webサイトだけではわからない、その国や学校の魅力を肌で感じることができた。通訳や、日本語が堪能な担当者もいるので、留学に興味のある人はこういったフェアをぜひ訪れてほしい。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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