そのような大阪の受験状況のなかで、難関校を含め、多くの生徒を志望校合格に導いている第一ゼミナールの第一教育本部企画戦略部情報企画室室長 高澤隆一氏に、2018年度の傾向や志望校の選択法、直前期の受験勉強法について話を聞いた。
志望校によって受験対策が異なることに注意
大阪公立高校入試の特徴を教えてください。
2016年度から内申書と学力検査の比率が5パターンになり、学校によって自由に選べるようになりました。文理学科を設置している難関校は、当日のテストを重視する「3(内申書):7(学力検査)」を選んでいます。難関校が実力を重視されるのは自然の流れだと思います。なお、もっとも内申書を重視する「7:3」のパターンを選んだ高校はありませんでしたが、2018年度では長野北高校が採択予定です。
また、英数国の難易度にはA(基礎的)問題、B(標準的)問題、C(発展的)問題とあり、教科によって変更できますが、やはり難関校は総じてCを採択しています。受験生にはきびしい内容だと思います。
2017年度は、特に数学のC問題が難しかったと言われていますね。
合格者の数学(C問題)の平均点が30点(100点満点で換算した場合)に満たないという結果でした。数学のC問題の難易度の高さが際立っているというのが、大阪の公立高校入試の特徴だといえます。そこで、2018年度から、C問題からB問題に採択を変える学校がすでに4校出てきています。
大阪の公立難関校の受験生にとって、数学の対策をどうするかが大きな課題です。多くの受験生が数学の勉強に時間を割く傾向にあります。しかし、難易度が高いからこそ数学に固執しないほうがよいともいえます。なぜなら、もともと平均点が低い数学では差はつきにくいからで、ほかの4科目に傾注するのが合格の近道ではないでしょうか。
英語もC問題に改革がありましたが、影響はいかがでしたか。
問題文、指示文ともに英語というサンプル問題を見たときに、私どもは難易度が高いのではないかと感じていましたが、実際フタをあけてみると、C問題の合格者の平均が約59点で、受験生はしっかり乗り越えていました。B問題の平均が48点ほどですので、単純に比較はできませんが、C問題の合格者平均点のほうが高かったという事実を受けて、2018年度はC問題の難度を上げ、B問題を簡単にするといった調整が行われるかもしれません。
受験生は志望校がA、B、Cのどの問題を採択しているかを知ることが大切ですね。
大阪の公立高校は学校ごとに、内申書と学力検査の比率も異なれば問題も違うので、それを把握することが重要です。英語はB問題を使っているからこういった勉強、数学はC問題だからこうした勉強というように、対策を練らなくてはなりません。そのうえ、自己申告書(大阪府教育委員会が提示するテーマに沿って作成する文書)の提出が必須になっていますから、それらをバランスよく学習していく必要があります。
そのような状況であるため生徒個人の対策には限界があり、学校や塾で先生がコントロールをしていく必要があると思います。
個性が際立っていくトップ10校
大阪の公立高校の特徴として、難関校であるグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)があげられます。この10校(*)が文理学科のみの募集となりますが、入試にどのような影響があるでしょうか。
*2018年度~2020年度のGLHS指定校(全日制)は、北野高校、豊中高校、茨木高校、大手前高校、四條畷高校、高津高校、天王寺高校、生野高校、三国丘高校、岸和田高校の10校。北野高校と天王寺高校は2016年度より文理学科のみ。
普通科がなくなって文理学科だけになるというセンセーショナルなニュースではありますが、文理学科だけになっても定員は変わらないので、合格最低点にはあまり変動がないと考えています。
ただし、地域性が影響する可能性はあります。大阪は北部の北野高校、南部の天王寺高校が双璧をなし、2校とも2016年度より文理学科のみの募集でした。ところが、ほかのグローバルリーダーズハイスクール8校も定員がすべて文理学科のみになりますので、たとえば天王寺高校の受験を考えていた文理学科志望の受験生が、地元の三国丘高校を受験する可能性が出てきます。文理学科を設置している地元の高校の倍率が上がることも考えられるわけです。大阪では、現在の中3生がどの高校を志望しているか、進路希望調査の動向を見ながら慎重に進路を決めた方がいいですね。
