小学生の夏休み、充実のカギは「家庭の関わり」 共働き含むタイプ別過ごし方

 もうすぐ夏休み!計画的に過ごすには、どういったことに気をつければよいだろうか。限りある休みを充実したものにし、休み明けに好スタートを切るコツを聞いた。共働き家庭と、保護者が家にいることの多い家庭の2パターンを考える。

教育・受験 小学生
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  • 夏休みのスケジュールの例 画像作成:リセマム編集部
 もうすぐ夏休み。長い休みを活用して、普段は行けない場所やできないことに挑戦するチャンスだ。その半面、学校での授業がないことで生活リズムが乱れ、体調を崩しやすい時期でもある。休み中にクセづいた不摂生がたたると、休み明けのスタートダッシュでつまずく可能性も…。

 加えて、共働き家庭にとっては、どうすれば子どもの時間を豊かな物にできるか、という悩みもつきまとうだろう。神奈川県と埼玉県で計22年、小学校教諭として教壇に立ち、クラス担任としての経験も豊富な帝京平成大学講師・鈴木邦明氏に、夏休みを実りあるものにするための方法を聞いた。

休み明けは“さらに良い”自分に!
夏休みの過ごし方

・保護者の状況で異なる夏休みの過ごし方
1、共働きの家庭の場合
2、保護者が家庭にいる場合
3、どちらにも共通すること


保護者の状況で異なる夏休みの過ごし方



 夏休みは、親が上手に関われば子どもが大きく力を伸ばすことができる時期です。ただし、計画を誤れば逆の場合もありえます。夏休みに入るこの時期に、保護者はどのようなことに注意すればよいのかまとめます。

 家庭における夏休みの過ごし方は、保護者の状況によって大きく異なります。今回は、「夫婦が共働きで子どもは学童で過ごす家庭」と、「両親または祖父母などが家におり、学童などには通わない家庭」のふたつに分けて説明したいと思います。

1、共働き家庭の場合



 まず、「夫婦共働きで夏休みなどに子どもは学童で過ごすことが多い家庭」についてです。共働きの家庭では、親が休みの時には子どもも休めるよう、計画的に夏休みを過ごす必要があります。

 親が働いている場合、多くの子どもは学童やアフタースクールを利用していることが予想されます。夏休みも同様に学童などを利用すると思われますが、同じ「学童」だとしても、学校に通っている時期に利用する「学童」とは少し違った対応が必要です。

 学校の授業がある時期は、宿題も含め、クラス担任が「何の勉強をするか」という学習のペースを作ってくれます。また、多くの学童では、1日の生活の中で「学習の時間」が設定されており、授業・宿題・学童の3場面で学習ペースが保たれていることと思います。

 しかし、夏休みなどの長期休業中はその指針がなくなるため、学習ペースをキープするには「その日に何に取り組むのか」など家庭内で決めなければなりません。学童に通っていたとしても、親が学習ペースに関われずにいた場合、子どもは授業の宿題がなくなったことで「学習の時間」を好きな勉強だけに取り組んだり、読書に費やしたりする可能性があります。

 そうすると、結果として夏休みの中盤から終盤で残りの宿題の量に驚き、慌てて取り組む…という悲劇が起き、せっかく取れた親の休みにも、宿題に追われる可能性があります。

◆夏休み直前、これだけはやっておきたい2つのこと

 そこで、大事なことは「はじめに計画を立てる」「計画を途中で確認をする」の2点です。特に大事なのは前者の「はじめに計画を立てる」ことです。子どもが夏休みに入る直前に、親子で一学期の振返りと夏休みに向けた計画づくりに取り組めるのが望ましいです。

 振返りでは、「学期末のまとめのテスト」などを活用し、理解が十分でない所を洗い出します。それとともに、夏休みの宿題がどれだけあるのかを親子で確認します。難易度や手間などを考えながら、「算数 2桁の割り算(家)」「国語 漢字ドリル1ページ(学童)」など、大まかなスケジュールを組んでいきます。その際は、あまりきっちりと決めすぎず、少し余裕のあるスケジュールにしておくとよいでしょう。学校によっては、宿題として「生活表」のようなものをくれる場合もありますが、それとは別に、各家庭で課題や決めたことへの取組み状況が見えるものを作っておくとよいです。作った表は、親子ともに日常的に見ることができるよう工夫しましょう。

 課題やスケジュールを「見える化」したら、毎日順調に取り組めているのかを確認します。確認に特別な時間を割く必要はなく、「宿題のチェック」と同じ感覚でよいでしょう。学童での「学習の時間」は、子どもの裁量に任されている点も多いので、予定通りに進まないこともあるでしょう。その多様さから、指導者が全員をサポートできない可能性もあります。そんな時こそ、親による「確認」の出番です。少し予定通りに進んでいなくとも、あまり目くじらを立てず、少し修正を促す程度で構いません。はじめの計画で少し余裕を持った形にしておけば大丈夫ですし、最悪の場合、親が休みの時に少し積極的に関われば軌道修正は可能です。

