◆日本の歴史と文化を体験する特別プログラム
日本の歴史や文化に触れることができ、修学旅行の定番コースとなっている京都・奈良。ツアーに参加した保護者の多くも、子ども時代に奈良を訪れた経験者だ。ただし、奈良では有名な観光名所を数か所巡り宿泊はしなかったという方がほとんど。現在の修学旅行でも、奈良をじっくりと訪れる学校は多くない。「親子で行く修学旅行」の奈良の旅は、古墳時代から大化の改新を経て、日本という国が形作られたその現地で、歴史や文化を親子で体験できることが特徴だ。
奈良コースにはさまざまな体験が用意されている。初日の談山神社では「再拝二拍手一拝」を教わったり、普段は見られない十三重塔のご本尊を見学できるほか、蹴鞠体験も行える(雨天時は屋内での別体験となります)。2日目の興福寺では開門前の早朝特別拝観、元興寺では古代瓦の拓本、薬師寺では献灯用カップに願い事を記入と、魅力的な特別プログラムが多数行われ、子どもたちが瞳を輝かせていた(一部日程では見学施設が変更となります)。談山神社の権禰宜(ごんねぎ)、興福寺、元興寺、薬師寺の僧侶による特別授業など、現地の皆さんの尽力なくしては実現しない贅沢な内容となっている。また、奈良公園の鹿寄せ体験では、子どもたちの笑顔がはじけ、参加者たちの距離が一気に縮まった。
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僧侶による特別授業のようす(元興寺の辻村泰道先生)
◆感動や気付きが学びのきっかけに
「親子で行く修学旅行」の企画担当者であるJR東海ツアーズの土屋侑子さんは、ツアーのねらいについて、「奈良には、古墳文化から仏教伝来の地として里山風景と貴重な建造物や仏像が融合した独特の文化があります。そんな場所で直接歴史や文化に触れることで、新たな感動や気付きをご家族で共有してもらえたら嬉しいです。また、蹴鞠や鹿との触れ合い、ガイドや僧侶、権禰宜のお話が学びや気付きのきっかけになったりして、お子さま自らが興味、関心を持ってもらえるようなツアー作りを心がけています。夏休みの自由研究として、クラスで発表されたお子さまもいらっしゃったと伺っています。」と話してくれた。
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JR東海ツアーズの土屋侑子さん
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親子で行く修学旅行 奈良コースの行程
◆談山神社での特別授業と蹴鞠体験
この旅のスタートは、談山神社での特別授業。本殿で権禰宜の花房さんに神社の参拝作法である「再拝二拍手一拝」を教わり、実践する。代表に選ばれたのは上座に座っていた小学5年生の幸輔くん(仮名、以下参加者はすべて仮名)だ。幸輔くんに合わせて他の参加者もお参りする。権禰宜の講話のあとは、普段は公開されていない十三重塔に祀られている竜神像を拝観する。現存する唯一の木造の十三重塔ということで、親子とも熱心に見学していた。
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談山神社、代表の合図で再拝二拍手一拝
奈良は始めてだという幸輔くんは、今回はお母さんと二人で参加。「作法は難しかった」ようだが、「談山神社が大化の改新のきっかけとなった蘇我入鹿討伐のための中大兄皇子と中臣鎌子(藤原鎌足)の密談の場に立てられた神社だと知り興味をもった」とのことだった。
談山神社では「蹴鞠体験」も行われた。実はこの蹴鞠、中大兄皇子と藤原鎌足との出会いのきっかけといわれている。ボールのようには弾まない鞠に苦労しながらも参加者から歓声が上がった。サッカーをやっているという小学6年生の純一くんは「サッカーボールと動きが違い難しかった」と語っていた。こうした楽しい体験も交えることで、参加者たちのこの旅の記憶が、より色濃くなっていくようだった。
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蹴鞠体験。こうした貴重な体験ができることもこのツアーの人気の理由だ
◆代表的な3つの古墳を特別ガイドで巡り体感する
3つの古墳を訪れるというのもこのツアーの特徴だ。石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳と奈良の代表的な古墳を巡る。石舞台古墳では、実際に中に入り、どのように作られたのかといった説明を受ける。「77トンの石が3キロ先の山から運ばれた」と本で読んでもその実感は湧きにくい。目の前に、巨大な石が積み上げられている現実を見た参加者からは、「大きい!」「すごい!」という歓声が上がっていた。
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石舞台古墳ではガイドさんの説明に歓声が上がった
◆親子で一緒に予習して参加
中学1年生の貴弘くんとお母さんの親子は、ツアー参加のために予習ノートを作ってきていた。修学旅行のしおりのように、訪問先を調べ、写真や図などをオリジナルノートにまとめていた。「石舞台古墳についても調べてきましたが、実物を前にすると、その大きさに驚きました」と語る貴弘くん。この旅は、出発前から親子で一緒に学ぶ機会にもなっていたようだ。
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ツアー参加のために予習ノートを作り、親子で一緒に学ぶ機会に
◆奈良公園「鹿寄せ」で鹿と触れ合い
鹿寄せは子どもたちにとって目玉イベントのひとつとなった。奈良公園にはおよそ1,500頭もの野生の鹿がいる。名物の「鹿せんべい」で鹿と触れ合うことができる人気の観光スポットだ。
ここでの特別授業は、ホルンで鹿を呼び寄せてどんぐりをあげる「鹿寄せ」の見学だ。ホルンの音に反応して遠くから鹿が集まってくるようすは圧巻で、子どもたちは大はしゃぎ。五感を使った動物との触れ合いは、子どもたちの感性を広げてくれるのではないだろうか。