また、普通科を志望していた受験生が文理学科を敬遠することで、GLHS指定校の受験者が減るのではないかという懸念も一方ではあります。そこでたとえば大手前高校では、普通科志望だった生徒も安心して受験できるように文理学科内で習熟度別に分けることを発表しています。
トップ10校でそれぞれに対応が考えられているのですね。
そうですね。学校によって方向性は異なります。普通科と文理学科を分けることなくすべての生徒に同じ教育をする、これには大きなエネルギーが必要になりますから、学校の個性がますます際立ってくると思います。
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インタビューに応える高澤隆一氏
併願校は偏差値だけで決めてはいけない
難関校志願者の併願校についてアドバイスをお願いします。
大切なのは、併願校の上位コースに合格する実力が十分にあるかどうかを、見極めることです。たとえば天王寺高校志願者が併願先として桃山学院高校を検討している場合、S英数コースに合格できる状況にあることをしっかりと確かめてください。公立難関校にギリギリで合格してしまった場合、勉強に追われて高校生活の3年間を過ごさなければならなくなります。そのような状況は避けてほしいと思っています。
中堅校志願者の併願校選びはいかがでしょうか。
中堅校の場合は、倍率がポイントです。たとえば、1.3倍というとたいして高くないと思えますが、定員300人の学校ですと、90~100人が不合格になることになります。合否は、内申点と学力検査の点数、そしてその比率という総合点で判断され、下から100人に自分が入ってしまう可能性も考えられるわけです。
難関校志願者も中堅校志願者も、もしも進学した場合に、充実した高校生活を送れるかどうかということを考慮して、併願校を選んでほしいですね。
入試直前期には基本的事項を徹底的に身に付ける
2018年度受験生に、入試本番までの効果的な学習についてアドバイスをお願いします。
不合格になるのは、受験者の大半が解けない難しい問題ができなかったからというより、皆が解ける問題を自分だけがミスするケースです。そこで、倍率が一般的な数値である場合は「ケアレスミスをしない」ということが一番重要です。そのためにも、入試直前期には難しい問題にこだわらず、基本的な知識事項を確認する、そのことに徹底してほしいです。
また、過去問題に取り組み、不得手な問題を繰り返し解くことが実践的な力を養います。直前期には、難しい参考書や問題集を新たに購入して学習を始めるよりも、これまで学んできた基本事項をチェックすることに注力したほうが効果的です。
難しい問題をとばして平易な問題から解くというのも受験テクニックの一つですが、基本的事項を確認することは、入試本番で難問かどうかを素早くチェックする力をつけることにもつながります。
中2の夏休み明けに大きな転機がある
2019年度の受験生に、志望校選択や学習のアドバイスをお願いします。
現在中学2年の皆さんに知っておいてほしいのは、夏休み明けの2学期から英語と数学の難度が跳ね上がる、ということです。たとえば、1学期までは試験前に少し勉強すればなんとかなっていたのが、2学期からは急に難しくなります。
中2の2学期が分岐点になりますね。
そうですね。また、高校に入学したときがもう一つの大きな分岐点です。この中2と高1は先生や保護者にとっても重要視しなくてはいけない学年で、「がんばれ」という言葉だけではうまくいかなくなる頃です。
中2の夏頃からは、コツコツ学習を積み上げていけるよう、勉強の習慣を変える必要があります。そのために、第一ゼミナールでは生徒に「SPノート」という計画表の冊子を渡し、1週間単位で計画を作るよう促しています。
ひとりひとりに寄り添うことで、意欲という火をつける
自ら計画を立てて学習する時間を作ることを習慣化させているのですね。