◆ちょっと小話:学童の良さ

 ところで、学童には教育的に良いと思われる点がいくつかあります。そのうちのひとつは、学童が「異学年(異年齢)の集団」であることです。数十年前は日本の至る所で見られていた、“地域の遊び集団の姿”とも言えるでしょう。同年齢の子どもが集まったクラスとは異なる集団の中で、さまざまなことを学ぶ良い機会だとも言えます。学校でも積極的に採り入れられる「縦割り活動」と似ていますね。

 なお、学童に通っている子どもは、長期休業中の生活習慣については大きな心配はありません。学校に通っている時と同じようなスケジュールで過ごすことが多いことは、大きなメリットです。夏休みなどの長期休業で一番問題なのは、子どもの生活リズムが崩れてしまうことです。学童に通っている場合は、そういった問題は自然と防ぐことができるのです。

2、保護者が家庭にいる場合



 次に、「親や祖父母などが家庭におり、学童などに通っていない家庭」について説明します。

 こういったケースでもっとも気を配ることは「生活リズムの維持」です。遅くまでテレビを見たり、ゲームをしたりしてしまった影響は、新学期の開始時に強く表れます。崩れてしまった生活リズムを戻すのは本当に大変です。小学校などにおいては、夏休み明けの時期がもっとも不登校になりやすい時期だとも言われています。終わっていない宿題や暑さなど、さまざまな要因が重なり、不登校へつながるきっかけがたくさん待ち受けている時期なのです。その中でも、「生活リズムの崩れ」は心身に大きく影響を与えるものです。

◆家庭学習の支え、これだけは避けたい

 子どもが家庭で宿題に取組む際、注意すべきことがあります。それは「過干渉」です。そばにいる時間が多くなり、子どもに対して関わる頻度や量が多くなると、どうしても子どもが失敗しそうな時や細かい部分に口を出してしまうことが増えるかと思います。手助けは良いことですが、度が過ぎるとかえって悪影響になるかもしれません。子どもの意欲を削いだり、自立の邪魔をしたりせず、保護者は学びのチャンスを潰さないように注意する必要があります。

 そうならないためにも、家庭にいる時間が長い場合は、一日のリズムをきちんと設定する必要があります。学校も学童も、一日のスケジュールが決まっていますね。そういったスケジュールを管理する表家庭でも作ると、子どもも親も動きやすくなります。

 たとえば、次のように予定を組んでみるとよいでしょう。まずは、毎日同じ時間にするものから、スケジュール表に組み込んでいきます。

夏休みのスケジュールの例 画像作成:リセマム編集部
夏休みのスケジュール まずは固定されている予定から埋めると計画しやすい

 一日のスケジュールを考える際には、午前中、特に早い時間帯をどのように過ごすのか、ということが重要になります。最近は減っているものの、地域でラジオ体操をやっている場合は、参加すると朝のリズムを作りやすいですね。多くの場合、ラジオ体操は6時30分から実施されています。曜日の決まっている習い事があれば、習い事の時間も埋めていきます。

◆夏休み ある日のスケジュール
6時30分 ラジオ体操
9時~10時 勉強
10時30分~11時30分 読書
13時~14時 勉強
14時30分~15時30分 読書


 取組む時間や内容は、子どもの年齢や興味関心によって変えてあげましょう。習慣化さえすれば、人は容易に物事に取り組めるようになります。

 なお、スケジュールを決める際は、子どもの考えを中心にし、最終的には子どもが決めるということが重要です。誰しも「自分で決めたこと」に対しては頑張って取り組もうとします。「自己決定」と、そして「それを守っていく」という経験は、その後の成長においても良い意味合いを持つと思われます。

共働き・保護者が家庭にいる場合に共通すること



 最後に、共働きの家庭の場合と、保護者が家庭にいる場合の、どちらにも共通するポイントをお伝えします。

 学校のある時期は、計画的に行われる学校教育活動にそって日々の学習などが行われています。家庭による程度の差はあれ、大きな崩れはあまりありません。その点、夏休みは教師の関わりが少なくなることで、家庭による差が大きく出てくる時期です。その子の長所がどんどん伸びたケースもありましたし、そうではない例もあります。

 学校の授業は、教師1人に対して児童約30人、という状況ですから、きめ細やかな個別対応はどうしても難しい場合が多いでしょう。その点、夏休み期間中は、家庭においては1対1で対応できる時間を持てるチャンスです。学校に関わるスケジュールがタイトでない分、弱い部分を補ったり、強い部分を伸ばしたりするのに多くの時間を割ける時期なのです。

 今回は、夏休みの過ごし方について「学童などに行っている場合」と「保護者が家庭にいることが多い場合」に分けてまとめました。冒頭で述べたとおり、どの家庭においても、子どもの育ちに関しては学校のある通常の時期より親などの影響が大きい時期です。今回のアドバイスが、子どものより良い育ちのきっかけと保護者のみなさんの助けとなれば幸いです。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師、平成30年4月からは帝京平成大学講師として、子どもの未来を支える小学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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