【PTA・卒対】時代にそぐわない“慣習”のループ…卒業対策委員実践レポ・その2

 4月に小学校6年生になるお子さまの学年で「卒業対策委員」になった…大変だという噂もあるけれど来年度から何をするんだろう? と不安に思っている保護者も多いのではないだろうか。編集部の経験者から聞いた主な活動内容をご紹介する。

教育・受験 保護者
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  • 東京都小学校PTA協議会
 PTAの仕事のひとつ「卒業対策委員」通称“卒対”を聞いたことはあるだろうか? 小学校6年生に進級する保護者の中には、大変だという噂のこの卒対に「いったい何をするんだろう?」と不安に思っている方も多いのではないだろうか。学校によって方針や活動はさまざまだと考えられるが、経験者によると、卒業生の保護者から集めた「卒業対策費」(例:1人あたり20,000~30,000円)から、以下のようなことを実施することが主な活動内容だという。

主な活動内容5つ



1.卒業記念品の準備


 卒業生に贈る記念品の選定と発注。写真立てや文房具などに「〇〇小学校 〇〇年卒業記念」など、名入れをして発注。記念品を取り扱うネットショッピングも多数ある。年明け前に早めに選定して、余裕をもって発注を済ませると安心だ。

2.卒業アルバムや文集


 主に先生と生徒で写真の選定や編集作業を行うが、費用は卒業対策費で賄う。

3.卒業祝賀会(※名称は学校によりさまざま)


 地域の人々、離任した先生、在職中の先生と職員、卒業生、保護者で行う卒業式前の茶話会。卒業式ほどの厳粛さはないが、6年間の感謝の気持ちを込めて保護者が中心となって学校の体育館などでアットホームな雰囲気で行う。保護者や児童が歌などの出し物を披露することもある。

4.卒業式


 学校側が主催するが、卒業生の胸に付けるコサージュや、退場時の花束、卒業証書ファイルなど、卒業生が使用する物品の手配は卒対が担当し、卒業対策費から購入する。

5.謝恩会


 学校の先生と親、学校によっては児童も学校外の会場で集まり食事をするなど、親から先生へ感謝の意を示す会だ。実施する学校は減ってきているようだが、開催する場合はホテルなどの広い会場を早々にキープする必要がある。

 メインの仕事は上記の5つ。この仕事にまつわる予算管理や会計報告書の作成、会議日程の調整、会議議事録の作成、学校側とのあらゆる調整なども卒業対策委員の仕事だ。親同士、仕事などで忙しいことを前提にシンプルに効率よく進めようとSNSやネットなどを利用し、試行錯誤しながら進めているという。

学校と一般企業に勤める親たちとの間にある常識の違い



 会議の回数は月に1回ほどで、もっとも忙しい時期は年明けから3月にかけて。多忙な時期は、全体の集まりではなく、必要に応じて担当ごとに集まることもある。働いている親にとっては時間との闘いだが、学校側への確認などのやりとりが、もっとも苦労したという。「質問のメールの返事はその日のうちに返す」「メールに書いてある期日は守って返信する」という習慣が、学校側のインターフェースとなる先生にもあるはず、と思い込んでいたら常識が通用しなかったというのだ。紙でのやり取りが中心の学校もまだあり、基本的に先生としての仕事と兼務し保護者の窓口となっているのだから大変多忙なのだろう。

 多忙な親と多忙な先生では、何かを改善する余裕もなく、ただ慣習をこなしていくだけで精一杯というのが現状なのかもしれない。専業主婦が多かった時代は、その方達の力を借りていたからこそできた、ということも多くあるのではないだろうか。

PTA= Parent-Teacher Association の意味をあらためて考える



 実は、PTAの仕事は多くの学校で、親が子どもだった30年以上前から変化しておらず、慣習という名のもとに、代々引き継がれている。当時より女性の就業率は上がり、PTAの役員をしている保護者の中にも、働いている母親が多いのが現状だろう。このPTAの仕事量が30年前から変化していないとしたら、働く母親たちの負担はかなり大きくなっていると言えそうだ。

 首都圏では中学受験者数が年々増加しており、公立小学校に通う小学生の中には、土曜授業日や長期休み中の学校行事に参加せず受験塾の日程を優先する家庭もあるという。仕事に家事にPTAに受験…何足もの草鞋を履いて奮闘している保護者も多い。

 働き方改革によって、子どもを持つ親たちがPTA活動に割く時間を持ちやすくなれば、親の負担も軽減され参加しやすい組織となるのか。それとも、塾などの学校外での活動をより優先する家庭が増えていくのか。いずれにしても多様性を考慮した学校関連の組織作りが、強く求められている。

※上記内容は、卒業対策委員の経験者からの情報をもとに記事化したもの。各学校で実施内容等が異なることをご了承いただきたい。
《編集部》

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