第一ゼミナールの目標は「志望校合格」、目的は「社会で活躍できる人づくり」です。自分自身が行うべきことをタスクに落とし込んでコントロールすることは、社会人になったら必要なことですから、塾生たちには自分自身で学習計画を立てる習慣を身に付けさせたいと考えています。
私どもは、志望校に合格したいという受験生や保護者の切実な思いを、全力で支援したいと思っています。しかし、ただ単に合格したら終わりというのでは、「学び」としてもったいない。学びを通じて「社会で活躍できる人づくり」をすることが重要だと考え、さまざまに工夫をしています。合格はゴールではなくスタートであると、生徒自身が考えられるように指導することが大切だと思います。
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インタビューに応える高澤隆一氏
ひとりひとりと寄り添う「1/1の教育」
第一ゼミナールの特長を教えてください。
私どもでは、生徒が10人いれば20個の目に授業しているのだと考え、たとえ集団指導でも先生と生徒の心のつながり、信頼関係づくりに重きをおいています。先生は、生徒ひとりひとりをウォッチすることからはじめ、個々の目的や希望を把握して一緒に夢に向かう併走者になろうと努力しています。
このひとりひとりと寄り添う「1/1の教育」を実践するなかで、なぜ今これを学ぶのか、勉強の背景を丁寧に教えます。この勉強が将来とどのようにつながるのかがわかり、この瞬間の自分の行動が夢につながるとわかった生徒は強いです。試験に対するイメージも変わります。将来の夢に向かってコツコツと勉強してきたことの総仕上げとして入試を捉え、自分から取り組みたいと考えられるようになります。生徒の心に火をつけること、意欲喚起をはかっているのです。この取組みが評価され、2012年には経済産業省の第2回キャリア教育アワードで優秀賞をいただきました。
95%の生徒が成績アップを実感、プラスサイクル学習法
プラスサイクル学習法への評価も高いですね。
おかげさまで、95%の生徒に成績が上がると実感してもらっています。プラスサイクル学習法は、「楽しく意欲的に勉強しているほうが脳の働きが活発化する」という脳科学の研究成果をふまえて、学習におけるPDCAサイクルをまわすことでやる気を出させ、学習の定着度をアップさせる手法です。
私どものPDCAのPは、授業が終わった瞬間にあたります。先生と生徒が次の授業に向けて目標や学習計画を共有するのがP(Plan)です。それを受けて家庭や学校で勉強するD(Do)。次の授業が始まるときに、どうだったかをチェックするC(Check)。家庭学習での量や質を先生と共有し、振り返りを行うわけです。そして、その振り返りを授業に生かすA(Action)。私どもが生徒と寄り添うといっても、24時間そばにいるわけにはいきません。そこでPDCAのサイクルをまわすことで、家庭学習までを含めてきちんと把握するようにしています。
英語教育にも力を入れられていると伺っています。
グローバル人材育成の一つとして、英語を活用する場も提供しながら、4技能(読む・聞く・話す・書く)のすべてを伸ばすための指導をしています。私どもの特長はグループ会社に、通訳・翻訳のトップカンパニーである吉香(KIKKO)があることでしょう。オバマ前大統領が広島を訪問されたときや、トランプ大統領が大統領に就任および来日されたときの演説で、同時通訳(民間放送)を行った会社でもあります。その複合的な力を第一ゼミナールの教育と掛け合わせることで、4技能を伸ばすための学習を実現しています。
「社会で活躍できる人づくり」に必要だと思う教育を実践されているのですね。
それも、先生と生徒との信頼関係があるからこそできることだと思います。塾生は卒業してもしばしば顔を見せてくれますし、非常勤講師として戻ってきてくれるケースも多くあります。子どもたちとしっかり結び付いていることが、私どもの最大の特長といえるかもしれません。
ありがとうございました。
ひとりひとりの個性と真剣に向き合い、個々の将来に向けた教育を行う第一ゼミナール。合格はスタートにすぎないと言い切る姿には、長年生徒たちを合格に導いてきた教育指導における自信が伺えた。
なお、第一ゼミナールの受験対策イベント、模擬試験等は、Webページで最新情報を確認してほしい。