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奈良公園で五感を使った動物との触れ合い
◆お寺巡りは興福寺・元興寺・薬師寺…拓本や献灯用カップ作りを体験
法相宗 大本山 興福寺では僧侶の大森俊貫先生より、本尊である薬師如来像とその周囲に安置された日光菩薩・月光菩薩、十二神将、四天王の説明を受ける。四天王の名前の覚え方の説明には、親子とも真剣に耳を傾けていた。
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興福寺では大森先生が子どもたちにもわかりやすくお寺の歴史を説明
真言律宗 元興寺は飛鳥寺を起源にもつ仏教伝来ゆかりの寺。平城京ができたときに飛鳥寺(法興寺)の部材を利用して作られたという。ここでは執事の辻村泰道先生より、仏教伝来から日本に定着するまでの歴史、奈良に都ができてからの元興寺の歴史が解説された。解説は子どもにもわかるように配慮されたもので、子どもたちは興味津々に聞いていた。また元興寺では、約1,300年前の瓦の模様を紙に写しとる「拓本」を体験した。
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1,300年前の瓦の模様を紙に写しとる「拓本」に夢中な子どもたち
辻村泰道先生は、今回のツアーに対する想いと子どもたちの反応について次のように語ってくれた。「日本に最初に仏教を伝えたお寺ということで、仏教界への影響や歴史的な価値の高いお寺なのですが、知名度は決して高くありません。それをもっと知ってもらいたいという想いはありました。こじんまりとしたお寺ですが、遣唐使や智光法師の修行の話をきっかけに、仏教や奈良に興味を持ってくれればよいと思い案内をしています。このツアーの参加者は、親子で学ぶという目的意識が強いように感じます。小さいお子さんでも熱心に聞いてくれているし、質問もよく出ます。」
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今回のツアーに対する想いを語る元興寺の辻村泰道先生と参加者
法相宗 大本山 薬師寺では録事の村上定運先生により、子ども目線の法話で、笑いの絶えない楽しい学びを体験できる特別授業が行われた。村上定運先生は、2時間という長時間、子どもも大人も惹きつける話術で、挨拶の大切さ、お蔭様という感謝の気持ちの大切さを説く。見学のあとは、10月に行われる万燈会の際に供える「献灯用カップ」に願い事を記入し、このツアーでの最後の体験を終えた。

薬師寺では10月に行われる万燈会の際に供える「献灯用カップ」に願い事を記入
「挨拶の大切さ、お蔭様という感謝の気持ちの大切さの2つを選んだのは、シンプルですが宗教や宗派を問わず共通する基本的な概念だからです。子どもたちも真面目に熱心に聞いてくれていました。親子の修学旅行ということですが、主役は子どもだと思っています。子どもたちには、切り揃えられたきれいな料理を与えるより、その素材や材料で学んで気付いてもらうことが重要だと思っています。その子どもたちの反応を親が見て、さらに親も新しい発見をしたり、コミュニケーションをとったり。そのためにお寺としてできることを心掛けています。」と村上定運先生は話してくれた。
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薬師寺で村上定運先生と記念撮影。ツアーの全行程が終了した
◆未来に活きる体験と学び…歴史、観光、家族の時間と充実の2日間
ツアー主催者、特別授業の先生方の、子どもたちへの想いがぎっしりと詰まった「親子で行く修学旅行」だが、参加者は何を感じ取ったのだろうか。
愛知県から参加した小学5年生の幸輔くんは、「最初の神社では突然代表になってしまいびっくりしたけど、お話は楽しかったです。談山神社の名前の由来が大化の改新の談合にあるという説明にはへぇーと思いましたし、また興福寺での『なぜ?と思ったことを大事にすると視野が広がる』というお話も印象的でした。バスから見た自然の景色や、瓦屋根の多い街並みも、普段生活している風景と違って面白かったです。これまで奈良のことはあまり知らなかったのですが、学校の友だちに奈良の魅力を教えたいです。」と語っていた。
神奈川県から参加した中高一貫校3年生の由貴さんは、「楽しかったのはやはり鹿と触れ合えたことです。とてもかわいくて楽しかったです。石舞台の中は意外と涼しくて、普段クーラーの生活に慣れているとこういう感覚は経験できないものだと思いました。これまでに歴史の勉強もしましたが、実際に遺跡に触れたりお坊さんのお話を聞いたり、体験をするのは、教科書や写真だけで学ぶのとは違いますね。キトラ古墳の公園では地元の子どもたちが手を振ってくれたり、地域の人の温かみも感じました。」という。学校では修学旅行がないそうだが、春の京都旅行に続いて、今回の奈良旅行に参加し、親子で学びのある旅を実践しているようだ。
小学校6年生の純一くんと二人で参加したお父さんは、「この旅を通じて男同士の会話ができたことも収穫だった」という。夕食は自由行動だが、他の家族と交流するもよし、親子でのコミュニケーションを楽しむもよし。家族4人で参加した中野さんは夕食後にホテルの部屋で、ツアー参加者に贈られる「日本書紀すごろく」を家族で楽しんだようだ。
子どもの体験を重視する家庭が増えているが、子どもたちは学校に塾にと忙しい毎日を送っている。親子の時間がとれる夏休みに、親も子も満足できるこうしたツアーに参加してみるのもよい。体験と学び、歴史、観光、親子のコミュニケーションと、盛りだくさんのJR東海ツアーズ「親子で行く修学旅行」。旅での学びは、参加者たちにいずれ何かのタイミングで、よい経験として活きるに違いない。
提供:JR東海ツアーズ